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マジックの部屋に入って「親父ー?」と声をかけてみるが返事はない。ただの屍のよ……じゃなくて、眠っているようだ。

目の前で眠っているこの男はバカだ。つい数日前まで病人だった自分にキスをして3日も寝込んでいるのだ。……うつした方は1日もしたらケロリとしていたというのに。

なーにが「うつしたら早く治るかも」だ。
そう思いながらも一応は自分がうつしたのは確かなので放っておくこともできず、面倒を見てやるシンタローなのである。
額の濡れタオルを新しいものにかえてやる。


「…シンちゃん」

名を呼ばれて「ワリィ、起こしちまったか?」と問う。

「シンちゃん……シンちゃん…ッ」

ようすがおかしい。マジックの顔を覗きこむと、眠っているようだった。うなされているようである。

「シン、タロー…ん…っ……シンタロー」

不安気に何度も自分の名前を呼ぶ。眉間にシワを寄せ、額にはうっすらと汗が浮かぶ。


イカナイデ――…


どうしていいか分からずシンタローは。

手を、握ってやった。

「どこも、いかねーよ」

ぎゅっと握ってやる。小さな頃、熱を出して寝込んでいる自分によくマジックがしてくれたように。

すると落ち着いたのか、スースーと寝息を立てだした。寝顔を見ていると、常より少し幼い感じを受ける。

きっと自分だけが知っている顔。




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