<「シンちゃん、誕生日おめでとう。」
「!!」
今日も仕事疲れたぞ、と、シンタローがベッドに入ろうとしたその瞬間。
こんもりしていた布団から、にょ、と顔を出すナイスミドル。
しかも、何故かバスローブ姿で。
シンタローはいきなりの事でびっくりし、目が点になった。
「な、ななな!!」
混乱と怒りが同時に湧いて出る。
「んもう!私がシンちゃんの誕生日を忘れるわけないじゃない。」
そーじゃねーだろ。
俺が言いたいのは、何でアンタが俺のベッドに居るかってことだろーが!
そう言いたくてもさっきのショックで口が金縛り状態で動かない。
「ほら、シンちゃん!誕生日プレゼント!勿論プレゼントはわ・た・しνだよ!」
そして、バスローブの端から胸のボタンをチラリとシンタローに見せる。
「いらねーよ!!」
やっと金縛りが溶けた。と、いうか、ツッコミが日常的な事だったので、すんなり口から出たというのが正しい。
「またまたー!遠慮しなくてもいいんだよνパパはシンちゃんのなんだからν」
「遠慮なんかしてねーから。いい病院紹介しよーか?親父ィ…」
もうハートを振り撒くマジックに何を言っても聞かない。
そんな事わかりきっているのに言わずにはいられない。
「はっはっは!恥ずかしがらなくてもいいのに!」
シンタローは馬鹿を見る目でマジックを見て溜息をついた。
そして、風呂に入るべくバスルームに向かおうとしたその時。
がし、とマジックに腕を掴まれた。
「お風呂入っちゃ駄目だよ!シンちゃんの匂いが取れちゃう!!」
「キモ!!」
シンタローは思い切り露骨に顔を歪めた。
なのにマジックは気にしないでシンタローを引き寄せると、シンタローの首筋をベロリと嘗める。
慌てて体を離し、舐められた箇所を手で押さえた。
「~~~ッッ!アンタなぁ!!ってうわっ!」
どさ、とベッドに引きずり込まれ抱きしめられる。
マジックの満面の笑顔にシンタローは血の気が下がるのを感じた。
「シンちゃん。今日は隅々迄愛してあげるからね…。」
鼻血をボタボタ垂らしながら言うマジックにシンタローは、
誰か助けてくれぇぇぇ!
と、心の中で絶叫したのだった。
夜は今始まったばかり。
「し~んちゃ~んッッ!!」
いきなり後ろから抱きしめてくるのは兄グンマ。
金色のロングヘアーが揺れている。
男のくせにトレードマークとなりつつあるピンクのリボンをつけて、笑顔でシンタローに抱き着いた。
「あぁ!?なんだよ、なんか用かぁ?」
うざったそうに振り向くシンタローとは逆にグンマは満面の笑みを浮かべている。
「ねー、シンちゃん!買い物付き合ってよ~」
「やーだね!俺はお前と違って忙しいの!」
前を向いて言うのでグンマはプクッと頬を膨らませる。
そして、耳元に、ふぅ、と息を吹き掛けた。
ビク、とシンタローは耳を押さえ、グンマの側から離れた。
グンマは相変わらずニコニコ笑っている。
なんだよ。
じとっとグンマを見るが相変わらず何考えてるか解らない笑顔を一切崩さない。「ね、シンちゃん行こうよ!たまには息抜きも必要でしょ?」
そうやって困ったように笑うから。
シンタローは頷いてしまう。
グンマは良かった、と笑う。
殴られるか蹴られるか。もしかすると眼魔砲を撃たれるかも、って思っていた。と、グンマは笑いながらシンタローに言う。
シンタローもつられて笑う。
ほんの数秒前の出来事を忘れてしまうのだからシンタローも大物だ。
それともグンマが忘れさせているのだろうか。
「オイ。どこ行くんだ。こっちは…」
そう。こっちは。
「うん。僕の部屋。」
プシュン!と、ドアが開き、ピンクレースの乙女ちっくな見慣れた部屋が目に飛び込む。
そして、グンマの部屋の中心にあるガラスがハートの形になっている机の上には“HAPPY BIRTHDAY”と書かれた二段重ねのデコレーションケーキが。
なんだコレと、シンタローは思ってからグンマの部屋にある日めくりカレンダーに目をやると、グンマの字で“恋人の誕生日”と書いてあり、シンタローは赤面した。
「えへへ。今日はシンちゃんが産まれて28年目だよぉ~!」
産まれてくれてありがとう。HAPPY BIRTHDAYシンちゃんν
そう耳元で呟いてシンタローの唇にキスを落とすのだった。
「あ、は、ぁう…ッッ!」
23:58。
シンタローはサービスの上で腰を振っていた。
騎乗位は不慣れだが、サービスを動かすわけにもいかない。
多分そう思ってしまうのはジャンの分身のコピーだからか。
昔からシンタローはサービスが好きだった。
何時も一緒にいる父親より、何時も一緒に遊ぶ従兄弟と思っていた人より。
たまに来るこの美しい物腰の叔父にとてつもなく引かれていて。
だから、叔父と情事を交わす時はシンタローが上になるのが当たり前で。
いつまでたっても慣れない情事にシンタローは必死だった。
「ッッ、あ、」
「シンタロー。もう少し奥まで。」
「ひ、は、ハイ…ッッおじさ…」
目をきつく閉じて、眉を寄せて。
サービスが喜ぶのなら。喜ばせる事ができるのなら。
ぐ、と、より深く入れようとするのだが中々上手くいかない。
なんだか自暴自棄になって、自分の下手さ加減に涙が出る。
するとサービスがシンタローに入れたまま座る。
シンタローの視界には繋がっている部分がモロに見えて、恥ずかしくなり、思わず目を反らした。
しかし、サービスはそれに留まらずシンタローを横に寝かせる。
つまり、言う所の正上位。
「や、おじさ!俺、俺が動くから!」
下手だったから怒ってしまったのだろうか。
心配ではあったが、何時もと違う体位に興奮もしていて。
どうしよう、とサービスを見上げると、サービスは綺麗な顔で笑っていた。
「今日は俺がしてあげよう。いつもしてもらってばかりだからな。」
そう言い、シンタローの足を思い切り開かせ、普段届かない奥の方まで自信を貫く。
「ひゃ、あ!ああ!」
ずぷ、ずぷと、振られて、激しく腰を打ち付けられる。
「シンタロー…」
耳たぶを舐められ、それが気持ち良かったらしく、
「イ、イッちゃ!あ、あああん!!」
びゅく、びゅく、と、シンタローは自分の精子を腹の上に出し、サービスの体を抱きしめる。
「シンタロー。」
「ん、ん、な、なに?」
「誕生日おめでとう。」
そう言いシンタローの中に己の精子をぶちまくたのだった。
「シンタロー。今日は誕生日だそうだな。誕生日とはその人物がこの世に産まれた日の事だ。」
「………。」
「俺の誕生日はいつ、なんだろうな。お前と同じ今日なのか、それとも、お前が死んだあの日なのか。」
「………。」
「俺には誕生日がないのかも知れない。」
何も言えない。
キンタローの24年間を奪ったのは、紛れも無く俺で。
アイツの人生を狂わせたのも俺。
悪いとも思うが、過ぎた年月を戻す事はどうやったって不可能でしかなく。
やはり俺の口からは声は出なかった。
