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照明を落とした廊下を足音を立てないようにシンタローは進んだ。
靴音で目指す病室の主が起きてくれるのならうれしいけれども、生憎と2日ほど前に行われた定期検査で脳波の結果は変わらないものだった。
一族特有の青い眼の威力と暗殺やら誘拐やらを考慮に入れてこのフロアにほかの入院患者はいない。
戦地で傷を負った団員や病んだ団員はこの階より下のフロアに入院している。
気にすることはないのだが、シンタローの足音はいつも微かなものでしかない。

足元を照らすわずかな灯りを頼りにエレベーターホールを抜け、角を曲がる。
白い壁は暗い中でも目立つが、角を曲がった少し先の弟のいる病室からひかりが漏れていて視界がさっきよりも数段明るく感じられた。
誰か見舞いに来てるんだろう。だが。


(――こんな遅くに誰だ?)


家族の誰かか叔父のどちらかか、と考えながらシンタローは歩んだ。
できれば、父親であって欲しくはない。
いや、父親が弟の看病をするのは喜ばしいことなのだけれども。


(顔、合わせるの気まずいんだよな)


ため息を吐くと、思いのほかその息遣いが廊下に響いてしまった。
もとより気配に敏感な父のことだ。気づかれだろう、と思ってシンタローは自身に舌打ちしたくなった。





今年の夏を境にシンタローの周囲は一変した。
それまでシンタローは、自分を溺愛し、弟のコタローに冷たく当たる父親のことを曖昧にしか理解できていなかった。
両眼が秘石眼だということだなんだというのだろう。
俺の前ではコタローはあどけない幼児でしかない。危険性なんてまったくない。
父親へ理不尽だと詰ったりもしたが、シンタローの望みをいつも叶えてくれる父はこればかりは譲ってくれなかった。
頑ななまでの父親の態度と周囲の腫れ物にでも触るかのような対応。
すべてに苛立ちと幻滅を感じて、家宝の石を持ち出して逃亡したのは今考えると子どもじみた行動でしかない。
辿りついた南国の島で、雁字搦めに囚われていた一族の因縁が解かれたのは結果としてはよかったけれども。

昔、ずっと幼い頃父親と過ごしてきたような毎日をみんなで手に入れることは叶わなかった。




意を決して、半開きになったコタローの病室へとシンタローは体を滑り込ませた。

「来てたのか?」
声をかけても、眠る弟のベッドの傍にある椅子に座る人は背を向けたままだった。
短めの金髪は従兄弟にもいるが、背を向けた人は彼のような白衣を羽織っていない。
こっくりとした葡萄酒色のセーターを着たその人は出来れば会いたくなかった父親だった。

「おい、親父?」
なぜ答えない、とシンタローは父へと近づく。
軍靴を鳴らしても振り返る様子も、飛びついてくる様子もない。
もっとも、今年の夏を境に父親がシンタローへ過剰なスキンシップを取るのは見られなくなっていたけれど。

無視かよ、とシンタローはムッとした。
24年間、顔を合わせればべたべたと抱きつき、愛情を口にしていた男だったというのに、最近は素っ気無い。
別にそれが嫌なわけじゃない。
うざったいくらいだったんだ、これなら普通の親子らしくていいじゃないかと思っていたけれど無視することはない。
聞いているのかよ、と腰を屈め、父親の顔を覗き込むと彼は眠っていた。

(……寝てる)

眉と閉じられた瞼はぴくりとも動かない。
すうすうと微かな息を立てた父親の顔には疲労が滲み出ている。
いつから看病していたんだ、と思ったがシンタローは声をかけて起こすことをしなかった。

「……このまんまじゃ風邪引くからな」
俺にはアンタは運べねぇし、と自身を納得させるように呟き、シンタローは抱えていた軍用コートを広げた。
季節はもう秋だ。夜になれば夏とは違う少し冷たい風が肌を冷やす。
空調が完備された病室だから、寒くはないだろうけれどもシンタローは広げたコートをそっとマジックへとかけ、その場を後にした。





*





夏を境に変わったことはもう一つある。
目覚ましを止め、洗顔やら歯磨きやら身支度を整えた後袖を通すものがそうだ。
ようやく着慣れてきた赤い軍服をきっちりと着込み、シンタローはダイニングへと向かう。
いつもより早めに部屋を出たから、父親の手伝いが出来るだろうと思ったが、ダイニングには朝食がすっかり並んでいた。


「よお」
すでに着席している従兄弟に視線を向けると、彼は朝には不似合いな剣呑な眼差しでシンタローを見た。

「……今日は早いな」
それでも返ってきた答えは出会った頃よりすっかりとマシになっている。
きっちりとスーツを着込んだ従兄弟、キンタローは髪も丁寧に撫で付けて紳士然としているが顔を合わせると殺意を向けてくる。
それでも少し前までならばともかく、今では人目がある場所や朝っぱらからやりあう気はないようだった。

