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 辺りを見渡しても岩ばかり、という荒涼とした風景の中、アラシヤマは
 「リッちゃーん!!」
 と叫ぶウマ子を、(いきなり、どないしたんやろか??この女子・・・)と不審に思いつつ、
 「ホラ、直りましたえ」
 鼻緒をすげ替えた下駄を手渡した。それを受け取ったウマ子は少し複雑そうな顔で下駄を見ると、
 「シンタローって、リッちゃんとひとつ屋根の下に暮らす御法度野郎じゃろ?そんな奴のどこがええんじゃ?」
 少し拗ねたように言いながらウマ子は下駄を履いた。なんとなく、アラシヤマは(さっきから、一体何どすの?)と、少々居心地の悪さを感じつつも、歩き出した。
 「一言言っときますが、別にシンタローはんはリキッドを狙うてはるわけやないと思いますえ?気に入って子分にしてはるんは確かやけど。どこがええんか聞かはったけど、とにかくシンタローはんは、強うて、綺麗で、優しおます」
 「そんなん、わしには信じられんわ。シンタローは、リッちゃんを扱き使う鬼姑じゃ!!」
 アラシヤマは、少し困った顔をし、腕を組んだ。
 「まぁ、それも俺様なシンタローはんの一面やと言えるかもしれへん。・・・あんたはんにやったら話してもええやろか。わてとシンタローはんが出会うたんは、ちょうどあんたはんぐらいの歳やったんどす。一目見たときから、シンタローはんは、とにかく他とは全然違ってましたわ」
 なんとなく、アラシヤマは今この場には心在らずといった様子で、何かを懐かしむような顔をした。
 「士官学校に入学した日、わてが一人でご飯を食べてたら、シンタローはんが『仲良くしよーぜ』って話しかけてくれはったんどす。すごい嬉しかったんやけど、何でかその後殴られまして。でも、それ以来、紆余曲折はありましたが今は一番の心友どす!正直な話、わてはシンタローはんのためやったら何でもします」
 アラシヤマはそう言いきった。それは他者が口をはさめるような雰囲気ではなく、少しウマ子は疎外感のようなものを感じた。
 黙ったままのウマ子を見て、アラシヤマはどう思ったのか、
 「・・・あんたはんにはつまらん話やったら、すみまへんな」
 そう言って、少し笑った。
 (なんじゃ、もう!わしだってリッちゃん一筋なんじゃけぇ!!)
 ウマ子は何故か悔しく思った。
 「リッちゃーん!リッちゃーんッツ!!」
 再び大声で叫びだしたウマ子を見て、アラシヤマは少し呆れた様子で、
 「あんたはん、そないにリキッドのことが好きなんどすか?」
 とウマ子に声をかけた。
 「す、好きって・・・、もちろんじゃあ!!!」
 「わてにはよう分からんけど、あんたはんこそあのヤンキー小僧のどこがええのん?」
 「むぅ、リッちゃんほど格好よくて可愛い男はおらんッツ!」
 それを聞いたアラシヤマが、
 「シンタローはんの方が格好よいし、可愛いおますえ!?」
 と断言したのでウマ子はムッとした。
 「リッちゃんは目が綺麗な空色じゃし、髪も金髪で王子様みたいじゃ!」
 「わては、シンタローはんのあの目が、好きどす!いつも睨まれてばかりなんどすが、笑ったり、わてのために泣いたりしてくれはると、もう、おぼこすぎてどないしようか思いますわ。長い髪はシンタローはんの気性みたいに真っ直ぐで手触りがようおますしナ」
 「り、リッちゃんはすごく料理上手な男じゃ!わしはリッちゃんの手料理を毎日食べることが夢なんじゃが、たまにはわしが作ってリッちゃんをドキッとさせてやりたいのぉ・・・」
 「リキッドよりも、シンタローはんの方が料理の腕は上でしゃろ!シンタローはんの手料理は絶品どす!ただ、わてのためには中々作ってくれまへんけど・・・」
 アラシヤマが色々と言っていたが、ウマ子はリキッドのことを思い出しているうちに、もはやアラシヤマのことはすっかり忘れていた。
 「リッちゃんは照れ屋じゃけん。ウマ子のセクシー・コスプレを見て正視できんほどテレまくるし。げに純情で可愛い男じゃ。だから、リッちゃんのためにいつも可愛い服を着とうなるのぉ。ウマ子を近づけようとしないのは、一度ウマ子に触れたら我を忘れて抱きしめたくなるからじゃろvvv」
 そう呟くと、ウマ子の顔は赤くなった。
 「シンタローはんかて照れ屋どすえ?いつもわてがプレゼントしたり何か言うとすぐに眼魔砲を撃ちますが、あんなにおぼこい人はおりまへんナ!と、特に、アノ時なんかは・・・」
 何かを妄想し、鼻血を垂らしているアラシヤマを見て、ウマ子は(なんじゃあ、この男)と、かなり呆れつつ不気味に思った。
 「優しくて、ちみっ子やシンタローに振り回されてばかりじゃけど、リッちゃんは本当は一番強いけん。ウマ子のせいで大事な赤い玉を手放した時も、『ウマ子は責任感じなくてもいい』って言いきることのできる器の広い男なんじゃあ。わしも、今までいろんな男と働いてきたけど、何のためらいもウソもなしにそう言い切ることのできる男なんてなかなかおらん。リッちゃんは男の中の男じゃ。御法度野郎どもも思わず群がるくらい、魅力的なリッちゃんやけど、わしは負けんけぇの!というわけで、シンタローよりもリッちゃんが一番なんじゃ!」
 そうアラシヤマに言うと、アラシヤマも、
 「何を言うてますんや、シンタローはんが一番どす!いくら女子相手とはいえ、そこは譲れへんところや」
 一向に譲る気配はなかった。
 「このままじゃ埒があきまへんナ・・・」
 どれほど歩いたか分からないが、2人が気づくと辺りの風景にどことなく見覚えがあった。そして、少し先には木のようなものが見えた。どうやら迷って元の場所に戻ってきてしまったらしい。
 「こうなったら、シンタローはんとリキッドのどっちが一番か、カシオはんに決めてもらおうやおまへんか!」
 「望むところじゃ!」
 2人は、木の方に向かって走った。


