忍者ブログ
* admin *
[100]  [99]  [98]  [97]  [96]  [95]  [94]  [93]  [92]  [91]  [90
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

kg
 ぺたり…ぺたぺた…ぺたり。
「……何やってるだ、キンタロー」
 そんな奇妙な音を背中で聞かせられ、我慢できずにシンタローは、そう訊ねた。
 ぺたっぺたっぺたっ…。
 それでもまだ背中から音はする。
 というか、先ほどから背中を無遠慮に触られまくりだった。
 一体、何事だろうか。キンタローは、人の着替えている姿をじーと見ていたかと思うと、行き成り背中を触りだしたのである。
 溜まらずに、振り返ってみれば、そこには奇妙なほど真面目な顔をしたキンタローがいた。そうしてぽつりと言葉を漏らした。
「違う…」
「は? 何がだよ」
 どういう意味だろうか。
 先ほどからのキンタローの言動は、さっぱりわからない。
 仕事の話があるからと言うから、私室に招きいれたまではよかった。丁度、着替え中だったが、別段躊躇わずに着替えを続行していたが、シャツを脱いだところで、先ほどのあれが始まったのである。
 人の背中をぺたぺたと無遠慮に触りだしたのだ。しかも、難しい顔をしてだ。それに一体どんな理由があるのかと思えば、キンタローは、ギュッと握りこぶしを作って語りだした。
「違っているんだ、シンタロー。いいか、お前の背中が、俺よりも0.5ミリほど小さくなっているんだぞ。なんてことだッ!」
 さらにキンタローは、重大事件が発生したとばかりに、シンタローに詰め寄った。その肩をがっしりと両手で掴む。そうして、前後に揺さぶる。
「大変だぞ、シンタロー! お前の背中が縮んだのだ。いいか、お前の背中が、0.5ミリも縮んだのだぞ!」
「はぁぁあ?」
 思わぬ発言に、シンタローはどう対応していいか分からない。その間も、キンタローの言動はさらにエスカレートしていた。
「恐らく筋肉が減ってきたせいだろうが……なんてことだ。これは、由々しき事態だぞ、シンタロー!!」
 ついには、泣きそうな顔をして抱きついてくる。
 えーと、もしもし、キンタローさん? 
(それのどこが重大問題なんだろうか…)
 哀しいかな、シンタローにはそれがわからない。
 キンタローの言いたいことは理解できた。最近デスクワークでの仕事が忙しくて、トレーニングを少しさぼりがちだったのだ。そのせいで、キンタローの言う通り、筋肉が衰えて、幾分背中辺りが縮んだのだろう。……信じるならば、0.5ミリ。
 しかし、それでなぜ、あれほど大騒ぎになるのだろうか。それがまったくもって分からない。
「んなのは、ちょっと筋トレすれば、すぐつくだろうが。心配するほどのもんじゃ――」
 ない、と言おうとして、それは止められた。再び前後に身体が大きく揺さぶられたせいだ。
「何を言っているんだ、シンタロー! 今、今お前の背中は縮んでいるんだぞ。俺とどこまでも一緒の均一な身体だったにも拘らず。いいか、この俺と同じ身体だったのが、そうではなくなったんだぞ。これが、許される事態だとでも、思っているのかッ!!」
 …マジですか?
