忍者ブログ
* admin *
[760]  [759]  [758]  [757]  [756]  [755]  [754]  [753]  [752]  [751]  [750
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

カンカンに照り付ける真夏日。
マジックの屋敷に封じ込められている俺には一切関係のない事だが。
しかし他の悪魔連中に比べて活動的な俺には流石にこのヒキコモリ生活はつらい。
そんな事を毎日毎日こぼしていたのが功をそうしたのか、あるいは気まぐれか、
人間界にきて、初めて外に出られる機会に恵まれた。
といっても封印がとかれるわけじゃない。
何でも、せっかく4兄弟の休みがあったのだから、プライベートビーチを久しぶりに活用しようということらしい。
「あそこなら他に誰もいないし、シンちゃんも堂々と外に出られるよ。」
嬉しそうにはしゃぐマジックを見て俺は思った。
『あんたが余計な事しなきゃ俺だって一人で外に出られたんだよ。』
だがそれを口には出さない。ココでコイツを不機嫌にさせるわけには行かないからだ。
実を言うと、マジックの弟達の事でちょっとたくらんでいる事がある。
つまり……

実の兄(とてつもない程の権力者)が悪魔を捕まえて愛人にしている。

どんな人間でも信じないだろう。
だが、もしも事実なら?
どんな人間でも止めると思う。
「頼むから正気に戻ってくれ」と。

そう、俺は「悪魔を愛人にするなんてなに考えているんですか! さっさと逃がしてあげなさい!」って
弟の誰かがマジックを説得すると思っていたんだ。
(コレじゃまるで俺が悪ガキに捕まったセミや他の虫みたいだが───ってこの例えもあながち間違ってねぇし。)
それが実際にはどうだ? 誰も説得しやしねぇ。
だがしかし、3人全員が同じ気持ちのわけはないだろう。
きっと誰か一人は俺を放した方がいいって思ってるハズだ。
あの時は4人いたから自分の意見が言いにくかったのだろう。
だったらその誰かをピンポイントでマークして、首輪を外させて俺をこの封印をといてもらう。
気分が開放的になるこの海水浴はまさにうってつけのイベントだ!
ちなみに屋敷の連中(使用人たち)はよっぽどマジックを恐れているのか敬っているのか誰もはずしちゃくれねぇ。


マジックたちがプライベートビーチで過ごしている間、当然敷地内の別荘に泊まるわけだが、
ソコに警備員やお手伝いさんはいないらしい。もちろんつれてもいかないらしい。
「普段自分で家事をやらないとね、腕がなまっちゃうから。」
掃除は定期的に人を雇っているし、いきなり行っても使える状態にしてあるとか。

それに、面と向かっては言わないが、マジックの料理の腕はなかなかのもので、
普段は屋敷に勤めている料理人が食事を作るが、休日や他時間がある日はマジックが食事を作る。
コレがそこんじょそこらの料理屋よりよっぽど美味いのだ。
ココで言う料理屋ってのは魔界の話な。
だから、コレはちょっと楽しみにしている。

「でも本当にあんたらだけで大丈夫なのか?」
「なにがだい?」
楽しそうに旅行の用意をするマジックに聞いてみた。
「まず家事の問題とか……。」
「こう見えても私は家事も得意だよ?
 掃除だって私の部屋はいつもきれいなものじゃないか。
 洗濯は……あまりやらないけれど洗濯機はいい物がおいてあるし、
 それとも料理かい? 心配しなくても魚料理だってお手の物だよ。」
「まぁ……アンタがイギリス人のわりに料理が上手いってのは認める。」
「ありがとう」
「そうじゃなくて、あるだろ? こう警備上の問題とか。」
ビーチの周りに警備員くらいは連れて行くみたいだが……別荘には他に誰もいかないらしいし。
「それこそなんでだい?」
「………………………………」
そうか、そういえばそうだったな。
「そういえばアンタ強いんだったな。」
「何をいまさら。最初の日に君を捕まえられたのは運だけじゃないよ」
「そうだな……」
40過ぎのおっさんだと思ってなめたのが間違いだったんだ。
「で、俺はどうすればいい?」
「ん? 別にどうもしなくても。
 私に身を任せてくれれば何にもしなくていいんだよv」
……「身を」の部分は入れなくてもいいだろ。