 「また、おぬしらか。先程別れたばかりじゃのに」
 歩く世界樹は、困惑しつつも少し嬉しそうであった。
 「カシオはん、今からわてらの好きな人の話を聞いて、その2人のうちどっちが一番か決めておくれやす!」
 「唐突にそう言われてものう・・・。そう比べられるものでもないじゃろうし、実際に会わないことには、わしにはよくわからんぞ?」
 そう言われた2人は言葉に詰まった。そして、数秒して
 「・・・シンタローはーんッツ!会いとうおますぅ~!!」
 「・・・リッちゃーんッツ!!会いたいよ~!!」
 そう叫ぶと顔を見合わせ、
 「―――こんなとこでボヤボヤしてられまへんナ!早う2人を探しに行かへんとッツ!」
 「そうじゃそうじゃ!」
 アラシヤマとウマ子は頷きあった。
 「それじゃ、わしら探している人がおるけん。カシオくん、元気でね!」
 2人が土埃をあげて走り去っていった方角を見て、
 「一体、何だったんじゃ?」
 あっけにとられた様子の世界樹であったが、
 「でも、あやつらにはまた会えるといいのう・・・」
 そう言うと、彼は1つ大きなあくびをし、うつらうつらと眠り始めた。
 よい夢を見ているのか、深い皺が刻まれたその口元には微笑が浮かんでいた。










i 様ー!いつもキリリクをしていただきほんまにありがとうございます!(涙)
毎度ながら、キリリクの内容に色々副えていないような気がします(泣)が、
もしよろしければ i 様に捧げますので・・・!


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