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mm

此処に、在れ (前)




 玄関の開く、気配がした。

「遅いベ、トットリ~!! 待ちくたびれ………」

 買出しに出たまま、中々戻ってこない親友を。
 すきっ腹を抱え、ひたすら待っていたミヤギは。
 猛ダッシュで、玄関に走り出たのだが。

「ハーイ、スペシャルゲストだっちゃわいやー♪」

「………よォ」

 ニコニコ笑う、トットリの後ろ。
 バツの悪そうな顔で立っている、予想外の客人の姿に。
 
 パチパチ、と瞬きを繰り返す。

「………シンタローでねぇか。どしたべ?」
 
「何かー。その辺で、途方に暮れて座り込んどったから、拾っ………ムグッ!!!」

 無神経と紙一重の、相も変わらない素直さで。
 ベラベラ喋り始めた、トットリの口を。
 背後から抱え込むように塞いだ、シンタローは。

「いいから。今夜、泊めろヨ」と。
 頼んでいるというより。オレ様モード全開の命令口調で、そう言い放つ。

「って………ええんだべか? しばらくは『家族水入らずで、過ごすからvv』とか、マジック様が浮かれまくっとったべ?」

 思わずミヤギが、首を傾げていると。

「イイんだヨっ。ホラよっ、差し入れッ!!」

 ミヤギの手に、グイッと、コンビニの袋を押し付け。
 返事も待たずに、さっさと上がり込んでしまう。

「むぐっ、もが~~~~ッッ!!(ミ、ミヤギくぅ~~~~んっ!!)」

 口を塞がれたままの、トットリは。
 助けを求める視線で、奥へとズルズル引きずられていき。

 残されたミヤギは。
 渡された袋の中味が、酒とツマミの類で占められているのを確認し。
 そっと、溜息をつく。

 某ネクラの京美人に。ニブイだの、顔だけだの散々罵られている、彼にさえ。
 
 ―――まぁ。
 何かあったんだろうな、という想像が、簡単につく展開。

「何やってんだよ、ミヤギ、とっとと来いッ!!」

「もがもがふが~~~~ッッ!!!(助けてぇ~~~~ッッ!!)」

 まったく、これじゃ。どっちが客だか、解らないべ、と。
 軽く肩を竦めた、ミヤギは。

 オレ様モード全開の珍客と。それに拉致された親友兼恋人の、後を追い。
 リビングへと、急いだ。




******************




「うっわー、んだよこの貧しい冷蔵庫ッッ!!」
 ―――ったく、しかも汚ねーぞ、この部屋ッッ!!

 勝手に上がり込んだ挙句、勝手な文句をつけ。
 更には勝手に、冷蔵庫まで漁り始めた、シンタローに。
 
「………シンタロー、すっごく偉そうだわいや」

 ようやく解放してもらえた、トットリが。呆れた顔で、呟くと。

「あぁん? 偉いんだよ、オレはッ」

 ホメてもいないのに、威張った様子で。
 冷蔵庫から。なけなしの食材である、キムチと卵を(やはり勝手に)取り出し。
 久しく使われていなかった、ガス台に向かい、何やら調理を始めた。

「オイ、オメーらもっ! ぼーっと突っ立ってないで、皿用意して、その辺片付けてろっ!!」

 その上。堂々とした宣言を裏付ける、偉ッそーな指示を飛ばされて。
 思わず顔を見合わせた、ミヤギとトットリは。

 どちらからともなく、つい、吹きだしてしまい………。

「………笑ってねぇで、さっさと動けヨ」
「あー、ハイハイ。っても、ナニから手ぇ付けたらいいんだべ?」
「ミヤギくん、ボク、部屋片付けるから、おツマミ並べててくれるだらぁか?」

 あの島で過ごしていた時と。変わらない、彼の様子に。
 ―――良かった、と。単純に、嬉しくなって。

 言われるままに。荒れ放題の部屋の片付けと、酒宴の準備を始める。

 そんな二人の態度に………ふん、と。
 少しだけ赤くなった頬を、隠すかのように。再びガス台に向った、シンタローの。
 
 甲斐甲斐しい―――本人に言えば、眼魔砲の洗礼を受ける事間違いなしだが―――新妻のような、その姿からは。ちょっと、想像しづらいのだが。

 一週間後に、彼は。世界最強の暗殺集団だった、ガンマ団を。
 新たな方向へと導く、新総帥となるコトが、決まっている。

 実の息子ではなかった、シンタローの就任が、正式に決定するまで。
 遠い血縁やら、先々代以来のご意見番やら。
 日頃親しくない………けれど、蔑ろにも出来ない。
 面倒な手合いと、イロイロとモメたようだが。

 最終的には、マジックの鶴の一声で。誰も文句は、言えなくなったそうだ。

 ―――島にいた頃は『仲間』であったけれど。
 戻ってきてしまえば。
 所詮は『総帥の息子』と『一介のガンマ団員』という、立場でしかなく。
 ミヤギもトットリも………アラシヤマや、コージに至るまで。 
 その間、ハラハラしながら、成り行きを見守るしか無かったので。

 そのニュースを、聞いた時は………正直。
 助かった、と。本当に胸を、撫で下ろしたのだ。

 あの島での、濃密で優しい時間を過ごした後では。
 暗殺者の稼業になど、とても戻れない。

 アラシヤマとコージは、其々の見解を持っていたようだが。

 二人は。もしシンタローが、総帥になれず。このままガンマ団が、暗殺稼業を続けるのなら。
 退団し。どちらかの田舎に引っ込んで、農業でも始めようか、と。
 半ば本気で、話し合っていたのだから。
 
