-酔って・酔わされ・乱されて-
-----------------------------------------------------
日中の蒸すような暑さから解放されはじめ、青々とした木々が紅く色づき始めた頃、一台のリムジンが赴きある門の前に止まる。
「・・・たまには、休息も必要。ってな」
一人誰ともなく呟くと、リムジンからは赤い軍服に身を包んだシンタローが、門の前で悪戯に笑み浮かべた。
(たまには、ズル休みもありだろう)
面倒だった仕事もひと段落。さして急ぎの用などない、優秀な秘書たちなら大丈夫だろう。
とはいえ、今頃血相かいてるに違いはないか・・・。
眉をひそめて苦言を呈する従兄弟の顔がふと浮び、それを頭の隅に追いやるように手元のパンフレットをクルリと丸めると、黒いコートのポケットに押し込んだ。
「・・・せっかくの、紅葉を満喫しない手はないってね」
門の敷居を跨くと、目の前に見える純和風の木造二階建ての建物をに向かって歩を進める。
紅葉を見ながらの温泉を思うだけで心が浮き立ち、定着しつつある眉間のシワもなりを潜めた。
上機嫌に石畳を歩くと、旅館の戸に手をかけた。
「いらっしゃいませ」
従業員の声に、ペコリと軽く頭を下げて顔を上げると、広々とした玄関の向こにある囲炉裏端で旅館に似つかわしくない金髪が目に入った。
「・・・ん?・・・んん?」
何度か目を瞬かせると、シンタローに背を向けて囲炉裏端に座る、ピンクスーツ姿の男性の姿を凝視する。
ピンクスーツで、金髪・・・。
思い当たる奴が一人いる。が、認めたくない!
何より、奴が知っている筈が無い。ズル休みの計画は前々から立ててはいたが、この旅行を決めたのは昨日で、旅館を決めたのは今日の今日。
奴がわかるはずがない・・・。奴な筈がない。
「まさか、・・・まさか、な」
自分を納得させるように、一人腕を組んで頷くと頭を軽くふって、男のすかした顔を追い払った。
玄関を上がり、帳場で名前を確認してもらいながらも、その男が気になって仕方がない。
男の後ろを食い入るように見つめていると、帳場の従業員が口を開いた。
「お連れ様は先にいらっしゃってますよ」
その言葉にぎょっと目を見開いて従業員へと顔を向けると、同じタイミングで囲炉裏端から声がする。
(ま、まさか・・・・・・・・)
微かな望みを胸に、声のするほうに顔を向けると、
「シーンちゃん!遅かったね」
(・・・・・・っ!?)
予感が的中しつつも、予想だにしない人物の登場に、シンタローはこれ以上無いというほど目を見開いた。
「お、親父ぃっっっ!!!」
シンタローの声が帳場に響き渡った。
「なんで、親父がここに・・・」
「もう、水臭いなー旅行にいくならパパも誘ってくれればよかったのに。さては、後で私を呼び出してビックリさせる気だったんだね。いくつになっても可愛いんだから」
囲炉裏端から、帳場にいるシンタローの隣へと移動すると、唖然とするシンタローの顔を覗きこむ。
「なんで、あんたがここいるんだよっ!あ、盗聴器か!盗聴器だなっ」
そういうとバタバタとコートやらジャケットを調べる息子の姿に笑みを浮かべると、緩慢に首を左右に振る。
「違うよ・・・。シンちゃん口には出さないけど、今週に入ってカレンダーを見ては瞳を楽しそうに輝かせてたじゃない。自覚ない?」
あんな、あからさまにカレンダーみてれば何かある。って思うのが普通でしょ。
「じゃ、あいつらも・・・・・・」
その言葉に顔を一瞬にして紅くすると、口元に手をやった。
「ん、ああ・・・ティラミスたちかい?どうだろうね、ここにいるのは知らないだろうね」
マジックの説明を聞き終えると、シンタローは真っ赤に顔を染めていた顔を戻すとジャケットを羽織り、コートを脇に抱えてマジックに背を向けた。
「どこいくの?お部屋はあっちだよ」
玄関で靴を履こうをするシンタローの背中に向かって声をかけると、
「場所変える・・・」
不機嫌な声でシンタローがボソリと呟いた。
「ふーん、じゃあチョコレートロマンスに電話しちゃおうかな」
「卑怯だぞっ!!」
胸元から携帯電話を取り出すと、シンタローに見せ付けるように発信ボタンに手をやる。
それを言われると、出るに出て行くことの出来ないシンタローは無言でマジックを睨みつけた。
それを了承と得たのかシンタローとは対照的に、マジックは青い瞳を楽しそうに濡らすと余裕の笑みを浮かべて
