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 ある日の朝、研究室ではパソコンに向かって仕事をしている者が1名と、椅子に座って足をブラブラさせている者が1名いた。
 「キンちゃーん、退屈だよ~」
 グンマが従兄弟の背に向かって話しかけると、キンタローは振り向かないまま、  
 「・・・グンマ、仕事をしろ」
 一言で片付けた。
 「ええーッ?だって、注文した部品がまだ届かないんだもん!」
 そう言って、グンマは椅子から飛び降りると、
 「キンちゃんは何してんの?」
 「俺はだな、高次元ブラックホールと磁場との関連性を」
 「あっ、ねぇねぇッツ、これって猫の雑誌だよネ?」
 グンマは、キンタローのパソコンの脇に積み上げてあった雑誌や論文の中から、目敏く猫の写真が表紙の雑誌を見つけ、引っ張り出した。
 「あぁ。本屋で見つけたのだが、可愛くて思わず買ってしまった」
 「キンちゃん、猫が好きなんだ?」
 「本物はまだ見たことがない」
 そう言って、再びパソコンに向かうキンタローを見ながら、
 (キンちゃん、猫を見たことも触った事もないんだ!?・・・よしッツ、ここはひとつ、お兄ちゃんな僕が、キンちゃんに本物の猫を見せてあげよう♪)
 何やらグンマは決意したようである。猫雑誌を論文の山に戻し、
 「僕、やることを思いついたからちょっと出かけるね~v」
 そう言って手をブンブンと振ると、グンマは研究室を飛び出した。


 誰か猫を飼っている者がいないか聞いて回ったものの、該当者がみつからなかったので、(もしかしたら外にいるかも?)とグンマは外に出た。数十分後、
 (探してもいないなぁ・・・)
 麦藁帽子を被り補虫網を手にしたグンマ博士は、ガンマ団内の公園のベンチに腰掛けていた。
 (こんな時、高松がいたらすぐに解決してくれたのに・・・)
 思わず、グンマは涙ぐみそうになった。
 しかし、(高松に頼ってばかりじゃだめだって、決めたじゃないか!)
 そう思いなおすと、しばらく考え込んだ末、
 「いなかったら、造ればいいんだッツ!」
 何らかの結論がでたようである。グンマは足早に建物内に戻った。


 グンマは、高松が使っていた研究室に居た。室内は、グンマとキンタローがいつも掃除をしているので高松がいたときそのままの状態に保たれていた。
 「ロボットだったらすぐに造れるんだけど、やっぱり本物と同じに作るには無理があるし。ここはやっぱり薬だよねぇ?」
 グンマは戸棚の鍵を開け、たくさん入っている書類をゴソゴソと選り分け目当てのものを捜していた。
 (確か、士官学校生が作った『人間が猫化する薬』のレポートを高松が没収してたっけ?この辺に・・・)
 「あったー!」
 グンマがパラパラと目を通してみると、高松の文字で付け加えが書かれてあった。 
 「えっ?猫になった人ってシンちゃんだったのッツ??僕、知らなかったよ~。それにしても、完全に猫になったって書いてあるなぁ・・・」
 グンマは、ポンと手を打つと、
 「―――副作用もなかったみたいだし、シンちゃんにはこの薬が合っていたってことだよネ?決―めたッツ♪被験者はシンちゃんにしーようっとvvv」
 グンマはレポートを見ながら、上機嫌に薬品を準備し始めた。


 「シンちゃーん、お疲れ様ッツvアイスコーヒーだよ♪」
 シンタローが総帥室で仕事をしていると、何故かグンマがお盆を持って入ってきた。
 「おう、サンキュ。そこに置いといてくれ」
 シンタローは忙しかったので、グンマがコーヒーを運んできたことには疑問を感じなかったようである。
 しばらくして、キリのいいところまできたのか、パソコンから目を離し、アイスコーヒーを手に取った。一口飲み込むと、
 「甘ッツ!何だヨ!?これッツ!!」
 机の上にグラスを乱暴に置いた。
 「えっ?甘かった??ガムシロップ6個しか入れてないんだけど・・・」
 「―――まさかお前、いつもそんなの飲んでるのか?俺はもういらねぇッツ!」
 「えーッツ!?せっかく持ってきたのに。シンちゃん、全部飲んでよッツ!!」
 シンタローは無言でグラスを掴むと、流しに捨てに行った。
 「ひどいよォ~!(こんなんじゃ、シンちゃん猫にならないじゃないかッツ!!)」
 グンマがガッカリしていると、流しの方で何かが割れるような音がし、
 「てっめぇ・・・、コーヒーに一体何混ぜやがったッツ!?」
 と、ドアをバンッツと開け走ってきたシンタローにグンマは胸倉を掴まれた。
 「えっ?シンちゃんどうしたの??」
 「どうしたもこうしたもあるかッツ!どうしてくれんだよコレッツ!!」
 そう叫んでグンマを放し、シンタローは自分の頭上を指差した。グンマが見上げると、そこには黒い2つの三角形の、柔毛に包まれた突起が存在していた。