 今、ココにいるシンタローを見て、実感が湧く。
 一つの時代が終って、新しい時代が始まろうとしている。

 ―――もっと、ずっと。より良くなる為に。

 傍目で見る以上に、問題は山積なのだろうけど。

 でも、大丈夫。シンタローなら、越えていける。 
 ………彼の為なら。自分達は、尽力を惜しまない。
 



 言われるままに、片付けと、テーブルセッティングを済まし。
 大人しく待っていた、二人の前に。

 とん、と皿が二つ置かれた。

「ホラよ、出来たぜ。キムチ入りオムレツと、ハムキャベのヤキソバ………ったく。あんなビンボー臭い冷蔵庫じゃ、こんなモンしか作れねぇじゃねーかっ!!」

「うわぁvv 美味しそうだっちゃねー、さすがシンタロー、天才だわいやvv」

 ………『イヤミ』というモノは。
 相手が『イヤミ』として、認識してくれなければ。何の意味も為さなくなる。

 シンタローは。パチパチ手を叩く、トットリに。
 無邪気で純粋な、尊敬の眼差しを向けられ。

 ちょっと、バツの悪そうな顔をして―――それから。

 それから、つい。
 柔らかに………少しだけ、頬を緩めてしまう。


 ホカホカ湯気を上げる、如何にも美味しそうなオカズに。
 シンタローが買ってきた、おツマミパックやら。
 家にストックしておいた、スナック菓子なんかを合わせると。
 酒肴は、ちょっとした居酒屋並みに、豪華になった。

「よーし、んじゃ、飲もうぜ♪ お疲れっ!!」
「っしゃー、新生ガンマ団に乾杯だべ!」
「いただきます、だっちゃわいや~~~♪」

 各々らしい台詞で、グラスを合わせ。  
 他愛も無い話をしつつ、飲みつづけること数時間。

 三人で。500mlのビールが5本、焼酎の紙パックが一本、冷酒が3本空いた頃には。

 ………真っ先に。トットリが、出来上がってしまっていた。

「みやぎくぅ~んvv ミヤギくんはホントーに、カッコイイだわやvv」

 愛らしい童顔を。アルコールの影響で、ほんのり桜色に染め。
 とろんと潤んだ、大きな瞳で見つめられて。
 手放しに贈られる、トットリからの賛辞に。

 照れくさくなったミヤギは、ポリポリと頭を掻く。

 彼の出身は、東北は宮城県。
 厳しい冬場の暖房と言えば、アルコール類も含まれる(??)
 物心ついた時には、父親の晩酌の相手をしていた(!? )ミヤギであるから。
 酒にはちょっと自信があって。コレだけ空けても、殆ど素面と変わらない。

 コレで、酔ってでもいれば「トットリの可愛さには、負けるべ~vv」とか。
 バカップル振りを、ご披露できたかもしれないが。

 いかんせん。今の酒の、回り具合程度では。
 とてもソコまで、バカの壁は越えられねえべ、と。

「トットリぃ、オメ、しっかりするべ」
 ―――ミヤギくぅーんvv と。
 しなだれかかってくる、トットリの体を支え、揺すってみる。

 その傍ら。一緒に飲むのなんか、初めてだべな? と。
 ちらり、シンタローの様子を伺うと。

 彼もどうやら、酒には自信があるようで。
 顔色一つ変えずに、冷酒をぐい、と飲み干したトコロだった。

 そして。とん、と盃を置き………イチャつく自分たちに―――そんなつもりは、無いのだけれど。そう見られても、まぁ、仕方が無いと思う―――流し目をくれる。

 飛んでくるのは、果たして。
 どんなイヤミか悪態か、と、身構えるミヤギに。

 ヤケにしみじみした調子で、こう言った。

「しっかしオメーら、ホンット、仲いいよナ」

 その様子が………何だか。
 まるで、羨ましがっているように、見える自分は。
 自覚は無いけれど。少しは酔いが、回ってきたのだろうか?

 らしくない、シンタローの言葉に。はて? と思う、ミヤギの前で。
 さらに、溜息混じりに、こう問い掛けてきた。

「おまえらさぁ、うざったくねぇ? いっつも、くっついてて」

 途端に、聞き捨てならない、とでも言うように。
 ガバリと姿勢を正した『完璧なる酔っ払い』トットリが。

「だってボク、ミヤギくん大好きだわいや!!」
 ―――大好きだから。何時だって、ずっとずっと一緒が、いいだっちゃ!!!

