モトネタアリ□
………それは、まだ。シンタローが十九歳の頃のお話。
「ねぇねぇ、シンちゃんvv」
柔らかに春雨の降る、昼下がり。
ヒマを持て余した、シンタローは。居間のソファで一人、読書をしていた。
「シンちゃん? シーンちゃん、シンちゃんってば!!」
雨の為、訓練は早めに切り上げられ。家に帰ってみると。
最愛の弟、コタローは。家政婦さんに連れられ、一年検診に出かけていて。
シンとした家の中。他に気を紛らわせる事も無く、始めたのだけれど。
運の悪いことに、遠征帰りのマジックに、纏わりつかれる羽目となり。
「シンちゃん、聞こえてるんでしょ、シンちゃん!!」
幾度呼びかけても。返事どころか、顔さえ上げない息子に。
ピクッと、額に青筋を立てて。
マジックは、おもむろに。シンタローの手の中の文庫本を取り上げる。
「………いい加減にしなさい、シンタロー」
「………ぁんだよ?」
シンタローは、不機嫌そうに、ギロリと睨んでみるが。
大抵の者がビビる、鋭い眼光に。父親のマジックが、怯むことはなく。
「もう、さっきから呼んでるのに。返事ぐらいしたらどうなんだ」
―――態度、悪いよ? と。
父親面して、説教をかましてくる相手に。更に視線に、圧力を込めて。
「あのな。それだョ」
と、シンタローが、言うと。
「え? どれだい?」
マジックは、実にクサい演技力で。キョロキョロと、周りを見回してみせ。
―――9割方はワザとだと解っているので、ムカつく。
しかし。もしも、残りの一割が本気だったならば。
………マジで、ムカつく。
どっちにせよ。この父親には、ムカついてばかりなんだ、と。
どこか悟ったようなコトを思いつつ。
シンタローは、一応、問い掛けてみた。
「アンタ。オレがイクツだと思ってんだ?」
「ヤダなぁ、パパまだ、ボケてないよぉ。シンちゃんの、19歳の誕生日は。朝まで2人っきりで、一緒にお祝いしたじゃないー♪」
………朝まで云々の部分に対し、突っ込んでやりたいのは、ヤマヤマだが。
ココでそれに乗ってしまうと、話は堂々巡りでイツまでたってもループ状態。
最終的には、完全に話題を反らされてしまう。
そんな、マジックの手口を熟知しているだけに―――読めてしまう自分を、哀しいとは思うけれど―――敢えてそれには乗らず。
「解ってんなら。もうすぐ二十歳の息子の名に、ちゃん付けすんじゃねぇっ!!! フツーに、シンタローって呼べ!!」
「呼んでるだろう? シンタロー」
凄まじいシンタローの剣幕に。マジックは、あっさりと返してくるが。
コレで納得できる程、シンタローの怒りは浅くは無い。
「いつも、そう呼べ。二度と『シンちゃん』言うな」
何せ、思春期を迎えて以来。
『シンちゃん』と呼ぶな、という主張はずっと続けてきたのに。
その度、何だかんだと誤魔化され。未だに、聞き入れられていない。
切れ長の瞳を据わらせ、キッパリ、と言い切ったシンタローに。
しばし、マジックは何か考えていたようだが―――ちなみに、こういうやりとりの後に。マジックが、ロクなコトを言った試しは無い―――やがて、ぽん、と一つ手を打った。
「じゃあ、こういうのは?」
「ぁあ?」
どうせ、また下らない提案だろう、と。
シンタローが、面倒くさそうに返事をすると。
「『私の愛する、天使みたいにキュートなのに、小悪魔みたいにセクシーなシンタローvv』」
―――シンタローの。ヘソから下の力が、一気に抜けた。
「………あのな、マジックッッ!!!!」
それでも、何とか気を取り直して。拳を握り締め、ギッッと、詰めよると。
マジックは、にっこりvv と。
それはそれは可愛らしく、小首を傾げ―――十代の少女がやれば、文句無しに愛らしいその仕草も。44歳のオッサンにやられると、もはや視界の暴力でしかない―――再び、口を開く。
「何だい?『私の愛する、天使みたいにキュートなのに、小悪魔みたいにセクシーなシンタローvv』?」
一言一句、間違わないところが、小憎たらしい………その上。
vvと?でわざわざトーンを変えるところなど、実に無駄に芸が細かい。
―――天国の母さん。アンタ、こいつのドコが良くて、結婚したんですか?
常日頃、疑問に思っている。しかし、けして答は得られないであろう、質問を抱いたまま。
シンタローは、頭を抱え。ぐったりと、全身をソファに埋めてしまう。
「………もういい、シンちゃんでいい」
「そうかい? 私は割と、気に入ってるんだけどねぇ」
………まぁ、シンちゃんがそう言うなら。今まで通りで。
いけしゃあしゃあと抜かすマジックに。
―――ムカつく、訂正。いつか絶対、ぶっ殺す。
シンタローは、そんな物騒な決意を、固めつつ。
そもそもの原因………マジックが聞こうとしていたであろう事に、答えた。
「夕食、カレーでいい。コタローには、味付け薄めにして、シチューな」
○●○コメント○●○ 珍しく、ショートにまとめられました~♪ 良かった良かった。
ハタチ近くどころか、ミソジ近くなっても『シンちゃん』呼ばわりされてますよねー(笑)
ちなみに、ナニがモトネタアリ□かというと。
絶対何かパクってるハズなのに、モトネタが思い出せないんですよ~~~(>_<)
心当たりのある方、いらっしゃっいましたら、ご一報下さい。出典入れます。
そんなカンジで卑怯臭く、UPしたSS、時々いじくってマス。前とオハナシ変わってたら、スミマセンm(_ _)m
………それにしても。あうー、何をパクったのかなぁっ(>_<)(←それも解らず、UPすんな)
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