「秘密なんだろう?いいじゃない、一人よりも二人の方が楽しみも二倍。料理も美味しいよ」
そういってシンタローの腕から、コートと鞄を抜き取ると、脇に抱えて離れへと向かう廊下を鼻歌まじりで歩きだした。
(お、俺のせっかくの計画が・・・。休日が・・・。)
秘書や従兄弟たちの目を掻い潜っての、一人旅が台無しとはあんまりだ。
「く、くそ親父ぃぃぃ~~~~ッ!!!!」
無一文の赤い軍服姿のシンタローの怒鳴り声が、山間の旅館に響き渡った。
*2005/10/01-UP * 日本酒の日 *
-------------------------------------
-酔って・酔わされ・乱されて-後半
---------------------------------------------------- -
「それでは、どうぞごゆっくり」
次の間付きの離れには、旅館の温泉とは別に、専用の露天風呂と食事用の囲炉裏端の間があった。
その囲炉裏端に料理を並べ終わると、仲居はゆっくりと一礼し部屋を出ていく。
「いいか、俺の邪魔はするなよ。仕方なく、いいか仕方なく、一緒にいるだけだからな・・・」
部屋を別々にすることもできず、せっかくだからとマジックに唆されて温泉に湯あたりしかけるほどにつかっても、怒りはいっこう に収まらない。
仲居が居なくなった事を確認すると、きっちり浴衣を着込みマジックとはL字になるようにして、板の間に胡坐をかいたシンタロ ーが口を開いた。
「邪魔って?」
可笑しなぐらいに警戒するシンタローの姿を楽しそうに眺めて、マジックは口元を緩めながらお猪口に注いだ日本酒を口に運ぶ 。
「お前は空気みたいなもんだ。見るな・触るな・近寄るなだ!いいか、俺に変な真似すんなよ」
ビシっと人差し指をマジックの鼻先に近づけると、自分も手元の酒を呷る。
「はは、私はバイ菌か何かかい?まぁいい・・・それより、シンちゃん」
「あんだよ」
(バイ菌のがマシだっ!そんな可愛いもんか!?核爆弾みたいな男がよく言うぜ)
マジックの傍らにある日本酒の一升瓶を奪うと、手酌で注ぎながらマジックを睨みつける。
「『美味しい日本酒の飲み方』に興味ない?」
「美味しい日本酒の飲み方だぁ?」
「そ、すごい美味しく飲めるんだって」
ひどく嬉しそうな笑顔をシンタローに向けた。
ファンクラブが見たら発狂しそうな笑顔も、シンタローからは『胡散臭い』の一言で・・・。マジックとは対照的に興味なさそうに酒 を呷る。
「やろうよ、シンちゃん。ね、ね?」
「どんな飲み方だよ?」
小首を傾げて「お願い、お願い」と言い募るあたり・・・あのバカとそっくり・・・。と頭に浮かんだ従兄弟を思い浮かべて溜息をつ いた。
「それはシンちゃんが承諾しない限り厳しいね。なんせ日本古来から伝わる、文化的な飲み方だからね」
いくらシンちゃんとはいえ、それはね~。っと、日本の侘び寂びだよ。っと言葉を続けシンタローをチラリと見やると、興味を示し たらしい息子の表情にほくそ笑んだ。
「ふん、くっだらねぇー」
短く唸ると、酒を煽る。
と言いながらも、「それってどんな飲み方だよ」と眼に訴えてくるようなシンタローの動作に、
「一人ではちょっと試すのが難しいから、シンちゃんに助けてもらえると有難いんだがね・・・」
急に真面目に顔を引き締めると、マジックはそっと呟き、シンタローの顔は見ずに彼の膝あたりに視線を置く。
控えめな言い回しに、シンタローは多少ではあるがうろたえた。
親父は------両目秘石眼で、世界は自分を中心に回っていると思っていて・・・。強引でエゴイストで、他人の話なんて耳を傾 けない変態野郎。おまけに世界征服なんて馬鹿なことを本気に成そうとして。昔の狂気は引退した今でも変わらない。
そんな親父が、たかだか酒の飲み方で俺に頼みごと。
(悪い気はしねぇーよな・・・。)
「そ、そんなに言うなら、その日本酒の飲み方・・・付き合ってやってもいいぜ・・・」
シンタローの頬が微かにピンク色に染まる。
「どうしてもっって、いうからな」
ふんっと鼻を鳴らすも、どこか気恥ずかしくて誤魔化すように、酒を呷る。
「よかった!一人では試せないから、助かるよ」
到底一人では試せないから・・・ね。シンちゃんもまだまだ甘い・・・。
「じゃあ、さっそくはじめよっか。さ、さ、シンちゃん正座して」
「正座?」
酒を飲むのに正座が必要?
