覇王の息子
アオザワシンたろー
その日の夕刻、ガンマ団本部に総帥艦が帰還した。
マジックを乗せたその船を、団が見送ったのはわずか三日前の話だ。予定より二日も早く帰還連絡をうけた本部側はにわかに慌しさをかもし出し、出迎えのための隊列を整えた。
団内で唯一真紅を許された男が、タラップから足を踏み出す。長身で、威風堂々とした男だ。
夕陽の中でもさんぜんと輝く黄金の髪は、周囲にある種の陶酔をもたらす。恐怖だけではなく、存在そのもので、団を率いてしまう男だった。
そのすぐ後ろに、側近たちが続いた。
隊列を組む者たちのほとんどは知らないことだったが、さすがに隊長クラスには推測が出来る。
彼らの総帥は大変な子煩悩だ。
プライベートエリアに隠し育てる息子と離れないためなら、総帥は戦地へ赴く回数を極端に減らしてしまう。当然に、そのしわ寄せは部下たちへゆく。
側近たちの憔悴しきった顔を見てみろ。ぎりぎりまで短くしたやむを得ずの総帥出陣だっただろうに、さらに現地で期間短縮させられたに違いない。
夕陽が彩る本部へとマジックは足を運ぶ。その道のりでふと、男は顔を上げた。
センター塔と、そこから繋がる事務棟。そのオレンジ色の壁は、まるで黄金の城。
マジックはそれらを眺め、足を止めた。
無心にあとを追っていた側近らが、思わずぶつかりそうになって慌てて足を止める。
「そ…総帥?」
「いかがされましたか」
マジックは微かに振り返った。
「…秘石を部屋へ運んでおけ。それから残りはお前たちで形にしろ。私は、今日はこれで下がる」
総帥室へは明日行くと、こともなげにそう言った。
「そ…総帥ッ。それでは声明文が…」
「掃討計画はこのあと直ちにとりかかってくださるとおっしゃって…」
思わず叫びそうになり、側近らは互いに言葉を飲み込んだ。
マジックは彼らが意見するのを諦めたことを見届けると、再び歩き出した。
その背を引き止める言葉など、始めから無い。ましてや本部には三日も顔を見ていない彼の最愛の息子がいる。それでも帰還後の緊急必要業務を終わらせることが先だと、マジックは承知してくれていたはずだった。
それが突然、切り替わった。どうあっても、残務は総帥が満足するように自分たちで整えなければならないようだ。
側近らは聞こえないようにため息をつき、マジックが見上げていたオレンジ色の壁を見上げた。窓の強化ガラスに夕陽が映えてまぶしいくらいだった。
「…総帥は…何を御覧になったのだ…?」
ここからは総帥一族のプライベート居住区は見えない。そこに家族の顔が見えたなら、彼らはまだマジックの変化を納得しようものだが、あいにく彼らの目には、輝かしい城しか映らなかった。
「シンちゃん!」
居住区へ足を踏み入れるなり、マジックは叫んだ。
「パパ帰ったよー!」
廊下に嬉々とした声が響き渡った。団の大多数が想像も出来ないだろうとろけきった笑顔で、今年十三になる息子の名を呼んだ。
息子は…廊下の角で、エレベーターの扉が開いたとたん叫ばれる自分の名にぎょっとして小さく跳ねた。
「パ…と…父さん…」
「シンタロー!」
突撃してくる俊足におそれをなし、シンタローは咄嗟に角を曲がって身を隠す。だが隠し終えた直後にはもう、父親の姿は目の前にあって。
「ただいまー!」
まるで猛獣のようにがっしりとシンタローの体を抱きしめた。
「わーッ」
「会いたかったよシンちゃんッ !! もうパパ毎日毎日気になって気になって。どうしてあんな通信もろくに出来ないとこに行かなきゃならないんだろうねッ」
「ぐわッ、やめ…やめろよッ。あ、足、足浮いてるッ!」
「ああ本物のシンちゃんだぁああ!」
マジックはシンタローを抱き上げるような格好で、その顔に頬を擦りつけた。
「やめろってば!」