 「・・・あの、シンちゃん可愛いよ?」
 椅子に座って頭を抱えているシンタローに、グンマがおそるおそる声をかけると、
 「なんの慰めにもなんねぇ・・・」
 と、力のない返事が返ってきた。黒い尻尾までおまけのように生えていたことが、さらに彼に衝撃を与えたようである。
 「シンちゃん、たぶん30分ぐらいで消えるんじゃないかナ?ソレ・・・」
 「本当だろうナ!?」
 シンタローに睨まれたが、グンマは確信が持てなかったので、
 「わっかんないよ~。たぶんねッツ☆」
 と元気よく答えると、手加減はされていたものの、シンタローに殴られた。
 「ヒドイよォ~」
 グンマは恨めしげにシンタローを見たが、ふと本来の目的を思い出し、
 (シンちゃんには悪いけど、なんとか一部だけでも猫になったことだし、キンちゃんにみせてあげようッと♪)
 「シンちゃん、キンちゃんならなんとかできるかも?」
 シンタローはしばらく考えた末、
 「よし、呼べ」
 と言った。グンマは壁の電話でキンタローに電話を掛けた。
 「キンちゃーん!大至急総帥室に来てッツ!!」
 そう言うなり電話を切った。


 「グンマ、お前の電話には肝心の用件が無いぞ?急ぎの時でもだな、・・・」
 そう言って、キンタローがドアを開けて部屋に入ると、そこには、不貞腐れた顔をした猫耳総帥と、能天気そうな笑顔で「ヤッホー!」と手を振るグンマ博士が居た。
 「キンちゃんッツ!これが本物の猫の耳と尻尾のついたシンちゃんだよッツ♪かわいいでしょ??」
 「キンタロー、これをどうにかしろ!」
 キンタローは、バタンとドアを閉め廊下に出た。
 (どーいうことだ!?俺は仕事のしすぎで疲れているのか??今ありえないものを見たような気が・・・)
 「オイ、早く部屋に入れヨ」
 ドアが中から開き、猫耳が着いたシンタローが顔を出した。


 「キンちゃんって結構、想定外の状況に弱いよねー?」
 グンマがソファーに座って頭を抱えているキンタローをのぞきこむと、
 「・・・グンマ、単にお前が図太いだけだ」
 「どーでもいいけど、なんとかなるのか?」
 「キンちゃん、これが本物の猫耳だよv」
 グンマが無理矢理キンタローの手をとって、傍に寄ってきていたシンタローの頭を触らせた。手の下で、耳はくすぐったげにピルピルと動いた。
 (かッ可愛い・・・!)
 「そして、これが猫尻尾だよ♪」
 尻尾を掴まれると、尻尾の毛が逆立ってブラシのようになった。シンタローは嫌そうな顔をし、グンマの手を振り払った。
 グンマは時計を見上げると、
 「あっ、3時だッツ!コージ君とおやつを食べる約束をしてたっけ?じゃあ、キンちゃん、あとはよろしくね~♪」
 そう言うと手を振ってグンマは出て行った。残された2人はしばらく呆然としていたが、我に返ったシンタローが、
 「おいッツ!キンタロー!?何とかしろッツ!!!」
 とキンタローの両肩を掴んで揺さぶると、いきなり膝裏を掬われ、キンタローの膝に抱き上げられた。キンタローはしげしげと黒い三角の耳を見て、恐る恐る黒い両耳をペタンと抑えるとしばらく時間をおいて、耳はピンと立ち上がり、元の状態にもどった。
 「面白い・・・!形状記憶合金みたいだぞ!!」
 「・・・オマエ、何遊んでんだヨ?」
 「猫耳を触ったのは初めてだ。本物の猫より、猫シンタローの方が100倍かわいい・・・!」
 そう言って、幸せそうにシンタローをギュッと抱きしめた。
 (コイツも全然あてになんねぇ・・・。一体いつ戻れるんだ、俺?)
 シンタローは抱きしめられたまま、なんとなく遠い目つきになり、溜め息を吐いた。









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