「おはよ~!」
キンタローへの返答をシンタローが考えあぐねているうちにもう1人の従兄弟の元気な声が響いた。

「……よお、グンマ」
助かった、とこの場を持て余していたシンタローはほっとため息を吐いた。
キンタローはといえば、とくに変わった様子はない。
2人の従兄弟の微妙な空気をものともせず、グンマは「みんな早いね~」と明るく言う。
まあな、と応じるうちに、手伝いをすることもなく父親がトレイに朝食を載せてダイニングへと来る。
手早く並べ始めるキンタローに出し抜かれた格好となったシンタローはその場に立ち尽くした。
コーヒーの用意もキンタローと父親にされて、すっかりとやることがない。
「お父様。おはよう!ほらシンちゃんも座って」
とグンマに言われ、シンタローはあとの2人と共に着席した。



いつもどおり、食卓の話題は昨日あったことや今日の予定で占められている。
サラダにヨーグルトベースのドレッシングをかけ、それらに相槌を打ちながら食べ始めると会話の途切れたときに父親が口を開いた。

「そういえば昨日私にコートをかけてくれたのはどっちだったんだい?」
マジックはキンタローとシンタローの両方に視線を向けて尋ねた。
軍用の黒いコートはグンマは着ない。
叔父たち2人もそれぞれ特徴のあるものを持っている。

「俺だけど。コタローのとこ行ったら親父寝てたから」
トーストを裂きながら答えると父は目を細めた。

「悪かったね。うっかり寝てしまったから。ありがとう」
それでも返ってくる反応は前とは違う。
以前は食卓に身を乗り出して「うわ~。ありがとう。シンちゃんはやっぱりやさしい子だね。パパは感激だよ!」などとテンションも高く口にしていた。
それが今はありがとうの一言で終わっている。
なんだか釈然としない気分でシンタローはトマトをフォークで突き刺した。



「そういえば来月だよね。お父様の誕生日」
コートの話からコタローのことへと話題が移り、それからグンマが11月を捲ったばかりのカレンダーを見ながらそう言った。
「今年はどうするの?どんなパーティ?」
にこにことグンマがカフェ・オ・レに口をつけながら父親に目を向ける。
シンタローの誕生日も盛大なものだが、父のもやはり毎年華やかなものだ。
ガンマ団総帥だったこともあるが、団を上げて催され、各国からの賓客も多い。
それに毎年この時期になるとプレゼントの催促だとか、誕生日くらいパパのお願いを聞いて!とシンタローはねだられていた。
しぶしぶながら毎年、それに付き合っていたのが。

「え?今年?今年はやらないよ。引退した身だからね」
やらない、ときっぱり言った父にグンマがすかさずええ~!と声を上げる。シンタローも声を上げそうになった。
秘書たちにはそのつもりでいるように言ってあるから、と口にする父に誰もそれ以上言えない。
気を取り直して、グンマが
「じゃあ、家族だけでお祝いなんだね」
と言ったが、父親は表情を曇らせた。

「いや。ちょうどその日はイベントが入っていて帰れないんだよ」
だから、パーティはいいよと父親が微笑む。困ったようなその笑みにグンマはため息を吐いた。

「せっかくのお誕生日なのに……残念だね」

それきり、食卓から会話は途切れ、朝の時間が進むと共にみなばらばらに仕事へと向かった。



周囲は南国の島から戻ってきて以来、不自然なまでにぎこちない親子に気づかないでいる。
無理もない。
シンタローがマジックの実の子でないという事実は伏せられている。
それを知る人物は一族以外では特戦部隊の人間とシンタローが懇意にしている4人の団員だけだ。
ハーレムを恐れる特選の人間がそれを漏らすことはなく、また4人の元刺客も友情からそれを言うはずもない。
彼らは皆それぞれの任地へと赴いている。
シンタローも島から帰って以来新総帥として忙しい毎日を送っていた。
今までべったりとした関係だった親子がすれ違いの生活を送っていても誰も不審に思わない。
マジックの傍にいる秘書たちもプライベートには立ち入らないから、最近は本部がガンマ砲で壊されなくてよかった、と思っているくらいだろう。

だが、いつもどおりだと思っているのは彼らや一般の団員だけだ。
子どもの頃からシンタローに過度の愛情を注いでいたマジックを見てきたグンマからすれば今のような状態は不自然というよりも異常だといった方が正しい。
朝な夕な食事を共にするたびに彼らのよそよそしい態度に疑問を持ったし、それとなく喧嘩でもしているのかと探りを入れてみたが二人とも否定する。
なら、どうして?と詰問したくなったが、グンマはそれとなく訪ねたときに二人の間に走った緊張感から聞けないでいる。
ついさっき、夕食を共にしたときも食卓の話題は仕事や天気の話などと無難なものでグンマは退屈していた。
もう1人の従兄弟は何も思わないのか相槌を打っていた。
時折、シンタローと父の視線が交差したとき彼らの表情を看過できずにグンマがさりげなく話題を転じてもキンタローは眉ひとつ動かさない。
キンちゃんは2人の様子が気にならないのかな、と思ってグンマは食事後、研究を理由にラボへとキンタローを誘った。
自室と違い、ラボへとは連絡なしにシンタローも父も訪れはしない。

座ってて、とデスクの椅子を引きキンタローをグンマは少しの間待たせた。
数分かけてふわふわに泡立てたカフェ・オ・レへキャラメルソースをかけたものを出すとキンタローは怪訝そうな表情でグンマを見た。

