忍者ブログ
* admin *
[400]  [399]  [398]  [397]  [396]  [395]  [394]  [393]  [392]  [391]  [390
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

mdm
幼い頃から親父に抱かれて、当時の俺はお袋がいると思っていたのに、親父に抱かれるのを不思議とおかしいと感じた事がなかった。
一族の秘密、自分自身の秘密、秘石の秘密、解ったのはあの南国の島。
その時解った。
何故俺は親父に抱かれるのがおかしいと感じなかったのか。
俺は体こそ青だったが、見た目と魂は極限まで赤だったから。
だからきっと俺は親父にとてつもない渇望感を抱いていて。
赤と青は磁石のS極とM極のように離れられない存在で反発しあう。
きっとそのせいもあって、俺は親父に反発しながらも結局は離れる事ができないのだ。










「アイツ、今どこにいンの。」
遅めの夕飯をグンマとキンタロー、そして自分で取りながら聞いたのは、マジックがファンクラブイベントに行って3日が過ぎた頃だった。
初日はマジックの事に触れないように過ごし、二日目は触れたいのだが触れられない状態。
そして三日目でやっと声を出して二人に聞けた。
「叔父貴は確か日本に行ったらしいぞ。日本といえば小さな島国だが、その文明は少し変わっていて、男はスーツにチョンマゲを結い、刀を脇にさし、24時間寝ないで働くらしい。」
「流石ジャパニーズビジネスマンだよねぇ~!」
シンタローの問い掛けに答えたのはスーツに身を包んだ紳士、キンタロー。
彼はまだ色々なものを経験した事がない為、知識に頼ろうとする傾向が強い。
後からあいずちを打つ少年のようなこの男は過保護な保護者に育てられた為、世間一般をよく知らない。
「そんな国あるかッツ!!そりゃ偏見だ!」
とりあえずツッコミを入れておいて、シンタローは又箸を動かした。
今日の御飯は白飯に肉じゃが、お吸い物に漬物だ。
グンマだけはお吸い物ではなく、コーンスープを飲んでいる。
「叔父貴は日本だ。シンタロー。いいか、叔父貴は日ほ…」
「二度言わんでよーし!」
何だか何度もマジックの話を持ち出されると照れてしまう。
自分から話を降って置いて、だ。
「ねぇ、シンちゃん。こんな事言うのもなんだけどさぁ、おとーさまの前でそーゆう可愛らしい事しなよ。おとーさま居なくて淋しいんでしょ?」
コーンスープを啜りながらグンマが言う。
グンマは普段ぼぉっとしているように見られがちだが、洞察力が鋭い。
たまにドキッ!とするような核心にピンポイントの事を言う。

今回の事でもそうだ。
ただ単に息子が父親の行き先を聞いただけ。
普通の事だ。
それでも三日という期間、それが普通を装う為の適当な時間だということを見抜き、それを自分達の前で言った事、それが淋しさからだと瞬時に悟っていた。
核心に触れられ、シンタローはぐ、と言葉を詰まらせる。
「ウサギじゃねぇっつーの。その位で」
淋しくなんてねーヨ。
続けては言わなかったがニュアンスでグンマは感じたらしい。
しかし顔は「ふぅん」と言った所。
ムッとしてゲンコツを頭にガツン!と食らわせる。
「いたーい!ぶわぁあぁぁん!シンちゃんがぶったー!キンちゃぁあん!」
流石、拳で語るのは早い。
キンタローに泣き付くグンマにシンタローは舌を出した。
「シンタロー、いきなり暴力はいけないぞ。いいか、人と言うのはだな、そもそも人、という字は支え合っているだろう。人とは支え合って生きていくものなのだ。そして…」
「はーいはいはいごちそーさん!早く食っちまえ!後片付けしてやンねーぞ!」
まだ何か付けたそうとしたキンタローの言葉を遮って、シンタローは食器をガチャガチャと片付け始めた。
逃げたな。と、二人は思ったが、結局の所この二人は上手くいっているのだから口だしする事もないか、と、二人は談笑しながら箸を進めていく。
洗い物をしながらシンタローは考える。
ほら、良く言うじゃねーか、“二番目に好きな人と結婚すると幸せになれる”って。
そんな事言われても俺には二番目なんて居ないし。
一番しか知らない。
アイツはどうなんだろうと考える。
俺はマジックしか知らないけれど。
アイツは過去に俺以外がそのポジションに居た。
ミツヤという同じ一族と、美貌の叔父の恋人ジャン。
本当は不本意なのかもしれない。
俺じゃないどちらかの方が本当は…恋人に留めておきたかったんじゃねぇの。
ミツヤがルーザー叔父さんを殺人鬼にしたてあげなければ。
ジャンがサービス叔父さんの恋人じゃなければ。
きっとどちらかを恋人にして、俺に「母さん」と呼ばせて喜んでいたのかもしれない。
ゾッ。
鳥肌が立った。
それを幼い自分は難無く受け入れたであろう。
そう考えると寒気がする。
しかし、そうなっても全く不思議はなかったのだ。
自分が今、このポジションに居るのはかなり複雑な運命が作り上げたもの。