もっと何かあるのかと思いきや、「正座」ということに幾分拍子抜けをしつつ、マジックのいう通り正座にして浴衣の襟元に手を かけた。
「んで、正座の次は?手でも合わせんの?」
軽く鼻で笑いながらシンタローがマジックを見やると、それからのマジックは早かった。
「な・・・にっ!」シンタローがマジックを突き飛ばすよりも早く、両手に持っていた帯で彼の背中に帯を回すと両二の腕の上を通り 胸元で帯を結ぶ
シンタローが気づいた時には両腕は帯によって身動きが取れなくなっていた。が、それでも終わらない。
彼が激昂してマジックの名を呼び終える時には、背中から床に押し倒されていて。
「ありがとう。こんな親孝行の子をもってパパは幸せ者だよ」そういうと、新たに帯を手にとって正座した状態のシンタローの腿か ら脛へと帯をくぐらせると左腿のあたりで固い結び目をつくった。
「どういうつもりだ・・・っ!騙しやがったな」
まさに電光石火の早業で、体の自由を失われたシンタローが、ハメられた!?っと顔を真っ赤にして怒るも。
そんなシンタローに優しく笑いかけると彼の艶やかな黒髪を弄ぶ。
「騙してなんかいないよ。手伝ってくれるといったのはシンタロー、お前だろう?」
そう言いながら、強く睨み付けるシンタローの体を引き起こし元の正座に戻した。
「ふざけるな!」
シンタローが吠えると、マジックは心外とばかりに、軽く肩を竦めた。
「ふざけてなんかないさ・・・。日本の伝統的な飲み方だよ。あぁ、とはいえ暴れられると面倒だから、ちょっと小細工はしたがね」
「シンちゃんがパンツはいて無くて助かったよ。替えのパンツ用意しなかったんだ。」と青い目を色濃くして、喉を震わせて笑うい ながらシンタローの下腹部の浴衣に手をかけると、肌を露にした。
「・・・・・・・・・っ!!」
ずる休みを考えていたとはいえ、パンツのことまでは考えが回らなかった。なんとかなるだろう。っと思っていたし、まさかこんな 事態になるとは・・・。自分が恨めしい。
眉間に皺を寄せて唸るシンタローをよそに、マジックは浴衣で拘束され下半身を露した息子の姿に鑑賞するように視線をゆっく りと動かすと、感嘆の息を漏らした。
「これが、日本の侘び寂びってものだね。心に響くものがある」
「馬鹿っ!心じゃなくて、股間だろうがっ!」
お門違いな突っ込みだな。っと言い終わって気づくも、目の前の男はそんなことお構いなしに、傍らの瓶に手をかけた。
嫌な予感に、冷たい汗がシンタローの背中を伝う。
「やめっ・・・ばか、その瓶って・・・栓をぬくなって」
不自由ながら、どうにか体を動かそうとして、腿をつかまれた。
「じっとしてなさい、手伝ってくれるんだろう」
そういって、シンタローの罵声を心地よく感じながら、閉じたシンタローの腿と腿の間と股間・・・三角形になった部分に日本酒を 注ぐ。
よっし!!次からいきますよー。あぁーすごい変態だよ凹
*2005/10/01-UP * 日本酒の日 *
-------------------------------------
終わりませんでし た。意外に終わらないぃー。でも楽しい!!
そろそろ次のUPで終わると思います。
珍しく、うちのシンちゃんが疑り 深い・・・学習能力がついてきたようです(笑)
さぁーこれからが、楽しいところなのではりきって頑張りますー。
仕事 の具合でどうなるか分かりませんが、がんばりまっす!!
【この小説について】
この小説は、「GATE」の蒼 野さんのチャットに参加させて頂いた時決まった企画。
10月1日の『日本酒の日』にちなんだ、酔っぱらいマジシン企画で す。
日本酒とマジシンは関係ないので、無理やりではありますが、マジシンがやりたかったんです(笑)
今回は、バ ラではなくて10月にちなんで、一日限定TOPは紅葉です!!
