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 ひとつ……ふわり。

 かすかな風に揺られながら落ちてくるそれを手のひらに乗せたとたん、水に変わる。
「雪か?」
「そう」
 背後から聞こえてきた声に振り向かなくても誰であるかなど分かりきっていることで、もうひとつ目の前に落ちてきた冷たい白の塊を手にとろうとしたが、後ろから吹き付けてきた寒風によって、それはするりと逃げていった。
 代わりに、震えが身体に走る。首筋に入り込んだ冷気に顔を顰めれば、それを察したわけではないだろうが、柔らかな温もりに背後から包まれた。
「寒くないか?」
「別に」
 首を横に降り、否定する。先ほどまでは確かに寒かったのだけれど、今はそうではない。
「お前が、あっためてくれてるし」
 そう答えれば、背後からムッとした気配が送られた。
「俺は、カイロ代わりか?」
 言われてみれば、確かにそうかもしれない。とりあえず、今のこの状況では。
 だが、そんな言葉に、くすりと笑みがこぼれた。まさか、自分が本当に彼を『カイロ』だと思っていると思ったのだろうか。それは、心外である。
「そうだな。捨てる気はまったくねぇけどな」
 というよりも、捨てられない。こんな素敵なカイロがあれば、ずっと一生使いたい。
 背中の温もりが強くなる。痛みを感じるほどに抱きしめられた。
「当然だな」
 満足げに頷く背中の向こうにいる人に、シンタローは後ろへ振り返る。その気配に気付いたように、あちらも乗りかかるようにこちらへ顔を突き出してくる。

 ひとつ……ふわり。
 
 雪が二人の間をかすめ、それが合図のように、ひとつ柔らかな口付けを交わした。

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