 実に堂々とした、宣言をカマす。

「シンタローも、カッコイイと思うけども。やっぱりミヤギくんが、一番だわいや~vv」

 続けて言うと―――更に。もう一度、ことん、ともたれかかってきて。
 すりすり、と、胸の辺りになつき始める。

「ばっ、オメ、離れるべ!!」

 恥ずかしくて。思わず、押し戻そうとしたけれど。
 それを咎めるかのように、トットリは。ミヤギの手を取り、きゅっと握り締め。

「ミヤギくん、ボクのこと嫌いになっただらぁか?」

 ………半泣きで、訴えてくる。

「ボクより、シンタローの方がええんだらぁか!?」

 ………しかも、内容が飛躍している。

「―――オイオーイ。何でソコで、オレが引き合いに出されんだヨっ!?」

「すまんべー、完璧に酔っちまっただべな、コイツ」

 ………イヤソレは、見たら解るけどヨ、と。
 ポリポリ、頭を掻きつつ、一気にグラスを開けるシンタローの前で。
 更には、トットリは。

 ―――捨てないで、ミヤギく~~~んッッ!! とか。
 泣きながら、縋りついてくる。

 ………ええい、この酔っ払いめ、と呆れるが。突き放すコトも出来ず。
 「捨てるワケないべ」と囁いて。
 ぽんぽん、と軽く頭を叩いてやっていると。

 黙って、その光景を見つめていた、シンタローが。
 ―――ふっ、と。
 何かを思い出したかのように、微笑した。

 笑っているのに………どこか、物憂げで。
 目を反らせなくなる、危うさをたたえたその表情。

「………トットリって、素直だよナ」

 心ココにあらずの、小さな呟きに。
 うっかり見惚れていた、自分に気づいて。

「ま、まぁ。そうだべな」

 我に帰ったミヤギが。どぎまぎしつつも、頷くと。
 シンタローは。手の内で、冷酒グラスを弄びながら。

「………グンマも、素直なんだよなぁ………」

 ぽそり、と。
 何の脈絡も無く、そんなことを呟き。 

 ―――やはり。
 少し、様子がおかしい気がして。

 ミヤギは、その端麗な横顔を、見つめながら。
「シンタロー、おめ、何か………」
「アレは素直言うよか、アホだわいや~♪」

 ミヤギの、真面目な問いかけを、遮って。

 さすがの酔っ払い。今泣いたカラスが、何とやら。
 ケロリとしたトットリが、突如会話に復帰してくる。

「アホ! そうそう、アホだよナ♪」

 シンタローも。拭ったように、先刻までの物憂い表情を消し。
 明るくトットリに、調子を合わせたが。

「………でも、アホなコ程、可愛いって言うっちゃね~?」

 その言葉に、シンタローは。
 一瞬、口元を強張らせて………震える手で、盃に注ぐと。
 煽るように、冷酒を飲み干す。

 ―――何か。イロイロと、解った気がした。

「あー、トットリ。おめ、もう大人しく寝てるべ」

 相変わらず、一人陽気に。
 「一番トットリ。中○みゆき、歌うだわいやっ!!」とか叫びだした、困った恋人を捕まえ。
 何とか床に、寝かしつけると。

 甘えるように。膝の上に、頭を乗せてくる。

 そんな、二人のヤリトリを。
 シンタローは。口元だけに微笑を刻み、見つめていたが。 

「オレもやっぱ、独身寮に戻るかなぁ?」
 
 ………唐突な、そのヒトコトに。
 は? と。ミヤギは固まってしまう。

 とってもあっさり、言ってくれたが。
 目の前の男は。これから、ガンマ団総帥になる男である。
 ガンマ団総帥が。一般団員と一緒に、寮に寝泊りなど、許されるはずがない。

 そうでなくとも『マジック総帥と血の繋がりが無い』という、事実は―――ミヤギを含め、彼と親しい誰もが、それがどうした、クソッくらえ!! と思う事実だけれど―――軽んじられる原因となるのに。

 重要なのは、それだけではない。

 もともと『高嶺の花』と呼ばれ。
 下っ端ガンマ団員総ての、憧れのマドンナだった、シンタローなのだ。
 まして、パプワ島から戻って以来。一層、男の色気を増した彼には。
 ちょっとアブない程、熱狂的なファン―――というより、殆ど狂信者―――まで出現し始めていて。

 そんなところに、シンタローが入寮すると言う事は。
 混乱の種を、放り込むようなモノに違いなく。
 
 そんな事を解らないような、シンタローではないハズだ、と思い。
 彼の方に顔を向けた、ミヤギは。

 いつの間にやら。彼の周囲に、林立していた。
 カラになった、冷酒のビンの。その尋常ではない数に、ぎょっとする。

 数えてみると。両手の指を使っても、まだ足りない。

 ―――ひょっとして。

 こくん、と。今も、淡々と。
 盃を干した姿からは、そうは見えないのだけれど。

 ………コイツも、酔ってるんでねぇべか!?

「ミヤギくぅーん? 眠いだわいや~~~~」
「あー、ハイハイ。大人しく寝るベ、トットリ」

 らしくない、シンタローの様子が気がかりで。
 トットリの寝苦情に、つい投げやりな返事を返すと。
 それが伝わったのか。ムッとしたように、唇を尖らせる。

「………オヤスミのキスは、無いだらぁか?」

「はァ!? トッ………!?」

 言いかけた、ミヤギの唇を。ちゅっ、と。
 トットリの、柔らかい―――甘い唇が、塞ぎ。
 
 『奪っちゃったわいや~vv』とか言いながら。
 ゴキゲンに、首筋に抱きついてくるトットリを、ぶら下げたまま。
 赤面し、慌ててシンタローの様子を、窺うと。
 
「なーに、恥ずかしがってんだヨ。キスぐらい、挨拶だろーが」
 あっさりと、そう言ってくれた、が。

 ―――あの。アンタ、目ぇ、据わってねぇべか?