シンタローはどうにか腕の輪から逃げ出そうとするが、大人と子供の差はいかんともしがたかった。しかも今のマジックは、三日分の情熱を溜め込んでいるのだ。
「し…仕事がまだあるんだろ !? こんなとこ来ていいのかよッ」
「平気!パパの部下なら四日ぐらい徹夜できちゃうからね!」
「???」
「それにシンちゃんがパパのことお出迎えしてくれたんだもの。お仕事なんかしてられないさ」
まるで幼児を扱うように軽々と息子を片腕に抱きかかえてしまえば、抗議しながらもシンタローはマジックの首に掴まった。
そして。
「…俺、お出迎えなんて、してねーぞ?」
「さっき飛行場を見てて、パパと目があっただろう?」
眩しい夕陽に降り立つ金色の覇王。それがシンタローが自慢の父の姿だった。
だが。
「見えて…」
「なんだって『見える』のさ。パパはね」
首に掴まる我が子の黒い瞳に答えるように、マジックは微笑んだ。
廊下のすぐ先は、マジックの部屋だ。
あちこちにシンタローのカップやシンタローのペンや、シンタローの物が置かれている。
「まずはお茶を入れようねぇ。教育係からの報告は暗号で送られてきてたけど、やっぱりどんなお勉強だったのかシンちゃんに直接聞きたいしね」
うきうきと湯をポットに入れ、葉が開くのを待ってカップに注ぐ。
部屋に芳しい香りが広がった。
一方でシンタローは、ソファに浅く腰かけ、落ちつかない様子で視線をさまよわせていた。
「はい、どーぞ」
マジックはソーサーをテーブルに置いた。シンタローの分には砂糖もふたつ、入れてある。甘くしてあるのは、シンタローの口を軽くするため。どうやらこの息子は、何か戸惑っているように見えたので。
「うーん、やっぱりシンちゃんと飲むお茶は格別だね」
シンタローの顔が見えるようにと一人掛けのソファに座ったマジックは、ことさら楽しげにカップを手にし、ゆっくりと口をつけた。
シンタローは、握り締めた拳を膝に置いたままうつむいている。
静かに、時間だけが流れる。
ことり、とマジックがカップを置くその音に、シンタローの肩が震えた。
「…」
「シンタロー」
それが、彼の息子の名。
「こっちへおいで」
シンタローが、はっとして顔を上げた。
父はソファに深く腰を下ろし、シンタローを見つめている。その瞳は、海のように深いブルー。
シンタローは視線を逸らすように足元を、それからティーカップを、そして部屋の隅を見遣った。
「…おいで」
背中に聞こえる、父の声。
シンタローは再び窺うようにマジックを振り返った。
そして、ゆっくりと立ちあがる。
テーブルとソファの隙間は、シンタローにとって狭いというほどのこともない。ほんの数歩で、父の元に辿りついた。
シンタローはそのままラグの上に腰を落ろし、マジックの膝に手を添えて顔を埋めた。
「一体どうしたんだい?可愛いシンタロー」
マジックの大きな手が、息子の黒髪をゆっくりと撫でる。成長期にさしかかっているとはいえ、変声もまだのシンタローは、彼にとって本当に幼い存在だった。
幼くて儚くて、いとおしい存在だった。
「…父さん…」
囁くような呼び声に、マジックは応える。
「俺、もうすぐ士官学校に入るんでしょう?」
問いというよりも確認のような台詞だった。マジックは手を休めることは無しに、そうだねぇ、とだけ応えた。
「先生が言ってたよ。他の子たちもいっぱい、来るんだって」
シンタローの言う先生とは、マジックがつけた教育係たちのことだ。学問と武道の両方とを、シンタローは習っている。マジックは通常の初等教育を与えるつもりなど、毛頭なかった。
実際、総帥の後継者であるシンタローに、生半可な教育は反って酷だ。
日々、その成果については報告が入る。遠征中も、暗号化された数値連絡が届いていた。暗号化せねばならなかったからこそ、普段なら報告されるべきシンタローの様子については省かれた。
