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 「シンちゃーんッツ!いったいどこへいっちゃったんだいっ!? パパのところへ戻っておいで~!!一緒にビデオの続きを観ようヨー!!」
 遠くの方でかすかに聞こえる声にしばらく耳を澄ませ、
 (やっと撒いたか…)
 声がだんだん遠ざかっていくことを確認し、廊下の壁に背をはりつけたままシンタローはひとまずほっと息をついた。


 朝の目覚めはシンタローからすれば、サイアク、であった。
 目が覚めると、何故か、隣にはマジックが添い寝をしている状況で、自分をみつめていた。
 「うーん、シンちゃんはいくつになっても可愛いねぇ」
 とマジックはにこにこと微笑んでいる。
 シンタローが状況を把握できないままぼんやりと彼を見上げ、視線が合うと、
 「ハッピーバースデー☆シンタローvvv」
 マジックは軽くキスをした。
 「何すんじゃぁあああ!このクソオヤジッ!!」
 起き上がりざま、思いっきり繰り出した右ストレートであったが、マジックはさすがといっていいものか吹き飛ばされたりはしなかった。ベッドから落ちそうにはなったがどうにかふみとどまり、シンタローの両肩をガシッと掴むと、
 「ええっ!?シンちゃん、予定ではここで『ありがとうvパパ大好きっvv』って思いっきり抱きついてくれるはずだったのにー!?なんでッツ」
 と叫んだ。シンタローは肩にくいこんだ指の強さと声の大きさに顔を顰めた。
 「うるせぇッツ!!脳ミソ沸いてやがんのかテメェ!?つーか、どっからどうやって入ってきやがった!?!?」
 「それはまぁ、ヒ・ミ・ツだヨ☆そうだねぇ、パパの愛のパワーとでも言っておこうかなvあれ、どうしたのシンちゃん?もしかして、うれしくて照れちゃったのかい??」
 俯いてしまったシンタローの顔をマジックが覗き込むと、その瞬間、
 「眼魔砲ッツ!!」
 青白い閃光が室内いっぱいに炸裂した。


 結局、すぐに眼魔砲のダメージから立ち直ったマジックと彼手作りの誕生日ケーキを食べた後、『シンちゃんv成長記録ビデオ(愛蔵版)』を観ながら過ごしていた。もちろん、自らすすんで観たいというわけではなかったが、
 「私はね、シンタロー、お前が私の家族になって本当に嬉しかったんだよ」
 真剣な声音のマジックに見つめられ、
 「だから、思い出のひとつひとつを残しておきたかったんだ。それを今から一緒に観ようよ」
 と言われると、思わずうなずいていた。
 「あっ、ここでシンちゃんが『パパーv』って走ってきて、転んじゃうんだよ!ひざ小僧をすりむいて泣きそうになるシンちゃんと『大丈夫かい?』と私が優しく声をかけたとたん思わず泣き出しちゃうシンちゃんがとーっても!可愛いからしっかりみててネv」
 「はーいはいはい。」
 (同じ場面を何度も巻き戻しすんなよ。さっきから全然進んでねぇじゃねーか…。美少年な俺様はともかく、親父の説明がいちいち超ウゼぇ…)
 最初は懐かしい思いで観ていたが、だんだんげんなりとしだしたシンタローは、マジックがビデオの続きをとりにいった隙をつき、
 (じょーだんじゃねぇ)
 逃げ出した。


