今のマジックが例え未来のマジックではないとしても、好きな人には代わりはない。
それでも心は嫌だった。
他人ではない。本人であるが、自分が好きなマジックとは違う。
歳も、顔も、声さえも。
面影は残されてはいるが、シンタローにとっての今の行為は無理矢理以外の何物でもなく。
「や、めろ!」
それでも涙を見せないのは彼のプライドのせいか、それとも…。
「そうやって逃げまどってくれて構わないよ。君にそうされると、私は酷く興奮する。君以外がそんな事をしたら私はソイツを有無を言わさず殺すだろうけどね。」
ゾッとするような綺麗な笑顔。
整い過ぎているからだけじゃない、既に人殺し集団のトップに立ち、数えきれない程の人を殺してきた男の顔。
未来のマジックは決して自分の前でそんな顔はしなかった。
隠そうと必死だったのに。
「おや、シンタロー君。さっきの威勢はどうしたの?」
楽しそうにクスクス笑いながら、顔面蒼白のシンタローの頬にキスを落とす。
怖くて体が動かなくなってしまったようで。
シンタローはどうにか動かそうと必死に力を入れるが上手くはいかなかった。
「そんな君も可愛いよ。」
布ごしに触っていた指を止めて、ズボンのチャックに手をかける。
ジィィィ…とチャックの開く音が無音の部屋の中やけに響いた。
無遠慮にズボンと下着を脱がせ、調ったシンタローのフトモモにキスを落としてから、外気に表になった性器に指を絡める。
「ひゃぁ、あッッ!」
ビク、と体がまた反応する。
怖くて堪らないのに自分のは元気良く勃ちあがっていて。
シンタローは唇を噛み締めた。
「怖いのに勃ちあがらせて…シンタロー君はマゾヒズムなのかな?酷くされるのが好きなんだね。」
シンタローはギッ!とマジックを睨む。
でも、そのほてった体と上気した頬で睨まれても、マジックにとってそれは誘ってるようにしか見えない。「こ、の!変態やろぉ!!」
「………まだそんな口を聞くんだね。これは少々手荒なお仕置きが必要かな?」
「何、ひ、や、ぁああっ!!」
マジックが手荒にシンタローの性器を上下に擦り上げる。
ぐちゅぐちゅといやらしい音と共に白濁の液がマジックの手を汚す。
「シンタロー君、凄くそそるよ。君のその顔。」
「や、ふ、ぁあ!や、やめて!…ンンッッ」
マジックの手を両手で押さえるが、マジックの動きが止まる事はなかった。
「先に一回イッておくといい。」
羞恥にまみれ、汗が額に浮き出るシンタローにマジックは耳元でそう呟く。
そして、激しく上下に擦りあげるのだ。
シンタローの止めて欲しいという言葉も聞かず。
「ンン!ぁ、あ、ああっ!!」
ビュル、とシンタローの性器から白濁の液が勢い良く飛び散り、マジックの手と、シンタローの腹を汚す。「ン、は、あ、あ」
瞳を潤ませ肩で息をするシンタロー。
余韻に体を震わせ、ぼぉ、とマジックを見た。
マジックは心底楽しそうな顔をして、シンタローを見ている。
「随分出したね、シンタロー君。」
シンタローので汚れた手の平をマジックは赤い己の舌先でペロ、と嘗める。
その光景を見て、シンタローはカァ、と赤くなった。
でも、シンタローにはどうする事もできない。
強制的に出す事になった己の液体。
嫌だったのに感じてしまった自分にシンタローはゾッとした。
そして同時に罪悪感がシンタローを襲う。
俺は一体何をしてしまったんだろう。
これは裏切り行為以外の何ものでもない。
俺は未来のマジックを裏切ったんだ。
そう理解した瞬間、今まで堪えていた涙が一気にドバッと溢れ出た。
「シ、シンタロー君!?」
マジックが焦りの声を上げる。
泣かせたかった訳じゃないのに。
私は唯、シンタロー君に恋をして。
だから抱きたくなったし、自分の気持ちをシンタロー君に解って貰う為に抱こうとしたのに。
どうやって他人を愛すかなんて、どうすれば伝わるかなんて私には解らない。
私は今まで他人を愛した事がない。
シンタロー君、じゃあどうすれば良かったの。