いつから、シンタローはうつむいていたのか。
マジックは無言のまま、黒髪を梳る。
「ちゃんと勉強しないと、…抜かれるって…」
マジックが瞳を閉じる。手が、止まる。
「強い子は一杯いるって…。だから…」
シンタローの額がマジックに強く押しつけられた。ただ一人…、一族を除くとただ一人で育てられたシンタローにとって、未知なるものは希望ばかりではない。
彼の父が、いかな立場を持つ人間であるかを、彼はとうに知っていた。
「…なーんにも、心配はいらないヨ?」
マジックは、声の調子を上げて応えた。
「だってシンちゃんはパパの子だもの」
「でもッ」
シンタローが顔を上げた。
不安で不安でたまらない、といったその表情を、マジックは見下ろした。
「シンちゃんは自分で思ってる以上に強いよ?進学なんかまだ先だし、この調子だと入学式までには大人より強くなってるかもしれないね。…まったくどの先生だろう、そんな世間知らずなことを言うのは。あとで叱っておかないと」
マジックが諭すようにゆっくりと言葉を紡ぐので、シンタローはそれが本当のことのように思えてきた。大きな手は、嘘なんかじゃないよと囁くように撫でてくれる。
「…うん…」
「わかったね?」
「…わかった」
繰り返すのは、言葉の呪文。マジックの言葉は全て真実になる。マジックの言葉さえあれば、真実に変わる。
男はシンタローの表情に笑顔が浮かんだのを見てとって、頷いた。
「良い子だね、シンタローは。じゃあパパに、ただいまのキスをさせてくれるかな」
指を顎下に差し入れて掬い上げるようにしてやれば、シンタローは伸びあがるように引き寄せられる。
そして閉じられたまぶたに、唇…。
END
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アオザワシンたろー
その日の夕刻、ガンマ団本部に総帥艦が帰還した。
マジックを乗せたその船を、団が見送ったのはわずか三日前の話だ。予定より二日も早く帰還連絡をうけた本部側はにわかに慌しさをかもし出し、出迎えのための隊列を整えた。
団内で唯一真紅を許された男が、タラップから足を踏み出す。長身で、威風堂々とした男だ。
夕陽の中でもさんぜんと輝く黄金の髪は、周囲にある種の陶酔をもたらす。恐怖だけではなく、存在そのもので、団を率いてしまう男だった。
そのすぐ後ろに、側近たちが続いた。
隊列を組む者たちのほとんどは知らないことだったが、さすがに隊長クラスには推測が出来る。
彼らの総帥は大変な子煩悩だ。
プライベートエリアに隠し育てる息子と離れないためなら、総帥は戦地へ赴く回数を極端に減らしてしまう。当然に、そのしわ寄せは部下たちへゆく。
側近たちの憔悴しきった顔を見てみろ。ぎりぎりまで短くしたやむを得ずの総帥出陣だっただろうに、さらに現地で期間短縮させられたに違いない。
夕陽が彩る本部へとマジックは足を運ぶ。その道のりでふと、男は顔を上げた。
センター塔と、そこから繋がる事務棟。そのオレンジ色の壁は、まるで黄金の城。
マジックはそれらを眺め、足を止めた。
無心にあとを追っていた側近らが、思わずぶつかりそうになって慌てて足を止める。
「そ…総帥?」
「いかがされましたか」
マジックは微かに振り返った。
「…秘石を部屋へ運んでおけ。それから残りはお前たちで形にしろ。私は、今日はこれで下がる」
総帥室へは明日行くと、こともなげにそう言った。
「そ…総帥ッ。それでは声明文が…」
「掃討計画はこのあと直ちにとりかかってくださるとおっしゃって…」
思わず叫びそうになり、側近らは互いに言葉を飲み込んだ。
マジックは彼らが意見するのを諦めたことを見届けると、再び歩き出した。