「……騙してごめんね」
「研究のことじゃないのか」
就寝前の時間に無理やりに誘ったと言うのにキンタローは気分を害した様子は見られなかった。
「うん。あのね……シンちゃんとお父様の事なんだけれど」
聞いてくれる?とグンマは小首を傾げてキンタローへ尋ねた。
かわいらしい仕草はいつもの事だけれども、青い目は不安で揺れている。
頼りなげなグンマの様子にキンタローは、
「……とりあえず話してみろ」
と促した。





「最初はね。二人のことだから喧嘩でもしたんだと思ったんだ。
お父様がシンちゃんにちょっかい出して、シンちゃんが怒って。
謝ってもシンちゃんが許さなくて、そんなシンちゃんにお父様が気を使ったりしてああいう態度だと思ってたんだ。
シンちゃんが今更許すのは格好悪いとでも思って引っ込みがつかなくなるのはよくあることだから」
知ってるよね?とグンマはキンタローに聞いた。
秘石が施した呪縛が解かれるまでキンタローはシンタローの内に在った。
つい最近までシンタローのことを一番近くで見てきたキンタローは昔のことを思い出しながらそれに頷く。
意地っ張りだからね、シンちゃんは、と言って生真面目に頷いたキンタローにグンマは微笑んだ。

「でも2人に尋ねても喧嘩じゃないって言うし、2人を見てたら僕も喧嘩じゃないなって思ったの。
キンちゃん、気づいた?いつもなら謝りたいお父様から視線を逸らしたり逃げ出すのがシンちゃんでしょ?
でもね、さっきもだったけれど逃げているのはお父様の方なんだよ」

こんなのはじめて、とグンマは嘆息した。
甘いカフェ・オ・レに口をつけても心は軽くならない。

食事のたび、顔を合わせるたびに何か言いたげなシンタローの眼差しと辛そうな表情で眼を逸らすマジックにグンマは悲しくなっていた。

「シンちゃんはなんだかんだ言ってたけど、あんなに仲良かったのにさ。
それにね、キンちゃん。お父様、最近シンちゃんを抱きしめたりしないんだよ」
おかしいでしょ、とまだ湯気の立つカップを両手で握り締め、グンマが言う。
キンタローはその言葉に目を見張った。

「……なんとなくよそよそしいとは思っていたんだが」
グンマはそんなキンタローの反応に笑った。
まだ実生活の浅いキンタローは人の機微を分からなかったり、また自分自身の理解度を深めるのに夢中で周囲の空気を眼中に入れてないことも多い。
僕はここのところずっとご飯のとき針のむしろだったのになあ、とグンマは苦笑した。

「まあ、フツーの親子だったらさ。シンちゃんが独立したし、親離れ、子離れなのかなあと思うけどあの2人はフツーじゃないじゃない?」
「そうなのか?」
「うーん。なんていったらいいのか分かんないけどコタローちゃんとお父様の関係はやっぱり普通じゃないよ。
年の離れた末っ子でも溺愛しない親もいるからね。僕は……最近になってお父様が出来たけれどそもそも親がいなかった人生だったし」
「高松が親代わりだろう」
互いの後見人のドクターの存在をキンタローは指摘した。
けれども、グンマは首を振る。

「高松はたしかに僕を育ててくれたし、可愛がってくれてるけどね。やっぱり"お父さん"じゃないよ。
子どもの頃は僕には高松がお父さんなんだなあってシンちゃんを見て思ったりもしたけれど、高松はやっぱり一線を引いてたから」
「……」
高松は違う、と言われてキンタローは眉を寄せた。そんなキンタローにグンマが、じゃあと今度は問いかける。

「キンちゃんにとってお父さんは誰?」
グンマに問われてキンタローは怪訝そうな表情を浮かべた。
何を言っているんだ、といった表情のまま

「俺の父はルーザーだ」
と答える。するとグンマは口元に笑みを浮かべた。

「そうだよね。ルーザー叔父様だよね。
僕とおんなじでキンちゃんに色んなことを教えてくれるのは高松だけれど、高松はお父様じゃないでしょ?
それにシンちゃんの中で見ていたマジックお父様でもないでしょ?」

「ああ」
分かった、とキンタローは頷く。納得した様子にグンマは、話題を元に戻した。

「ええと、どこまで話したっけ?……ああ、そうだ。あの二人が普通じゃないってことだったよね?」
「ああ、そうだ」

キンタローはこってりと甘いキャラメルに閉口しながらも、グンマに視線で先を促した。

「僕とシンちゃんはガンマ団を束ねている一族の子だからあまり外へは出たことがなかったんだ。
お誕生日に遊園地へ言ったり、たまに外食する日はあったけれどね。
遊び相手だってシンちゃんと僕以外の子どもはいなかったから他のおうちがどうなのか知らなかったんだ。
たまに来る叔父様たちにも子どもはいなかったからね」
今もだけれど、と残念そうにグンマは肩を竦める。

