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「ふふぅ~ん♪」
 鼻歌交じりの声が、ガンマ団の本部の一角で聞こえてくる。
 リズム感はあるようで、しっかりとした音程の中で、軽快なリズムを刻み込む。
「シ~ンちゃんのた~めなら、え~んや、こ~らっ♪」
 ………どうやら歌詞は、問題視してはいけないようである。
 とりあえず、自作の歌を歌いながら、せわしくなく部屋の中で動き回るのは、元ガンマ団総帥であるマジックであった。
 お手製エプロン(もちろん胸のアップリケはこれまた手製の愛息の顔)を身につけ、頭にはほっかむりと、完全お掃除態勢の元総帥は、先ほどから、ガタガタ、ズルズルとなにやら大掛かりな掃除―――というよりは、部屋に大小さまざまな物を大量に入れ込んでいる。
 それも、しばらくして落ち着いたかと思うと、今度は、部屋中にそれを飾りつけにかかった。
「ふふっ。楽しいねぇ」
 口元をほころばせ、部屋に運び入れたそれを手に、ランランと軽やかなスキップをしつつ、ここぞと決めた場所に運んでいく。
 これが、世界に名立たる暗殺集団を元とはいえ、率いてきた者なのか、と疑われるような姿だが。この男は、元からこんなものである。
 ただ、世の中その事実が蔓延してないだけなのだ。
 そして、そんな事実を知る数少ない人間である現総帥は、その部屋に訪れた瞬間まっとうな台詞をはいた。
「おい。あんた、何をしているんだ?」
 その声に、部屋の中で作業をしていたマジックは即座に反応した。
「あっ、お帰りシンちゃん♪ 今日も、お疲れ様。毎日毎日遅くまで大変だね。あんまりにも忙しかったらパパにお手伝いをお願いしてもいいんだよ? パパ、シンちゃんのためならなんだってしてあげるからv」
 やたらと語尾を弾ませる、ナイスミドルことマジックは、仕事から帰ってきた、息子をいそいそと出向かえる。ついでに、抱きつきにも行ったのだが、もちろんそれは素早い動きでかわされた。
「シンちゃんってば、相変わらず冷たい……」
 息子の横をすり抜ける結果となってしまった演技派親父は、エプロンのすそを持ち上げ、口に含むと、悔しげに噛んで見せるが、そんなものは、一切息子には通用しなかった。
「いいから、親父。質問に答えろよ。これは一体なんのマネだ?」
 なにやらご機嫌斜めな感じのシンタローは、バンッと手近な壁に平手を打ちつけた。
 そのとたん、ガタリと壁にかかっていた絵が落ちてくる。
 だが、床に落ちる寸前、いつのまにかそこに移動していたマジックの手によりすくわれた。
「あ、折角飾った絵を落としちゃだめじゃないか。ほら、見てごらん。よく描けているだろう?」
 見事にキャッチした絵画をシンタローの方に向けるが、即座にその顔はそらされた。
「見たくない」
「どうしてだい?」
「なんで、実物が目の前にいるのに、そんな肖像がを見ないといけないんだよ。いや、それよりも。どうして、そんなもんが、このオレの部屋においてあるんだっ!」
 首を傾げるマジックに、ピキッと青筋を浮かばせたシンタローは、その絵を―――マジックの肖像がであるそれを指差した。
 そんなものは、今朝その部屋から出て行く時には存在していなかった。
「絵はお気に召さなかったかい?」
 自分の肖像画を胸にだいたまま首をかしげてみせたマジックに、頬をひきつらせながら、視線を向けたシンタローは、大仰な溜息を一つついて言い放った。
「………全部だ」
 そう。それは、肖像画一つでは終わっていなかった。
「これ、全部かい?」
 ぐるりとあたりを見回したマジックに、シンタローは最大級の大声で怒鳴った。
「当然だろうがっ!!」
 疲れて部屋から帰ってきたら、親父がいた。
 それでさらに疲れが上乗せされる状況にもかかわらず、その上、くつろぐべき場所には、留守中に運びこまれたのだろう、マジックの肖像がからはじめ、マジック等身大写真。マジック等身大人形。それ以外にもマジックだらけに埋めつくされているこの部屋を見た瞬間、シンタローは眩暈がした。
 もっとも、哀しいかなその手合いのことには、耐性がついてきていて、どうやら持ちこたえることができたのだが。
「ひどいなあ。頑張って飾ったんだよ? この部屋にいればどこでもパパを見れるようにって」
「大きな…いや、多大なお世話だ。とっとともって帰れ。というか、即効粗大ゴミにだしておけ!」
 仕事から疲れて帰ってきているのに、さらに疲れることがまっているなど、最悪である。
 とりあえず、言いたいことは言った。マジックの奴が素直に言うことを聞くとは思えないが、これ以上とりあいたくもなかった。
 シンタローは、総帥服である真っ赤な上着を脱ぎ、マメな性格ゆえにそれを放り投げることもせず、きちんとハンガーにかけ、適当な場所につるしておくと、ベットの方へと向かう。
 ベットの上では、すでにマジック等身大人形が存在しているが、とりあえず、それは無視だ。
 明日にでも部下に言って片付けさせようと思いつつ、ベットの上に腰かけると、背後から、これ見よがしな溜息を疲れた。
「ふう。そんな冷たいことを言うなんて、パパ、育て方を間違ったかな」
「間違いだらけだな」
 律儀に返してやりながらも、シンタローは寝る準備を着々と進めていく。
 眠れば勝手に出て行くだろうと思っていたのだが、もちろんそんなわけがなかった。
「しょうがないな。イチから教育しなおそうか」
 そう言ったマジックは、すでにベットの上に腰掛けていた。
「えっ? ちょっとまて、何の教育だ」
 横になり、眠りかけたシンタローは慌てて身を起こすが、それよりも先に、肩を押さえつけられ、ベットの上に身体を押し付けられる。
 目の前には、マジックの顔。
 その顔が、楽しげに笑みを浮かべていた。
「ん? だから、性教育をね♪ 手始めにやろうと思って」
 マジックの言葉に、シンタローは目を見開く。
 背中に冷たい汗が流れ落ちるような感覚だった。
「なっ。ま、まて。なんで、イチからがそれになるんだ……」
 起き上がろうとするが、肩をがっちりと押さえつけられていればそれは不可能に近い。足をバタバタとさせるが、それは無駄なあがきでしかなかった。身勝手極まりないこの男を制止させるすべなど、もうシンタローにはない。
「どこからでも一緒だろ? 大丈夫、パパが優しく教えてあげるからねv」 
 笑みを浮かべるマジックの顔が徐々に近づいてくる。逃げ場はどこにもなかった。
「俺は疲れている……んぐっ……(うぎゃぁぁ~~~~~~~~)」


 

 それから数時間後。ベットの中で。

「とりあえず、これでレッスン1は終わりだね。まだまだ、続きも教えてあげるから、楽しみにしててね、シンちゃん♪」
「………もう、結構です」
 シンタローは涙をはらはらとこぼしながら、マジックの言葉を丁重にお断りした。
 が、もちろんそれは無駄な抵抗でしかなかった。

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