「じゃぁ、シンタロー。お休みのチューは?」
 更に、悪いことに。トットリは、シンタローにまで、絡み出して。

 ―――オメ、何、言うとるべッ!!??
 驚いて、ぽかんと目を見開いた、ミヤギの前。

 通常であれば、ブリザードを伴った、ケーベツの眼差しで見るか。
 虫の居所でも悪ければ。眼魔砲の一発も、カマしていたに違いないだろう、シンタローは。

「おぅ♪」

 ………止めるヒマさえ、無かった。

 エラく解りにくいが。どうやら酔っぱらっているらしい、シンタローは。
 子犬にでもするかのように、ごく無造作に。
 トットリの頬に、ちゅっと、赤い唇をくっつける。

 ―――あまりの、展開に。ただただ、言葉を失い。
 唖然としている、ミヤギにまで。

「………オマエも、する? オレと」

 言いながら、シンタローは。
 危険なほどに、至近距離まで顔を近づけてきて。

 ―――酔っとる。
 絶対っ、酔っとるべ、アンタ!!!

 ………ヘビに睨まれた蛙の気分、とは。こんな心境なのだろうか。

 シンタローは『高嶺の花』だ。

 ガンマ団員なら、恋愛感情抜きにしても、誰もが憧れと尊敬を抱いている。
 ぶちゃけ。一度でいいからお願いしたい、とか不埒な想像を回したりもする。

 しかし、ちゃんと彼のコトを見ていれば。
 その心が何処に在るのか。一体、誰のものなのか、ということは。
 やはり、ガンマ団員なら―――気付かない、ハズも無く。

 ねっとりした、脂汗を浮かべ。硬直したままの、ミヤギに。

 ―――にっこりと、シンタローは。
 シラフの時にはあり得ない、極上の笑顔を披露してくれて。

 次の瞬間。くたり、と………こちらに、倒れこんできた。

「うわ、ちょ、シンタローッ!?」

 もともと、トットリにぶら下がられていたトコロに。
 更に。シンタローに、圧し掛かられる体勢になった、ミヤギは………さすがに、バランスを崩し。

 三人一緒に、床に転がってしまう。    

「………トットリ? シンタロー?」

 恐る恐る、名前を呼ぶが。

 返ってくるのは。
 右から、トットリの。左から、シンタローの。
 すやすやと、規則正しい、寝息だけ。

 二人に、押し倒されたまま。
 ………両手に花って言うんだべか? こういうの。

 右手には、可愛い現在の恋人。
 左手には、かつて憧れていた、特別な美人。

 ―――もの凄くオイシイ、シュチュエーションだ、とは思う。

 思うけれど。

 苦笑して、ミヤギは。
 何とか、二人の間から抜け出すと。

 さて、どうしたものか、と。
 つくづくと、眠る二人を見ながら、腕組みをする。

 ―――トットリだけなら。オラのベッドに、運んでやったらいいんだべが。

 しかし、シンタローを。このまま、放っておくわけにもいかない。
 ガンマ団次期新総帥に、風邪なんか引かせたら。数多のファンに半殺しにされかねない。
 だからと言って、三人で一緒に寝るなど、論外だ………自分が、眠れるハズも無い。

 しばし、悩んでいると………突然。
 真夜中の静寂を破り、玄関チャイムが、鳴り響く。

 ―――あ。やっぱ、来たべ。

 大きな安堵と………少しの、落胆。

 この場合。こんな非常識な時間の訪問者といって、真っ先に思いつくのは。
 急ぎ足で玄関に向かい、ドアを開くと。

「やぁ、こんばんは。遅くにすまないね」

 予想通り、ソコには。
 爽やかな笑顔を浮かべた、金髪の紳士が立っていた。

「………マジック総帥」

 後、少しだけの期間。自分の直属の上司である、青の一族の長。
 部下とは言え、一介のガンマ団員でしかない自分のトコロに。
 彼が来る理由と言えば、たった一つ。 

「シンタローが、お世話になってるみたいだね」

「あ、ハイ………」

 どうして、ココが解ったのだろう、と思ったが。
 愚問だったべ、と。スグにその思考を打ち消す。

 本当の所、シンタローは。
 アラシヤマのコトを笑えないぐらい、友達が少ない。
 だが、もちろん。アラシヤマのソレとは、かなり事情が異なる。

 誰をも引きつける魅力を持つ、シンタローだ。
 友達になりたがっている輩は、掃いて捨てる程、いるけれど。

 ガンマ団総帥の長男、という自分の特殊な立場を考慮してか。
 彼は敢えて、士官学校でも………ガンマ団内でも『特定の友人』というものを作らなかった。
 もちろん、誰とでも挨拶ぐらいはする。
 話し掛ければ、返事もしてくれる。気が向けば、雑談に応じてくれる。

 しかし、一定の場所で、しっかり線引きをされ。
 それ以上は、誰一人踏み込ませてもらえなかった。

 自分にしても。あの島へ、行くまでは。
 こんな風に、シンタローと家で飲む事になるなど、想像さえしたことがなかった。
 
「ええと、上がられますか? 奥で酔っ払って、潰れ………」

「コラ、ミヤギ。誰が、潰れてるっつーんだヨ?」

 背後から、唐突に声がかかり。驚いて振り向くと。
 
 ソコに。先程までの、ぐでぐでっぷりは何処へやら。
 玄関先のヤリトリを聞きつけ、目が覚めたのか。
 急に、シャキッとなったシンタローが、立っていて。
 
 ………あ、あれ?
 
 戸惑って、首を傾げるミヤギの前で。
 マジックは、ニコニコとシンタローに手を差し伸べ。

「遅いから、迎えに来たよ。シンちゃんvv」

「ヤなこった。オレは、コイツと一緒に暮らすんだよッッ!!」

 ―――――はぁぁぁぁッッ!!?? アンタ、何ば言うとっとねッッ!!??

 ミヤギは、仰天のあまり。一時的に博多弁で思考してしまう(何故?)