どうすれば君は私に振り向いてくれたの。
「大ッッ嫌いだ…アンタなんか。最低だ。お前の顔は見たくない。ぶっ殺されたくなかったら出ていけ!」
泣きながらマジックを睨み付け、喚き散らす。
そして、枕をマジックの顔面に投げ付けた。
ぼすん!と音がする。
避けられただろうにマジックはそれをしなかった。
甘受をあえてして、泣きそうな顔でシンタローを見る。
「出ていけ!出て行けよ!!」
大泣きをして、布団を被るが、マジックはそこからどこうとはしなかった。
辺りはシーンと再び静まりかえり、シンタローの鳴咽だけがくぐもりながらも聞こえた。
「ごめん…なさい。」
布団ごしにマジックの温かい体温と、謝りの言葉が降ってきた。
鳴咽の音がする部屋の中、マジックは力を強めて布団ごしに抱きしめる。
「ごめん、ごめんね、シンタロー君。」
すると、モゾモゾとシンタローが動き、顔を出した。腫れ上がった瞼に、充血した瞳。
必死に堪えた事が伺える切れた唇の端っこ。
シンタローが顔を出してくれた事に安堵の笑みを初めは漏らしていたマジックだったが、シンタローの顔を見て愕然とした。
こんな顔にしたのは、他ならない自分で。
シンタローは俯きながらも体をマジックに向ける。
よれた上着には先程の情事の跡が色濃く残り、頬には涙の跡が伺えた。
「――ッッ」
マジックは何と言葉をかけていいのか解らない。
会った時とは全く異なる覇気のない顔。
そうさせた卑劣漢は自分。
シンタローは何も言わないマジックを置いて、フラフラとバスルームに向かう。
立ち上がった瞬間マジックの目の前に飛び込んだシンタローの痛々しい下半身。
マジックは唇をキュッと強く結んだ。
ガラス張りの浴槽の前の脱衣所で、布の擦れる音が聞こえ、しばらく経ち、ガラガラとドアを開ける音が聞こえる。
シンタローがバスルームに入ったのだと、ガラス張りのバスルームに顔を向けると、ジャ、と、ブランドが閉まり、シャワーの音が聞こえた。
「ふ、う、グズッ…」
シャワーの音と共に聞こえるシンタローの鳴咽。
どうにかしなければ。
シンタローの悲しい顔は見たくない。
まさかこんな事になるなんて。
許して貰えなくてもいいから、ちゃんと誠意を見せよう。
そんな考えをする新たな自分にマジックはハッとした。
そんな事今まで考えた事すらなかった。
一方のシンタローは、ゴシゴシと体を擦っている。
洗うものがスポンジしかないのだけれど、それでも赤くなるまで。
綺麗にしなきゃ。
親父以外の男に触られた所全部。
汚くなってしまった所全部。
涙は止めようもなくて、ぼたぼた落ちる大粒の涙とシャワーの小雨の中、シンタローは必死で洗う。
洗った所で本当の綺麗には戻れないのに、それでも何かしないと狂ってしまいそうで。
ガラガラ、ドアの開く音がして、シンタローはバッ!とそちらを見た。
マジックが裸体でペタペタとこちらへ歩いてくる。
逃げようと思ったが体が言う事をきかない。
どうしよう。
そう考えてた瞬間、マジックに抱きしめられた。
この温かさは知っている。
子供の頃から優しかったあの温かさと同じだ。
「うわぁあああ!!」
タガが外れたように、シンタローは泣き始めた。
バスルームの中、子供のように大声をあげて。
マジックにしがみつき涙を流す。
それをマジックは優しく受け止め、シンタローの頭をさすった。
しばらく泣きわめき、すっきりしたのか、シンタローはバツが悪そうに顔を伏せていた。
「シンタロー君、君には好きな人が居るんだね。」
ぽつり、マジックが呟いた。
抱きしめられている形だったので、顔を見る事は出来なかったが、その声色は先程までとは打って変わって、酷く弱々しいものだった。
「そうだ。」
シンタローが肯定の言葉を吐いたので、マジックは瞼をきつく閉じる。
自分は傷つく立場ではない。
一番傷ついているのは他でもない目の前に居るその人で。
それでも心に突き刺さるその肯定文は、マジックにはどうする事も出来ない見えない刃となって深く突き刺さる。
