ねえパパ。誕生日、何が欲しい?
物心ついた時から毎年繰りかえされた俺からのクエスチョン。
対する親父のアンサーは常にひとつ。
おまえのくれる物ならなんだってv
…って、馬鹿のひとつ覚えかっつの。
そういう答えが返ってくんのはわかりきってたけど、今年もきいた。
別にこんな質問、しなくたってよかったんだ。
いやむしろ、その一人ツッコミをしたいから、きいたようなもんだった。
…逃げ場をつくる言いわけなのは、マジックだってわかってただろうけど。
「…なんか、欲しいもん、あんの? 誕生日」
おやすみのあいさつ。
唇の触れない、かるいAir Kissをして。
しどろもどろにきいたのは、あの視線をみつけたから。
「ああ、」
最近、時々。
不思議とマジックは、こういう目をするようになった。
あの青、どこか冷たくこわく感じていた青は、ふと気づくと炎のようにゆらめいた青色をしてる。青いのに、熱い。
見てはいけない。
とっさに思うのはその言葉で、何故いけないのか、警鐘を鳴らすのは自分の中のなんなのか、いまだ理由はわからない。
ただ、ひきこまれそうで。
“それ”から逃げろ逃げろと、思ってしまう。
今までみたいな怖いとか嫌だとか、気持ちとか感情が追いつく前に条件反射で。思うコレと、思わせるまなざしはなんだ。
転ぶ前に手をつくとか、反射運動のひとつみたいな?
それとも本能ってこういうもんか。
「ごめんね、シンタロー」
あやまる言葉をつづけて俺の頬をつつんだふたつの手のひらの、さらりと乾いた感触も、ゆれたその瞳も。
ああ。
嘘だ嘘だ。
重ねられたくちびるが熱くて、胸がぐっと苦しくなる。
親愛なんてとっくにすぎてるじゃないか。
「シンちゃんの、ぜんぶが欲しいんだよ」
はじめて知ってしまった。
こんな、たましいのふるえるキスを。
今までの、嘘を。
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