 ………多分、本人的には。
 先刻の『独身寮に戻ろうカナ?』の延長で、他意は無いと思う、けれど。

 ―――あまりに恐ろしい、爆弾発言である。

 マジック総帥の表情は、一応ニコヤカなままだが。
 しかし、その両の秘石眼が。いつ不吉な色に煌くのか、気が気ではない。

 どうやらシンタローは、心配性の父親の来訪に。
 条件反射で、いつも通り振舞おうとしているようだが。

 ………でもやっぱり、酔ってるんだべなぁ、と。
 しみじみ、思いつつ。

「………頼むから、大人しく帰るべさ、シンタロー」
 ――――オラとトットリの命が、危なぐなるべ。

 ミヤギは、その背後に回ると。
 シンタローの体を、マジック総帥の方へ、ぐいぐい押し出す。
 『親子喧嘩』という名の。痴話喧嘩に巻き込まれるのだけは、勘弁である。

「オイ、ミヤギ!? てめ、何………」

 普段であれば、自分よりずっと強いはずの、シンタローだが。 
 酒で、ヘロヘロになっているおかげだろう。
 ちゃんと、マジック総帥の手の届く位置に、連れて行くことが出来た。

「いーから。今日は、帰るべっっ」
「いや、ご協力ありがとう」

 来た時からまったく同じ笑顔で、礼を述べるマジックは。
 力の入っていない抵抗をする、シンタローを。しっかりと腕の中に抱え込む。

「てめ、離せって!!」
「ハイハーイ、シンちゃん。こんな時間に、他所様のお宅で騒ぐのは、非常識だよー」  
「シンタロー、ちゃんと二人で話し合いしたら、また来るベ」
 ―――そん時ゃあ、コージもアラシヤマも呼んどっから。あの島ぁ肴に、みんなで飲むべ?

 必死の、ミヤギの説得に。
 ふぅぅ、と息をついたシンタローは。

「わぁったヨ、帰るヨッ!!」

 マジックの手を振り払い、邪魔したナ、と玄関から出て行く。

 その後に続こうとした、マジックに。

「あのっ、オラには!! トットリっちゅう、恋人がお………」
 情けないけれど。引きつったまま、イイワケをしかけるが。

「ああ、そうそう。トットリに、ありがとうと伝えてくれるかい? キミにも。これからも、シンタローをよろしく頼む」

 ソレを途中で遮り、彼は。
 ニコヤカにそう言って、悠然と退去していった。


 ―――正直、相当驚いた。
 まさか、あのヒトが。そんな事を言うなんて、思ってもみなかったから。

 はぁぁ、と。大きく息を付き、ミヤギは玄関に座り込む。

 ………ちぃっと、惜しかっただべか? とか。

 シラフのトットリに聞かれたら、首を締められかねないことを。
 チラリ、と思って。

 慌てて左右に、首を振り。不埒な想いを、打ち消してみた。



此処に、在れ (後)




「シンちゃん~? 家はそっちじゃないよ、コッチだよー」

 ―――チッ、もう追いついて来やがった!!

 予想以上に早く、追いついてきた父親に。
 力一杯、舌打ちをカマし。

「引っ張ンなよッ!!」
 シンタローは、うざったそうに。
 まとわりついてくる、マジックの手を、払いのけようとするが。

「だーめ。ていうか、引っ張ってません。シンちゃんが、フラフラしてるだけ」
 ―――まったく。飲みすぎだよ?

 しっかり握られた腕は、離れる事無く。
 挙句………マジックのクセに。そんな偉そーな説教まで、カマしてくれて。
 
 ムッとは、したけれど………頭の芯が、ボーっとしていて。
 あまり、気の効いたイヤミが、思い浮かばない。

「酔ってねェよ、あれっくらいで………うぉぉをッ!?」

 それは。
 何とか振り解こうと、身を捩った瞬間の、惨事。

 ―――いわゆる、前方不注意により。
 シンタローの片足は、その辺に転がっていた(今時とっても珍しい)ブリキのバケツに。
 ズボォッ!! と。ものの見事に、ハマってしまい。

「………シンちゃーん? 大丈夫かーい??」
「何で、こんなモンが転がってんだヨッ!?」

 更に、悪いことに。
 あまりにジャストサイズに、ハマり込んだ為。
 足を振り回しても、一向に抜ける気配は無い。

「クソッ、抜けねーじゃねぇかよっ!!!」

 仕方なく、座り込み………懇親の力で、引っ張ってみても。
 溶接でもされたかのように、どうしても足から離れてくれない。

「シンタロー? パパが、手伝ってあげようか??」

 呆れたように掛けられた、マジックの言葉に。
 ピクリと反応した、シンタローは。

 ―――コイツに助けてもらうよりは、と。

 すっく、と立ち上がると………ガシャコン、ガシャコン賑やかな音を立て。
 片足をバケツに突っ込んだままの、とっても間の抜けた姿で。
 真夜中の住宅街を、再び歩き出す―――いわゆる『歩く騒音公害』である。

