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「アラシヤマ……アラシヤマアラシヤマアラシヤマアラシヤマアラシヤマッッ!」
 何度呼ぼうとも、心は満たされない。どれほど求めても、望むものはいない。
 傍にいない。声が聞こえない。何も感じられない。
 忘れられてしまったのだろうか。そうなのかもしれない。きっとそうに違いない。
 あれほど約束したのに…何度も誓ってくれたのに…ここにいないのだから。  
 それは仕方のないことで―――自分には魅力などない。
 それは当前のことで―――自分には良いところなどない。
 彼に相応しい人ではなかったのだから。
 横暴で、我侭で、迷惑ばかりかけて困らせる存在でしかなかった。
 それでも……自分が無茶な言葉を言うたびに、『ずっと傍にいろ』と強制するたびに、時に微笑みながら、時に真摯な態度で、誓ってくれたのに。
(どうして……ここにいない?)
 なぜ…なぜ…なぜ?
 同じ疑問を繰り返す。本当は、分かっているはずなのに――自分は飽きられて、見捨てられたのだ――それを拒否して拒絶を起こして、ここにいない相手の言葉を求めてしまう。
 なぜなら、彼は理由もいわずに姿を消してしまったのだ。いや、それともここに戻ってこれないのだろうか。
 何かがあったのだろうだろうけれど、ここに彼がいないのは事実である。
 もっと早く自分から求めなければいけなかったのだろうか。何を捨てても、何を捨てさせても、ここへ来ることを欲するべきだっただろうか。
 それでも――その姿が目の前から消えるその前に、遠くから眺めたその姿は、幸せそうだった。自分は、そこへいないのに、穏やかに微笑んでいて、それを近づいていって、壊すことなど出来はしなかった。
 自分がいなくても、彼は幸福なのだと気付いてしまえば、自分の勝手な気持ちひとつで、彼を望むことなどできなかった。
 自惚れていた。
 自分こそが彼を幸せにできるのだと―――そんなことは、決してないのに…。
 彼は、きっと自分がいない場所で幸せを見つけている。それは喜ぶべきことなのだろう。けれど―――今の自分は不幸過ぎて、祝福の言葉をあげられない。
「アラシヤマ……」
 溢れる想いに胸が詰まる。ぎゅうぎゅうに押し込められた想いが悲鳴をあげている。こんなにも彼を必要としているなんて気付かなかった。『傍にいて欲しい』と望むのは、ただ、一人が怖かっただけだ。誰でもよかった。そこにいてくれれば―――そう思っていたのに。なぜ、気付いてしまったのだろう。『誰でも』…なんてありえなくて、『アラシヤマだけ』だったことを。気付いた時には、もう彼は自分から離れてしまった後だった。
「アラっ……んくっ」
 喉が詰まる。目元が焼けるように熱い。
 抑えきれずに零してしまった涙が、みっともなく流れ落ちてきた。溢れる涙が頬を伝い、顎の先からいくつも落ちていき、床をぬらす。後から後から込み上げてくる涙に、誰もいない空間を見つめ、顔を濡らした。
 誰もいなくて助かった。こんな姿は、誰にも見せられない。
 女々しく泣くなど、それは自分ではない。
 そう。これは自分ではない。
 こんなに辛く苦しい思いをするのは、自分でなくていい。
 押込めばいい―――恋心を。
 封じればいい―――愛する気持ちを。
 捨てればいい―――彼を欲する想いを。
 忘れればいい―――アラシヤマという存在を。
 
 存在全てを殺してしまえばいいのだ。
 そうすれば、自分は元へ戻れる。
 全ては元通りで、いつもの自分の戻れる。
 だから……大丈夫だ。
 怖がることも恐れることもない。
 ゼロへ。
 
 全て―――消エ失セロ。








「シンタローはん!」
「? 誰だよ、てめえは――」



 リセット――――終了。

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