チリリ…。
胸を焦がすこの感情。
誰にも気付かれず、誰にも悟られず。
そのまままに。
こんな感情を抱けるとは思わなかった。
相手に向けるただひとつの想い。この想いがなんと呼ばれるものなのかは、知っている。
チリリ。
胸を焦がす、この痛み。
皮膚が焼けるそんな痛みを、胸の内に覚えてしまう。それが生身に与えられた痛みではないとわかっていても、止められない。
こんな痛みが生まれるとは思わなかった。
相手を思うたびに生まれる痛み。この痛みがなんと呼ばれるものなのかは、分かっている。
チリリ。
絶えることのない、この痛み。
自覚してからは、収まる気配は見せなかった。止める手立ては分かっていても、もう止められない。
4年前では、想像も出来なかったことだ。
相手をこの手で倒すことしか考えていなかった、あの状況を経て、どうしてこんな感情が芽生えてのか、未だに分からない。
嫉妬や羨望とはまた違う。
それでも、もう無視することは出来ないほど膨らんでしまったこの想いだから。
今はまだ、ただ隠し秘めることしか出来ない。
それでも、いつかは告げることが出来るのだろうか―――この想いを。
チリリと胸を焦がすほどの熱い想いを。
「告げることは……できるわけないか」
相手を思うこの気持ち。告白する瞬間を想像するが、実現までは至らない。
いつか出来ればいい。
そう望んでは、無理だと、否定の繰り返し。
そればかり。
それでも仕方がないと諦めもすぐに生まれてしまうのは、やはりどうしようもないことで。
それが分かっていても、生まれたそれを捨てることもなく身の内に宿し続けるその愚かさ。
視線の先には、いつもアイツがいて、見つめられずにはいられないのに、こちらへ視線を向けるたびに、露骨に避けていたりもする。
そんな態度で、相手にどういう風に思われているか用意に想像できる。
それでも、真っ直ぐに目を見られない。
4年前の出来事が重く心にのしかかる。
凶悪な心に染められたあのわずかな時。
その瞬間、殺すことなど躊躇いもなかった。
確かに願った―――アイツの死。
今は、そんな思いなど欠片もないが、暴露されたあの心を相手が覚えていないわけがない。
この自分の気持ちを偽りや戯言だと処理されるのも怖かった。
何よりも、受け取ってもらえない確率の方が強くて―――臆病だと分かっていても、実行に移せない。
それでもいつか、告げることができるだろうか……。
自分の思いを。
そうあればいいと思う。
そうあるべきだと思う。
けれど、今しばらくは―――。
チリリ…。
胸を焦がすこの感情。
誰にも気付かれず、誰にも悟られず。
そのまままにして、もう少し様子を見てもいいだろうか。
まだまだ告白できる勇気はもてないから。
「それでも俺は……お前を愛してるんだ―――キンタロー」
生まれた想いは、たった一つ。
だからこその痛み。
愛しい人への想いに身を焦がしつつ――――その時を待つ。
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