 どうやら。靴を脱げばいいという、ごく簡単な解決法さえ。
 思いつかない程、酔っているようだ。

「………しょうがないねぇ」

 ひょい、と。いきなり、シンタローの視界がせり上がり。
 気がつけば、マジックの腕の中。
 その身体は。父親の右肩にもたれかかるように、担ぎ上げられていた。


 ―――固まっていたのは。ほんの、数瞬。


「降ろせよっ、バカマジックッッ!!」
「あはは、シンタロー。こんな夜中に騒ぐと、ご近所に迷惑だぞ?」
「うるせぇっ、離せってッッ!!!」

 じたじたと。
 相変わらず、どこか現実感の無いままに。
 降ろせ降ろせと、騒いでいると。

「もー、シンちゃんたら。あんまり騒ぐと、お姫様抱っこに変えちゃうゾー?」

 あはははと笑う、マジックのその声に。
 正真正銘の、本気が感じられた為。

 シンタローは。思わずピタリと、固まってしまう。

 コレだけ息子が成長しても。衰えのおの字も見せない、人間離れした父親は。
 その重みを、まるで感じていないかのように。
 平然とした表情で、スタスタと歩を進める。

 ―――幼い頃。
 どこへ行くのも、こんな風に抱えて連れて行ってくれた。
 
 まるであの頃の、再現のようだ、と。奇妙な既視感に、浸っていると。

「………あのね。夢だよ、コレ」
 
 ポソッと。マジックが、そんな突拍子も無い事を言い出す。 

「はぁ? 夢なワケねぇだろっ!!」
 ―――また、何をワケの解らないコトを、と。
 シンタローは、精一杯、厳しい顔を作ろうとしたが。

 ………頭が、ボーっとする。
 ―――思考が、纏まらなくて。

 考えた端から、霧散していくこのカンジは。
 確かに、夢の中にいる時と、よく似ている。

「夢だって………痛くないから、つねってみなさい」

 その言葉に、シンタローは。
 ぎうううぅぅぅッッッッ!!! と、力一杯―――――――― 『マジック』を、つねってみた。

「………う。い、痛くないともッ!!」

 思い切り頬を、引き伸ばされて。
 結構、オモシロイ顔になった父親は。

 微妙に、涙目だけれど―――きっぱりと、言い切って。

「痛く、ねぇのか………つまんねー」

 呟いて。ぱすんと、その肩口に顔を埋める。

「だ、だからね、シンちゃん………全部、夢なんだから。何言っても、いいんだよ」

 ―――染み入る、声。優しい、声。

 随分昔に、無くしてしまった。
 大好きだった『誰か』の声。

 ―――ああ、でも。誰だったっけ…………?
 
 シンタローは、目をつむったまま、ぼんやりと。
 伝わってくる体温を『まるで現実のようだ』とも思う。

「………夢、なのか?」

 ―――しんどい。眠い。ダルイ。

 『誰か』の体温に、身体を預けたまま。
 唇だけを動かし、そう問いかける。

「そう、夢だよ。明日になったら、シンタローは、みんな忘れていいから」

 ―――コイツに弱みを見せるのだけは、死んでもイヤだ。
 でも。コイツって『誰』だっけ?