見上げれば蒼い空、白い雲、真っ赤な太陽、碧い海。
「……とうとう来ちまった。異人さんに連れられて。」
「君から見たら世界各国誰でも異人さんだろう。」
そのとーり。
ルーザーの運転で俺たちが来た砂浜は本当に人一人いなくて、ざざ……と波の音が響くだけだった。
ちなみにマジックはその間しっかりと俺の腕をつかんでいた。
別荘は想像よりもちんまりとしていた。
といっても、俺がマジックの屋敷から想像していた別荘図は、普通の家が2つくらい入る大きさだったが。
「小さいって思ったかい?」
「……まぁ、周りの別荘に比べりゃ遥かにでかいがな。」
「かもね。でもココには兄弟4人以外で来ない……来なかったからね、
 だから下手に大きくないほうがいいんだよ。」
「なるほど。」
白を基調とした外観はゴミひとつない砂浜に見事にマッチしていて、立てた人物の趣味のよさが判る代物だ。
バルコニーには日光浴用の洒落た椅子が置いてあるのが見えた。
うんうん。ココでなら腹を割って話せそうだ。

まず俺が目をつけたのはサービス……さんだった。
この前俺が自己紹介をした時に、一番俺に興味を示していたのはこの人だ。
マジックが俺の紹介をし終えた後、即行でビジネスの話に移ったのだが、
その後もちらちらとこちらを見ていたのか、何度も視線が合った。
2週間前の自己紹介からはチャンスがなかったため、あまり話していなかったが、
今マジックは荷物と台所整理に追われていて俺の方の注意が薄くなっている。
チャンスは今しかないだろう。
「おーい。」
「ん~?」
冷蔵庫に持ってきた食材を詰めているマジック。声をかけると、視線はこちらを向いたが、手は動いている。
「ちょっとこの中色々見て回ってくる」
「あぁ。迷子にならないよう注意するんだよ。」
「へいへい。」
ちなみに、ずいぶんとマジックは余裕があるが、
羽が使えない以上、こんなプライベートビーチなんざで逃げてもすぐ捕まると考えているからだ。(そしてそれは正しい)
ここに来る途中、マジックに散々ちょっかいをかけられて道すらも覚えていないからな。
ココがイギリスのっつーかUKのどこなのかもわからねーし。
ということで、俺の着る物一式はマジックが整理してくれているし、あの広い台所じゃ整理するにもひと苦労だろうし。
思う存分3人を説得できるってもんだ。
俺は足取りも軽くサービスさんの部屋に向かった。


「あのー……サービスさんちょっといいですか?」
複雑な木彫り細工がしてあるドアをノックする。
するとすぐにドアが開いて、サービスさんが顔を見せた。
「どうぞ。丁度着る物の整理が終わったところだ。」
そう言ってサービスさんは俺を部屋に入れた。

「ところで、『さん』はいらないな。
 なんだか他人行儀だ。」
サービスさんの部屋からつながっているバルコニーに出て、よく冷えたアイスティーをもらう。
俺が用件を言い出す前に、まずサービスさんが開口一番そういった。
「といわれても……」
なんだか敬称をつけなくてはいけない……というより呼び捨てにしづらいのだ。
「一応年上なんで……」
「兄さんも年上だろう。」
「自分を強姦した挙句に捕まえた男に敬称はつけたくありません。」
「確かに」
そう言ってにこりと面白そうに笑う。うーん……綺麗な人だなー……本当に。
「そうだな……じゃぁ……
 おじさんなんてどうだい?」
「は!? おじさん!!?」
「あぁ。」
「なんでおじさんなんですか!!
 年齢はともかく、そういう外見じゃないし!」
話の飛びように驚いて思わず声を荒げると、サービスさんはさっきと同じように微笑んで
「ありがとう。でもね、(大分)年上の男性に対する「おじさん」じゃなくて、
 両親の兄弟に対する「叔父さん」だよ」
「は? 兄弟?」
「兄さんがいっていたんだよ。
 『もしもシンタローのために戸籍を創るなら、私の息子でいいよねv』って」
「えええええぇええええと」
そりゃ年齢的には合っているが……。
人種が違うとか俺を養子にするメリットはあるのかとか、そんな必要性があるのかとかとか
どこから突っ込んでいいのか迷っていると、
「ほら、あの人妙に独占欲強そうだから。
 感情は複雑だけど愛情を持った相手を何らかの形で束縛したいんだろうね。」
「はぁ……」
独占欲が強そうだというのは納得できるような気がする。
けどなんで親子。
俺の疑問を見抜いたのか、サービスさんは今度は意地の悪そうな笑顔を浮かべて言った。
「婚姻相手の方がよかったかい?」
「なっ……!!?」
婚姻? てことは結婚!? どっちが旦那だッ!!?
ってそうじゃなくて、第一夜の生活をみてりゃおのずと役割は……あれ?
混乱する俺を見て、目の前のお綺麗な男の人はさっきと変わらぬ笑顔のまま、さらりと。
「冗談だよ。」
「~~~~~~~~~っ!」
負けた……なんかしらんが負けた……ッ!
一人がっくり肩を落とす。
「でも実際そうなったらいいな。」
「へ?」
「シンタローが甥っ子になるのなら楽しそうだしね。」
たのし……。
「それはどういう意味ですか。」
「まぁまぁ。とにかく、君からさん付けされると妙にくすぐったいから、それ以外でお願いできないかな。
 とりあえずおじさんでいいんじゃないかな。家族関係云々はさておいて、年齢的にはそれが一番合うだろう?」
「はぁ……」
サービス……おじさん……ねぇ。