 (どーすっかな…)
 先ほどの騒動を思い起こしながら、もう一度深く息を吐くと、今度は
 「シンタローは~ん!どこにいはりますの~?」
 とそれほど遠くないところから足音と聞きなれた声が聞こえた。それにともない、陰気な気配もだんだんと近づいてくる。
 (そういや、あの根暗もいたんだったナ…。やべぇ、この先行き止まりか?)
 どうするか、と逃げ道を探して辺りを見回したところ、ドアから金色の頭がヒョッコリのぞき、
 「あっ、やっぱりシンちゃんだー!お誕生日おめでとうッツvvvよかったら、僕達がかくまってあげるヨ?」
 と言った。
 グンマの後につづき今は使われていない研究室に入ると、中ではキンタローがソファに座っていた。キンタローは相変わらず真面目な表情を崩さなかったが、シンタローを見ると開口一番に
 「シンタロー、今日はお前の誕生日だな。おめでとう」
 と言った。
 「サンキュ。お前も誕生日おめでとな、キンタロー」
 そういうと、シンタローはドサリとキンタローの向かいに腰を下ろした。
 「シンちゃーん!この部屋、小型磁場装置でシールドを張ったからしばらく大丈夫だヨv」
 「まさか、お前が作ったもんじゃねーだろーナ?」
 少々疑わしげにシンタローがグンマを見上げると、
 「えーっ、ひっどーい!シンちゃん!まぁ、キンちゃんが作ったんだけどさ」
 グンマは頬をふくらまし部屋の奥へといったん姿を消したが、後ろ手に何かを隠しながらすぐに戻ってきた。そして顔を輝かせ、
 「二人とも、お誕生日おめでとうッツ!!」
 といった。
 グンマがテーブルの上に置いたものをみて、シンタローとキンタローは顔を見合わせた。
 「ケーキ、か?」
 「ケーキ、だろう。まず、土台のスポンジは水色に着色されたバタークリームでコーティングされている。そしてその上にはマジパンでつくられたと思しき緑色の水草と黄色いアヒルが3羽、そしてピンクのチョコレートペンシルで『シンちゃん&キンちゃんHAPPY☆BIRTHDAYv』と書いてあるが…」
 (いや、そういう問題じゃねーダロ?食えんのかコレ?お前は平気なのかよ…)
 あまりにもカラフルな色彩にあふれたケーキをもう一度見て、シンタローはキンタローの方を見た。しかし、キンタローはいつもどおりの平静な表情のままであった。
 「ケーキだよぉ~!!僕の誕生日はシンちゃんとキンちゃんが美味しいケーキをつくってくれたから、今度は僕が作ったんだ!上手に出来たでしょvvv」
 グンマはニコニコと笑顔で、ケーキを切り分けた。
 「はいv喧嘩にならないように、ちゃんとアヒルさんたちも1人一匹ずついるからネv」
 無言でシンタローは差し出された小皿を受け取り、「いただきます」と一口ほおばると、何故かバタークリームが塩味、そしてスポンジは固くてかなり甘かった。
 「このケーキ、おいしくないヨー!」
 グンマが泣きそうに顔をしかめた。
 「お前、ちゃんと分量を計ったのか?それにクリームは砂糖と塩を間違ってんぞ?…まぁ、食えねーことはねぇけどナ」
 「俺は甘すぎるよりもまだこっちの方がいい」
 とシンタローとキンタローがそれぞれいうと、
 「キンちゃんもシンちゃんもありがとうッ!ねぇねぇ、せっかく3人いるんだし、後でトランプをしようよっvvv」
 グンマの表情が明るくなった。


 「なんで俺が大貧民なんだヨ?馬鹿グンマに負けるなんて、ったく信じらんねぇ」
 グンマは先ほど「今日は僕がお昼ご飯を買ってきてあげるね~♪」といって部屋から出て行った。シンタローは手に持ったカードをテーブルの上に投げ出した。
 「お前、ホント器用だナ」
 シンタローはソファに寝転び、キンタローがトランプを繰る様子を眺めていた。
 「よくわからないが、そうなのか?」
 キンタローの手の内で下から上へと移動するカードの流れをなんとはなしに見ていると、 
 「獲物を狙う猫に似ているな」
 シンタローを見てキンタローは少し笑ったようであった。
 「なんだソレ。それにしても、アヒルだか何だかグンマのセンスは相変わらずよくわかんねーナ」
 「そういうな。俺は嬉しかったぞ」
 そういってキンタローは箱にカードを収めた。
 「…何かお前本気で欲しいもんとかあるか?」
 シンタローが声をかけると彼は何やら考え込んでしまった。
 「……本気で欲しいもの。あるにはあるが、俺が自分で手に入れないと意味がない、と思う」
 (コイツの欲しいものって、一体何なんだ?)
 ソファの上であれこれ考えてみたが、らちがあかない。じっと見られている気がしたので居心地が悪くなり、起き上がった。
 「他には、何かねーの?」
 と聞いた。
 「そうだな」
 キンタローは目をしばたたかせた。
 「料理をつくってくれ」
 「おう、いいゼ。何が食いてーんだ?」
 「お前が作ってくれるものなら、何でもいい」
 「あれが好きとかこれが嫌いとかねーのかよ?」
 「好き…。好きという感情は難しい。だが、お前の作る料理はみんな好きだ」
 シンタローは率直な言葉に目を丸くしたが、ニカッと笑い、
 「期待してろヨ」
 といった。
 

