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kks

キンシン祭り!!  
KILL LOVE 記念SS    *10月11日にはworks部屋に移動しました。



不法侵入者 1 




遠征中の予定が早まって、思っていたよりも早く団に帰ることになることはままある。
一ヶ月は不在かと思われた新総帥の部屋は、予定より2週間も早く主を迎えた。


「それにしても今回は早く帰れて良かったよな~」
私服に着替えたシンタローは、冷蔵庫から冷えた白ワインを取り出しながら相棒に話しかける。
「そうだな。あの政治家の影の説得工作が効を奏した。おそらく次のリーダーになるだろう」
キンタローも従兄弟が用意したカナッペをテーブルに運びながら応えた。
まだ陽も完全には落ちていない夕方ではあったが、夕食までまだ時間があったため、2人で早々に飲み始めてしまおうというものだった。
シンタローがワイングラスに2人分のワインを注ぐと、小さな2人だけの酒宴の準備ができた。
「とりあえず無事帰って来れて良かった。乾杯だな」
「ああ」
キィン、とまるで金属のような高い音が部屋に響き渡った。


すっかり暗くなった頃には、ワインの空き瓶が2つもテーブルの下に並べられていた。
キンタローはグラスを置いてソファに凭れ掛かると、L字型ソファの斜め向かいに座る従兄弟を見遣る。
あまり酒に強くはないシンタローは、同じく深く腰掛けて頬を赤く染めている。
「3本空けちまったな…」
そう言って残念そうに3本目の緑色の瓶を光に透かして、揺らしてみている。
そんな他愛もない仕草が可愛らしい。
普段から大所帯に囲まれて暮していると、こうして2人だけになった時間というのは貴重に感じる。
仕事で外出すれば側近やSPがついてくるし、プライベートでも一族や高松らがなんやかやとシンタローやキンタローに構ってくる。
しかしどうやら今日は2人が予定より早く帰ってきたこともあってか、マジックはまだ帰ってきておらず、プライベートスペースは非常に静かだった。


「あー眠ぃ・・・」
シンタローは半分落ちかけた目をこすった。
しかし、今従兄弟に眠られると千載一遇のチャンスを逃すかもしれない。
キンタローは、立ち上がると彼の側に寄った。
「シンタロー・・・」
「・・・ん?」
天井を向いていたシンタローは、少し落ちた瞼でキンタローの方を見た。
あくびをかみ殺していたのか、黒い瞳が潤んで揺れていた。
その様子が可愛らしくて思わず笑みが出る。
隣に座り、おろした長い黒髪を撫でる。
まっすぐにその瞳を見つめると、こちらの意図をようやく察したのか、彼は戸惑ったように視線を下に逸らした。
恥ずかしがっているのだろうか。
強がりで尊大な従兄弟が頬を染めてうつむいている様子は普段の彼からは想像もつかない。
そっと手を頬に添えると、やっと赤い顔をあげた。
ゆっくりと、お互いの唇の距離が無くなっていく。
とうとう、触れるか、というその時。


ガチャン!!


2人の背後で盛大な物音がした。
「誰だ!!」
びくりとして一斉に振り向くと、あろうことかシンタローの部屋の自動扉が閉まりかけるところだった。
誰かが、慌てたように逃げていく影。
ありえない。
ガンマ団総帥たるシンタローの部屋は、指紋認証でロックがかけられているため、在室している時は一族の人間ですら簡単に開けることはできないのである。
・・・まあ、一族、特にシンタローを異常なまでに溺愛している人物の対策にキンタローがつけたロックであるのだが。
実は公私とも相棒を自認しているキンタローの指紋も登録してあったが、それは2人とグンマしか知らなかった。
キンタローが駆け寄ると、ドアのところになんと割れた酒瓶が落ちていた。
派手な物音の正体はこれらしい。
瓶に入っていたウィスキーらしき琥珀色の液体がカーペットに染みを作り、強いアルコール臭を放っている。
「ちっ。一体誰だ!?勝手に入ってきやがって・・・!」
キンタローは無言で、影が逃げた方へためらいもなく全速力で駆けていく。
シンタローも後に続いた。
T字になった廊下で一瞬立ち止まったキンタローに追いつくと、無言で二手に分かれた。


