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 木々が色づきはじめたガンマ団内の公園を横切っている最中、シンタローは突然の驟雨に見舞われた。
 (ったく、ついてねぇッ!)
 と、シンタローは思わず舌打ちをした。
 空を見上げると、雲の向こう側が明るく日が照っているもようである。しかし、頬に当たる雨粒は冷えていた。
 雨は総帥服の服地にしみこみ、ひとつぶごとに赤の色を濃くしてゆく。
 (仕方ねーか)
 どうも全身ぬれねずみ状態になってしまうと、総帥室へ戻ったのち、秘書や従兄弟から小言をいわれることが予想できた。
 シンタローは、近くに生えている黄葉が目立つ大木のもとへと走った。切れ込みの入った葉が上の梢で密に重なり合っているらしく、雨は落ちてこなかった。
 雨勢はますます強くなったが、雨の向こう側から、誰か人影が走ってくる。
 (マヌケな野郎だナ、一体どんな面してやがんだ?)
 自分のことを棚に上げ、シンタローが内心面白がっていると、相手が樹の下へ飛び込んできた。その気配は、見知った男のものであった。
 「あれ、どなたはんかいはるんどすな。すんまへん、わてもちょっと雨宿りを」
 と、相手はいいながら目に雨が入ったようで腕で顔を拭ったが、シンタローを見て非常に驚いたようであった。
 「しっ、シンタローはんー!?」
 アラシヤマは軽くパニック状態に陥ったらしく、固まっていた。
 「ついてねぇ……」
 シンタローは、気分転換にと、この道を通ってみようと思ったことが今更ながらに悔やまれた。


 「シンタローはん、これどうぞ」
 と、アラシヤマは制服のポケットからハンカチを取り出しシンタローに差し出した。アイロンをあてたものか、ハンカチにはきれいに折り目がついていた。
 「いらねぇ。どうせすぐ乾くし」
 「秋の雨って体の芯まで冷えて厄介どすえ?万一、あんさんが風邪でも引いたらわて心配で心配で遠征先でも眠れなくなりそうどす~…」
 どうもゆずる気配はないらしく、シンタローが睨んでもめずらしくアラシヤマは視線をそらさなかった。
 ふと、なんだか意地を張り通すのも面倒な気がしたので、シンタローがハンカチを受け取ると、アラシヤマは嬉しそうな表情を浮かべた。
 シンタローが髪など軽く拭いている間、アラシヤマが挙動不審であったので、
 「何だ?」
 と、聞くと、ちらっとシンタローを見たアラシヤマは、
 「―――あの、ここから出てけっていいまへんの?」
 俯いた。
 「―――テメェ、俺を何だと思ってやがんだ?」
 「それってひょっとして、一緒に雨宿りしててもええってことどすか!?」
 驚いたようにアラシヤマはシンタローをみたが、シンタローは淡々と、
 「いっとくけど、半径50センチ以内に近寄ったら眼魔砲な」
 と言った。
 「いつもより、距離が縮まってますえ~vvvシンタローはんとドキドキ☆急接近どす!」
 それでも、アラシヤマは全くめげないらしかった。


 「ほんの涙雨かと思うたのに、中々やみまへんなぁ……」
 シンタローの言いつけを守ってか、距離をとり、オークの幹にもたれたアラシヤマが呟いた。
 「晴れてたのに、急に雨ってムカツクよな」
 「わては、シンタローはんとずっと雨宿りができてうれしおすけどv」
 「……なんつーか、寒気がする」
 「ええッ!大丈夫どすかー!?風邪のひきはじめやおまへんの!?!?」
 アラシヤマは慌てて、シンタローの熱を測ろうと手を伸ばしたが、シンタローはその手を払いのけ、
 「いや、そーいうんじゃねーから」
 と、ひきつった笑顔でこたえた。


 雨の筋は先程より細くなり、黄色い葉先から落ちる雫の間隔もゆっくりとしたものとなった。
 手を払われてからずっとアラシヤマはだまっており、シンタローも特に話すこともなく雨音のみがあたりに満ちていた。
 不意に、アラシヤマの声がした。ずっと黙っていたからなのか、少し声がかすれていた。
 「シンタローはん、わてなぁ、いつかシンタローはんのdestinationの1つになってみせますえ?」
 雨音のせいで、アラシヤマの声は聞き取りにくかった。
 「はぁ?何いってんのオマエ?」
 「つまり、新総帥が遠征から帰ってきはりますやろ?そして『会いたかったぜ、アラシヤマ…!』とわての腕の中に飛び込むという寸法どす!」
 さきほどまでとは違う、笑いを含んだ声音であった。
 「……百億年たってもありえねぇナ、それ」
 そっけなく、シンタローがそう返すと、
 「ひどうおます~!」
 と、アラシヤマはしばらくぶつぶつ言っていたが、
 「あの、シンタローはん!」
 真面目な声でシンタローに呼びかけたきり、言葉がとだえた。


 「何?何かあんならとっとと言えヨ!」
 シンタローが、少しいらだった調子で続きを促すと、思いもかけず真摯な声が返ってきた。
 「わて、明日から遠征行ってきますけど、誰も死なせまへんから。大船に乗ったつもりで待ってておくれやす」
 「……んな約束、」
 「無理やおまへん」 
 大人が子どもをさとすように、きっぱりとアラシヤマは断言した。シンタローが何も言わいままでいると、慌てたように、
 「ホラ、わてってガンマ団ナンバー2どすさかい!」
 と、道化たように言った。
 (コイツは大馬鹿で、……嫌いだ)
 シンタローは、また強くなった雨の中へ、踏み出した。
 「あの、濡れますえ?」
 背後から慌てたような声がと気配がしたが、無視した。









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