どうしたの?
最近、シンちゃんの様子がおかしい。
前みたいに怒らなくなったのだ。
以前はそれはそれはカルシウム不足だなこの子は、と思うほど、手を握っただけでも、デートしようって言っただけでも、ほっぺにキスしただけでも顔を真っ赤にして怒ってたのに。
怒ったシンちゃんの顔も魅力的だけど☆
・・・でもホントに、どうしたの?
今日なんか、朝いってらっしゃいのチュウをしたら、やめろよ、って言いながらもくすぐったそうに笑ってたし。
いつもならアッパーが出るよね☆
夜はせっかく早く帰ってきたんだからチェスでもしようよって言ったらいいよ、って言ってくれて夕飯まで付き合ってくれたし。
・・・いつもなら、ああ?後でな!って言って結局してくれないのに・・・。
なんか、おかしい。
どうしたんだろう?
とうとう、パパの愛を受け入れる気になったのかな?
今日なら、一緒に寝ようって言っても大丈夫かな!?
夕飯の後、リビングでみんなでくつろいでいる様子を眺めているが、やっぱり愛しいシンタローの顔ばかり見てしまう。
「シンちゃん、抹茶食べさせて~」
グンちゃんが、シンタローの食べていた抹茶味のアイスをねだっている。
「ほらよ」ってシンちゃんはアイスを差し出すと、グンちゃんはうれしそうに一口すくって食べた。
「おいしい~v・・・じゃ、ボクのもあげる~」
と言ってグンちゃんは、自分のストロベリー味をすくってシンちゃんの口元に差し出した。
「お、サンキュー」
シンちゃんはぱくっとピンク色のアイスを口に入れると、うまい、と一言。
「ここのアイスはホントうまいな。今度からここのにしよう」とご満悦だ。
(・・・かわいいなあ)
自分はアイスを辞退したが、こうして子供たちの様子を眺めているだけで満足だ。
すると、シンちゃんはキンちゃんにも、「お前も食うか?」と言って抹茶味のアイスをすくった。
ラムレーズンのアイスを食べていたキンちゃんは、普段はとってもクールな感じなんだけど、こういうときはすごく子供っぽく見える時がある。
・・・まだこの世に生まれて間もないしね。
キンちゃんは当然のようにあーんと口を開けて、シンちゃんに食べさせてもらった。
あ、あ、いいな、キンちゃん。
シンちゃんに食べさせてもらってる!
「抹茶の苦味がほどよく利いていていいな」
「だろ?」
シンちゃんはほうじ茶を飲みながら、うれしそうに言った。
でも次の瞬間、シンちゃんは、
「あ、アイスついてる」
って言って、キンちゃんの口の端をその長い指でぬぐった。
そして、自分でぺろりとその指についた抹茶アイスをなめてしまった。
「キンちゃんかわいい」
グンちゃんがはやし立てる。
そうか?とキンちゃんは不思議そうな顔をしている。
(・・・)
その様子を見ていて、なんだか落ち込んだ。
シンちゃんは自分には絶対そういうことをしてくれない。
昔だったら、まだシンちゃんが反抗期の前だったらまだしも・・・。
口の端にアイスをつけるなんて芸当は、自分にはできない。
シンちゃんはああいう風に母性的な愛情?みたいなものがたっぷりあって、とっても面倒見がいい。
とっても頭が良くって、見た目は大人なんだけど時々子供っぽいキンちゃんには、やさしい。
あの島にいた時だって、なんだかんだ言ってあの子供と犬の世話を焼いていたのがものすごい板についていたし。
・・・シンちゃんもやっぱりあの子達と別れて寂しいのかな・・・?
「・・・?どーしたの?おとーさま」
グンちゃんが、どんよりとしてリビングから出て行こうとする私に、不思議そうに話しかけた。
キンちゃんの子供っぽさは、グンちゃんのそれと似ているようで微妙に違う。
シンちゃんはグンちゃんには兄貴分みたいな感じであたる。
(・・・もしかして最近妙に落ち着いてるのは、キンちゃんが母性本能(?)を満たしているから・・・?)
つまり、シンちゃんは自分以外の人間をよく構っているとき、生き生きとして、満たされている気がするのだ。
そうするとその愛情のなせる業なのか、その対象以外の人間にもこころなしか優しくなる。
そう思うと、喜んでいいのか、悲しんでいいのか、わからないマジックであった。
end
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