「お父様はシンちゃんをべたべたに甘やかしてたし、僕だって過保護な高松に育てられたでしょ?
保護者ってああいうタイプだと思ってたんだ。士官学校に入るまではさ」

士官学校、と言われてキンタローは考え込んだ。
グンマがカップに口をつけている間に記憶の中に残るシンタローの過去を思い出していく。

幼い頃と同じで入学式にも父でなく末の叔父に駆け寄るシンタロー。
桜の舞い散る風景。制服。寮。それから帰省したときの……。


「……たしかに士官学校で親の話になったときシンタローは愕然としていたな」
キンタローが思い出した過去を口にするとグンマは微笑む。

「……僕もだよ。周りのみんなは大抵、あんな風な態度を親に取られていないようだったからね」
元気だった?寂しかったよ、と抱きつかれたり。
何かあったらどうしようかと思っていました、と滂沱の涙を流したり。
2人の保護者たちはそれぞれ近くにいるというのに帰省したとき過剰な反応をしていた。
シンタローにいたっては、南国の島に行くまで、一緒に風呂へ入ろうと誘われたり、あまつさえ人形を作られたりもしていた。

「シンちゃんがさあ、コタローちゃんを可愛がるのはいいんだ。
……まあ、ちょっと行き過ぎてるかなとは思うけどあのお父様の行動がベースになっているから納得できるし。
でもね。普通の親子関係って割りにドライなものだと思うんだ。僕とお父様みたいにね。お互い心配しあったりはするけど、あそこまでべたべたしないよ。
世の中、親子の数だけ色んな関係があるかもしれないけど……」
グンマは言葉を濁した。一定いものかどうか、悩んだままの従兄弟にキンタローは続きを促す。

「ああいうしつこいアプローチの仕方ってさ。親子のスキンシップって言うよりつれない年下の恋人に言い寄るオヤジみたいじゃなかった?」
「……」

「ねえ?どう思う?キンちゃん」
尋ねられてキンタローは瞠目した。





しばらく考え込んだ後、キンタローは躊躇いがちに口を開いた。
グンマの視点から見た2人だけでは状況が正確に掴めない。
納得しうる部分はあったが、2人の関係がおかしいというのもグンマに指摘されてから思い当たったのだ。
今、答えを出さずに色々と調査してからにしようとキンタローは考える。

「その……伯父貴のアイツに対する対応がなんなのかは俺からはなんとも言えない」
「うん」
「おまえの意見を仮定するとして、それで一体あの2人はどういう状態なんだ?
普通じゃない親子がよそよそしい、それはおかしい、けれどもこのまま一般的な親子関係になるのもおかしいと言いたいわけなんだろう?」
「うん」
僕とお父様みたいな関係にならないと思うよ、とグンマはきっぱりと言う。

「僕の意見、お父様の態度は恋人にするものだってやつを仮定するよ。
そもそもあの2人がおかしくなったのって最近じゃない?それもキンちゃんが来てから……あ、キンちゃんが原因じゃないよ。
つまりあの島を後にしてからだよね。島の中では相変わらずべたべたしてたし」

確かに、そうだとキンタローは思った。

「で、島から帰ってきて変わったことがあるよね。キンちゃんが従兄弟になったこと、コタローちゃんが眠ってること。
それから、僕にも関係することだけど一番重要なのが……」

グンマが自分にも関係することだと口にしたことでキンタローは彼が言いたいことが掴めてきた。

「シンタローがマジック伯父貴と血が繋がっていないということだな」
「そう。そういうこと。2人とも血が繋がってなくても親子だと考えているし、僕もそう思っていたけれどね」

思っていた、と過去形にされてキンタローは驚く。
思わず疑問を口にしようと口を開けるもグンマはそれを手で押し止めた。

「そもそもお父様は異常な愛情をシンちゃんに注いでいるよね。子どもが可愛いとかそういうレベルじゃないのはキンちゃんも理解したでしょ。
パパはシンちゃんが好きなのに~とかパパは何でも言うこと聞いてあげるよ、とかシンちゃんに対するとき、お父様は自分のことパパって呼ぶんだ。
スキンシップを取るときだけじゃなくて、例えばカレーを作ったときもね。"冷凍庫の中のタッパーはパパ作ったカレーだからね"とか。
ともかく自分のことはパパって呼ぶ。僕やコタローちゃんに対してはパパじゃなくていつも私って言うよ。パパって言うのはシンちゃんにだけなんだ。
それってさ、明らかにお父様はシンちゃんの父親って言うことを強調していない?」

そう思わない?とグンマはキンタローに畳み掛けるように言う。

「恋人にするような態度って言ったでしょ。お父様って、シンちゃんが好きで好きで仕方がないからそういう態度をとるんだ。
でも、親子だからやっぱり恋人にするようなことを実行しちゃいけないわけじゃない?
シンちゃんは息子!って自分を言い聞かせるためにパパって口にしてたのかなあって思ったんだ」

「自分への戒めのつもりか」
ため息を吐いてキンタローは温くなったカップに口を付けた。頭の中が色々なことが渦巻いてごちゃごちゃになっている。

「でも、シンちゃんはお父様と血が繋がってないのが分かったじゃない。ということは、今まで我慢してた先にも進めるんだよ」
それがいいのかはわからないけどね、とグンマは言う。
だって、血が繋がってなくても親子なわけだし、世間的にも養子に手を出す人間なんて認められないもの、とグンマは言う。

「倫理的には問題があるが、実の親子よりはハードルが低いと言いたいわけだな。
ガンマ団で伯父貴に苦言を言うようなヤツもいないし、実行には問題がないわけだ」
キンタローがグンマの言を引き継ぐとグンマは大きく頷いた。

「で、僕が考えた仮説は……お父様はシンちゃんへの気持ちに悩んでいてシンちゃんから遠ざかっている。
シンちゃんはいつもと違うお父様に納得がいかなくて、でも自分じゃ聞けないから2人ともぎこちない、って言うことなの。……合ってるかな?」

どう思う、キンちゃんと問いかけられキンタローは考え込んだ。







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ms

どうしたの?