その背を引き止める言葉など、始めから無い。ましてや本部には三日も顔を見ていない彼の最愛の息子がいる。それでも帰還後の緊急必要業務を終わらせることが先だと、マジックは承知してくれていたはずだった。
それが突然、切り替わった。どうあっても、残務は総帥が満足するように自分たちで整えなければならないようだ。
側近らは聞こえないようにため息をつき、マジックが見上げていたオレンジ色の壁を見上げた。窓の強化ガラスに夕陽が映えてまぶしいくらいだった。
「…総帥は…何を御覧になったのだ…?」
ここからは総帥一族のプライベート居住区は見えない。そこに家族の顔が見えたなら、彼らはまだマジックの変化を納得しようものだが、あいにく彼らの目には、輝かしい城しか映らなかった。
「シンちゃん!」
居住区へ足を踏み入れるなり、マジックは叫んだ。
「パパ帰ったよー!」
廊下に嬉々とした声が響き渡った。団の大多数が想像も出来ないだろうとろけきった笑顔で、今年十三になる息子の名を呼んだ。
息子は…廊下の角で、エレベーターの扉が開いたとたん叫ばれる自分の名にぎょっとして小さく跳ねた。
「パ…と…父さん…」
「シンタロー!」
突撃してくる俊足におそれをなし、シンタローは咄嗟に角を曲がって身を隠す。だが隠し終えた直後にはもう、父親の姿は目の前にあって。
「ただいまー!」
まるで猛獣のようにがっしりとシンタローの体を抱きしめた。
「わーッ」
「会いたかったよシンちゃんッ !! もうパパ毎日毎日気になって気になって。どうしてあんな通信もろくに出来ないとこに行かなきゃならないんだろうねッ」
「ぐわッ、やめ…やめろよッ。あ、足、足浮いてるッ!」
「ああ本物のシンちゃんだぁああ!」
マジックはシンタローを抱き上げるような格好で、その顔に頬を擦りつけた。
「やめろってば!」
シンタローはどうにか腕の輪から逃げ出そうとするが、大人と子供の差はいかんともしがたかった。しかも今のマジックは、三日分の情熱を溜め込んでいるのだ。
「し…仕事がまだあるんだろ !? こんなとこ来ていいのかよッ」
「平気!パパの部下なら四日ぐらい徹夜できちゃうからね!」
「???」
「それにシンちゃんがパパのことお出迎えしてくれたんだもの。お仕事なんかしてられないさ」
まるで幼児を扱うように軽々と息子を片腕に抱きかかえてしまえば、抗議しながらもシンタローはマジックの首に掴まった。
そして。
「…俺、お出迎えなんて、してねーぞ?」
「さっき飛行場を見てて、パパと目があっただろう?」
眩しい夕陽に降り立つ金色の覇王。それがシンタローが自慢の父の姿だった。
だが。
「見えて…」
「なんだって『見える』のさ。パパはね」
首に掴まる我が子の黒い瞳に答えるように、マジックは微笑んだ。
廊下のすぐ先は、マジックの部屋だ。
あちこちにシンタローのカップやシンタローのペンや、シンタローの物が置かれている。
「まずはお茶を入れようねぇ。教育係からの報告は暗号で送られてきてたけど、やっぱりどんなお勉強だったのかシンちゃんに直接聞きたいしね」
うきうきと湯をポットに入れ、葉が開くのを待ってカップに注ぐ。
部屋に芳しい香りが広がった。
一方でシンタローは、ソファに浅く腰かけ、落ちつかない様子で視線をさまよわせていた。
「はい、どーぞ」
マジックはソーサーをテーブルに置いた。シンタローの分には砂糖もふたつ、入れてある。甘くしてあるのは、シンタローの口を軽くするため。どうやらこの息子は、何か戸惑っているように見えたので。
「うーん、やっぱりシンちゃんと飲むお茶は格別だね」
シンタローの顔が見えるようにと一人掛けのソファに座ったマジックは、ことさら楽しげにカップを手にし、ゆっくりと口をつけた。
