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家政夫vs主夫
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「はぁ……」
ヤンキー、もといリキッドは、何度目になるとも知れない深いため息をついた。
声をかけんのも面倒で、放っといているが……。
はっきり言ってウザェ。
コイツはいつもこんなだ。
ため息ついたり、明後日の方向見ながらボーっとしてたり……。
五月病か?
んで、決まっていつも、何か言おうとして何も言わない。
大概、俺がそれにイラついて、ド突いて終わり。
そんなんの繰り返しで、絶対言いやがらねぇ。
意外と頑固だな。ヤンキーめ。
まぁ俺だって、いつもいつも怒鳴りっぱなしなわけじゃない。
わけじゃないが……。
……次やったら言う。
握った拳のおまけ付きで。
いい加減学習やがれ。
五月病なら他所でやれ。
「やっぱ敵いませんね。シンタローさんには」
いきなりなんだと思った。
ああ? 敵わねぇ?
当ったり前だろ。てめぇが俺の相手になるはずねぇ。
「結構、自信あったんですけど……」
何のだ?
とは聞かない。
思い当たる事は山ほどある。
家事とか、力とか、顔とか?
まぁそんなとこだろ。
しかしよ、困ったように笑って言うその顔、無性に腹が立つ。
俺を負かそうなんざ十年は早ぇ。
だが、はなっから諦めてるヤツはムカツク。
怒りを込めて頭上に手刀を落としてやった。
拳骨じゃないだけありがたいと思え。
「いてェ!」
「ばぁーか」
敵わないと思ってる時点でてめぇは負けてんだ。
「そんなじゃ一生俺にゃ勝てねぇな」
顔はどうしようもないがな。
「え、いや、勝つって言うか……」
語尾がどんどん小さくなるにつれ、顔が俯いていく。
だぁー、ったくもぅ、面倒くせぇな。
完全に下を向いて、見えてきた後頭部に、軽く手をのせる。
「いつでも相手になってやるぜ?」
うわ、俺って優しい。
「っ……!」
ぱっと顔を上げたそいつは、何故か妙に嬉しそうで、半歩ほど引いた。
何か嬉しくなるような事言ったか? 俺は。
「やっぱ敵わないです。ホント」
緩んだ顔でそう言って、笑う。
「ああ? どういう意味だよ?」
「何でもないっス!」
そのまま夕飯の準備を始めたそいつに、それ以上追求する事は出来なかった。
いや、しても良かったんだが。
……まぁ、言っちまえばもうどうでも良かったと言うか、面倒だったと言うか……。
とにかくそれで終了。
全く、ヤンキー思考は理解できねぇ。
END
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後書き
お題其の弐
色んな意味で、勝てないなっていうこと。
シンちゃん、気付いてやって!可哀相!
2004(April)
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