「シンタロー。聞いているのか?」
「ああ。」
目を合わす事もできない。
反らす自分が酷く惨めで。
幼い頃皆に祝って貰えたのは自分じゃなくて、本当はキンタローだったのに。
「シンタロー。お前が俺の誕生日を決めて欲しい。お前は俺の…」
顔を持ち上げられて目がかちあった。
キンタローの真剣な眼差しに堪えられなくて、どうしても目が泳ぐ。
「すまない。お前を責めたい訳じゃないんだ。俺は…駄目だな。気の利いた台詞の一つも出て来ない。」
そう言って耳まで真っ赤にしてシンタローから目線を反らす。
日頃無表情のキンタローらしからぬ行動。
「シンタロー、お前に、いいか、お前に決めて欲しいんだ。俺の全てを貰い、俺に全てを与えたお前に。」
「キンタロー…」
赤くなっているのは恥ずかしいからだと理解した。
だから、シンタローは本当に自然にキンタローを抱きしめ、頭をあやすように撫でてやった。
まだお前に教えてやってない事もすげー多い。
でも、お前にとっても、もちろん俺にとっても、お互いが全て、なんだよナ。
「キンタロー。お前の誕生日は今日だ。俺と同じ。文句は言わせねー。」
お互いの体温が服を伝って流れ込む。
ほんわかした温かい空気が二人を包み込む。
耳元でキンタローがクス、と笑ったのが聞こえた。
「誕生日おめでとう。シンタロー。」
「誕生日おめでとう。キンタロー。」
「誕生日おめでとうございます。シンタロー総帥。」
赤い服を着た医者らしからぬ風貌。
颯爽と現れて、何かよく解らない大きな包みをくれた。
リボンの下にバースデイカードが挟まっている事から、それが自分へのプレゼントだと解る。
「はい。これプレゼントです。」
「………。」
じと、とシンタローに見られ、高松は何ですか?と言うようにいつものように挑戦的に唇の端を上げる。
「ドクターってサ、俺と付き合ってるんだよナ?」
「ええ。どうしたんですか?急に。毎晩とまではいきませんが、マジック様や、サービス、ハーレムの目を盗んで可愛がってますでしょう?」
「だーーっ!!そーゆー事は言わなくていいの!!そうじゃなくって!!」
真っ赤になって叫ぶシンタローに、高松は心の中で可愛いな、と思う。
昔とちっとも変わらない。
性的な話しになると、いつもこうだった。
「そうじゃない、と言いますと?」
「ドクターってサ、グンマとかキンタローには鼻血出すのに、何で俺には出さねーの?」
これは驚いた。
多分シンタロー様本人は気付いていらっしゃらないだろうが。
この言い方はまるで
嫉妬。
「やっぱ、俺が金髪、碧眼じゃないから?」
ああ、何故ご自分の可愛らしさに気付かないのでしょうね。
貴方のその淋しそうな顔は、とても欲情的なのに。
「どう、なんでしょうね。」
てっきり否定してくれると思っていたシンタローは、何かが壊れる音を聞いた。
そして、次の瞬間思考回路はぶっとぶ。
「ク、ククク!じゃあ鼻血出させてやろーじゃねーかー!!」
「シンタロー総帥??」
たじろく高松。
高松の妄想では、ここでシンタローが泣くかと思っていた。
いつもシンタローは高松の想像道理には動かない。
それが高松にとって新鮮でもあるのだ。
「でりゃ!!」
掛け声と共にバッ!と総帥服の上着を脱ぎ去る。
綺麗に焼けた小麦色の肌と、ピンクの乳首。
ぶわぁぁあぁ!!
高松の鼻血が噴水のように。もっと具体的にいうのなら小便小僧のように。勢い良く吹き出した。
それを見たシンタローは満足顔。
フフン、俺だって、その気になれば出来るんだよ!!
「シンタロー総帥…今日は積極的ですね…」
「は?」
「久しぶりに健康診断といきましょうか…」
しまった!と思っても後の祭。
シンタローの叫び声が部屋に児玉するのであった。
昔から顔だけは知っていた。
獅子舞の忠実な部下というのが俺の第一印象だった。
ストイックな雰囲気を身に纏い、切れ長の瞳にサラサラの髪。
そして、俺と同じ黒い髪の黒い瞳。
同じ色なのに、どうしてこうも違った形をしているのだろうと、幼い俺は思っていた。
そして、南国の島でアラシヤマの師匠だと知る。
「シンタロー様、何を考えているんですか?」
いつまでたっても俺に対して敬語で。
もう、肉体関係も持っているのに、昔と態度を変えない。
そのよそよそしさに不安にもなったのだが、今はこれがマーカーの素なのだと思う事にしている。
「別に。つーか、今日俺誕生日なんだけど。」
知ってるか?なんて愚問。
「存じ上げています。」
「プレゼント位あンだろ~?」
「ええ。」
マーカーはそう言って愛おしそうに笑う。
この笑顔は俺だけのもので。
マーカーにこんな顔をさせられるのも、ストイックなマーカーを劣情に駆らせる事ができるのも俺だけ。
「シンタロー総帥…」
「ン…」
マーカーがキスをくれるので、シンタローはそれを受け入れた。
「ふ、ん…?ンン!」
だが、何時ものキスと違う。
何時もは軽いキスなのに。
濃厚なキスと、初めて味わうマーカーの舌に、シンタローは戸惑う。
キスだけでイかされそう。
そんな不安にも似た気持ちが頭をもたげる。
ちゅ、くちゅ、と唾液の交わる音がシンタローの聴覚をも犯した。
「あ、はぁ、」
やっと唇を離された。
シンタローの中心は既に立ち上がり始めていて。
「シンタロー総帥…いやらしいですね。」
クスクス笑われながら言われ、シンタローはカッ!と赤くなる。
「酷くそそられますよ…」
そう言ってシンタローの中心をまさぐる。
「ふ、うん!!ッッ!」
「今日は死ぬ程良くして差し上げます。」
マーカーはそう言うと、シンタローの蕾に指を入れ、慣れた手つきで掻き交ぜる。
シンタローの蕾が柔らかくなった所で一気に貫いた。
「ひゃ、あ!あ!」
こんな抱かれ方は初めてで、目の前がチカチカする。喉がコクリと上下に動いた。
「今日はシンタロー総帥のお誕生日ですから。沢山気持ち良くなって下さいね。」
そう言って優しくシンタローの頭を撫でるのだった。
この後シンタローはマーカーの真の恐ろしさを知る事となる。
「シンタロー総帥ν」
「あんだよ。」
垂れ目のイタリア人ロッドがかけてくる。
コイツと関わるとろくな事にならないとシンタローは既に悟っていた。
変質者を見るようにジトリとロッドを見ると、パチン☆とウインクをされ、シンタローに何とも言い難い怒りが込み上げる。
眼魔砲を打つ準備をすると、ロッドが慌てて制止させる。
「もー!怖い子猫ちゃんだなー!ネ、プレゼント持って来たから機嫌直して!今日シンタロー総帥の誕生日でしょ?」
やたら大きな箱に、シンタローは眉間に眉を潜める。
「パンツとか変な服じゃねーだろーな!」
「まっさかー!ちゃーんとシンタロー総帥に必要なものだよ。」
アハハ☆と笑うので、ロッドを信じ、ドピンクの包装紙を開ける。
そして思う。
何で俺、ロッドを信じちゃったんだろ…。
ああッッ!俺の馬鹿!俺の馬鹿馬鹿ッッ!!