ああ、これはかなり重傷かもナ。
俺の方がが確実にマジックを好きだって事実を突き付けられた気がする。
シンタローは頭を振った。
なんで今日はこうも次から次へと暗い思考回路になってしまうのだろう。
高々三日アイツに会ってないだけなのに。
「……ちゃん、シンちゃんッツ!」
は、と、現実に一気に引き戻された。
「大丈夫…?顔色悪いよ?」
さっき殴られたにも関わらず、心配そうにシンタローを覗き込むグンマ。
「顔面蒼白だぞ。」
無表情ではあるが、キンタローも心配そうにシンタローを見ていた。
「大丈夫だ…。」
笑ってはみたものの上手く笑えていなかったらしく、二人の顔は心配そうにずっとシンタローを見ていた。
「今日は僕たちが洗い物するよぉ~。」
「うむ。シンタロー、お前は少し休んだ方がいい。」
そう言ってくれたのだが、「いいって。早く皿置いて寝ろ。疲れてンだろ?明日から開発がんばれよナ!」
それだけ言ってさっさと二人の皿を取り上げてしまう。
無理矢理歌っている楽しい短調の鼻歌は、何故か悲しい音楽に聞こえた。









洗い物を終えて、シャワーを浴びる。
考えるのは先程の続き。
この不安を打ち消す事ができるのは今日本に居るマジックだけで。
熱いお湯を頭から流し、お湯に打たれる。
流れるお湯は熱いのに心は冷たく冷え切っていて。
どんなに頑張っても熱くはならないから。
「早く帰って来いヨ。」
ぽつりと漏らした言葉がお湯と共に流れていってしまったので、又少し寂しくなった。
日本でファンクラブなんか開いて。
浮気なんかしてるんじゃねーだろーナ。
考えが重い女になってきて、これじゃいけないと頭ではわかっているのに体が勝手に動く。
手が勝手にコルクを回してお湯を止め、バスタオルを腰に巻き付け携帯を握る。
押すのは既に登録してある番号“親父”。
トゥルル…機械の呼び出し音が耳に当たる。
三回目のコールでガチャ、と電話が取られた。
『もしもぉーし!シンちゃんッッ!!何々?どうしたの?お前から電話があって、パパすっごーくうれしいよ!』
喜々としたマジックの声が電話ごしに聞こえる。
「…………。」
『?シンちゃん?どうしたの?具合悪いの?』
シンタローが何も話さないと、不安らしい。
何度も何度も受話器ごしに心配そうなマジックがどいしたのか聞いてくる。
「イマスグキテ。」
がちゃん。

それだけ言うと、シンタローは受話器を切ってしまった。
「はぁああぁ~…!」
その後深い溜息をついて、シンタローはその場にしゃがみこんだ。
俺はなんつー事を……!
恥ずかしい恥ずかしい!
しかし、どこかスッキリした自分もいる。
久しぶり…といっても三日ぶりなだけなのだが、マジックの声を聞いてなんだか少し落ち着いた気がする。
シンタローは髪を拭きながら思った。
電話はかかってこない。
今何処にいて、何をしているんだろう。
センチメンタルなのは相変わらず抜けきれていないが、そう考えずにはいられなくて。
髪を乾かして大きなベッドに俯せでねっころがる。
黒い髪がシーツに映えた。
もう寝よう。
シンタローは思う。
過去は過去なのだ。
今、とりあえずかもしれないがマジックが選んだのは自分。
星の数程居る人間から俺を選んだのは紛れも無い事実。
もし、この場にミツヤ、ジャン、自分の三人しか居なくて自分が選ばれなかったとしても、今はミツヤとジャンは居ない。
例え繰り上がりでもいいじゃねぇか。
嫌だけど、それでもいい。
人間欲持つとロクな事になりゃしねぇ。
目を閉じて睡魔に身を任せると、部屋のドアが開いた。
部屋は寝る為に既に真っ暗闇で、シンタローは闇に溶け込んでいた。
「シンタロー。」
心臓が跳ね上がる。
その懐かしい声に耳を疑った。
がば、とベッドから起き上がると、光の差し込むドアからマジックが立っていて。
「すぐに来たよ。シンタロー。」
暗闇に居たせいで眩しさのせいでしかめっつらをしていると、それを察したマジックがドアを締めた。
「シンちゃんがあんまりにも可愛い事言うから。」
パパ、シンちゃんにメロメロなんだから。本当だよ。証明しただろう?
ツカツカとシンタローの側まで言って抱きしめる。
きゅう、と、抱きしめるとシンタローからは石鹸の香、マジックからは香水の匂いが。
「シンちゃん、今日はパパと一緒に寝ようか。」
「は?や…」
だ。の言葉はマジックの唇によって封じられてしまう。
そのキスはいつもと同じように心地いいもので。
それがはたして自分に向けられるべきでない愛情だったとしても、その愛情は確実に自分に向けられているものだから。
「何処に居て、何してたの。」
唇を離した時シンタローがそう言ってきた。
「日本でファンクラブイベントを開催してたんだよ。」