 霞んでいく頭で、ぼやぼやと思いながら。
 泣きたくなるほど、優しい囁きに。心は、揺れる。

 ………夢、だったら。
 全部。何もかも、夢だというなら。

「………何で、オレなんだ?」

 気になって、仕方なくて。
 どうしても聞けなかったコトを、聞いてみたのに。
 相手は、答えない。

 ―――不安が。むくりと、姿を現す。

「アンタの息子は、グンマだ。オレじゃねぇ」

 吐き出すように、そう続ける。

 ―――彼が、次代に譲るべく。
 努力して、築き上げてきた………その総てのものを、正当に受け継ぐべきは。







 一緒に、暮らし始めて。
 実際、今まで気が付かなかったコトが不思議なほど。
 『グンマ』と『マジック』は、良く似ていた。

 父親の末弟のハーレムは『変態以外の共通点が無い』と、笑うけれど。

 例えば。ふとした仕草や、表情。
 言葉の、僅かなアクセント。瞬きのタイミング。
 趣味の傾向や、モノの見方。
 
 相似性を見つける度に、苛立ちは募り。  

 ―――シンちゃんと一緒に暮らせて、本当に嬉しいナvv と。

 素直な笑顔を向けられる度、打ちのめされる。
 
 自ら望んだコトでは無くとも。
 自分は―――父も母も、彼らと過ごす筈の幸福な時間も―――その総てを、奪って。
 のうのうと、生きてきたというのに。


 ………ぽたり、と雫が落ちる。
 その正体が何なのかは、考えたくなかった。 



「………オレじゃ、ないだろ?」

 ………最も濃い、遺伝子を受け継いだのは。オレじゃ、なかった。  
 
 本当なら、もう。
 自分は、ココにいるべきでは、無いのかもしれない。

 ニセモノだ、と解っても。
 バカみたいに、愛してくれる………優しいヒトの為にも。 
 離れなければ、ならないのかも知れない。 



 ―――でも、ココには。コタローがいるから。

 それに………優しい、あのヒトは。
 青の一族を束ねる、至高の存在は。

 一族を捨てるコトだけは、けして、出来ないであろうから。



「………なァんだ、そんなこと?」

「そんなこと!? そんなこと、で済ませられるようなコトじゃ、ないだろうがッ!!」

 散々、悩んでいた事を。あっさりと、片付けられて。

 一気に、頭に血が上り―――同時に。
 ぼやけかけていた意識も、回復する。

 ガバッと、身を起こし。
 抱えられた自分より、下にあるマジックの顔を見下ろす。

 いつもは、微妙に上にある目線が。
 今は、ずっと下にあることが。少し不思議な気がした。

 その、シンタローの視線を受け。マジックは、ニッコリと笑う。

「だって、ねぇ? みんな、シンちゃんがいいんだよ。ミヤギもトットリも、とても喜んでいただろう?」

 ………やりたいコトが、ある。
 それは、マジックにも告げていた。
 
 ―――だったら、ココですればいい。
 彼は、あっさりと、そう言って。
 
 彼の息子も、賛成!! と手を叩いてくれた。
 
 ………今まで、ヒトコトだって、グンマは。
 総てを奪ったオレを。責めるようなことは、言わなかった。

 それが―――苦しかった。


 シンタローの、食い入るような視線を感じながら。
 ゆっくりと、マジックは喋り出した。

「私は、欲張りだからね」

 そんなコトは、とうに知っている。
 自分の前では、いつも。
 バカみたいに甘い『父親』だったけれど。
  
「グンちゃんがいる、キンちゃんもいる。コタローも、いずれ目を覚ますだろうね」

 ―――他の人間に対し。
 どんなに、冷酷に振舞っていたか。
 どれほどの非道を為してきたか。

 そんなコトは、知っている………なのに。



 ―――ヒトとして、生まれた。

 刻まれた本能のままに、恋をした。
 打算でそれは、愛になり………やがて、憎しみになったけれど。

「それでも、シンタロー。おまえがいなければ………私は、満たされないんだよ」

 ―――結局は、この腕の中にいる。
 
「………ふーん」

 再び、マジックの肩に顔を埋める。
 瞳から、零れる。
 止まらなくなった、熱い雫を………見られたくはなくて。

「それに大体、シンちゃんは。プライド高くてワガママで、その割にヘンなトコが抜けてて………」
「オイ。ケンカ、売ってんのか?」

 突然、ガラリと調子を変えて。そんなコトを言い出した、マジックに
 ムッと、するけれど。まだ顔を上げるには、少々障りがあって―――言葉でだけ、凄んでみると。

「とーんでもない。褒めてるんだよ?」
 ―――そんな、シンちゃんだから。みんなが、目を離せなくなる。

 囁きと共に。
 シンタローの身体を支えていた腕が、急に緩んで。  

「うわっ!?」

 そのまま滑るように、地面に両足をついてしまう。

「降ろすなら、そう言………ッ!?」

 突然降ろされた、シンタローの文句は。
 マジックの唇により、遮られた。

 抵抗しようと。とっさに、突き出した腕は。

 奪うように、激しく貪られる口付けに………スグに、力を失い。
 まるで、縋っているかのように。彼のシャツの胸元を、握り締める形となる。

 ガクガクと膝が、不安定に揺れ………やがては総ての重みを、背中に回されたマジックの腕に委ねて。
 
 すっかり力の抜けた、シンタローに。満足げな、微笑みを浮かべ。
 マジックは、いったん唇を離すと――――今度は。

 幾度も幾度も、角度を変えて。
 シンタローの頬に、瞼に、唇に――――慈しむような。
 優しい、触れるだけのキスを、降らせていき。

 ―――解放された、時には。
 シンタローの内から。ここの所、ずっと離れる事の無かった。
 ワケの解らない、焦燥や不安や、もどかしさが………ウソのように、静まっていて。

「こういうキスは、グンちゃんやコタローとはありえない。シンタローとだけだ」

 吐息が触れる距離で。
 ニッコリと、笑うマジックに。

「『息子』とは、フツーはしねぇからな」

 くったりしたまま。皮肉をこめて、言ってやったが。

「ヨソはヨソ、ウチウチ。ウチは、長男とはするんだヨ」

 ………何かもう、眠いし。
 言い返したりすんの、面倒臭せぇや―――そう思って。

 あっそ、と。素っ気無く、答えると。
 
「シンちゃんも、パパとだけって言ってvv」
 ―――言って言ってvv ねぇ、言ってvvv

 とか言いながら、再び抱き上げられた。

「~~~~~~ッ、言うわけねぇだろ、バーカッッ!!」

 すぐ下にある、金色の頭を。ぽかりと一発、殴ってやると。

 はっはっはっ、と明るく笑いながら―――殴られて喜ぶなよ、ヘンタイか!? イヤ、ヘンタイだけど、コイツ―――マジックはシンタローを抱えたまま、歩き出し。
 
 だから、勝手に運ぶなよナ、と。
 通常であれば、ゼロ距離眼魔砲あたり、カマしてやるのだけれど。

 ―――まぁ、ラクだから………運ばせてやるか。何かコレ、夢らしいし?
 
 正直。もの凄く、眠くなっていて。
 夢の中で眠ると、どうなるんだろう―――他愛も無い事を、思いつつ。
 
 シンタローは、マジックの肩に顔を埋めた。 


 ―――温かい。


 ………気持いい。


 心地よい、安心感に包まれて。
 ゆらゆらと揺られながら。


 ―――幼い頃の。幸せな夢を、見た。



*********


 目覚めれば。何だかやたらに、気分が良かった。
 ずっと、つっかえていたものが取れたような、不思議なカンジ。

 ベッドに手を付き、身を起こす―――その指先に。
 温かな、体温を感じ。
 
 シンタローが、視線を落とした先には。
 マジックが、寄り添うように眠っていた。

 ―――ええと。昨日は………イラついた挙句、グンマ達とケンカして。公園で頭冷やしてたら、トットリと会って、ミヤギん家で酒盛りして………。

 そこから、ふっつりと記憶が無い。

 ―――ミヤギん家のワケねぇよな、オレのベッドだし。オヤジがいるし。どうやって、帰ったんだっけ? オレ………。

 顔をしかめつつ、首を捻って。モヤモヤしたものが、形を結ぼうとした、瞬間。

 ―――夢だから。忘れて、いいんだよ?