「俺の恋人は…未来のアンタだ。」
は、と、目を見開く。
今言われた言葉をもう一度脳内で重複させ、聞き間違いではなかったか再確認をする。
「それ、本当かい?」
「ああ。」
恐る恐る尋ねるが、シンタローは即答する。
「いつ頃から?」
「………俺についての質問はしないっていう約束だ。」
「ああ。」
そうだったね。
マジックは深い息を吐いた。
ん?でも、待って。
「じゃあ何でさっきあんなに泣いたの?!私が恋人ならいいじゃないか!!」
「ああん!?ふざけんな!!テメーじゃねーんだよ!!未来のお前なの!今じゃねーんだヨ!!」
がば、と、体を離し怒鳴り付ける。
同じ私じゃないか。
マジックは呆れ顔でシンタローを見た。
彼は随分面倒臭い性格のようだと、マジックは思う。
「ああ、そう。何だか私はどっと疲れが出たよ…。」
「はぁ!?アンタは罪悪感とかねーのか!」
「あるよ!ああ、あるね!!本気で悪いと思ったよ!!何て事をしてしまったんだとね!でも、結局私なんだろう?君の恋人は!未来だろうが今だろうが私は私!マジックだよ!!」
あ。
何だかそう言われ気付いた。
胸に絡み付くもやもやとかが一気に快晴になったそんな気持ち。
そうだよな。
未来だろうが今だろうがコイツは俺の親父。
それは変わらない。
「アンタって、本当解りやすい性格。」
まだ腫れている瞼を緩めて笑ってやれば、マジックも優しい笑顔になって。
「君だけにね。」
と、呟くのだった。
本当アンタって奴は昔からちっとも変わってなかったんだな、と、シンタローは思う。
俺が小さい時からアンタは俺を甘やかせて、愛して、可愛がって。
そして沢山の色んな愛情を俺に惜しみなく注いでくれた。
「シンタロー君。もう一度君を抱きたい。今度は無理矢理じゃなく君の恋人として。」
肌と肌の温もりが二人を包む中、マジックが真剣な面持ちで言う。
シンタローは鼻で笑い、又上から目線に切り替える。
「却下だ却下!」
「そっか、それならしょうがないね。」
眉を潜めて笑うマジックの頭をグリグリとシンタローは撫でてやる。
「俺の恋人は俺の事を君付けで呼ばねーんだヨ。」
フン、と鼻息を吐いてそっぽを向くが、顔は赤くなっている。
そんなシンタローを見て、マジックも釣られて赤くなるのだった。
言葉の意味を理解したマジックはもう一度シンタローを力強く抱きしめる。
そして、先程とは異なる優しいキスをシンタローのぷくりとした唇に落とすのだった。
シンタローも又抵抗しなく、すんなりマジックを受け入れてくれて。
嬉しさの余り口元が緩む。
「ありがとう。」
ぽつり呟かれたので、シンタローはマジックに身を任せるのだった。
「ア、アンタなぁ…」
息も絶え絶えにシンタローがマジックを睨み付ける。
マジックは困ったように笑いながら、繋がっている部分を抜こうとはしない。
「ゴメン、シンタロー。」
「もう一回っていうのは一回だけの事を言うんだよ!!」
シンタローが怒るのも無理はない。
今現在、既に3ラウンド位は確実に終わっていて。
シンタローの体にはマジックの付けた後が点々としている。
「だって、納まりそうにないんだもの。」
そう言って、又動きを再開させる。
中に出された白濁の液が、シンタローの蕾からテラテラと溢れ出してきているので、そこに空気が加わり、ぐぷぐぷと淫乱な音を出す。
「ひゃ、あ、あ!」
50代でも現役で絶倫のマジックが20代なのである。
当然と言えば当然なのだが。
「ああ!あぅ!も、俺がムリ…ッッ!!」
腰をガッチリ持たれているせいで逃げるに逃げられない。
しかも、何度もしているうちにシンタローの良い所をピンポイントで貫くのだ。
びく、びく、と痙攣を起こし、下半身はガクガク震えている。
「でも、気持ちいいでしょう?シンタロー。」
「バッ…!!し、ねッッ!!」
肩で息をするシンタローを宥めるように、マジックはシンタローの額にちゅ、ちゅ、と優しいキスを落とした。