 そんなはずはないとは思うのだが……キンタローの真剣な眼差しをみていると、一概に否定は出来ないものがあった。しかし――。
「体重とかは違うじゃねぇかよ…」
 確か、この間のガンマ団身体測定をした時、高松が言っていた気がする。
「それは、お前の髪の重さだぁ!!」
 それは確かにそうかもしれないが、そこまで力いっぱい、血管が切れそうなほど力んで言わなくてもいい気がするのは、自分だけだろうか……。
 大体、キンタローと体型が違ったぐらいで、そこまで大げさになる必要はないはずである……たぶん。違っただけで、お互い支障があるわけでもなければ、当然死ぬようなこともないのだ……おそらく。
 なのに、この大騒ぎは一体なんなのだろうか―――全然分からない。
「あーそれじゃあ、まあ……大変だな。一大事だな。どうしようかなぁ」
 分からないために、抑揚のない声、虚ろな眼差でのお義理ですという態度満載でそう言ってあげれば、あちらはそれでも満足したのか、うんうんと力強く頷いていた。
「そうだ。一大事なのだ、シンタロー。これからどうすればいいかだと? もちろん、元の身体に戻すのだ。俺とお前は、同じ肉体を持つ者だからな!」
 暑苦しいほどの使命感を持って、高らかにそう宣言をするキンタローに、勝手にしてください、とぼんやりとその姿を見つめていれば、行き成り横から誰かが割り込んできた。
「えー、違ってば、キンタロー。シンタローと同じ体は、俺♪ そっちは、青の一族の身体でしょ。全然違うよv」
「ジャン…」
 いったいどこから湧いて出たのだろうか。そこには、いつのまにかちゃっかりとガンマ団に居座っているジャンがひょっこり部屋に現れて、そう言い放つ。さらに、こちらの隣に立つと、自分の顔とこちらの顔を指差した。
「ほーら、見てよ。顔とかそっくりだろv だからね君とシンタローとは別の肉体だから安心しなよ★」
 何を言うかと思えば、そんなくだらないことである。しかし、この発言に確実にダメージを与えられたものがいた。
「そんなことは……そんなことは――」
 それを目の前にして、キンタローは愕然とした顔をしていた。なにやら、目尻に涙が浮かんで見えるのは気のせいだろうか。
 それなのに、ジャンはさらに楽しげに言葉を紡いだ。
「あるんだよv というか、事実だからね。残念でした~♪」
 にこやかにそう告げる、元赤の番人に、シンタローはその場で眼魔砲をぶつけたかった。とてもぶつけたかったが、我慢したのは、ここが自分の私室だからだ。代わりに拳でも見舞ってやろうかと思ったが、気配を察したのか、空振りしてしまった。腐っても元番人ということだろうか。まったくもって腹正しい。
 何より、ジャンの存在に怒りを覚えるのは、その発言によって、全てのものに敗北したと言わんばかりに膝と肘をつき、苦悩の表情を浮かべた従兄弟を見せられたせいだ。すっかりと傷心している様子である。
 この状況を、自分はどうすればいいのだろうか。誰か教えてくれ、といいたいところである。
「くっ……それでは…俺とシンタローには、もう何のつながりもないのか……。かつては同じ体を共有していたというのに」
「キンタロー……」
 その言葉に、シンタローは、うっと胸を詰まらせた。どうすればいいか分からぬままに、そのままキンタローの傍に駆け寄った。
 ジャンの方は、自分の出番がなくなったことを察したのか、さっさと出て行ってしまったが、それはどうでもいいことである。むしろ、最初から来るな、といいたいが、来てしまったものは仕方がない。それよりも、落ち込んだキンタローを慰める方が大事だった。
 その肩に手を置けば、キンタローがゆるゆるとこちらの方へ顔を向けた。
「シンタロー……。お前と俺の身体が、別々のものになってしまうなんて……そんなことがなければずっと…」
「キンタロー…だがな」
 身体が別々であろうとも、いつも一緒に――傍にいれば、なんの問題もない。そう言おうとしたシンタローの視界がくるりと一回転した。
「へっ?」
 仰向けにされたシンタローの真上に、キンタローの顔があった。その状態のまま、キンタローは決意を固めた表情で、シンタローの身体をさらに拘束した。
「こうなったら、お互いの身体を繋げて一つにするしか、手段はないッ!!」
「はっ?」
 まだ状況がわからぬまま、逃げ場はどんどん塞がれていく。
「お前の中にまた、俺が一部分でも入り込んでいれば、きっと俺は安心できるはずだ」
「えっ?」
(一部分?)
 ってどこですか、と聞くのは、あまりにも野暮だろうか。いや、そんなことをつらつらと考えている暇はない。
(つーか俺、上半身裸じゃねぇかよッ!!)
 気がついてみれば、着替えを邪魔されたおかげで、上は何も着ていない状況である。そんなシンタローの身体にのしかかるように、キンタローが身体を重ねてくる。真剣な表情で、じっとこちらを見つめていた。
「また、一つになろう――シンタロー」
 その意味は――ひとつ。
「い~やぁ~だぁ~!」
 っていうか、それ、絶対間違いですからッ! 
 シンタローの空しい響きは、聞き届けられることなく散っていった。
PR
BACK HOME NEXT
カレンダー
04 2025/05 06
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
最新記事
as
(06/27)
p
(02/26)
pp
(02/26)
mm
(02/26)
s2
(02/26)
ブログ内検索
忍者ブログ // [PR]

template ゆきぱんだ  //  Copyright: ふらいんぐ All Rights Reserved