「何で俺に一言言っていかねぇの。グンマは知ってたのに。本当の息子じゃねぇから?」
「まさか。シンちゃん忙しいみたいだったし。邪魔になりたくなかったんだよ。……もしかしてずっとそう感じてた?」
卑怯にも、マジックが自分の言葉を否定すると知っていて聞いた。
それに、そんな事思ってなかったから頭を左右に振って否定の意を込める。
「そう…よかった。」
ふわり、笑う。
その笑顔が余りにも優しかったので、その顔に指を宛ててみた。
シャープな顎をなぞってみる。
「どうしたの、シンちゃん。」
そう聞いてもシンタローはマジックの顔を撫で続ける。
何も言わないで、まるでマジックがここに居る事を確かめるかのように。
シンタローが何も言わないで、ひたすら自分の顔を撫で続けているので、マジックもそれにならい何も言葉を発しなかった。
それはほんの数秒だったのだが、シンタローもマジックもとても長い時間のように感じて。
ややあってシンタローが口を開く。
「ミツヤとジャンと俺、誰が本当は1番好きなの。」
マジックは驚いた顔をした。
驚愕とかそんな事、絶対に顔に出さないマジックが、だ。
「……答えらンねぇ?」
「いや……。」
「言っとくけど、嘘は、なしな。」
「ああ…解っているよ。」
そう言ってシンタローの髪をすく。
マジックの指から黒い髪がサラサラと流れ落ちた。
「シンタロー。私はやはりお前を選ぶよ。」
それが例え嘘で塗り固められていた言葉だとしても。
息子に手を出した責任だとしても。
そう言葉に出した以上。
父さん、もう後戻りはできないんだぜ?
「まぁ、今更キャンセルされても困るけどナ。」
アンタが居たから俺は今まで誰とも特別な感情を持たなかったし、誰とも寝なかった。
純潔を守り通し、アンタだけを見てきた。
アンタは違うかもしれないが、俺はもうアンタしか見られない。
例えアンタがこの先、俺以外を好きになったとしても。
俺はこの道を引き返せないし、新しく別の人をアンタのように愛す事はできないだろう。
そうしてきたのはきっとアンタと俺自身。
甘んじて思う。
アンタはきっと手に入れられないものに渇望するタイプだ。
始めから手に入ってしまっている俺にはきっと焦がれないだろう。
だから俺はアンタに“愛している”の言葉は死んでも言わない。
死んでからあの世で言ってやろうと思う。
きっと俺達は地獄に落ちるから。

そうすれば地獄も少しは楽しくなるンじゃねぇの?
「キャンセルなんてしないよ。してなんて、やらない。お前が私以外の人を好きになったらそいつを殺すよ。例え誰であっても。」
秘石眼がキラリと光った。
不覚にもときめいてしまって。
例えそのときめきは一般常識から考えて最もいけない事だと知りつつも。
「シンちゃんは、私の事好きかい?」
「言わない。」
即答で答えるとマジックは困ったように笑った。
「ずるいな。私には言わせておいて。」
「嘘を言える自信がないから。」
嫌いとは言えないという意味でシンタローは言ったのだが、マジックは好きとは言えないという意味だと勘違いして。
もう一度苦笑いを浮かべて「酷いな」と言った。
勘違いしてるとシンタローも解ったのだが、あえてそれを訂正すまいと思う。
「私はこんなにもお前を愛しているのにね。お前はいつも素知らぬ顔さ。」
愛おしそうに唇にキスをする。
「それでもお前から抜け出せないんだ。重傷だろう?」
好きだ、と、愛してる、と、何百回、何万回言っても言ってもお前にちっとも伝わっていない気がするよ。
そう付け加えて又シンタローを抱きしめる。
だからシンタローはある一言だけ、この愛する人に現世で言える最高級の言葉を言ってあげる。
「浮気だけはよせよ。」











終わり





PR
BACK HOME NEXT
カレンダー
04 2025/05 06
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
最新記事
as
(06/27)
p
(02/26)
pp
(02/26)
mm
(02/26)
s2
(02/26)
ブログ内検索
忍者ブログ // [PR]

template ゆきぱんだ  //  Copyright: ふらいんぐ All Rights Reserved