「ひ、あ、あ、あう…」
「ふふ、可愛いネ、シンタロー。」
そう言うのは無理もなく。
シンタローの足はマジックの足を絡みつけていて。
より中のより深い所にマジックを入れさせようという無意識の行為。
「ん、んん」
「声、我慢しなくていいんだよ。」
シンタローの声が聞きたいとマジックは言うが、やっぱり恥ずかしくて。
混沌とした意識の中でもまだ羞恥心は断片的に残っているらしい。
イヤイヤするように頭を振ってはみるものの、快楽から逃れられるはずもなく。
「ふ、ひゃ、あ、あああああ!」
ぎゅ、とマジックに抱き着き何度目かの放出をする。
白濁の己の液体が腹にかかり、トロリと滑り落ちる。
体をビクビク痙攣させ、手の平を口元に持っていく。半分目を開き、溢れ出した涙をそのままに。
数回腰を打ち付けられて、一際大きくなったマジック自身から熱い液体が体の中に注入され、マジック自身を抜き出す。
「ひ、あ、つぅ…」
シンタローはマジックを受け入れた。
今度はマジックがシンタローをきつく抱きしめる。
余裕たっぷりだったマジックの眉が少し歪み、シンタローは少ししてやったりと思うのだった。
荒い息継ぎの中、流石にシンタローは頭が朦朧としはじめた。
マジックは疲れていないのだろうか。
シンタローは慣れない総帥業務での疲れがどっと押し寄せてこられて。
べとべとの体では良くないと理解しつつも、睡魔と重い瞼にあがらえなくなり、そっと瞳を閉じた。
「シンタロー、眠ってしまったのかい?」
遠くでマジックの声が聞こえる。
「おやすみ、シンタロー。早く未来の君に会いたいよ。」
柔らかい声でマジックは呟き、備え付けのバスタオルでシンタロー体を拭く。
目に着いた自分が付けた跡に思わず頬がにやけた。
体を丁寧に拭いた後、柔らかい布団をシンタローにかけてやるのだった。
マジックが目を覚ますと、隣に居たはずのシンタローの姿は何処にもなく、場所も二人で泊まったあのホテルではなく、見慣れた自宅の自室。
外を見ると、まだ暗く、夜明けすら来ていない。
「兄さん、あんな所で何をなさってたんですか?随分探しましたよ。連絡も来ないですし。」
声のする方を見ると、困り顔の弟ルーザーが自分を見ていた。
一瞬戸惑う。
シンタローは自分の夢の中の人物だったのだろうかと。
でも、体に微かに残る体温と、優しくなれた心。
凍てついた自分を溶かしてくれた、そんな気持ち。
夢でも良かったじゃないか。
シンタローに会えたのだから。
「そういえば兄さん。」
思い出したかのようにルーザーが話し掛ける。
「なんだい?」
「シンタロー君はどうなさったのですか?」
マジックは目を見開いた。
ルーザーが知っていると言う事は、夢ではない。
そう、夢でも、妄想でもなかったんだ。
「結局、彼は何者だったんですか?」
「さぁね。」
マジックは微笑む。
今までにないほど柔らかい笑顔で。
「彼については私だけの秘密だ。」
「あんだったんだ…」
目が覚めると自分は総帥室の前に座って寝ていた。
今度は昔付けた古傷などか克明に刻まれている壁。
戻ってきたのだと再確認した。
夢だったのかもしれない。
だけど妙にリアルで。
シンタローはとりあえず家に帰ろうと立ち上がる。
「シンちゃ~ん!!」
遠くからハートを振り撒いてマジックがかけてくる。
その年齢が、ちゃんと自分の父の年齢でシンタローはハッキリ理解した。
俺は戻ってきたんだ。
すぐにシンタローの側迄かけてきて、シンタローを抱きしめる。
何時もならぶっ飛ばされるのに、されるがままになっているシンタローにマジックは訝しげに思い、シンタローを確認した。
そこでマジックは目が点になる。
シンタローの胸元には見覚えのない赤い跡。
震える指を指して、マジックは引き攣り気味。
「シ、シンちゃん、何ソレ!パパ、そんなの付けた覚えないよ!!」
「あ~ん?ホントにねーの?」
「ないよ!ないない!」
シンちゃん浮気したの!?