そう。中に入っていたのはイタリアジョークでは済まない、いわゆる“大人の玩具”ってやつで。
シンタローが呆然としていると、ロッドが後ろから顔を出す。
「ね?言った通りでしょ☆総帥絶対使うと思ってさー!」
この超笑顔のロッドにシンタローはキレた。
「眼魔砲。」
ちゅどーん!と至近距離からロッドに向けて眼魔砲をぶち込む。
そして、真っ黒になったロッドに貰った玩具を投げ付けた。
「ヒデー!シンタロー総帥!俺のあげたプレゼントをッッ!!」
「いるか!そんなモン!!」
怒鳴ったにも関わらず、ロッドはハハーン、と指を顎に引っ掛け笑う。
「な、なんだよ!」
余りの出来事にシンタローは身を引いた。
すると、ロッドは元気良くシンタローに顎に当てていない方の手でシンタローを指す。
「そーだよなー!コレ、俺のより小さいしなー!やっぱ、シンタロー総帥は大きいのじゃないとお気に召さない、か。でもコレ結構性能イイんだぜ?」
「………言うに事かいてそれか。」
苛々メーターがMAXを越え、シンタローの腕がぶるぶる震える。
「何なら今からする?」
「……ふ、ふざけんなぁああぁあ!!」
拳でロッドを殴る。
バキッ!と音がして、ロッドは数メートル飛んだ。
シンタローはプリプリ怒ってしまった、と・さ!!
「はーいはい!ご飯ですよー!」
シンタローの手にはデコレーションケーキのワンホール。
南国らしく、中身はマンゴーやら、パッションフルーツやら、色々なものが入っていて。
シンタローの腕の見せ所の見た目も、何処の一流シェフが作ったのかとみまごう物。
勿論味だって天下一品の保証済み。
「ワーイ!ごーちそう!ごーちそう!」
「わーうわう!わーうわう!」
日の丸扇子を両手に持ってパプワとチャッピーがルンタッタとシンタローの回りを回る。
シンタローはクス、と笑い、テーブルの真ん中にデコレーションケーキを置いた。
「む?」
真ん中にあるチョコのプレートにパプワは気付いたようで、それを指差す。
「シンタロー。」
「ん?どーした?パプワ。」
「コレ、なんて書いてあるんだ?」
そこに書いてあるのは“HAPPY BIRTHDAY”の文字。
「ああ。今日は俺の誕生日だからナ!」
誕生日位ゴーカにしても罰は当たんねーだろ。
「フーン。成人過ぎた癖にこんな事して楽しいのか?」
「ほっといて!!
ホラ、馬鹿言ってないで食え。」
ツッコミを忘れずしてから、ケーキを切り別ける。
勿論1番大きいのはパプワの分。
そして、オマケにチョコのプレートもパプワにやる。
戴きますをしようとしたら、パプワがツンツンと、シンタローのタンクトップを引っ張った。
「シンタロー。今日はお前の誕生日だから1番大きいケーキは譲ってやる。」
そう言ってシンタローの1番小さいケーキと交換した。
ぽわ、と心が暖かくなるのをシンタローは感じる。
そして、パプワの頭をグリグリ撫でた。
「じゃあ、この大きいケーキは俺が貰うナ。ありがとうパプワ。」
皆でいただきますをして、ケーキを食べる。
早食いのパプワはあっという間に平らげたので。
シンタローは又クス、と笑う。
「ホラ、パプワ。あーん。」
フォークにケーキを乗せてパプワの口に持っていく。
「子供扱いするナ。」
「プッ!…恋人扱いしてるんだヨ。」
そう言うと、パプワは目をつぶって口を大人しく開ける。
初恋はフルーティな味がした。
「シンタローはぁんνあんさんが今日誕生日だと聞いて、心友のわてが精一杯頑張ったプレゼント使っておくれやすぅ!」
「は?くだらねーモンだったら殺す。」
ウザイ奴が来たと言わんばかりにギロ、と睨み付けるがアラシヤマはめげない。
寧ろ気付いてない。
「わての愛を受け取っておくれやす~ν」
そう言って差し出したのはマフラー。
5月に!マフラー!!しかも手編み!!彼氏が誕生日に貰って1番重いと感じる手編みのマフラー!!よりにもよって!!
ラブオーラを出され、モジモジとし、頬を赤く染めるその様はただのアレで。
「シンタローはんの為に夜なべして作ったんどす!トージ君にも見てもら…」
「眼魔砲。」
燃えた。
可燃物なのでよく燃える。
アラシヤマの思いと共に消え去れ。灰になれ。
「嗚呼ッ!!わてのバーニングラブが!!」
「解ったから速やかに死ね。」
この馬鹿の為に貴重な時間を費やしたと言わんばかりにさっさと行くべき方向へシンタローはスタスタと歩いて行った。
「ク、ククク…。」
しかし、背中に黒いオーラが出ている、とシンタローは気配で解る。
しかもそれを出しているのがアラシヤマだと言う事も。
「こんな事でへこたれるわてじゃないどす!アッもしかして愛情の裏返し!?いややわぁ、もう、シンタローはんたら照れ屋なんどすから~」
「倒れろ。」
「マフラーの色が気に入らなかったんどすな?それならそうと言ってくれれば良おおしたのに!」
「人の話を聞け。」
「赤、青、黄色、どれでも好きな色を選びなはれ!」
そう言ってファンシーバックからババッ!とマフラーをシンタローに向かって投げる。
シンタローはミラクルダッシュをして逃げた。
「嗚呼ッ又一人ぼっち!!待っておくれやす~!!」
それでもめげずに着いてくるアラシヤマに、シンタローも勘忍袋の尾が切れて眼魔砲をぶっ放したのだった。
「おめでとうも言わせてくれまへんの…?」
「シンタローさん。」
今目の前に居るのは金と黒を混ぜた男が一人。
嗚呼俺はどうして。
いつか別れなければいけない人を愛してしまったのか。
「誕生日おめでとうございます。」
そうやって幸せそうに、本当に優しく笑うから。
心がきゅう、と苦しそうな音を立てる。
リキッドに抱かれて、乱されて、頭が真っ白になって。
そして、精一杯甘やかして、優しくされて、愛されていると実感させられて。
青い空と海の中、この南国の孤島で体も心も裸にされる。
「愛してます。シンタローさん。」
そんな事言わなくても解ってる。
「大好きです。他の誰よりも。」
そんなの俺だって…俺の方こそ。
小麦色に焼けた肌と肌が一つに溶け合う。
「ひ、ああ!」
苦しそうな声を上げてリキッドを受け入れる。
本来そこに入るべきではないソレを精一杯くわえ込んで。
「シンタローさん、大好きです。」
激しく腰を揺さぶられて、中に何度も出される。
愛する人を確認するかのように。
何度も、何度も。
「リキッ…も、や、やめて」
爪を立てられ背中に広がる爪の跡。
うっすらと血が滲む。
お互い離れたくないのにその事はどちら共言わない。
「ア、あ、も、ダメッ!!ン、――――ッッ!!」
びゅくり、と、何度目かの体液を吐き出す。
肩で息をしながら潤んだ瞳で見上げる。
今日だったら聞けるかもしれない。
言ってはいけない閉ざされた言葉。
「お前、さ。」
「ハイ?」
「何でそんなに嬉しそうなの?」
一瞬キョトン、とした顔をしたリキッドだが、すぐに解ったようで、又、ふわ、と微笑む。
「貴方と今一緒に居られる事が幸せなんです。」
ああ、そうか。
未来も過去も必要ない。