最近、シンちゃんの様子がおかしい。
前みたいに怒らなくなったのだ。
以前はそれはそれはカルシウム不足だなこの子は、と思うほど、手を握っただけでも、デートしようって言っただけでも、ほっぺにキスしただけでも顔を真っ赤にして怒ってたのに。
怒ったシンちゃんの顔も魅力的だけど☆

・・・でもホントに、どうしたの?
今日なんか、朝いってらっしゃいのチュウをしたら、やめろよ、って言いながらもくすぐったそうに笑ってたし。
いつもならアッパーが出るよね☆
夜はせっかく早く帰ってきたんだからチェスでもしようよって言ったらいいよ、って言ってくれて夕飯まで付き合ってくれたし。
・・・いつもなら、ああ?後でな!って言って結局してくれないのに・・・。

なんか、おかしい。
どうしたんだろう?
とうとう、パパの愛を受け入れる気になったのかな?
今日なら、一緒に寝ようって言っても大丈夫かな!?

夕飯の後、リビングでみんなでくつろいでいる様子を眺めているが、やっぱり愛しいシンタローの顔ばかり見てしまう。
「シンちゃん、抹茶食べさせて~」
グンちゃんが、シンタローの食べていた抹茶味のアイスをねだっている。
「ほらよ」ってシンちゃんはアイスを差し出すと、グンちゃんはうれしそうに一口すくって食べた。
「おいしい~v・・・じゃ、ボクのもあげる~」
と言ってグンちゃんは、自分のストロベリー味をすくってシンちゃんの口元に差し出した。
「お、サンキュー」
シンちゃんはぱくっとピンク色のアイスを口に入れると、うまい、と一言。
「ここのアイスはホントうまいな。今度からここのにしよう」とご満悦だ。

(・・・かわいいなあ)

自分はアイスを辞退したが、こうして子供たちの様子を眺めているだけで満足だ。
すると、シンちゃんはキンちゃんにも、「お前も食うか?」と言って抹茶味のアイスをすくった。
ラムレーズンのアイスを食べていたキンちゃんは、普段はとってもクールな感じなんだけど、こういうときはすごく子供っぽく見える時がある。
・・・まだこの世に生まれて間もないしね。
キンちゃんは当然のようにあーんと口を開けて、シンちゃんに食べさせてもらった。
あ、あ、いいな、キンちゃん。
シンちゃんに食べさせてもらってる!
「抹茶の苦味がほどよく利いていていいな」
「だろ?」
シンちゃんはほうじ茶を飲みながら、うれしそうに言った。
でも次の瞬間、シンちゃんは、
「あ、アイスついてる」
って言って、キンちゃんの口の端をその長い指でぬぐった。
そして、自分でぺろりとその指についた抹茶アイスをなめてしまった。
「キンちゃんかわいい」
グンちゃんがはやし立てる。
そうか?とキンちゃんは不思議そうな顔をしている。

(・・・)

その様子を見ていて、なんだか落ち込んだ。
シンちゃんは自分には絶対そういうことをしてくれない。
昔だったら、まだシンちゃんが反抗期の前だったらまだしも・・・。
口の端にアイスをつけるなんて芸当は、自分にはできない。
シンちゃんはああいう風に母性的な愛情?みたいなものがたっぷりあって、とっても面倒見がいい。
とっても頭が良くって、見た目は大人なんだけど時々子供っぽいキンちゃんには、やさしい。
あの島にいた時だって、なんだかんだ言ってあの子供と犬の世話を焼いていたのがものすごい板についていたし。
・・・シンちゃんもやっぱりあの子達と別れて寂しいのかな・・・?

「・・・?どーしたの?おとーさま」

グンちゃんが、どんよりとしてリビングから出て行こうとする私に、不思議そうに話しかけた。
キンちゃんの子供っぽさは、グンちゃんのそれと似ているようで微妙に違う。
シンちゃんはグンちゃんには兄貴分みたいな感じであたる。

(・・・もしかして最近妙に落ち着いてるのは、キンちゃんが母性本能(?)を満たしているから・・・?)

つまり、シンちゃんは自分以外の人間をよく構っているとき、生き生きとして、満たされている気がするのだ。
そうするとその愛情のなせる業なのか、その対象以外の人間にもこころなしか優しくなる。
そう思うと、喜んでいいのか、悲しんでいいのか、わからないマジックであった。


end





ms







    ねえパパ。誕生日、何が欲しい?