そう聞きたくても聞けない顔をしている。
あのマジックがここまで解りやすく顔に出す事がシンタローにはとても新鮮で。シンタローは口の端を軽く上げる。
「30年位前にも、ねーか?」
「あ」
思い出したかのようにマジックの動きが止まる。
そして、柔らかい笑顔をシンタローに向けたのだった。
終わり
それでも心は嫌だった。
他人ではない。本人であるが、自分が好きなマジックとは違う。
歳も、顔も、声さえも。
面影は残されてはいるが、シンタローにとっての今の行為は無理矢理以外の何物でもなく。
「や、めろ!」
それでも涙を見せないのは彼のプライドのせいか、それとも…。
「そうやって逃げまどってくれて構わないよ。君にそうされると、私は酷く興奮する。君以外がそんな事をしたら私はソイツを有無を言わさず殺すだろうけどね。」
ゾッとするような綺麗な笑顔。
整い過ぎているからだけじゃない、既に人殺し集団のトップに立ち、数えきれない程の人を殺してきた男の顔。
未来のマジックは決して自分の前でそんな顔はしなかった。
隠そうと必死だったのに。
「おや、シンタロー君。さっきの威勢はどうしたの?」
楽しそうにクスクス笑いながら、顔面蒼白のシンタローの頬にキスを落とす。
怖くて体が動かなくなってしまったようで。
シンタローはどうにか動かそうと必死に力を入れるが上手くはいかなかった。
「そんな君も可愛いよ。」
布ごしに触っていた指を止めて、ズボンのチャックに手をかける。
ジィィィ…とチャックの開く音が無音の部屋の中やけに響いた。
無遠慮にズボンと下着を脱がせ、調ったシンタローのフトモモにキスを落としてから、外気に表になった性器に指を絡める。
「ひゃぁ、あッッ!」
ビク、と体がまた反応する。
怖くて堪らないのに自分のは元気良く勃ちあがっていて。
シンタローは唇を噛み締めた。
「怖いのに勃ちあがらせて…シンタロー君はマゾヒズムなのかな?酷くされるのが好きなんだね。」
シンタローはギッ!とマジックを睨む。
でも、そのほてった体と上気した頬で睨まれても、マジックにとってそれは誘ってるようにしか見えない。「こ、の!変態やろぉ!!」
「………まだそんな口を聞くんだね。これは少々手荒なお仕置きが必要かな?」
「何、ひ、や、ぁああっ!!」
マジックが手荒にシンタローの性器を上下に擦り上げる。
ぐちゅぐちゅといやらしい音と共に白濁の液がマジックの手を汚す。
「シンタロー君、凄くそそるよ。君のその顔。」
「や、ふ、ぁあ!や、やめて!…ンンッッ」
マジックの手を両手で押さえるが、マジックの動きが止まる事はなかった。
「先に一回イッておくといい。」
羞恥にまみれ、汗が額に浮き出るシンタローにマジックは耳元でそう呟く。
そして、激しく上下に擦りあげるのだ。
シンタローの止めて欲しいという言葉も聞かず。
「ンン!ぁ、あ、ああっ!!」
ビュル、とシンタローの性器から白濁の液が勢い良く飛び散り、マジックの手と、シンタローの腹を汚す。「ン、は、あ、あ」
瞳を潤ませ肩で息をするシンタロー。
余韻に体を震わせ、ぼぉ、とマジックを見た。
マジックは心底楽しそうな顔をして、シンタローを見ている。
「随分出したね、シンタロー君。」
シンタローので汚れた手の平をマジックは赤い己の舌先でペロ、と嘗める。
その光景を見て、シンタローはカァ、と赤くなった。
でも、シンタローにはどうする事もできない。
強制的に出す事になった己の液体。
嫌だったのに感じてしまった自分にシンタローはゾッとした。
そして同時に罪悪感がシンタローを襲う。
俺は一体何をしてしまったんだろう。
これは裏切り行為以外の何ものでもない。
俺は未来のマジックを裏切ったんだ。
そう理解した瞬間、今まで堪えていた涙が一気にドバッと溢れ出た。
「シ、シンタロー君!?」
マジックが焦りの声を上げる。
泣かせたかった訳じゃないのに。
私は唯、シンタロー君に恋をして。
だから抱きたくなったし、自分の気持ちをシンタロー君に解って貰う為に抱こうとしたのに。
どうやって他人を愛すかなんて、どうすれば伝わるかなんて私には解らない。
私は今まで他人を愛した事がない。