今が、この瞬間が大切なのだ。
その、最高のプレゼントを貰って、シンタローは幸せそうに瞳を閉じた。
「オイ、シンタロー。もうちょい足閉じろ。」
「これが限界だっつーの!」
ハーレムとシンタローは今風呂場に居る。
自室に着いているシャワールームのような小さいものではなく、大浴場のような広々とした家族全員が入れる方の風呂場だ。
まぁ、自室の風呂場じゃ狭くて、一人入るのがやっと。
背もガタイもイイ大の男二人が一緒に入れる程のスペースはない。
なので仕方なしに二人は…正確に言えばハーレムが嫌がるシンタローを引きずって風呂場に連れてこられたのだった。
「そんなに間が開いてたら零れるだろーが!もったいねぇ!」
「じゃー普通に飲まんか!こーの飲んだくれ!!」
ハーレムの左手には一升の酒。
恐らくは日本酒だろう。
それをシンタローのフトモモに並々とついでいる。
敏感な部分は既に立ち上がっており、酒を零さぬよう、きゅ、と締めているのが又なやましい。
恥ずかしさか、体制が苦しいのか、シンタローはブルブル震えている。
そんなシンタローを見て、ハーレムは舌なめずりをした。
旨そうな酒とシンタロー。
赤い舌を出して遠慮なく性器をしゃぶる。
「ひ!」
ブワッと鳥肌が立った。
酒で冷え、少し頭を下げていたソコが、ハーレムの赤い舌で硬くそそり立つ。
「ひゃ、あ!あ、あう!」
そして、酒が終わると、又注ぐ。
その繰り返し、繰り返し。
ちゃぷ、ちゃぷという自身をしゃぶり尽くされている水音がどうしても聴覚から脳に入り込んで興奮してしまう。
「今日はお前の誕生日だからな。我慢はさせねーよ。先に一回イッとけや。」
「ふ、ぐ!お、おじさ…ぁ、ああああッッ!!」
強くハーレムが吸うと、シンタローは呆気なく果ててしまった。
ビュク、ビュク、と、ハーレムの口内で吐き出されたシンタローの精子を飲み干し、裏筋を舌先で嘗めとる。
そして、シンタローを四つん這いにして既にヒクついている蕾に猛った己をねじこんだ。
「あ!あああッッ!!」
「―――ッッ…キツ」
ビリビリと電流がシンタローを頭の先から爪先までを襲う。
ハーレムにガッチリ腰をホールドされ、好き勝手に動かされる。
それをあがらう事も出来ず、シンタローはハーレムが差し出す快楽の渦へと手を伸ばすのだった。
「シンタローの誕生日を機会にマジック様、そして、サービス、ハーレムに話しておきたい事があります。」
改まった言葉使い。
ジャンの回りにはあの、嵐の四兄弟。(一名除く)
なのに、苺のワイシャツに便所サンダルの面持ちで、ジャンが正座をしていた。
その隣にはシンタローが凄い仏頂面でそっぽを向いている。
「どうしたんだい?改まって。」
「ジャン、その恰好素晴らしいよ。僕にはマネできないね。」
「ケッ!」
三人は多種多様な言葉を投げかける。
ジャンは、とびきりのスマイルでこう言い放った。
「シンタローと結婚する事にしました!」
ちゅどーん!!
ハーレムがいきなりジャンに眼魔砲を撃ったが、バリアを張られ奴は無傷。
それが又むかつく。
「本当かい?いやー、パパは賛成だよ!」
(夫婦というより二人とも私の愛人にしてしまえばいいんだしね。)
「そうかい。シンタローをヨロシク頼むよ。」
(同じ顔同士の情事もおもしろそうだし。)
笑顔で言うマジックとサービスに、ジャンは「ありがとう、ありがとう!」と、何故か握手を求める。
スキンシップのようだ。
「なーに呑気に、しかも承諾してんだ!馬鹿じゃねーの!?」
ハーレムがいくら言おうと、この兄と弟は聞く耳すら持たない。
苛々がつのり、シンタローの腕をグイ、と引き寄せる。
「お前はいいのかよ?一度コイツに殺されたんだぞ!?」
シンタローは虚ろな目でハーレムを見た。
いや、見てない。
ハーレムの方を見ていた。
ハーレムを通り越して、遠くの壁紙を見ているようだが焦点は定まっていない。
そして。
「なんか、もう、どーでもいい。」
「何でそんないきなり投げやりなんだ!まだ若けーんだからこれからもっとイイ人が現れるかもしんねーだろーが!」
「まあまあ義叔父さん。」
「だーれがテメーの義叔父さんだッッ!サービス!お前もコイツの義叔父になっちまうんだぞ!?」
「いや、サービスはサービスだよ。」
「だ、そうだ。」
ハーレムは、自分って、結構常識人なんだな、と、誰も味方のいない一族と一人の中でそう思ったのだった。
「ハイ、お兄ちゃん!」
渡されたのは肩叩き券。
「あ、ありがとうコタロー!」
満面の笑みでプレゼントを貰うが、シンタローの頭の中は、何故このチョイスなのだろう、と考える。
いや、別に肩叩き券が嫌な訳じゃない。
コタローから貰えるものなら何でも嬉しいのだから。
例え牛乳ビンの蓋だろーが、使い道の良く解らない小さい小物入れだろーが、何だって嬉しい。
だけど、何故肩叩き券?
俺って、肩凝ってるよーに見えるのかな?
「ね、いつでも使ってね、お兄ちゃん!」
満面の笑みで笑われて、シンタローは鼻血を垂らす。
鼻血を垂らしながら、コタローの機嫌を損ねないようにやんわりと聞いてみた。「すっごくお兄ちゃん嬉しいぞー!ありがとう、コタロー!…でも、何で肩叩き券なんだ?」
すると、コタローはやっぱりさっきの天使のような笑顔で答える。
「だってお兄ちゃんもう歳でしょ?そろそろかな?って思って。だって、浦飯幽助が13の時、お母さんの温子さんは29だったんだよ?お兄ちゃん、どっちかって言ったらお父さん寄りの年齢だって気付いたんだ!」
「コタロー、お兄ちゃんの心臓硝子だから。すぐ砕けちゃうから。寧ろ今の子幽遊白書知らないから。」
涙と鼻血を出しながらシンタローはコタローから顔を反らす。
ちょっとやり過ぎたかな?と、コタローは思う。
コタローとしては、涙ぐむ兄を見たかっただけだったのだ。
だから謝罪を込めてシンタローの広くて大きい背中に抱き着いた。
頬が体温で温かい。
「ごめんね、本当はこっちが本命のプレゼント。」
眉を困ったようにハの字にして笑い、ひらべったい包み紙を渡す。
鼻血をボタボタ垂らしながらシンタローは、その包み紙を貰い中を開けてみた。
そこには。
色とりどりのコタロー。
何処を見ても何処を開けても、コタローのオンパレード。
「気に入ってくれた?」
そう微笑まれ、シンタローも釣られて微笑み、
「うん!とっても。」
彼にとっては最高のプレゼントを胸に抱き、シンタローは鼻血を出し続けるのであった。
終わり
「!!」
今日も仕事疲れたぞ、と、シンタローがベッドに入ろうとしたその瞬間。
こんもりしていた布団から、にょ、と顔を出すナイスミドル。
しかも、何故かバスローブ姿で。
シンタローはいきなりの事でびっくりし、目が点になった。
「な、ななな!!」
混乱と怒りが同時に湧いて出る。
「んもう!私がシンちゃんの誕生日を忘れるわけないじゃない。」
そーじゃねーだろ。
俺が言いたいのは、何でアンタが俺のベッドに居るかってことだろーが!
