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ahu

「好きどす」
「やめろ」
 告白したとたん、0.2秒で拒絶された。
 けれど、相手の顔に、自分の告白を嫌がる表情は伺えなかった。もっとも喜んでいるとも思えない、無表情に近い顔であったが、それでも嫌悪は見られなかった。
「なんででっしゃろ?」
 なんとなく―――もしかしたら、目の錯覚かもしれないが―――そこに、何かに怯える子供のような表情を見つけて、アラシヤマはそう問いかけた。
 拒否されたことは、もちろん痛かったけれど、それでも、自分が相手に嫌われているとは思えなかった。
「嫌いだからだ」
 それでも、あっさりとそう言い放ったシンタローは、けれどアラシヤマに視線を向けることはなかった。
 その視線は、らしくなく下に向けられたままだ。
「わてがどすか?」
「…………」
 そう訊ねれば、相手に沈黙される。
 素直ではないことは最初から分かっている。
 時に、子供のような幼い感情や態度をとるを彼を、自分は好いているのだ。
「違うようどすな。―――ほなら……好きな人があんさんの前からいなくなってしもうことどすか?」
「っ!」
 ビクッと震え、そして怯えるように自分の方へと視線を走らせたシンタローに、アラシヤマは、唇を歪め、苦笑した。
「どうやら、図星のようどすなあ」
「違っ……」
「どう違うとりまっか?」
 即座に否定する相手に、さらに自分は問いかける。
 意地悪だとはわかっていても、それでも相手の心が知りたいと思うのだ。 
 彼が、あまり人といる姿を目にしたことはない。
 いつだって、一線を置いて、人と付き合っていた。それは、ガンマ団総帥の息子だからという理由かと思っていたが、そうではなかった。
 彼は、好きな人を何度か手放している。
 幽閉された弟。
 ろくに別れの挨拶も交わせず離れ離れになった友。
 もしかしたら、他にも親しい者が何人か戦いの中で消えていったかもしれない。
 そんな過去が、彼を怯えさせるのだ。
 ―――好きな人が傍からいなくなる恐怖。
(けど、そない経験をしておるのは、何も彼一人ではないでっしゃろに………)
 だから、怯えるなというのは、間違ってはいるけれど。
 それでも、それを理由に否定されたくもなかった。
 誰もが、彼の前から消えてしまうということはありえないのだから。
「シンタローはん。わては、弱いでっか?」
「アラシヤマ?」
 真剣な眼差しを向けたまま、アラシヤマは、一歩シンタローに近づいた。
 近づいたアラシヤマをシンタローはおずおずと見上げる。まるで、捨てられた子犬のような眼差しに、どれほど自分が胸を痛ませているか、相手はわからないだろう。
 そんな瞳など、させたくないのに。
 アラシヤマは、近づいたために触れることのできたシンタローの頬に、指を這わす。嫌がるそぶりを見せないことに、内心安堵をしつつも、触れる指先から伝わるぬくもりに、愛しさがます。
「あんさんを一人置いていってしまうほど、弱い人間だと思うとりまっか?」
「そんなの……わかんないだろう。強くてもすぐに死んじまう人間もいれば、そうでない人間だって………」
 怯えるよに震える眼差しが切なくて、アラシヤマは、その身体を包み込むように抱きしめた。
 震えなくてもいい。
 怯えなくてもいい。
 自分はちゃんとここにいることを示すために。 
「わては、強いどすえ。せやから……あんさんも遠慮なくわてを好きになってくだはれ」
 その耳元で、確固とした思いを呟く。
「なっ……なんだよそれ」
 その思いは相手にとっては、衝撃的なものだったのか、腕の中で突如暴れる身体を逃がさぬように力強く抱きしめた。
「ちゃんとここにおりますよって……だから、シンタローはん」
 怯える必要はないから、自分を好いてください。
 腕の中で暴れていたシンタローは、けれど、不意に大人しくなった。
「シンタローはん?」
 訝しげに下を向いたアラシヤマに、いつもの彼らしい挑戦的な眼差しが向けられた。
「アラシヤマ。約束だからな。その約束違えたら、怒るぞ」
「はいv」
 決して、あんさんを置いてどこかに行くようなことはあらしまへんから。
 身体を離し、シンタローと向かいあったアラシヤマは、笑みを浮かべて頷いて見せた。
「それじゃあ、シンタローはんも、わてのことを好きということどすな!」
 これで、晴れて恋人同士☆ と浮かれた調子で言ったアラシヤマだが、けれど、刹那のうちに、その思いは打ち砕かれた。
「違う」
「ええっ!! そ、そんな…そんなん嘘でっしゃろ?」
「いいや、嘘じゃない」
 0.1秒で否定され、ズーンと落ち込んだアラシヤマの耳に、くつくつと楽しげに笑うシンタローの声が聞こえてきた。
「まだに決まっているだろう。いったじゃねえかよ、お前だって。好きになってくれって。だからといって、そんなに早く好きになれるわけねえだろ。もう少し気長にまってろ」
「もう少しっていつのことどすか~」
「もう少しは、もう少しだ」
 急激に高まった感激から、あっさりと一気に落とされてしまい、がっくりと膝を折り、打ちひしがれるアラシヤマの耳元に、その声は聞こえてきた。
「どうせ、それほど時間はかかれねぇよ」
「!?」
 驚いて顔をあげたアラシヤマに、意味ありげな笑みを一つ浮かべたシンタローは、子供のように、舌を出してみせた。
「その時は覚悟しとけ」
 そう告げる未来の恋人(すでに確定☆)を見上げながら、アラシヤマも、ニヤリと笑みを返してやった。
(望むところどす)

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