「好き、嫌い、好き…。あっ、また好きになりましたえー!100パーセントの確率どすぅ~vvv」
真っ青に晴れた空の下、トットリが海へと続く道をのんびりと歩いていると、ふと数十メートル先の方から何やら叫ぶ声と見覚えのある気配がした。
(これは…、あいつだわナ)
今来た道をひきかえそうとすると、
「あっ、忍者はんやおまへんか!」
どうやら相手も気づいていたようで、なんだか嬉しげにこちらにやってきたのでトットリは思わず舌打ちをした。
「なんどすの?その露骨に嫌そーな顔」
「……根暗男が、一人で叫んでいるのを耳にしたら、だれだってえっらい引くわナ」
「ああさっきのあれ。お花でわてとシンタローはんの相性を占ってたんどすv」
何やら含み笑いをしながら、頬を染めてモジモジとしているアラシヤマを眇めた目でみて、
「占うまでもなく、わかりきったこととちがうんか?」
と、トットリはいった。
トットリのそっけない様子にも気づかず、アラシヤマは浮かれた様子で得たりとばかりにうなづいた。
「マヌケな忍者はんもごくごくたまにはええこといいますやん!まぁ、薄っぺらーいベストフレンドとかのたまう顔だけ阿呆とあんさんの場合とちごうて、わてとシンタローはんがバーニング・ラヴvな親友同士なのはまぎれもない事実どすケド!」
無表情のままトットリはポケットに手をやり、いきなりアラシヤマに手裏剣を投げつけた。
「あぶなっ!あんさん、いきなり何しはるんどすかー!?危のうおますやんッ!!」
ギリギリのところで避けたアラシヤマがそう怒鳴ると、
「―――何で避けるんや、根暗。お前ってほんっと、空気の読めないやっちゃね~?」
トットリは貼りついたような笑顔で答えた。アラシヤマは不機嫌そうであったが、
「……まぁ、今日は気分がええ日やさかい、一応燃やすのは堪忍してやりますわ」
といった。
トットリは、少し辺りを見まわし何かに目をとめると、一瞬姿を消した。すぐに戻ってきた彼はアラシヤマに一輪の花を差し出した。
「アラシヤマ、さっきまでのことは水に流して、この花でシンタローとの相性を占ってみるといいっちゃ」
そういってにっこりと微笑んだ。
「トットリはんッ…!あんさんの友情に感謝どす~vvv」
「そんな、アラシヤマ、僕達の間には友情なんて一ミリたりとも存在しないから、全然気にしなくっていいっちゃよ!」
アラシヤマは聞いていない。
「シンタローはんは、わてのことを好き、嫌い、好き、嫌い、好き、嫌い、好き、嫌い、好き、きら…」
「どがしただらぁか、アラシヤマ?」
「ききききき、きらっ…!」
「もうその花びらしか残ってないけど、はやく千切るっちゃ」
笑顔のままトットリがそう言うと、アラシヤマは手に持っていた花を握りつぶし、
「そんなはずはッ、あらしまへんー!!!」
花が、炎につつまれ一瞬で炭屑になった。
「シンタローはんはっ、わてのことが大好きなハズどすー!!なんてったって心友どすからッツ!!なんや、占いなんてそないな非科学的なもん、わては信じまへんえっ!? わては今からシンタローはんと海でイチャイチャするんどすっ!シンタローはんの肌に優しくサンオイルを塗ってあげるんはこのわてどすえッツ!!」
シンタローはーん!と叫びながら、アラシヤマはものすごい勢いでパプワハウスのある方角へ走っていった。その場に一人とりのこされたトットリは、
「―――それにしても、とことんイタイ野郎っちゃね…」
と呆れたように呟いた。
「まぁ、あげな阿呆、どーでもええわ。あっ、早くしないとミヤギくんとの待ち合わせに遅れるだわや☆」
にっこりと笑顔になると、トットリは駆け出した。
「シンタローはーんッ!今からわてと浜辺でアバンチュールを楽しみまへんかッ!?」
「眼魔砲ッツ!!」