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日中の蒸すような暑さから解放されはじめ、青々とした木々が紅く色づき始めた頃、一台のリムジンが赴きある門の前に止まる。
「・・・たまには、休息も必要。ってな」
一人誰ともなく呟くと、リムジンからは赤い軍服に身を包んだシンタローが、門の前で悪戯に笑み浮かべた。
(たまには、ズル休みもありだろう)
面倒だった仕事もひと段落。さして急ぎの用などない、優秀な秘書たちなら大丈夫だろう。
とはいえ、今頃血相かいてるに違いはないか・・・。
眉をひそめて苦言を呈する従兄弟の顔がふと浮び、それを頭の隅に追いやるように手元のパンフレットをクルリと丸めると、黒いコートのポケットに押し込んだ。
「・・・せっかくの、紅葉を満喫しない手はないってね」
門の敷居を跨くと、目の前に見える純和風の木造二階建ての建物をに向かって歩を進める。
紅葉を見ながらの温泉を思うだけで心が浮き立ち、定着しつつある眉間のシワもなりを潜めた。
上機嫌に石畳を歩くと、旅館の戸に手をかけた。
「いらっしゃいませ」
従業員の声に、ペコリと軽く頭を下げて顔を上げると、広々とした玄関の向こにある囲炉裏端で旅館に似つかわしくない金髪が目に入った。
「・・・ん?・・・んん?」
何度か目を瞬かせると、シンタローに背を向けて囲炉裏端に座る、ピンクスーツ姿の男性の姿を凝視する。
ピンクスーツで、金髪・・・。
思い当たる奴が一人いる。が、認めたくない!
何より、奴が知っている筈が無い。ズル休みの計画は前々から立ててはいたが、この旅行を決めたのは昨日で、旅館を決めたのは今日の今日。
奴がわかるはずがない・・・。奴な筈がない。
「まさか、・・・まさか、な」
自分を納得させるように、一人腕を組んで頷くと頭を軽くふって、男のすかした顔を追い払った。
玄関を上がり、帳場で名前を確認してもらいながらも、その男が気になって仕方がない。
男の後ろを食い入るように見つめていると、帳場の従業員が口を開いた。
「お連れ様は先にいらっしゃってますよ」
その言葉にぎょっと目を見開いて従業員へと顔を向けると、同じタイミングで囲炉裏端から声がする。
(ま、まさか・・・・・・・・)
微かな望みを胸に、声のするほうに顔を向けると、
「シーンちゃん!遅かったね」
(・・・・・・っ!?)
予感が的中しつつも、予想だにしない人物の登場に、シンタローはこれ以上無いというほど目を見開いた。
「お、親父ぃっっっ!!!」
シンタローの声が帳場に響き渡った。
「なんで、親父がここに・・・」
「もう、水臭いなー旅行にいくならパパも誘ってくれればよかったのに。さては、後で私を呼び出してビックリさせる気だったんだね。いくつになっても可愛いんだから」
囲炉裏端から、帳場にいるシンタローの隣へと移動すると、唖然とするシンタローの顔を覗きこむ。
「なんで、あんたがここいるんだよっ!あ、盗聴器か!盗聴器だなっ」
そういうとバタバタとコートやらジャケットを調べる息子の姿に笑みを浮かべると、緩慢に首を左右に振る。
「違うよ・・・。シンちゃん口には出さないけど、今週に入ってカレンダーを見ては瞳を楽しそうに輝かせてたじゃない。自覚ない?」
あんな、あからさまにカレンダーみてれば何かある。って思うのが普通でしょ。
「じゃ、あいつらも・・・・・・」
その言葉に顔を一瞬にして紅くすると、口元に手をやった。
「ん、ああ・・・ティラミスたちかい?どうだろうね、ここにいるのは知らないだろうね」
マジックの説明を聞き終えると、シンタローは真っ赤に顔を染めていた顔を戻すとジャケットを羽織り、コートを脇に抱えてマジックに背を向けた。
「どこいくの?お部屋はあっちだよ」
玄関で靴を履こうをするシンタローの背中に向かって声をかけると、
「場所変える・・・」
不機嫌な声でシンタローがボソリと呟いた。
「ふーん、じゃあチョコレートロマンスに電話しちゃおうかな」
「卑怯だぞっ!!」
胸元から携帯電話を取り出すと、シンタローに見せ付けるように発信ボタンに手をやる。
それを言われると、出るに出て行くことの出来ないシンタローは無言でマジックを睨みつけた。
それを了承と得たのかシンタローとは対照的に、マジックは青い瞳を楽しそうに濡らすと余裕の笑みを浮かべて
