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PAPUWA~Speed Master~






愛しているよ
愛しているよ
愛しているよ


お前が望むのなら どんな不可能でも可能にしてみせよう

お前が微笑むのなら どんな道化でも演じ続けてあげよう


愛しているよ
愛しているよ
愛しているよ


だからお前は 永遠に私の手の中で





















「――――」

青く輝く眼が、鈍く痛んだ。
束の間視界を暗く閉ざして、目蓋の裏に映る残影を追い求める。
ちらちらと瞬いては、揶揄するように消え失せる一瞬の輝き。
忌々しくなって、私は短く息を吐き出した。
眼を開けば大地が大きく口を開けている。
ぶすぶすとあちこちで煙が上がり、鼻をつく異臭がした。

「……秘石が無いだけで、こうもコントロールが狂うとはな」

ここまで派手にやる気はなかったのだが。
眼魔砲で削られ、大きなクレーターが出来た地面を見下ろし私はやれやれと嘆息した。
爆心地にあったものは人間であろうと物であろうと、塵一つ残さず綺麗に消滅している。
そこから遠ざかった場所には、累々と横たわる兵士の亡骸があった。

敵を殲滅する事が今回の目的だ。
だがこうも一瞬で片をつけるつもりは無かったし、こんな乱暴な手段を取る気も無かった。
紳士的じゃないだろう?

「これじゃ、軽い運動にもならないねぇ。折角この私が遊んであげようと思ったのに」

敵の不甲斐無さに失笑し、わざわざ私を出向かせた部下の無能ぶりを皮肉った。
後ろで恐怖に身を竦める部下達の気配を感じながら、私は前髪をかき上げる。
――眼が、じくじくと痛んだ。
ともすれば暴走しようとする力を無理矢理に抑え込むと、私の内深くで何かが不満げに唸り声を上げた。

私はこの身深くに、一匹の獣を飼っている。
誰もが獣を飼っているものだが(逆に獣に飼われている輩もいるが)私の獣は特に業が深い。
破壊しつくせと、いつも私に囁きかけてくる。
壊せ壊せ壊してしまえと、私の中で叫んでいる……いつも何かに飢えている、厄介な獣。
私の愛する者は、その獣を可哀想だと言った。
「いつか食い殺されるのは、アンタだぜ」と。

それも悪くないね。
だけど私が壊して。食らって。全てめちゃくちゃにしてやりたいと望んでいるのは、お前だから。
愛して。慈しんで。何よりも大切にしてやりたい――だがそれと同じだけ、欲望は募る。


生まれてくるはずのない髪と眼の色を持った子ども。
私はお前を、愛している。
お前と、私自身の野望の為なら。私は何だってするよ。



「――――だから、早く……」


早く。
帰っておいで、私のもとへ。
お前を幸せにしてやれるのは、私だけだ。
私の獣を殺せるのは、お前だけだ。
私が欲しいのは――。






「――――」

目の前の光景に興味を失って、私は踵を返した。
誰が死のうと誰が生きようと、それがどうしたんだ?大した事ではない。
世界の人口は多すぎるのだから、意味の無い人間は死んだ方がいい。
その方が世界も綺麗になる、そう思わないかい?
愛しいあの子が生きていく世界は、少しでも美しくあってほしい。
血にまみれ、罪に穢れたこの身で思う事は、お前の事。

綺麗な事だけ見せてあげる。
綺麗なものにだけ触れさせて。
ずっとずっと、せめてお前だけは綺麗でいてほしい。
綺麗な笑顔で、私の傍にいてほしい。
誰よりも穢れた、私の傍に。



「総帥。敵は完全に沈黙、敵兵の生存者はゼロと確認致しました」
「そうか。では全団員を召集、これより撤収作業に取り掛かれ」
「はッ」


敬礼して駆けていく部下を見送り、私は飛行艇へと歩を進める。
眼魔砲で一瞬の内に消し飛ばしたから、きっと血の匂いは付いていないはずだ。
だが、鮮やかな真紅の総帥服が自分は人殺しなのだと、否が応でも突きつけてくる。
今更それくらいの事で揺らいだりはしないが(だって自分とあの子の為なら何を犠牲にしても惜しくない)それでもふと、何か大切なものをどこかに置き去りにしてしまったような……言いようの無い不安と恐怖に駆られる事がある。


「……シンタロー……」


お前がここにいれば、何かが違うのだろうか?
お前なら、私に足りない何かを持っているのだろうか。


答えを探して空を仰いでも。
汚れた世界が見えるだけだった。









愛しているよ
愛しているよ
愛しているよ


お前を守る為ならば 私は何も惜しくはない

お前が傍にいてくれるなら 私は全てを捧げよう


愛しているよ
愛しているよ
愛しているよ



私の世界で綺麗なのは ただ一つお前だけ
どうか 永遠に此処にいて







――それが叶わぬ願いだと 知っていても
私はお前を 愛している







~END~


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