 物心ついた時から毎年繰りかえされた俺からのクエスチョン。
 対する親父のアンサーは常にひとつ。

    おまえのくれる物ならなんだってv

 …って、馬鹿のひとつ覚えかっつの。
 そういう答えが返ってくんのはわかりきってたけど、今年もきいた。
 別にこんな質問、しなくたってよかったんだ。
 いやむしろ、その一人ツッコミをしたいから、きいたようなもんだった。
 …逃げ場をつくる言いわけなのは、マジックだってわかってただろうけど。
「…なんか、欲しいもん、あんの? 誕生日」
 おやすみのあいさつ。
 唇の触れない、かるいAir Kissをして。
 しどろもどろにきいたのは、あの視線をみつけたから。
「ああ、」

 最近、時々。
 不思議とマジックは、こういう目をするようになった。
 あの青、どこか冷たくこわく感じていた青は、ふと気づくと炎のようにゆらめいた青色をしてる。青いのに、熱い。
     見てはいけない。
 とっさに思うのはその言葉で、何故いけないのか、警鐘を鳴らすのは自分の中のなんなのか、いまだ理由はわからない。
 ただ、ひきこまれそうで。
 “それ”から逃げろ逃げろと、思ってしまう。
 今までみたいな怖いとか嫌だとか、気持ちとか感情が追いつく前に条件反射で。思うコレと、思わせるまなざしはなんだ。
 転ぶ前に手をつくとか、反射運動のひとつみたいな?
 それとも本能ってこういうもんか。

「ごめんね、シンタロー」
 あやまる言葉をつづけて俺の頬をつつんだふたつの手のひらの、さらりと乾いた感触も、ゆれたその瞳も。
     ああ。
 嘘だ嘘だ。
 重ねられたくちびるが熱くて、胸がぐっと苦しくなる。
 親愛なんてとっくにすぎてるじゃないか。
「シンちゃんの、ぜんぶが欲しいんだよ」
 はじめて知ってしまった。


 こんな、たましいのふるえるキスを。


 今までの、嘘を。
ms



ハジケて的お題5





一・ビームを送るワ


私の彼氏はそれはもう格好良くて男前で勝気でだけど一途で、
俺様主義なところがベリキュートである。
なので私は逐一彼の一日の行動をチェックし、健康状態、精神状態を共に管理している。
至る所に設置した監視カメラの画像は10分ごとに私の携帯電話に転送され、
愛しい愛しいマイスイートハニーの居場所を教えてくれる。

本来ならば彼の傍で世話を焼きたいのだが、
彼に総帥の座を譲ってからも、忙しい日々を送る私にはなかなか難しいのだ。
それに傍に寄るだけで殴られたり蹴られたりするし……
まあ、それも彼の愛情表現なのだろう。

「誰かに見張られてるような気がするんだよな…」
「うむ。俺もだ。どこからか視線を感じる。」
「だけど誰もいないよぉ~?」

フッ。いくら気配を殺しているとはいえ、気づけないとはまだまだだね、三人とも。
んっふっふー♪ このアングルのシンちゃんもかーわーいーいなー!!
パパ超幸せだよ……あ、ヤバいヤバい。鼻血が…っと。ハンカチどこだっけ。

鼻を押さえつつ再びシンタローを見ると、やはり私の視線が気になるのか
周囲をキョロキョロと見回している。
あああそんな不安げな顔をして…悶死しそうだよ……パパを殺す気かいっっ!?

シンタローは壁に隠れて身悶えている私に気づくことなく二人を促して先へ行ってしまった。
それでも私の気配をどこかで感じているらしく、ふと振り返っては背後を確認している。

………もう少しシンちゃんを見ていたいけど
そろそろファンクラブのサイン会に出かけなくちゃいけないし、今日はここまで。
後ろ髪を引かれる思いでその場を後にする。壁に付着した鼻血も拭き取った。
見た目は大丈夫だがルミノール反応は出るかもしれないな…

もう少し時間があればお前と一緒にいられる時間も増えるのに。
ああ、本当に好きすぎて困っちゃうね。どうしてくれるの、シンタロー。




二・憧れのMyダーリン


シンタローは前述したとおり、格好良くて男前で勝気で一途な俺様ダーリンである。
俺様なくせにイジメられるのも好きだ。
調教したのは私だけど、それはまたの機会にお話ししよう。
昼は生意気な態度しか見せない彼だが、夜になってもそれは変わらない。

「どうしてほしいの…?」
「んっ、言える、かぁっ」
「ふーん? パパは別にいいけど、苦しいのはお前だよ」
「…はぁ、あっ、言わ、ねぇっっ!」

…というように、シンタローは夜でも意地を張る始末だ。
そこが可愛くもあるのだが、たまには素直に
「父さんの(自主規制)がほしいよぉ…」って言われてみたいのが親心。
あ。また鼻血が。ったく……ハンカチがいくつあっても足りないな。
ティラミスに新しいの買ってこさせよう。

それもこれもシンタローがいけないんだ。
彼は私にないものばかり持っている。
あの子の傍にはいつも人がいて、私はいつも孤独だった。

そんなに恵まれているのに、お前はなぜ私の傍にいてくれるの?
シンタローに関することはわからないことだらけで、いつまでたっても答えが出ない。
だから私の脳内は24時間シンタローのことでいっぱいなのだ。