しばらくして、2人とも部屋に戻ってきた。
全く人影の行方がわからない。
しかも、なぜ酒瓶?
酒瓶で襲い掛かるつもりが、落としてしまって慌てて逃げたのだろうか。
間抜けなヤツだ。
キンタローはまず指紋認証ロックの制御板が故障していないかどうかを確認した。
一度閉めてシンタローに開けさせたが、特に故障している様子はなかった。
こじ開けられた様子もない。
次にキンタローはタオルを手に巻いて慎重にビンの欠片を集めると、指紋をとるためにそれらをとっておくことにした。
「何たることだ・・・オレの作ったセキュリティが万全ではないということだな。とにかく、SPとハウスキーパーに連絡を」
キンタローは掃除をさせるべく連絡をとった。
ハウスキーパーとSPはすぐやってきて、こぼれたウィスキーの処理をし始めた。
「彼らに捜索を手伝ってもらうだろう?」
駆けつけたSPを指しながらキンタローが尋ねるが、先ほどから無言だったシンタローは何やら考え込んでいるようだった。
何かアイデアがある時の顔だな、とキンタローは思い、その顔が正面を向くのを待った。
ゆっくりと、シンタローは顔を上げ、こう告げた。
「オレらの他に、オレの部屋に入れる可能性のあるヤツが一人だけいる」


「何・・・?誰だ、グンマか?」
「いや、グンマとオレの指紋は違うだろ?」
指紋が違う、と言われて、キンタローはあまり思い出したくない1人の人物が頭に浮かんだ。
「…ジャンか…!」
シンタローは眉をしかめ、いかにも不愉快だと言いたげな表情で頷いた。
そう。
認めたくない事実ではあるが、シンタローは今、赤の番人ジャンのものだった体を使っている。
パプワ島でシンタローに体を明け渡し、精神体になったジャンは新しい体を赤の秘石からもらったはずであるが、オリジナルの肉体と全く同じ肉体を所有している可能性は高い。
全く故障している様子のない右指の指紋認証のロックが外せるとしたら、指紋が同じ人物 ― つまり、ジャンくらいしか考えられないのだ。
「ちっ。とりあえず、ヤツを探そう。とっちめてやる」
シンタローがとんでもないところを見られたのという羞恥に真っ赤になりながら怒る。
頷くと、ジャンがいるはずである研究棟に電話をかけた。


「ああ、キンタローだ。ジャンはいるか?」
若い研究員が出たが、ジャンはいないと言う。
どうやら、誰かに呼ばれて1時間ほど前に研究棟を出て行ったが行き先はわからないという。
「そうか。わかった。もし戻ってきたら連絡をくれ」
シンタローは不機嫌そうに眉根を寄せ、とにかく電話をかけまくれ、と言った。
しかし高松にはシンタローがかけた。
キンタローがかけるとメロメロになってしまい、しかも話を引き伸ばそうとするのでうっとうしかったから。
案の上「知りませんよ」とそっけない。
同時にキンタローがグンマにかけてみると、ジャンを先ほど一族のプライベートスペースで見たという。
「どこで見たんだ?」
と聞くと、ハーレムの部屋の近くだという。
「うし。とりあえずハーレムの部屋に行ってみよう」
SPらに指示を出し、2人でハーレムの部屋に向かうことにする。


飛行船で暮らしていることが多いので滅多に戻ってこないハーレムの部屋は、1つ下の階にあった。
しかし任務で今はある国に行っている筈で、予定では部屋の主はいないはずであった。
部屋の前に立つと、いるかどうかはわからなかったがとりあえずインターフォンのボタンを押す。
すると、無人だと思っていた室内から人の声がした。
「・・・あん?」
内側からドアが開くと、まずあふれ出してきたのはものすごい酒の匂い。
さっきまで2人も酒を飲んでいたので鼻が利かなくなっているはずなのに、それでもわかるほどの酒の匂いだった。
「ハーレム叔父貴」
1人であれだけの量を飲んだのだろうか?
日本酒、ウィスキー、ブランデー、ビールなど様々な空瓶がテーブルや床に散乱していた。




キンシン祭り!!  
KILL LOVE 記念SS    *10月11日にworks部屋に移動しました。



不法侵入者 2 




「あんだよ、2人揃って」
硬い金の髪を奔放に伸ばしたハーレムは、ドアの側面に寄りかかってぼりぼりと頭を掻いた。
「いや、ハーレム、団に戻ってたんだな」
シンタローは口を開くとこの叔父とケンカばかりするため、キンタローが淡々と尋ねる。
「ああ。さっさと仕事終わらせて帰ってきた。おめーらもずいぶん早かったじゃねーか」
だるそうに言う叔父の息は酒臭い。
「ああ。全て順調に行った。・・・ところで、この近くでジャンを見なかったか?もしかしたら一緒にいるんではないかと思ったんだが」
キンタローが静かに尋ねると、ハーレムの片眉が跳ね上がった。
「あいつなら、逃げてったぜ」
「逃げた?」
ニヤリと笑う叔父。
シンタローはこの笑みを見るとムカツク、と言っていた。
「ああ。酒持って歩いてたからよお、一緒に飲むべって言ったんだけど、逃げたんだよ、アイツ。だから追いかけた」
「・・・」
「でも、上の階で見失っちまって」