シンタロー君、じゃあどうすれば良かったの。
どうすれば君は私に振り向いてくれたの。
「大ッッ嫌いだ…アンタなんか。最低だ。お前の顔は見たくない。ぶっ殺されたくなかったら出ていけ!」
泣きながらマジックを睨み付け、喚き散らす。
そして、枕をマジックの顔面に投げ付けた。
ぼすん!と音がする。
避けられただろうにマジックはそれをしなかった。
甘受をあえてして、泣きそうな顔でシンタローを見る。
「出ていけ!出て行けよ!!」
大泣きをして、布団を被るが、マジックはそこからどこうとはしなかった。
辺りはシーンと再び静まりかえり、シンタローの鳴咽だけがくぐもりながらも聞こえた。
「ごめん…なさい。」
布団ごしにマジックの温かい体温と、謝りの言葉が降ってきた。
鳴咽の音がする部屋の中、マジックは力を強めて布団ごしに抱きしめる。
「ごめん、ごめんね、シンタロー君。」
すると、モゾモゾとシンタローが動き、顔を出した。腫れ上がった瞼に、充血した瞳。
必死に堪えた事が伺える切れた唇の端っこ。
シンタローが顔を出してくれた事に安堵の笑みを初めは漏らしていたマジックだったが、シンタローの顔を見て愕然とした。
こんな顔にしたのは、他ならない自分で。
シンタローは俯きながらも体をマジックに向ける。
よれた上着には先程の情事の跡が色濃く残り、頬には涙の跡が伺えた。
「――ッッ」
マジックは何と言葉をかけていいのか解らない。
会った時とは全く異なる覇気のない顔。
そうさせた卑劣漢は自分。
シンタローは何も言わないマジックを置いて、フラフラとバスルームに向かう。
立ち上がった瞬間マジックの目の前に飛び込んだシンタローの痛々しい下半身。
マジックは唇をキュッと強く結んだ。
ガラス張りの浴槽の前の脱衣所で、布の擦れる音が聞こえ、しばらく経ち、ガラガラとドアを開ける音が聞こえる。
シンタローがバスルームに入ったのだと、ガラス張りのバスルームに顔を向けると、ジャ、と、ブランドが閉まり、シャワーの音が聞こえた。
「ふ、う、グズッ…」
シャワーの音と共に聞こえるシンタローの鳴咽。
どうにかしなければ。
シンタローの悲しい顔は見たくない。
まさかこんな事になるなんて。
許して貰えなくてもいいから、ちゃんと誠意を見せよう。
そんな考えをする新たな自分にマジックはハッとした。
そんな事今まで考えた事すらなかった。
一方のシンタローは、ゴシゴシと体を擦っている。
洗うものがスポンジしかないのだけれど、それでも赤くなるまで。
綺麗にしなきゃ。
親父以外の男に触られた所全部。
汚くなってしまった所全部。
涙は止めようもなくて、ぼたぼた落ちる大粒の涙とシャワーの小雨の中、シンタローは必死で洗う。
洗った所で本当の綺麗には戻れないのに、それでも何かしないと狂ってしまいそうで。
ガラガラ、ドアの開く音がして、シンタローはバッ!とそちらを見た。
マジックが裸体でペタペタとこちらへ歩いてくる。
逃げようと思ったが体が言う事をきかない。
どうしよう。
そう考えてた瞬間、マジックに抱きしめられた。
この温かさは知っている。
子供の頃から優しかったあの温かさと同じだ。
「うわぁあああ!!」
タガが外れたように、シンタローは泣き始めた。
バスルームの中、子供のように大声をあげて。
マジックにしがみつき涙を流す。
それをマジックは優しく受け止め、シンタローの頭をさすった。
しばらく泣きわめき、すっきりしたのか、シンタローはバツが悪そうに顔を伏せていた。
「シンタロー君、君には好きな人が居るんだね。」
ぽつり、マジックが呟いた。
抱きしめられている形だったので、顔を見る事は出来なかったが、その声色は先程までとは打って変わって、酷く弱々しいものだった。
「そうだ。」
シンタローが肯定の言葉を吐いたので、マジックは瞼をきつく閉じる。
自分は傷つく立場ではない。
一番傷ついているのは他でもない目の前に居るその人で。
それでも心に突き刺さるその肯定文は、マジックにはどうする事も出来ない見えない刃となって深く突き刺さる。
「俺の恋人は…未来のアンタだ。」
は、と、目を見開く。