「秘密なんだろう?いいじゃない、一人よりも二人の方が楽しみも二倍。料理も美味しいよ」
そういってシンタローの腕から、コートと鞄を抜き取ると、脇に抱えて離れへと向かう廊下を鼻歌まじりで歩きだした。
(お、俺のせっかくの計画が・・・。休日が・・・。)
秘書や従兄弟たちの目を掻い潜っての、一人旅が台無しとはあんまりだ。
「く、くそ親父ぃぃぃ~~~~ッ!!!!」
無一文の赤い軍服姿のシンタローの怒鳴り声が、山間の旅館に響き渡った。
*2005/10/01-UP * 日本酒の日 *
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-酔って・酔わされ・乱されて-後半
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「それでは、どうぞごゆっくり」
次の間付きの離れには、旅館の温泉とは別に、専用の露天風呂と食事用の囲炉裏端の間があった。
その囲炉裏端に料理を並べ終わると、仲居はゆっくりと一礼し部屋を出ていく。
「いいか、俺の邪魔はするなよ。仕方なく、いいか仕方なく、一緒にいるだけだからな・・・」
部屋を別々にすることもできず、せっかくだからとマジックに唆されて温泉に湯あたりしかけるほどにつかっても、怒りはいっこう に収まらない。
仲居が居なくなった事を確認すると、きっちり浴衣を着込みマジックとはL字になるようにして、板の間に胡坐をかいたシンタロ ーが口を開いた。
「邪魔って?」
可笑しなぐらいに警戒するシンタローの姿を楽しそうに眺めて、マジックは口元を緩めながらお猪口に注いだ日本酒を口に運ぶ 。
「お前は空気みたいなもんだ。見るな・触るな・近寄るなだ!いいか、俺に変な真似すんなよ」
ビシっと人差し指をマジックの鼻先に近づけると、自分も手元の酒を呷る。
「はは、私はバイ菌か何かかい?まぁいい・・・それより、シンちゃん」
「あんだよ」
(バイ菌のがマシだっ!そんな可愛いもんか!?核爆弾みたいな男がよく言うぜ)
マジックの傍らにある日本酒の一升瓶を奪うと、手酌で注ぎながらマジックを睨みつける。
「『美味しい日本酒の飲み方』に興味ない?」
「美味しい日本酒の飲み方だぁ?」
「そ、すごい美味しく飲めるんだって」
ひどく嬉しそうな笑顔をシンタローに向けた。
ファンクラブが見たら発狂しそうな笑顔も、シンタローからは『胡散臭い』の一言で・・・。マジックとは対照的に興味なさそうに酒 を呷る。
「やろうよ、シンちゃん。ね、ね?」
「どんな飲み方だよ?」
小首を傾げて「お願い、お願い」と言い募るあたり・・・あのバカとそっくり・・・。と頭に浮かんだ従兄弟を思い浮かべて溜息をつ いた。
「それはシンちゃんが承諾しない限り厳しいね。なんせ日本古来から伝わる、文化的な飲み方だからね」
いくらシンちゃんとはいえ、それはね~。っと、日本の侘び寂びだよ。っと言葉を続けシンタローをチラリと見やると、興味を示し たらしい息子の表情にほくそ笑んだ。
「ふん、くっだらねぇー」
短く唸ると、酒を煽る。
と言いながらも、「それってどんな飲み方だよ」と眼に訴えてくるようなシンタローの動作に、
「一人ではちょっと試すのが難しいから、シンちゃんに助けてもらえると有難いんだがね・・・」
急に真面目に顔を引き締めると、マジックはそっと呟き、シンタローの顔は見ずに彼の膝あたりに視線を置く。
控えめな言い回しに、シンタローは多少ではあるがうろたえた。
親父は------両目秘石眼で、世界は自分を中心に回っていると思っていて・・・。強引でエゴイストで、他人の話なんて耳を傾 けない変態野郎。おまけに世界征服なんて馬鹿なことを本気に成そうとして。昔の狂気は引退した今でも変わらない。
そんな親父が、たかだか酒の飲み方で俺に頼みごと。
(悪い気はしねぇーよな・・・。)
「そ、そんなに言うなら、その日本酒の飲み方・・・付き合ってやってもいいぜ・・・」
シンタローの頬が微かにピンク色に染まる。
「どうしてもっって、いうからな」
ふんっと鼻を鳴らすも、どこか気恥ずかしくて誤魔化すように、酒を呷る。
「よかった!一人では試せないから、助かるよ」
到底一人では試せないから・・・ね。シンちゃんもまだまだ甘い・・・。
「じゃあ、さっそくはじめよっか。さ、さ、シンちゃん正座して」
「正座?」
酒を飲むのに正座が必要?