 突然、脳裏に。そんな囁きが、閃いて。
 次の瞬間、総てが霧散する。

 ………まぁ、いいか。忘れるぐらいなら、大したコトじゃねーんだろ。

 肩を竦めたシンタローは。
 再び、傍らで眠る父親の姿を、見つめてみる。

 起きていてさえ、五十過ぎにはとても見えないのだけど。
 圧倒的な圧力を誇る、両目を閉じていると。
 それよりも更に、若く見える。

 張りのある頬に、片手で触れて………シンタローは。
 そっと自らの顔を、近づけていく。

 ―――唇が、触れるか触れないかの、寸前。

「………テメ。タヌキ寝入りしてんじゃねーぞ、マジック?」

 その耳元で、呟けば。
 
「………バレた?」

 ぱっちり、蒼い瞳を開いて。
 悪戯を見咎められた、子供のように。マジックは、笑った。

「見え見えなんだっつーの。んで? 何で、ヒトのベッドに潜り込んでんの、アンタ?」

 何故だか今朝は、気分がイイので。
 いちおう、イイワケぐらいは聞いてやるか、と尋ねると。

「え!? あ、その、ゆ、昨夜………」
「昨夜ぇ?」
「………うーん。昨夜ね、シンちゃんが帰ってきて『一人じゃ眠れないから、一緒に寝てvv パパvv』って…………」
「―――言うわけねーだろッ、眼魔砲ッッ!!!!」

 せっかく、譲歩してやったにも関わらず。 トコトン悪趣味な、冗談をカマされ。
 シンタローは、結局。お約束通りの、眼魔砲を放っていて。

「―――チッ、避けンじゃねぇ、家が壊れるだろーがッ!!!」
 見事に開いた、扉の大穴に―――かなり本気で、文句を言う。

「シンちゃん、無茶言わないでヨッッ!! 避けなきゃパパ死んじゃうでしょ!!??」
「嘘つけっ!! これっくらいで死ぬようなタマかよッ!?」

 父と息子が、朝っぱらから。命がけの漫才を、繰り広げていると。

「あっれー、シンちゃん、おとーさま。帰ってきてたのー?」
 その騒ぎを聞きつけた、グンマが。
 扉に穿たれた、くすぶる大穴から。ヒョイ、とこちらを覗き込んできて。

「朝っぱらから、団欒ですねぇ」
 その後から、しみじみと、ドクター高松。

「そうか、コレが団欒なのか………」
 真剣に感心して頷く、キンタローと。一気に辺りは、賑やかになる。

「イヤ、違げぇから、絶対ッッ!! つーか、ドクター!! アンタまた、グンマに添い寝しに来てたのかッ!!??」

「おはよー、グンちゃんキンちゃん♪ スグ、朝ゴハンにするからね~」
 そのスキに、マジックは。そそくさと、シンタローの傍らを通り過ぎて行き。

「―――ッ、マジックっ!! まだ話は、終ってねーぞッッ!!??」

 誤魔化されるかっ、と。大声を上げた、シンタローに。
 振り向いて、ニッコリと笑う。

「そうそう。甘えんぼのシンちゃん、可愛かったヨvv」

 ……………………………………………………………はぁあぁ!!??

「ええ~っ!!! おとーさまダイターンvvv」
「オヤ、おアツいですねぇ」
「そうか、良かったな」
 
「~~~~~~~~~~ッッ!! 全員ッ、ぶっ殺すッッ!!!!!」


 爽やかな、朝の一時。
 親子・従兄弟揃いぶみの、絢爛豪華な眼魔砲の饗宴が始まり。

 やがては、会議に迎えに来た。
 (こういう時だけ、ピッタリ気の合う)血縁の、美形の双子により。
 全員、大目玉を食らわされ―――お尻ペンペンの罰を受けたとか、受けなかったとか(さて、どっちでしょう?(笑))





******************













 ―――私の為に、生まれた
 
 一目見た瞬間、捕われた
 失えば、生きていけないとさえ思った
 

 ………また、この腕に戻ってきてくれた


 これ以上は、何もいらない
 どうか、この
 目の眩むような、幸福の日々よ


 此処に、在れ

 永遠に、在れ――――――











○●○コメント○●○
 五月様へ。大変お待たせいたしました。
  「マジシンでパパに甘えたいシンちゃん」………なんですか、コレ???(←ぎ、疑問系!!??)
 初!! アンケにご回答頂けた、余りの嬉しさに。
 無理矢理、リクエストをねだった挙句、二ヶ月もかかり、主旨解ってとんのか!? というシリアスなんだかギャグなんだか、しかもミヤトリミヤなんだかマジシンなんだか。
 そもそもテーマさえ、カスってるのかどうなのか…………あ、あはははははは~~~~~~(x_x;)シュン

 カウントリクやってないのは、出し惜しみしてるワケではなく。
 単にトロくさい上文才が無いから、というのを暴露してしまいましたですー、ハハ…………ゴメンナサイ(T^T)

 補足。誕生日から言えば、グンちゃんが長男のハズなんですが、入れ替わってるんですよね…………?? だったら、キンちゃんが長男、あ、でもキンちゃんは従兄弟。そもそも、公式データの誕生日は、入れ替わった後の誕生日? 戸籍上の誕生日? とか、悩んだ挙句。
 だってアーミンワールドだしvv タンノパパ、アワビだしvv とか、無茶苦茶な言い掛かりで、シンちゃんを長男にしてみましたvv
 大変なお目汚し、失礼致いたしましたm(._.)m ふかぶか。











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