きっとパパは死ぬまでお前に囚われたままだよ。




三・笑顔がイカしてる☆


普段の彼は眉間にしわを寄せ、にらみつけるような眼差しを見せる。
これは私に対してだけなのだろうか? ………考えると切なくなるからやめておこう。
いやいや、それだけ彼の中で私の存在は大きいということなのだ。多分。

しかめっ面が多いシンタローだが、ごくまれにすっごく可愛い笑顔を見せてくれる。
照れるような笑顔、素直に喜ぶ笑顔、泣きそうな笑顔。
シンタローの笑顔は希少価値ありまくりなので、
ついその場で押し倒しそうになることもしばしばだ。
その度に私は、シンタローの罵声とタメなし眼魔砲を喰らうことになる。

「テメェは下半身でしか物事を考えられんのか――――――――ッッッ!!!」

男なんだから当たり前じゃないか!
同じ男なんだからシンちゃんだってわかるはずなのに。パパ寂しい…

だけどそれだけじゃないんだよ。
お前が好きでたまらなく苦しいから、
なんとかしてこの気持ちを吐き出さないと死んでしまいそうなんだ。

私の中がシンちゃんでいっぱいになって破裂しそうになっちゃうから、
どこでだってお前にキスしたいし
いつだってハグしていたいし
一日中お前を感じていたいんだよ。

だけどシンタローはきっと、私の気持ちを微塵もわかってはくれないだろうね。




四・強い人シビれちゃうの


シンタローは秘石眼を持ってはいないのに、超絶強い。
体は赤の番人のものらしいが、
それでも眼魔砲の威力は衰えることを知らず、ますます強力になっている。
そのうち殺されるかもしれない。セクハラは控えよう。
応戦できないわけではないが、シンタローを傷つけるのは私の本意ではないのだし。

総帥服で戦場に立つシンちゃんはものすごく人目をひく。
私としては眼魔砲で有無を言わさず敵を半殺しにするシンちゃんが最高に格好良い!
その強さも私の心を惹きつける要素のひとつだよっ☆
眼魔砲をパパに向かってためらいなく放つシンちゃんを見ると、パパは恐怖で腰砕けさ!

本気で生命の危機を感じたら、私も自己防衛にでなくちゃいけないかなぁ。
お願いだよ、シンちゃん。
パパ間違ってもお前を壊したくないから、本気で眼魔砲撃たないでね。
お前の手を汚したいとは思わないし、お前の血で汚れたいとは思わないから。

そういう強さも私は好きだけど、
お前にはキレイでいてほしいんだよ。

「お前は自己中心的で我侭で…」
「パパを我侭にしたのはシンちゃんじゃない。」
「アァ!? 俺がアンタにいつどこで何をどうしたよ!!」

だってお前は最後にはいつも私を許してくれるでしょう?
私を許すのは神でもなく、ましてや地獄の王でもなく。目の前にいるお前だけ。




五・アタック大作戦☆


私のシンタローへの愛は銀河の果てまで届くほど深く広いものだ。断言しよう。
なので時間があろうとなかろうと、口さえ動けば常にシンタローへの愛を告白している。

「シンちゃん愛してるぅ~。」
「黙れよ。」
「パパはシンちゃんのことが好きすぎて、頭おかしくなりそうだよ。」
「テメェの頭がおかしいのは今に始まったことじゃねぇよ。」

こんなやり取りはすでに日常茶飯事で他の家族は見て見ぬふりをする。
それで余計にいたたまれなくなるのか、シンタローは盛大にキレる。

「毎日毎日るっせーんだああぁぁぁぁぁァァ!! 高松のとこ行って人間ドック受けて来いっ!」
「ええぇぇぇぇ!?? そんなことしたら絶対実験材料にされちゃうじゃないか!」
「アンタなら死にゃしねぇ。俺が保証してやる。
遺産は俺が全部相続してやるから安心して逝け。」
「お金が絡むとシンちゃん強いねぇ……パパなんだか狂おしいほど寂しくなっちゃったから、
『遺産はすべて恵まれない子供達へ』って遺書にしたためておこう。」
「父さ~ん、俺、父さんのことすっごく頼りにしてる~。」
「はっはっは。棒読みじゃあ説得力ないね。でもそんな腹黒いシンちゃんも大好きだよ!」

どんなことを言っても、絶対に、シンタローから
「好き」とか「愛してる」なんて言葉はもらえない。
いつか聞かせてもらえる日が来るのなら、その日のために私は彼にずっと囁き続けよう。

Darling, I love you.







人生いろいろでお借りしました。



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「あ」な感情7つのお題





あーっ!!(驚き)


ころりと寝返りを打ち、ふとんの中でもぞもぞ。
寝ぼけ眼でベッドヘッドの時計を見れば
「寝過ごした!」
慌てて飛び起きて、わたわたと身支度を整える。

「シンちゃん、起きたの?」
「テメェっっいたなら起こせよ!」
たまたま顔を出したマジックに八つ当たりをしながら、大急ぎでブレザーを…
「あれ?」
ない。どこにもない。
昨晩ちゃんとクローゼットにかけておいたはずなのに。