そう言いたくてもさっきのショックで口が金縛り状態で動かない。
「ほら、シンちゃん!誕生日プレゼント!勿論プレゼントはわ・た・しνだよ!」
そして、バスローブの端から胸のボタンをチラリとシンタローに見せる。
「いらねーよ!!」
やっと金縛りが溶けた。と、いうか、ツッコミが日常的な事だったので、すんなり口から出たというのが正しい。
「またまたー!遠慮しなくてもいいんだよνパパはシンちゃんのなんだからν」
「遠慮なんかしてねーから。いい病院紹介しよーか?親父ィ…」
もうハートを振り撒くマジックに何を言っても聞かない。
そんな事わかりきっているのに言わずにはいられない。
「はっはっは!恥ずかしがらなくてもいいのに!」
シンタローは馬鹿を見る目でマジックを見て溜息をついた。
そして、風呂に入るべくバスルームに向かおうとしたその時。
がし、とマジックに腕を掴まれた。
「お風呂入っちゃ駄目だよ!シンちゃんの匂いが取れちゃう!!」
「キモ!!」
シンタローは思い切り露骨に顔を歪めた。
なのにマジックは気にしないでシンタローを引き寄せると、シンタローの首筋をベロリと嘗める。
慌てて体を離し、舐められた箇所を手で押さえた。
「~~~ッッ!アンタなぁ!!ってうわっ!」
どさ、とベッドに引きずり込まれ抱きしめられる。
マジックの満面の笑顔にシンタローは血の気が下がるのを感じた。
「シンちゃん。今日は隅々迄愛してあげるからね…。」
鼻血をボタボタ垂らしながら言うマジックにシンタローは、
誰か助けてくれぇぇぇ!
と、心の中で絶叫したのだった。
夜は今始まったばかり。
「し~んちゃ~んッッ!!」
いきなり後ろから抱きしめてくるのは兄グンマ。
金色のロングヘアーが揺れている。
男のくせにトレードマークとなりつつあるピンクのリボンをつけて、笑顔でシンタローに抱き着いた。
「あぁ!?なんだよ、なんか用かぁ?」
うざったそうに振り向くシンタローとは逆にグンマは満面の笑みを浮かべている。
「ねー、シンちゃん!買い物付き合ってよ~」
「やーだね!俺はお前と違って忙しいの!」
前を向いて言うのでグンマはプクッと頬を膨らませる。
そして、耳元に、ふぅ、と息を吹き掛けた。
ビク、とシンタローは耳を押さえ、グンマの側から離れた。
グンマは相変わらずニコニコ笑っている。
なんだよ。
じとっとグンマを見るが相変わらず何考えてるか解らない笑顔を一切崩さない。「ね、シンちゃん行こうよ!たまには息抜きも必要でしょ?」
そうやって困ったように笑うから。
シンタローは頷いてしまう。
グンマは良かった、と笑う。
殴られるか蹴られるか。もしかすると眼魔砲を撃たれるかも、って思っていた。と、グンマは笑いながらシンタローに言う。
シンタローもつられて笑う。
ほんの数秒前の出来事を忘れてしまうのだからシンタローも大物だ。
それともグンマが忘れさせているのだろうか。
「オイ。どこ行くんだ。こっちは…」
そう。こっちは。
「うん。僕の部屋。」
プシュン!と、ドアが開き、ピンクレースの乙女ちっくな見慣れた部屋が目に飛び込む。
そして、グンマの部屋の中心にあるガラスがハートの形になっている机の上には“HAPPY BIRTHDAY”と書かれた二段重ねのデコレーションケーキが。
なんだコレと、シンタローは思ってからグンマの部屋にある日めくりカレンダーに目をやると、グンマの字で“恋人の誕生日”と書いてあり、シンタローは赤面した。
「えへへ。今日はシンちゃんが産まれて28年目だよぉ~!」
産まれてくれてありがとう。HAPPY BIRTHDAYシンちゃんν
そう耳元で呟いてシンタローの唇にキスを落とすのだった。
「あ、は、ぁう…ッッ!」
23:58。
シンタローはサービスの上で腰を振っていた。
騎乗位は不慣れだが、サービスを動かすわけにもいかない。
多分そう思ってしまうのはジャンの分身のコピーだからか。
昔からシンタローはサービスが好きだった。
何時も一緒にいる父親より、何時も一緒に遊ぶ従兄弟と思っていた人より。
たまに来るこの美しい物腰の叔父にとてつもなく引かれていて。
だから、叔父と情事を交わす時はシンタローが上になるのが当たり前で。
いつまでたっても慣れない情事にシンタローは必死だった。
「ッッ、あ、」
「シンタロー。もう少し奥まで。」
「ひ、は、ハイ…ッッおじさ…」
目をきつく閉じて、眉を寄せて。
サービスが喜ぶのなら。喜ばせる事ができるのなら。
ぐ、と、より深く入れようとするのだが中々上手くいかない。
なんだか自暴自棄になって、自分の下手さ加減に涙が出る。
するとサービスがシンタローに入れたまま座る。
シンタローの視界には繋がっている部分がモロに見えて、恥ずかしくなり、思わず目を反らした。
しかし、サービスはそれに留まらずシンタローを横に寝かせる。
つまり、言う所の正上位。
「や、おじさ!俺、俺が動くから!」
下手だったから怒ってしまったのだろうか。
心配ではあったが、何時もと違う体位に興奮もしていて。
どうしよう、とサービスを見上げると、サービスは綺麗な顔で笑っていた。
「今日は俺がしてあげよう。いつもしてもらってばかりだからな。」
そう言い、シンタローの足を思い切り開かせ、普段届かない奥の方まで自信を貫く。
「ひゃ、あ!ああ!」
ずぷ、ずぷと、振られて、激しく腰を打ち付けられる。
「シンタロー…」
耳たぶを舐められ、それが気持ち良かったらしく、
「イ、イッちゃ!あ、あああん!!」
びゅく、びゅく、と、シンタローは自分の精子を腹の上に出し、サービスの体を抱きしめる。
「シンタロー。」
「ん、ん、な、なに?」
「誕生日おめでとう。」
そう言いシンタローの中に己の精子をぶちまくたのだった。
「シンタロー。今日は誕生日だそうだな。誕生日とはその人物がこの世に産まれた日の事だ。」
「………。」
「俺の誕生日はいつ、なんだろうな。お前と同じ今日なのか、それとも、お前が死んだあの日なのか。」
「………。」
「俺には誕生日がないのかも知れない。」
何も言えない。
キンタローの24年間を奪ったのは、紛れも無く俺で。
アイツの人生を狂わせたのも俺。
悪いとも思うが、過ぎた年月を戻す事はどうやったって不可能でしかなく。
やはり俺の口からは声は出なかった。
「シンタロー。聞いているのか?」
「ああ。」
目を合わす事もできない。
反らす自分が酷く惨めで。
幼い頃皆に祝って貰えたのは自分じゃなくて、本当はキンタローだったのに。
「シンタロー。お前が俺の誕生日を決めて欲しい。お前は俺の…」