 「ただいま~vサンドイッチ買ってきたよv夕方からパーティーだし軽めにしておいたほうがいいと思って」
 グンマはパンや菓子などが入った大袋をテーブルに置き、ガサガサと中身を取り出しながら、
 「あ、そうそう、シンちゃん。アラシヤマ君が探してたヨ~」
 とシンタローにいった。
 「ああ゛?アラシヤマだぁ?」
 「うん。なんかね、必死みたいだったから、ここにいるって言っちゃったv」
 「てめー、余計なこと言うなヨ!」
 思いっきり顔を顰めたシンタローをしばらくながめ、グンマはひとこと、
 「シンちゃん、大人げないヨ?」
 と言った。
 「あんだと?ケンカ売ってやがんのか、テメェ!?殴るぞ!」
 「落ち着け、シンタロー!」
 「いいよ、キンちゃん。あのね、アラシヤマ君もシンちゃんの誕生日をお祝いしたいんだと僕は思うよ?」
 「―――別に、俺はあんなヤツなんてどーだっていいし」
 「今日はシンちゃんを大好きな人たちにとっては特別な日なんだ。絶対会わないつもりだったら仕方ないけど、意地をはってもしょうがないじゃない」
 グンマはシンタローから目をそらさなかった。とうとう、シンタローの方が目をそらした。
 「グンマ、シンタローを追い詰めるな。シンタローはアラシヤマが嫌いなんだろう?それなら俺は会わなくてもいいと思う」
 「キンちゃん、そういうことじゃないんだ」
 「だがな」
 グンマはかぶりを振った。黙って二人の会話をきいていたシンタローが
 「帰るわ」
 そういって立ち上がった。キンタローは心配そうにシンタローを見たが、グンマは笑顔で
 「じゃあまた夕方会おうね、シンちゃん」
 バイバイ、と手を振った。
 

 シンタローが廊下に出ると、曲がり角からおずおずとアラシヤマが姿をあらわした。
 「シンタローはーん!やっと、見つけましたえ~」
 嬉しそうに駆け寄るアラシヤマにシンタローがそっぽを向くと、アラシヤマは
 「お、怒ってはりますの?」
 と言って数メートル手前で立ち止まった。
 「ああああのっ、これだけは、今日あんさんに伝えたかったんどす。お、お誕生日、おめでとうございますっ、シンタローはん!」
 いつも図々しい根暗男が、緊張しているのかうつむきかげんで途切れ途切れにいう言葉を、シンタローは黙って聞いていた。
 「―――ああ」
 「あ、あの、眼魔砲は…?」
 「別に。今はそんな気分じゃねーし」
 廊下の真ん中に立っているアラシヤマの横をシンタローはすり抜けようとしたが、腕を掴まれた。
 自然、シンタローはアラシヤマを振り返って睨みつけたが、覚悟を決めたのかアラシヤマは、
 「ちゃんと、あんさんの顔を見ていうてもよろしおますか?わては、シンタローはんが今ここにいることに感謝どす」
 そういうと、シンタローの躯を抱きよせた。
 「やっぱり、言葉だけやと伝えきれまへん」
 抵抗は、なかった。


 「えーっと、お取り込み中のところ悪いんだけど」
 音もなく開いた扉から、グンマがひょっこり顔を出した瞬間、ガツッと何かを思いっきり殴ったような鈍い音がし、ついで
 「眼魔砲ッ!」
 辺りに爆音が響いた。
 「あれ、シンちゃん?さっきまで、アラシヤマ君がいなかった?」
 「さあ?そんなのぜんっぜん!しんねーケド?」
 行き止まりになっている壁の方から、ボロボロの人影が起き上がり、
 「し、シンタローはん。あんさんシャイどすなぁ…。べつに恥ずかしがることあらしま」
 いい終わらないうちに、バタリと倒れた。グンマはアラシヤマの様子をとくに気にするでもなく、
 「アラシヤマ君、さっきはお菓子をたくさんありがとー!」
 と笑顔でいった。
 「菓子って何のことだ?」
 「え?あのね、シンちゃんの居場所を教えたらお菓子をくれるってアラシヤマ君がいったからv」
 「ぐ、グンマはんッ。それって別に、今言わんでもええこととちゃいます…?あんたはん、超タイミングが悪うおますえ~!? 」
 「テメェは黙ってろ。で、菓子をもらったから、お前はコイツに教えた、と?」
 「んーと、ちょっと違うけど?ま、いいや☆じゃあ、おじゃましましたvごゆっくりどうぞ」
 そういうと、グンマは扉を閉めた。
 「―――せっかくええ雰囲気やったのにぶち壊しどす。さすが馬鹿息子やわ…」
 シンタローはつかつかと歩み寄り、床に座ってぶつぶつひとりごちているアラシヤマの胸倉をつかみあげた。
 「―――どうもグンマがやけにテメェの肩をもつと思ったら、菓子で買収してやがったのか…」
 「えっ!?あの、シンタローはん?何のことどすか??まったくの誤解どすえ~!!」
 「問答無用。眼魔砲ッツ!!」
 アラシヤマを置き去りにし、シンタローは角を曲がった。
 (―――ったく、どいつもこいつも。まぁ、気分転換にコタローの顔でも見に行くとすっか!)
 歩きながら、腕をあげて思いっきりのびをすると、なんとなく心も軽くなったような気がした。


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