「最近シンちゃん働きすぎだからね。
今日はパパがお休み指令を団全体に出しておきましたッ!」
「勝手なことしてんじゃねぇよ!」

今に始まったことじゃないし、もういいや…
本当はマジックが自分の身を案じてくれたことが
すごく嬉しかったりしたのだけれど、そんなこと素直に言葉にできやしないし。

もうなんだか諦めモードの新総帥は二度寝(不貞寝)することを決めた。
もぞもぞと隣に入ってきた父親に大人しく身を任せていることが彼の精一杯の「ありがとう」。




ああ。(肯定)


朝食はいつも父親の手作り。それは物心ついた時からの習慣。
箸できれいに焼き魚の身をほぐしながら、家族と共に朝ごはん。
ぼんやりとニュースを見ていると、隣に座るマジックが話しかけてきた。

「朝はごはんとお味噌汁だよね?」
「ああ」
「でも食後はコーヒーでしょ?」
「ああ」
「お砂糖もミルクも入れないよね?」
「ああ」
「パパのこと好きだよね?」
「ああ………って! お前!!」

はめられたことに気づいても、口から飛び出た言葉は消せはしない。
怒りに震えるシンタローをなだめるのはキンタローとグンマの役目となっていた。

「怒らないでシンちゃん! まだお食事中でしょ! 眼魔砲で全部吹き飛ばすつもり!?」
「俺の出汁巻き玉子をどうするつもりだ!?
お前が暴れるせいで俺は何度も食べ損ねているんだぞ!!」
止める目的の如何に関わらず、従兄弟たちは今日も必死。




あっ、(思い出した)


「あっ」
せっせとコタロー専用アルバムを編集していて気づいた。
デジカメに入れたままのSDカード。現像に出し忘れていたのだ。
思い出すなりいてもたってもいられなくなり、大至急秘書を呼び出した。

息を切らせて総帥室に駆け込んできた、ティラミスとチョコレートロマンスに
「急いでこれを現像してきてくれ!!」とカードを手渡す。
その剣幕に押され気味のチョコレートロマンスは慌ててそれを受け取り、総帥室を出て行く。
しかしティラミスは「これはコタロー様関連の何かだ」と見当をつけていた。
マジックも以前、シンタローと同じことをしていたからだ。

夜中に呼び出されたかと思えば
「シンちゃんの写真、現像できてないのがあったんだ! 今すぐ現像してきて!」
明日でいいじゃないですか、と言っても聞く耳を持たない。
血は繋がってないくせにこういうところは親子だな、とあきれ返る苦労症の秘書。

彼の中に総帥の秘密がまたひとつ刻まれた。




あーぁ…(残念)


夕飯はシンタローの好きなカレーだった。
だが、鍋の中は空。
マジックのことだから別の容器に取り分けてくれていると思うのだが見つからない。
時計は深夜2時を指している。
傍若無人、究極俺様人間のシンタローでも、起こすのはちょっと…と思う時間帯だ。

楽しみにしてたのに。食べられないとなるとどうしても食べたい。
自分で作っても全然構わないけれど、マジックと同じ味は出せない。
レシピを知りたいと思っているのだが父親は頑として教えてくれないし。
戦闘能力ならまだしも、カレーの味ひとつとってもマジックに敵わないなんて。

「あーぁ…」
余計なことを考えるのは疲れている証拠だ。
もう寝よう。キッチンの電源を落として寝室へと下がった。




あぁ?(ガンたれ)


「シーンちゃんッ!」
「あんだよ」
不機嫌を装って返される声には慣れている。
こうやって格好つけるのがシンタローの癖。

「いいもの作ったんだー! これ、使って!」
グンマが差し出したのは小さな……
「何だこれは。アヒル型のレーダーか?」
「そうだよぉ。でもただのレーダーじゃないんだよッ!」

意気揚々とグンマはレーダー(でもアヒル型)を手に取り、スイッチON。
「これはねぇ、おとーさま発見器なんだよー」
画面を見れば、なにかぴこぴこと点滅している。恐らくこれがマジックの現在地。
「でかしたグンマ。たまにはお前の発明も役に立つな!」
ご褒美にケーキを作ってあげる約束をして、グンマを総帥室から追い出した。

シンタローはまだ知らない。
こんなものがあっても、マジックはどこへだって追いかけてくることに。




あれっ(不思議)


総帥服の胸ポケットに何か違和感。
調べてみれば、中から出てきたのは一枚の紙切れ。

こんなもん入れといたっけ? 裏返してみれば。
『お仕事終わったらパパとデートしようね。午後7時に地下駐車場で待ってるよ』
と走り書き。気づかなかったらどうするつもりだったんだ、この親父は。

有無を言わせない傍若無人ぶりに失笑がこぼれた。
早めに仕事を切り上げて、今日の夕食はマジックに奢らせてやろう。




あ…(不意打ち)


眠りと覚醒の狭間でふと唇に触れた柔らかい何か。
うっすらと開いた目の前。至近距離にある、怜悧な輝きを秘めた青い両眼。

「お休み、シンタロー」
掠れた声にもう一度煽られる。けれどこれ以上は体がもたないから。

「……ん」
代わりに頬に音をたててキスをした。

目を見張るマジックに満足して、自分より少し冷たい体に両腕を回して眠りにつく。
明日もこんなふうに、抱き合えたらいいなあ。なんて。







ニセモノ?10題でお借りしました。



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