顔を持ち上げられて目がかちあった。
キンタローの真剣な眼差しに堪えられなくて、どうしても目が泳ぐ。
「すまない。お前を責めたい訳じゃないんだ。俺は…駄目だな。気の利いた台詞の一つも出て来ない。」
そう言って耳まで真っ赤にしてシンタローから目線を反らす。
日頃無表情のキンタローらしからぬ行動。
「シンタロー、お前に、いいか、お前に決めて欲しいんだ。俺の全てを貰い、俺に全てを与えたお前に。」
「キンタロー…」
赤くなっているのは恥ずかしいからだと理解した。
だから、シンタローは本当に自然にキンタローを抱きしめ、頭をあやすように撫でてやった。
まだお前に教えてやってない事もすげー多い。
でも、お前にとっても、もちろん俺にとっても、お互いが全て、なんだよナ。
「キンタロー。お前の誕生日は今日だ。俺と同じ。文句は言わせねー。」
お互いの体温が服を伝って流れ込む。
ほんわかした温かい空気が二人を包み込む。
耳元でキンタローがクス、と笑ったのが聞こえた。
「誕生日おめでとう。シンタロー。」
「誕生日おめでとう。キンタロー。」
「誕生日おめでとうございます。シンタロー総帥。」
赤い服を着た医者らしからぬ風貌。
颯爽と現れて、何かよく解らない大きな包みをくれた。
リボンの下にバースデイカードが挟まっている事から、それが自分へのプレゼントだと解る。
「はい。これプレゼントです。」
「………。」
じと、とシンタローに見られ、高松は何ですか?と言うようにいつものように挑戦的に唇の端を上げる。
「ドクターってサ、俺と付き合ってるんだよナ?」
「ええ。どうしたんですか?急に。毎晩とまではいきませんが、マジック様や、サービス、ハーレムの目を盗んで可愛がってますでしょう?」
「だーーっ!!そーゆー事は言わなくていいの!!そうじゃなくって!!」
真っ赤になって叫ぶシンタローに、高松は心の中で可愛いな、と思う。
昔とちっとも変わらない。
性的な話しになると、いつもこうだった。
「そうじゃない、と言いますと?」
「ドクターってサ、グンマとかキンタローには鼻血出すのに、何で俺には出さねーの?」
これは驚いた。
多分シンタロー様本人は気付いていらっしゃらないだろうが。
この言い方はまるで
嫉妬。
「やっぱ、俺が金髪、碧眼じゃないから?」
ああ、何故ご自分の可愛らしさに気付かないのでしょうね。
貴方のその淋しそうな顔は、とても欲情的なのに。
「どう、なんでしょうね。」
てっきり否定してくれると思っていたシンタローは、何かが壊れる音を聞いた。
そして、次の瞬間思考回路はぶっとぶ。
「ク、ククク!じゃあ鼻血出させてやろーじゃねーかー!!」
「シンタロー総帥??」
たじろく高松。
高松の妄想では、ここでシンタローが泣くかと思っていた。
いつもシンタローは高松の想像道理には動かない。
それが高松にとって新鮮でもあるのだ。
「でりゃ!!」
掛け声と共にバッ!と総帥服の上着を脱ぎ去る。
綺麗に焼けた小麦色の肌と、ピンクの乳首。
ぶわぁぁあぁ!!
高松の鼻血が噴水のように。もっと具体的にいうのなら小便小僧のように。勢い良く吹き出した。
それを見たシンタローは満足顔。
フフン、俺だって、その気になれば出来るんだよ!!
「シンタロー総帥…今日は積極的ですね…」
「は?」
「久しぶりに健康診断といきましょうか…」
しまった!と思っても後の祭。
シンタローの叫び声が部屋に児玉するのであった。
昔から顔だけは知っていた。
獅子舞の忠実な部下というのが俺の第一印象だった。
ストイックな雰囲気を身に纏い、切れ長の瞳にサラサラの髪。
そして、俺と同じ黒い髪の黒い瞳。
同じ色なのに、どうしてこうも違った形をしているのだろうと、幼い俺は思っていた。
そして、南国の島でアラシヤマの師匠だと知る。
「シンタロー様、何を考えているんですか?」
いつまでたっても俺に対して敬語で。
もう、肉体関係も持っているのに、昔と態度を変えない。
そのよそよそしさに不安にもなったのだが、今はこれがマーカーの素なのだと思う事にしている。
「別に。つーか、今日俺誕生日なんだけど。」
知ってるか?なんて愚問。
「存じ上げています。」
「プレゼント位あンだろ~?」
「ええ。」
マーカーはそう言って愛おしそうに笑う。
この笑顔は俺だけのもので。
マーカーにこんな顔をさせられるのも、ストイックなマーカーを劣情に駆らせる事ができるのも俺だけ。
「シンタロー総帥…」
「ン…」
マーカーがキスをくれるので、シンタローはそれを受け入れた。
「ふ、ん…?ンン!」
だが、何時ものキスと違う。
何時もは軽いキスなのに。
濃厚なキスと、初めて味わうマーカーの舌に、シンタローは戸惑う。
キスだけでイかされそう。
そんな不安にも似た気持ちが頭をもたげる。
ちゅ、くちゅ、と唾液の交わる音がシンタローの聴覚をも犯した。
「あ、はぁ、」
やっと唇を離された。
シンタローの中心は既に立ち上がり始めていて。
「シンタロー総帥…いやらしいですね。」
クスクス笑われながら言われ、シンタローはカッ!と赤くなる。
「酷くそそられますよ…」
そう言ってシンタローの中心をまさぐる。
「ふ、うん!!ッッ!」
「今日は死ぬ程良くして差し上げます。」
マーカーはそう言うと、シンタローの蕾に指を入れ、慣れた手つきで掻き交ぜる。
シンタローの蕾が柔らかくなった所で一気に貫いた。
「ひゃ、あ!あ!」
こんな抱かれ方は初めてで、目の前がチカチカする。喉がコクリと上下に動いた。
「今日はシンタロー総帥のお誕生日ですから。沢山気持ち良くなって下さいね。」
そう言って優しくシンタローの頭を撫でるのだった。
この後シンタローはマーカーの真の恐ろしさを知る事となる。
「シンタロー総帥ν」
「あんだよ。」
垂れ目のイタリア人ロッドがかけてくる。
コイツと関わるとろくな事にならないとシンタローは既に悟っていた。
変質者を見るようにジトリとロッドを見ると、パチン☆とウインクをされ、シンタローに何とも言い難い怒りが込み上げる。
眼魔砲を打つ準備をすると、ロッドが慌てて制止させる。
「もー!怖い子猫ちゃんだなー!ネ、プレゼント持って来たから機嫌直して!今日シンタロー総帥の誕生日でしょ?」
やたら大きな箱に、シンタローは眉間に眉を潜める。
「パンツとか変な服じゃねーだろーな!」
「まっさかー!ちゃーんとシンタロー総帥に必要なものだよ。」
アハハ☆と笑うので、ロッドを信じ、ドピンクの包装紙を開ける。
そして思う。
何で俺、ロッドを信じちゃったんだろ…。
ああッッ!俺の馬鹿!俺の馬鹿馬鹿ッッ!!