今言われた言葉をもう一度脳内で重複させ、聞き間違いではなかったか再確認をする。
「それ、本当かい?」
「ああ。」
恐る恐る尋ねるが、シンタローは即答する。
「いつ頃から?」
「………俺についての質問はしないっていう約束だ。」
「ああ。」
そうだったね。
マジックは深い息を吐いた。
ん?でも、待って。
「じゃあ何でさっきあんなに泣いたの?!私が恋人ならいいじゃないか!!」
「ああん!?ふざけんな!!テメーじゃねーんだよ!!未来のお前なの!今じゃねーんだヨ!!」
がば、と、体を離し怒鳴り付ける。
同じ私じゃないか。
マジックは呆れ顔でシンタローを見た。
彼は随分面倒臭い性格のようだと、マジックは思う。
「ああ、そう。何だか私はどっと疲れが出たよ…。」
「はぁ!?アンタは罪悪感とかねーのか!」
「あるよ!ああ、あるね!!本気で悪いと思ったよ!!何て事をしてしまったんだとね!でも、結局私なんだろう?君の恋人は!未来だろうが今だろうが私は私!マジックだよ!!」
あ。
何だかそう言われ気付いた。
胸に絡み付くもやもやとかが一気に快晴になったそんな気持ち。
そうだよな。
未来だろうが今だろうがコイツは俺の親父。
それは変わらない。
「アンタって、本当解りやすい性格。」
まだ腫れている瞼を緩めて笑ってやれば、マジックも優しい笑顔になって。
「君だけにね。」
と、呟くのだった。
本当アンタって奴は昔からちっとも変わってなかったんだな、と、シンタローは思う。
俺が小さい時からアンタは俺を甘やかせて、愛して、可愛がって。
そして沢山の色んな愛情を俺に惜しみなく注いでくれた。
「シンタロー君。もう一度君を抱きたい。今度は無理矢理じゃなく君の恋人として。」
肌と肌の温もりが二人を包む中、マジックが真剣な面持ちで言う。
シンタローは鼻で笑い、又上から目線に切り替える。
「却下だ却下!」
「そっか、それならしょうがないね。」
眉を潜めて笑うマジックの頭をグリグリとシンタローは撫でてやる。
「俺の恋人は俺の事を君付けで呼ばねーんだヨ。」
フン、と鼻息を吐いてそっぽを向くが、顔は赤くなっている。
そんなシンタローを見て、マジックも釣られて赤くなるのだった。
言葉の意味を理解したマジックはもう一度シンタローを力強く抱きしめる。
そして、先程とは異なる優しいキスをシンタローのぷくりとした唇に落とすのだった。
シンタローも又抵抗しなく、すんなりマジックを受け入れてくれて。
嬉しさの余り口元が緩む。
「ありがとう。」
ぽつり呟かれたので、シンタローはマジックに身を任せるのだった。
「ア、アンタなぁ…」
息も絶え絶えにシンタローがマジックを睨み付ける。
マジックは困ったように笑いながら、繋がっている部分を抜こうとはしない。
「ゴメン、シンタロー。」
「もう一回っていうのは一回だけの事を言うんだよ!!」
シンタローが怒るのも無理はない。
今現在、既に3ラウンド位は確実に終わっていて。
シンタローの体にはマジックの付けた後が点々としている。
「だって、納まりそうにないんだもの。」
そう言って、又動きを再開させる。
中に出された白濁の液が、シンタローの蕾からテラテラと溢れ出してきているので、そこに空気が加わり、ぐぷぐぷと淫乱な音を出す。
「ひゃ、あ、あ!」
50代でも現役で絶倫のマジックが20代なのである。
当然と言えば当然なのだが。
「ああ!あぅ!も、俺がムリ…ッッ!!」
腰をガッチリ持たれているせいで逃げるに逃げられない。
しかも、何度もしているうちにシンタローの良い所をピンポイントで貫くのだ。
びく、びく、と痙攣を起こし、下半身はガクガク震えている。
「でも、気持ちいいでしょう?シンタロー。」
「バッ…!!し、ねッッ!!」
肩で息をするシンタローを宥めるように、マジックはシンタローの額にちゅ、ちゅ、と優しいキスを落とした。
「ひ、あ、あ、あう…」
「ふふ、可愛いネ、シンタロー。」
そう言うのは無理もなく。
シンタローの足はマジックの足を絡みつけていて。
より中のより深い所にマジックを入れさせようという無意識の行為。
「ん、んん」