金の髪と黒の髪の従兄弟同士は、顔を見合わせた。
つまるところ、こういう推測が成り立つ。
何らかの事情でウィスキーを抱えて一族のプライベートスペースを歩いていたジャンが、不運にもハーレムに見つかって酒目当てで追い回された。
そこで、機転を利かせて隠れるつもりで無人だと思っていたシンタローの部屋に入った。
しかし、予定外に早く帰ってきた2人がいた(しかも取り込み中だった)ため、慌てて逃げた。
・・・ということだろうか。


「どうする・・・?」
「ジャンのやろー。やっぱりむかつくからとっちめる」
シンタローは見られたというショックを再び思い起こしたのか、膨れっ面で唸った。
先ほど探してもいなかったのだから、すぐ見つかるだろうか。
せっかくマジックもいないのに、このままジャンの捜索に時間をかけていては、2人の時間が短くなってしまう。
「とりあえず今晩はロックの設定を変えて、アナログな物理鍵を使うという方法はどうだ?」
「オレは今すぐアイツを一発殴って記憶を消したいんだが」
「ジャンだっておそらく悪気があったわけではないだろう。とりあえず、ジャンを見たら通報するように通達を出しておけばいい」
優しいのか優しくないのかわからない提案をすると、しばらくむっとしていたシンタローも渋々頷いた。
「そうだよな。逃げられるわけないし・・・」
そんなやりとりをしながらシンタローの部屋に向かっていると、件の人物が、所在無げにドアの前に佇んでいるのが見えた。


「ジャン・・・!てめー!勝手に人の部屋入ったな!!」
「うわ!シンタロー!やめろその構え!!」
シンタローが眼魔砲の構えを取り出したので、ジャンは泣きそうな顔で慌てて降参のしるしに両手を上げた。
面差しが似通っている ― いや、全く同じ顔の2人が対峙しているのは奇妙な光景だった。
「悪かったよ!謝りに来たんだ。ハーレムがあのウィスキーをとりあげようとしたから・・・。慌てて逃げ込もうと思ったんだ。一度閉まったら、ハーレムだって中に入れないだろ?」
2人が推測した通りの理由だった。
「それでオレたちがいたものだから、驚いて落としたのか」
キンタローが静かに尋ねると、ジャンは2人の顔色を伺いながら頷いた。
「いないと思ってたから・・・。すまん。本当に悪かった。もう二度と勝手に入ったりしない」
ジャンは本当に申し訳なさそうに謝罪した。
それがまるで若い頃のシンタローを見ているようで、キンタローはなんとなくそれ以上責める気になれなかった。
「もうお前が入れないようにロックのシステムを変更する」
感情を押し殺して淡々と告げると、ジャンはバツが悪そうな顔をした。
「・・・それに見たことは誰にも言わない」
言いにくそうに付け加えた黒髪の男に、
「あ、あれはだなっ!!目にゴミが入ったからキンタローに見てもらってただけだ!!」
シンタローが真っ赤になりながら吠えた。
思わず従兄弟を見る。
目を閉じながら目の中のゴミを見ることなど不可能なのだが、いつも正直に思ったことを話すと怒られるので、口を挟むのは差し控える。
ジャンは、困ったような顔つきになった。


「だいたいよー。てめえ、なんでこんなトコいるんだよ」
シンタローは不機嫌も露に、ジャンが一族のプライベートスペースにいたことを詰問する。
腕組みをした彼は、返答次第では本気で殴るかもしれなかった。
「いやあ・・・。実は、サービスが一緒に飲もうって言ってくれたから・・・。一番いいウィスキーを買って持ってきたんだ」
「え・・・!?サービス叔父さん、帰ってきてるのか?」
シンタローの顔が、サービス、という言葉に一転して輝きだした。
放浪癖のある敬愛する叔父が、家に戻ってきているなんて。
「お前たち、予定より早く帰ってきたから知らなかったんだよな。2日前にふらっと帰ってきたんだよ」
さっきまでの不機嫌はどこへやら。
シンタローはサービスに会わせろ、とジャンを急かし始めた。


キンタローは額に手をあてて嘆息する。
この様子では、シンタローはサービスに会いに行って一緒に飲もうと誘われるかも知れない。
せっかくの2人の時間が、不法侵入者によって奪い取られてしまった。
キンタローは2人の後をついて行きながら、どうやってこの不法侵入者に仕返しをしようかと考えていた。


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