そう。中に入っていたのはイタリアジョークでは済まない、いわゆる“大人の玩具”ってやつで。
シンタローが呆然としていると、ロッドが後ろから顔を出す。
「ね?言った通りでしょ☆総帥絶対使うと思ってさー!」
この超笑顔のロッドにシンタローはキレた。
「眼魔砲。」
ちゅどーん!と至近距離からロッドに向けて眼魔砲をぶち込む。
そして、真っ黒になったロッドに貰った玩具を投げ付けた。
「ヒデー!シンタロー総帥!俺のあげたプレゼントをッッ!!」
「いるか!そんなモン!!」
怒鳴ったにも関わらず、ロッドはハハーン、と指を顎に引っ掛け笑う。
「な、なんだよ!」
余りの出来事にシンタローは身を引いた。
すると、ロッドは元気良くシンタローに顎に当てていない方の手でシンタローを指す。
「そーだよなー!コレ、俺のより小さいしなー!やっぱ、シンタロー総帥は大きいのじゃないとお気に召さない、か。でもコレ結構性能イイんだぜ?」
「………言うに事かいてそれか。」
苛々メーターがMAXを越え、シンタローの腕がぶるぶる震える。
「何なら今からする?」
「……ふ、ふざけんなぁああぁあ!!」
拳でロッドを殴る。
バキッ!と音がして、ロッドは数メートル飛んだ。
シンタローはプリプリ怒ってしまった、と・さ!!
「はーいはい!ご飯ですよー!」
シンタローの手にはデコレーションケーキのワンホール。
南国らしく、中身はマンゴーやら、パッションフルーツやら、色々なものが入っていて。
シンタローの腕の見せ所の見た目も、何処の一流シェフが作ったのかとみまごう物。
勿論味だって天下一品の保証済み。
「ワーイ!ごーちそう!ごーちそう!」
「わーうわう!わーうわう!」
日の丸扇子を両手に持ってパプワとチャッピーがルンタッタとシンタローの回りを回る。
シンタローはクス、と笑い、テーブルの真ん中にデコレーションケーキを置いた。
「む?」
真ん中にあるチョコのプレートにパプワは気付いたようで、それを指差す。
「シンタロー。」
「ん?どーした?パプワ。」
「コレ、なんて書いてあるんだ?」
そこに書いてあるのは“HAPPY BIRTHDAY”の文字。
「ああ。今日は俺の誕生日だからナ!」
誕生日位ゴーカにしても罰は当たんねーだろ。
「フーン。成人過ぎた癖にこんな事して楽しいのか?」
「ほっといて!!
ホラ、馬鹿言ってないで食え。」
ツッコミを忘れずしてから、ケーキを切り別ける。
勿論1番大きいのはパプワの分。
そして、オマケにチョコのプレートもパプワにやる。
戴きますをしようとしたら、パプワがツンツンと、シンタローのタンクトップを引っ張った。
「シンタロー。今日はお前の誕生日だから1番大きいケーキは譲ってやる。」
そう言ってシンタローの1番小さいケーキと交換した。
ぽわ、と心が暖かくなるのをシンタローは感じる。
そして、パプワの頭をグリグリ撫でた。
「じゃあ、この大きいケーキは俺が貰うナ。ありがとうパプワ。」
皆でいただきますをして、ケーキを食べる。
早食いのパプワはあっという間に平らげたので。
シンタローは又クス、と笑う。
「ホラ、パプワ。あーん。」
フォークにケーキを乗せてパプワの口に持っていく。
「子供扱いするナ。」
「プッ!…恋人扱いしてるんだヨ。」
そう言うと、パプワは目をつぶって口を大人しく開ける。
初恋はフルーティな味がした。
「シンタローはぁんνあんさんが今日誕生日だと聞いて、心友のわてが精一杯頑張ったプレゼント使っておくれやすぅ!」
「は?くだらねーモンだったら殺す。」
ウザイ奴が来たと言わんばかりにギロ、と睨み付けるがアラシヤマはめげない。
寧ろ気付いてない。
「わての愛を受け取っておくれやす~ν」
そう言って差し出したのはマフラー。
5月に!マフラー!!しかも手編み!!彼氏が誕生日に貰って1番重いと感じる手編みのマフラー!!よりにもよって!!
ラブオーラを出され、モジモジとし、頬を赤く染めるその様はただのアレで。
「シンタローはんの為に夜なべして作ったんどす!トージ君にも見てもら…」
「眼魔砲。」
燃えた。
可燃物なのでよく燃える。
アラシヤマの思いと共に消え去れ。灰になれ。
「嗚呼ッ!!わてのバーニングラブが!!」
「解ったから速やかに死ね。」
この馬鹿の為に貴重な時間を費やしたと言わんばかりにさっさと行くべき方向へシンタローはスタスタと歩いて行った。
「ク、ククク…。」
しかし、背中に黒いオーラが出ている、とシンタローは気配で解る。
しかもそれを出しているのがアラシヤマだと言う事も。
「こんな事でへこたれるわてじゃないどす!アッもしかして愛情の裏返し!?いややわぁ、もう、シンタローはんたら照れ屋なんどすから~」
「倒れろ。」
「マフラーの色が気に入らなかったんどすな?それならそうと言ってくれれば良おおしたのに!」
「人の話を聞け。」
「赤、青、黄色、どれでも好きな色を選びなはれ!」
そう言ってファンシーバックからババッ!とマフラーをシンタローに向かって投げる。
シンタローはミラクルダッシュをして逃げた。
「嗚呼ッ又一人ぼっち!!待っておくれやす~!!」
それでもめげずに着いてくるアラシヤマに、シンタローも勘忍袋の尾が切れて眼魔砲をぶっ放したのだった。
「おめでとうも言わせてくれまへんの…?」
「シンタローさん。」
今目の前に居るのは金と黒を混ぜた男が一人。
嗚呼俺はどうして。
いつか別れなければいけない人を愛してしまったのか。
「誕生日おめでとうございます。」
そうやって幸せそうに、本当に優しく笑うから。
心がきゅう、と苦しそうな音を立てる。
リキッドに抱かれて、乱されて、頭が真っ白になって。
そして、精一杯甘やかして、優しくされて、愛されていると実感させられて。
青い空と海の中、この南国の孤島で体も心も裸にされる。
「愛してます。シンタローさん。」
そんな事言わなくても解ってる。
「大好きです。他の誰よりも。」
そんなの俺だって…俺の方こそ。
小麦色に焼けた肌と肌が一つに溶け合う。
「ひ、ああ!」
苦しそうな声を上げてリキッドを受け入れる。
本来そこに入るべきではないソレを精一杯くわえ込んで。
「シンタローさん、大好きです。」
激しく腰を揺さぶられて、中に何度も出される。
愛する人を確認するかのように。
何度も、何度も。
「リキッ…も、や、やめて」
爪を立てられ背中に広がる爪の跡。
うっすらと血が滲む。
お互い離れたくないのにその事はどちら共言わない。
「ア、あ、も、ダメッ!!ン、――――ッッ!!」
びゅくり、と、何度目かの体液を吐き出す。
肩で息をしながら潤んだ瞳で見上げる。
今日だったら聞けるかもしれない。
言ってはいけない閉ざされた言葉。
「お前、さ。」