「声、我慢しなくていいんだよ。」
シンタローの声が聞きたいとマジックは言うが、やっぱり恥ずかしくて。
混沌とした意識の中でもまだ羞恥心は断片的に残っているらしい。
イヤイヤするように頭を振ってはみるものの、快楽から逃れられるはずもなく。
「ふ、ひゃ、あ、あああああ!」
ぎゅ、とマジックに抱き着き何度目かの放出をする。
白濁の己の液体が腹にかかり、トロリと滑り落ちる。
体をビクビク痙攣させ、手の平を口元に持っていく。半分目を開き、溢れ出した涙をそのままに。
数回腰を打ち付けられて、一際大きくなったマジック自身から熱い液体が体の中に注入され、マジック自身を抜き出す。
「ひ、あ、つぅ…」
シンタローはマジックを受け入れた。
今度はマジックがシンタローをきつく抱きしめる。
余裕たっぷりだったマジックの眉が少し歪み、シンタローは少ししてやったりと思うのだった。
荒い息継ぎの中、流石にシンタローは頭が朦朧としはじめた。
マジックは疲れていないのだろうか。
シンタローは慣れない総帥業務での疲れがどっと押し寄せてこられて。
べとべとの体では良くないと理解しつつも、睡魔と重い瞼にあがらえなくなり、そっと瞳を閉じた。
「シンタロー、眠ってしまったのかい?」
遠くでマジックの声が聞こえる。
「おやすみ、シンタロー。早く未来の君に会いたいよ。」
柔らかい声でマジックは呟き、備え付けのバスタオルでシンタロー体を拭く。
目に着いた自分が付けた跡に思わず頬がにやけた。
体を丁寧に拭いた後、柔らかい布団をシンタローにかけてやるのだった。
マジックが目を覚ますと、隣に居たはずのシンタローの姿は何処にもなく、場所も二人で泊まったあのホテルではなく、見慣れた自宅の自室。
外を見ると、まだ暗く、夜明けすら来ていない。
「兄さん、あんな所で何をなさってたんですか?随分探しましたよ。連絡も来ないですし。」
声のする方を見ると、困り顔の弟ルーザーが自分を見ていた。
一瞬戸惑う。
シンタローは自分の夢の中の人物だったのだろうかと。
でも、体に微かに残る体温と、優しくなれた心。
凍てついた自分を溶かしてくれた、そんな気持ち。
夢でも良かったじゃないか。
シンタローに会えたのだから。
「そういえば兄さん。」
思い出したかのようにルーザーが話し掛ける。
「なんだい?」
「シンタロー君はどうなさったのですか?」
マジックは目を見開いた。
ルーザーが知っていると言う事は、夢ではない。
そう、夢でも、妄想でもなかったんだ。
「結局、彼は何者だったんですか?」
「さぁね。」
マジックは微笑む。
今までにないほど柔らかい笑顔で。
「彼については私だけの秘密だ。」
「あんだったんだ…」
目が覚めると自分は総帥室の前に座って寝ていた。
今度は昔付けた古傷などか克明に刻まれている壁。
戻ってきたのだと再確認した。
夢だったのかもしれない。
だけど妙にリアルで。
シンタローはとりあえず家に帰ろうと立ち上がる。
「シンちゃ~ん!!」
遠くからハートを振り撒いてマジックがかけてくる。
その年齢が、ちゃんと自分の父の年齢でシンタローはハッキリ理解した。
俺は戻ってきたんだ。
すぐにシンタローの側迄かけてきて、シンタローを抱きしめる。
何時もならぶっ飛ばされるのに、されるがままになっているシンタローにマジックは訝しげに思い、シンタローを確認した。
そこでマジックは目が点になる。
シンタローの胸元には見覚えのない赤い跡。
震える指を指して、マジックは引き攣り気味。
「シ、シンちゃん、何ソレ!パパ、そんなの付けた覚えないよ!!」
「あ~ん?ホントにねーの?」
「ないよ!ないない!」
シンちゃん浮気したの!?
そう聞きたくても聞けない顔をしている。
あのマジックがここまで解りやすく顔に出す事がシンタローにはとても新鮮で。シンタローは口の端を軽く上げる。
「30年位前にも、ねーか?」
「あ」
思い出したかのようにマジックの動きが止まる。
そして、柔らかい笑顔をシンタローに向けたのだった。
終わり
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