忍者ブログ
* admin *
[124]  [123]  [122]  [121]  [120]  [119]  [118]  [117]  [116]  [115]  [114
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

sg


 どうしてこんなに切ないほど愛しく感じるのか。
 抱きしめたくなる衝動をぐっと押さえ込む。自身の身体に爪をたて、無意識に伸ばしかけるその手を押しとどめる。
 指先ひとつでも触れれば、その身体を引き寄せ、抱きしめ、手放せなるだろう。
 けれど、それは、彼の自由を奪うということだ。
 身動きすらできぬほど、息苦しい世界へと彼を引きずりこむのは、自分の本意ではない。
 青の呪縛から解き放たれた彼は、どこまでも自由でなければいけないのだ。
 それなのに―――。
 

「マジック」

 
 いつの間にか自身を意志と身体で雁字搦めに縛りつけ、身動きできぬ状態となった自分の元に、彼は近づく。
 近づくなと、眼差しだけで警告を発するが、躊躇うことなく、その距離を縮めてくる。
 誰もが恐れる、青の双眸を真っ向から受け止め、力を込めれば一瞬で消滅させられるほどの距離へと、遠慮なく踏み入れる。


「なに、我慢してんだよ。あんたらしくねぇな。俺が―――欲しくねぇのか?」


 挑戦的な言葉。
 挑発的な視線。

 呆れるほど無防備に差し出される身体に、こくりと生唾を飲む。特別な光など、どこからも差し込んでいないというのに、自分の眼には、眩しく輝いてみえた。
 それを手に入れたいと、喉が一瞬で干上がるほどの渇望している自分に気付かされ、苦笑を禁じえない。そうなる前に、自分は、全てを手に入れていたというのに、彼にだけは、こうなるほどに躊躇したままなのだ。
 だが、それも限界である。
 何よりも、これは彼が望んだことなのだ。
 彼の望みならば、何でも叶えると誓ったのは、遠い昔のこと。けれど、その誓いは、今も変わりない。
 たった一歩の距離で立ち、やんわりと笑みを浮かべたまま、こちらを楽しげに観察するように眺める相手に、自分はゆるりと己を縛る枷を外す。
 彼の願望と自分の欲望を同時に絡み取り、己の元へ引き寄せる。
 

「お前の愚かさも含めて、全てをいただくよ―――シンタロー」


 終幕。
 
 結末は、予想通りの結果を示し、抱きしめた相手は、その腕の中で満足げに笑った。
PR
BACK HOME NEXT
カレンダー
04 2025/05 06
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
最新記事
as
(06/27)
p
(02/26)
pp
(02/26)
mm
(02/26)
s2
(02/26)
ブログ内検索
忍者ブログ // [PR]

template ゆきぱんだ  //  Copyright: ふらいんぐ All Rights Reserved