シンタローは、握り締めた拳を膝に置いたままうつむいている。
静かに、時間だけが流れる。
ことり、とマジックがカップを置くその音に、シンタローの肩が震えた。
「…」
「シンタロー」
それが、彼の息子の名。
「こっちへおいで」
シンタローが、はっとして顔を上げた。
父はソファに深く腰を下ろし、シンタローを見つめている。その瞳は、海のように深いブルー。
シンタローは視線を逸らすように足元を、それからティーカップを、そして部屋の隅を見遣った。
「…おいで」
背中に聞こえる、父の声。
シンタローは再び窺うようにマジックを振り返った。
そして、ゆっくりと立ちあがる。
テーブルとソファの隙間は、シンタローにとって狭いというほどのこともない。ほんの数歩で、父の元に辿りついた。
シンタローはそのままラグの上に腰を落ろし、マジックの膝に手を添えて顔を埋めた。
「一体どうしたんだい?可愛いシンタロー」
マジックの大きな手が、息子の黒髪をゆっくりと撫でる。成長期にさしかかっているとはいえ、変声もまだのシンタローは、彼にとって本当に幼い存在だった。
幼くて儚くて、いとおしい存在だった。
「…父さん…」
囁くような呼び声に、マジックは応える。
「俺、もうすぐ士官学校に入るんでしょう?」
問いというよりも確認のような台詞だった。マジックは手を休めることは無しに、そうだねぇ、とだけ応えた。
「先生が言ってたよ。他の子たちもいっぱい、来るんだって」
シンタローの言う先生とは、マジックがつけた教育係たちのことだ。学問と武道の両方とを、シンタローは習っている。マジックは通常の初等教育を与えるつもりなど、毛頭なかった。
実際、総帥の後継者であるシンタローに、生半可な教育は反って酷だ。
日々、その成果については報告が入る。遠征中も、暗号化された数値連絡が届いていた。暗号化せねばならなかったからこそ、普段なら報告されるべきシンタローの様子については省かれた。
いつから、シンタローはうつむいていたのか。
マジックは無言のまま、黒髪を梳る。
「ちゃんと勉強しないと、…抜かれるって…」
マジックが瞳を閉じる。手が、止まる。
「強い子は一杯いるって…。だから…」
シンタローの額がマジックに強く押しつけられた。ただ一人…、一族を除くとただ一人で育てられたシンタローにとって、未知なるものは希望ばかりではない。
彼の父が、いかな立場を持つ人間であるかを、彼はとうに知っていた。
「…なーんにも、心配はいらないヨ?」
マジックは、声の調子を上げて応えた。
「だってシンちゃんはパパの子だもの」
「でもッ」
シンタローが顔を上げた。
不安で不安でたまらない、といったその表情を、マジックは見下ろした。
「シンちゃんは自分で思ってる以上に強いよ?進学なんかまだ先だし、この調子だと入学式までには大人より強くなってるかもしれないね。…まったくどの先生だろう、そんな世間知らずなことを言うのは。あとで叱っておかないと」
マジックが諭すようにゆっくりと言葉を紡ぐので、シンタローはそれが本当のことのように思えてきた。大きな手は、嘘なんかじゃないよと囁くように撫でてくれる。
「…うん…」
「わかったね?」
「…わかった」
繰り返すのは、言葉の呪文。マジックの言葉は全て真実になる。マジックの言葉さえあれば、真実に変わる。
男はシンタローの表情に笑顔が浮かんだのを見てとって、頷いた。
「良い子だね、シンタローは。じゃあパパに、ただいまのキスをさせてくれるかな」
指を顎下に差し入れて掬い上げるようにしてやれば、シンタローは伸びあがるように引き寄せられる。
そして閉じられたまぶたに、唇…。
END
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