もっと何かあるのかと思いきや、「正座」ということに幾分拍子抜けをしつつ、マジックのいう通り正座にして浴衣の襟元に手を かけた。
「んで、正座の次は?手でも合わせんの?」
軽く鼻で笑いながらシンタローがマジックを見やると、それからのマジックは早かった。
「な・・・にっ!」シンタローがマジックを突き飛ばすよりも早く、両手に持っていた帯で彼の背中に帯を回すと両二の腕の上を通り 胸元で帯を結ぶ
シンタローが気づいた時には両腕は帯によって身動きが取れなくなっていた。が、それでも終わらない。
彼が激昂してマジックの名を呼び終える時には、背中から床に押し倒されていて。
「ありがとう。こんな親孝行の子をもってパパは幸せ者だよ」そういうと、新たに帯を手にとって正座した状態のシンタローの腿か ら脛へと帯をくぐらせると左腿のあたりで固い結び目をつくった。
「どういうつもりだ・・・っ!騙しやがったな」
まさに電光石火の早業で、体の自由を失われたシンタローが、ハメられた!?っと顔を真っ赤にして怒るも。
そんなシンタローに優しく笑いかけると彼の艶やかな黒髪を弄ぶ。
「騙してなんかいないよ。手伝ってくれるといったのはシンタロー、お前だろう?」
そう言いながら、強く睨み付けるシンタローの体を引き起こし元の正座に戻した。
「ふざけるな!」
シンタローが吠えると、マジックは心外とばかりに、軽く肩を竦めた。
「ふざけてなんかないさ・・・。日本の伝統的な飲み方だよ。あぁ、とはいえ暴れられると面倒だから、ちょっと小細工はしたがね」
「シンちゃんがパンツはいて無くて助かったよ。替えのパンツ用意しなかったんだ。」と青い目を色濃くして、喉を震わせて笑うい ながらシンタローの下腹部の浴衣に手をかけると、肌を露にした。
「・・・・・・・・・っ!!」
ずる休みを考えていたとはいえ、パンツのことまでは考えが回らなかった。なんとかなるだろう。っと思っていたし、まさかこんな 事態になるとは・・・。自分が恨めしい。
眉間に皺を寄せて唸るシンタローをよそに、マジックは浴衣で拘束され下半身を露した息子の姿に鑑賞するように視線をゆっく りと動かすと、感嘆の息を漏らした。
「これが、日本の侘び寂びってものだね。心に響くものがある」
「馬鹿っ!心じゃなくて、股間だろうがっ!」
お門違いな突っ込みだな。っと言い終わって気づくも、目の前の男はそんなことお構いなしに、傍らの瓶に手をかけた。
嫌な予感に、冷たい汗がシンタローの背中を伝う。
「やめっ・・・ばか、その瓶って・・・栓をぬくなって」
不自由ながら、どうにか体を動かそうとして、腿をつかまれた。
「じっとしてなさい、手伝ってくれるんだろう」
そういって、シンタローの罵声を心地よく感じながら、閉じたシンタローの腿と腿の間と股間・・・三角形になった部分に日本酒を 注ぐ。
よっし!!次からいきますよー。あぁーすごい変態だよ凹
*2005/10/01-UP * 日本酒の日 *
-------------------------------------
終わりませんでし た。意外に終わらないぃー。でも楽しい!!
そろそろ次のUPで終わると思います。
珍しく、うちのシンちゃんが疑り 深い・・・学習能力がついてきたようです(笑)
さぁーこれからが、楽しいところなのではりきって頑張りますー。
仕事 の具合でどうなるか分かりませんが、がんばりまっす!!
【この小説について】
この小説は、「GATE」の蒼 野さんのチャットに参加させて頂いた時決まった企画。
10月1日の『日本酒の日』にちなんだ、酔っぱらいマジシン企画で す。
日本酒とマジシンは関係ないので、無理やりではありますが、マジシンがやりたかったんです(笑)
今回は、バ ラではなくて10月にちなんで、一日限定TOPは紅葉です!!
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