「ハイ?」
「何でそんなに嬉しそうなの?」
一瞬キョトン、とした顔をしたリキッドだが、すぐに解ったようで、又、ふわ、と微笑む。
「貴方と今一緒に居られる事が幸せなんです。」
ああ、そうか。
未来も過去も必要ない。
今が、この瞬間が大切なのだ。
その、最高のプレゼントを貰って、シンタローは幸せそうに瞳を閉じた。
「オイ、シンタロー。もうちょい足閉じろ。」
「これが限界だっつーの!」
ハーレムとシンタローは今風呂場に居る。
自室に着いているシャワールームのような小さいものではなく、大浴場のような広々とした家族全員が入れる方の風呂場だ。
まぁ、自室の風呂場じゃ狭くて、一人入るのがやっと。
背もガタイもイイ大の男二人が一緒に入れる程のスペースはない。
なので仕方なしに二人は…正確に言えばハーレムが嫌がるシンタローを引きずって風呂場に連れてこられたのだった。
「そんなに間が開いてたら零れるだろーが!もったいねぇ!」
「じゃー普通に飲まんか!こーの飲んだくれ!!」
ハーレムの左手には一升の酒。
恐らくは日本酒だろう。
それをシンタローのフトモモに並々とついでいる。
敏感な部分は既に立ち上がっており、酒を零さぬよう、きゅ、と締めているのが又なやましい。
恥ずかしさか、体制が苦しいのか、シンタローはブルブル震えている。
そんなシンタローを見て、ハーレムは舌なめずりをした。
旨そうな酒とシンタロー。
赤い舌を出して遠慮なく性器をしゃぶる。
「ひ!」
ブワッと鳥肌が立った。
酒で冷え、少し頭を下げていたソコが、ハーレムの赤い舌で硬くそそり立つ。
「ひゃ、あ!あ、あう!」
そして、酒が終わると、又注ぐ。
その繰り返し、繰り返し。
ちゃぷ、ちゃぷという自身をしゃぶり尽くされている水音がどうしても聴覚から脳に入り込んで興奮してしまう。
「今日はお前の誕生日だからな。我慢はさせねーよ。先に一回イッとけや。」
「ふ、ぐ!お、おじさ…ぁ、ああああッッ!!」
強くハーレムが吸うと、シンタローは呆気なく果ててしまった。
ビュク、ビュク、と、ハーレムの口内で吐き出されたシンタローの精子を飲み干し、裏筋を舌先で嘗めとる。
そして、シンタローを四つん這いにして既にヒクついている蕾に猛った己をねじこんだ。
「あ!あああッッ!!」
「―――ッッ…キツ」
ビリビリと電流がシンタローを頭の先から爪先までを襲う。
ハーレムにガッチリ腰をホールドされ、好き勝手に動かされる。
それをあがらう事も出来ず、シンタローはハーレムが差し出す快楽の渦へと手を伸ばすのだった。
「シンタローの誕生日を機会にマジック様、そして、サービス、ハーレムに話しておきたい事があります。」
改まった言葉使い。
ジャンの回りにはあの、嵐の四兄弟。(一名除く)
なのに、苺のワイシャツに便所サンダルの面持ちで、ジャンが正座をしていた。
その隣にはシンタローが凄い仏頂面でそっぽを向いている。
「どうしたんだい?改まって。」
「ジャン、その恰好素晴らしいよ。僕にはマネできないね。」
「ケッ!」
三人は多種多様な言葉を投げかける。
ジャンは、とびきりのスマイルでこう言い放った。
「シンタローと結婚する事にしました!」
ちゅどーん!!
ハーレムがいきなりジャンに眼魔砲を撃ったが、バリアを張られ奴は無傷。
それが又むかつく。
「本当かい?いやー、パパは賛成だよ!」
(夫婦というより二人とも私の愛人にしてしまえばいいんだしね。)
「そうかい。シンタローをヨロシク頼むよ。」
(同じ顔同士の情事もおもしろそうだし。)
笑顔で言うマジックとサービスに、ジャンは「ありがとう、ありがとう!」と、何故か握手を求める。
スキンシップのようだ。
「なーに呑気に、しかも承諾してんだ!馬鹿じゃねーの!?」
ハーレムがいくら言おうと、この兄と弟は聞く耳すら持たない。
苛々がつのり、シンタローの腕をグイ、と引き寄せる。
「お前はいいのかよ?一度コイツに殺されたんだぞ!?」
シンタローは虚ろな目でハーレムを見た。
いや、見てない。
ハーレムの方を見ていた。
ハーレムを通り越して、遠くの壁紙を見ているようだが焦点は定まっていない。
そして。
「なんか、もう、どーでもいい。」
「何でそんないきなり投げやりなんだ!まだ若けーんだからこれからもっとイイ人が現れるかもしんねーだろーが!」
「まあまあ義叔父さん。」
「だーれがテメーの義叔父さんだッッ!サービス!お前もコイツの義叔父になっちまうんだぞ!?」
「いや、サービスはサービスだよ。」
「だ、そうだ。」
ハーレムは、自分って、結構常識人なんだな、と、誰も味方のいない一族と一人の中でそう思ったのだった。
「ハイ、お兄ちゃん!」
渡されたのは肩叩き券。
「あ、ありがとうコタロー!」
満面の笑みでプレゼントを貰うが、シンタローの頭の中は、何故このチョイスなのだろう、と考える。
いや、別に肩叩き券が嫌な訳じゃない。
コタローから貰えるものなら何でも嬉しいのだから。
例え牛乳ビンの蓋だろーが、使い道の良く解らない小さい小物入れだろーが、何だって嬉しい。
だけど、何故肩叩き券?
俺って、肩凝ってるよーに見えるのかな?
「ね、いつでも使ってね、お兄ちゃん!」
満面の笑みで笑われて、シンタローは鼻血を垂らす。
鼻血を垂らしながら、コタローの機嫌を損ねないようにやんわりと聞いてみた。「すっごくお兄ちゃん嬉しいぞー!ありがとう、コタロー!…でも、何で肩叩き券なんだ?」
すると、コタローはやっぱりさっきの天使のような笑顔で答える。
「だってお兄ちゃんもう歳でしょ?そろそろかな?って思って。だって、浦飯幽助が13の時、お母さんの温子さんは29だったんだよ?お兄ちゃん、どっちかって言ったらお父さん寄りの年齢だって気付いたんだ!」
「コタロー、お兄ちゃんの心臓硝子だから。すぐ砕けちゃうから。寧ろ今の子幽遊白書知らないから。」
涙と鼻血を出しながらシンタローはコタローから顔を反らす。
ちょっとやり過ぎたかな?と、コタローは思う。
コタローとしては、涙ぐむ兄を見たかっただけだったのだ。
だから謝罪を込めてシンタローの広くて大きい背中に抱き着いた。
頬が体温で温かい。
「ごめんね、本当はこっちが本命のプレゼント。」
眉を困ったようにハの字にして笑い、ひらべったい包み紙を渡す。
鼻血をボタボタ垂らしながらシンタローは、その包み紙を貰い中を開けてみた。
そこには。
色とりどりのコタロー。
何処を見ても何処を開けても、コタローのオンパレード。
「気に入ってくれた?」
そう微笑まれ、シンタローも釣られて微笑み、
「うん!とっても。」
彼にとっては最高のプレゼントを胸に抱き、シンタローは鼻血を出し続けるのであった。
終わり
PR