「そういえばシンタローは何のようだったんだ?」
どうにも違和感があって頭の中で反芻していると、サービスさ…おじさんが紅茶を注ぎながら聞いてきた。
「あ、そうだった。」
首輪を外してもらうんだった……
けど、なんだかすっかりフレンドリーになってしまったこの状況では言い出しづらいぞ。
「えぇっと……ちょっと頼みたい事が「うおーいサービス! はいるぜぇええ!!」
頼みごとを口に出しかけた瞬間、デカイ声とともに部屋の扉が開いた。
この声は……。
「ハーレム。部屋に入るときはノックくらいしてくれないか?」
顔をわずかにしかめてサービスおじさんが注意するが、この男はそれくらいじゃ堪えない。
十数日の付き合いだが、なんとなくそのくらいはわかった。
「あーん? 別にいいじゃねーかそれくらい。
 それとも、その悪魔のボーヤと人に見られちゃまずいことしてたのか?」
ほらちっとも堪えてない。
「まさか。」
サービスおじさんも慣れているのか、涼しい顔に戻り……
「してたんじゃなくてする所だったんだよ」
「おじさんっ!!?」
「そりゃ悪かったな。そんなことより……」
「ってアンタもさらりと流すな!」
うぅ……この兄弟ってこの兄弟って……。

「で、なんでこの悪魔この部屋にいたんだ?」
部屋の棚からグラスを取り出し、バルコニーの席に(勝手に)着くハーレム。
「それを言おうとしたらハーレムが来たんだよ。何だったんだい? シンタロー?」
「いや、ちょっとおじさんに頼みたい事が。
 ───この首輪を外してもらいたいんです。」
『───。』
俺のセリフに二人の動きが一瞬止まる。
「つまり、魔界に帰してほしいって事だね?」
「でもって兄貴のところから逃げ出したいって事だな。」
そのとーり。
「でもその事だったら2週間も前に話し合ったじゃないか。」
あれは2番目の兄、ルーザーに勝手に決められたような……
「っつーかお前らデキてんだろ?
 お前が一人でいるトコ見た事ねーぞ。」
そりゃ一人のときはマジックの部屋にいるし、部屋の外にいるときはマジックがしっかり見張ってるし。
「デキてねぇデキてねぇ。
 あいつが勝手に言いふらしてるだけだ。」
「兄さん片想いロード爆走中ってことかい?」
「むしろ暴走中です。」
「テメェサービスに話すときは敬語なんだな。」
「……なんでだろうな。」
自分でもわからねー……いや、なんとなくわかるけど。
「雰囲気的に敬語使いたくないんだろ。ハーレムには。」
うわおじさんそんなはっきりと。

「話を元に戻そう。
 シンタローが魔界に帰りたいのはわかった。」
「ありがとうございます。」
「でも、私はシンタローを魔界に返したくない。」
「え。」
硬直する俺。
「あの……理由聞かせてもらえますか。」
失敗に終わるか!? と焦りまくりの声になっちまった。
俺の質問に、答えたのはハーレムだった。
「わりーけど、兄貴がこれほど他人に執着するのはめったにねーからな。
 コレでオメーがどっか消えたらまず間違いなく暴れるぞ。あの男。」
「なにより君をダシにして兄さん からかえるし。
 私も君とは離れがたいしね。」
「それは嬉しいんですけど……。
 俺にも家族ってものが……」
グンマとキンタロー今頃冗談抜きで何してるんだろう。。
「だろう? 家族を思うのは誰でも一緒だよ。
 だから私も兄さんの恋路を邪魔したくない。」
「俺は納得してないんですけど。」
「兄貴完全に茨の道だな。」
「ううう……」
ってかこの二人本気で……真剣に考えてくれているのだろうか。
「それに、シンタローもいつまで本気で嫌がってるんだい?」
「はい?」
いつまでって?
「つまり、いいかげん兄さんに落とされても良い頃なのにってことだよ」
「おと……」
落とされるわけないと思うのですが……。
さっきも言ったけど俺が監禁強姦した男に惚れるわけねぇ。
「いや、案外こいつ既に落とされてるけど気づいてないのかも知れねーぞ」
「あぁそれはありえるな。」
「ちょっとちょっとちょっと……」
なんか話が変な方向に進んでません?
「大体兄貴も本気で欲しいなら薬やら何やら色々あるだろーに」
「そうだな。この前裏の仕事でそんなの完成させたらしいし。」
「どんな薬……」
「案外既に体のほうは開発されてたりしてなー(大笑)」
あっはっはとデカイ声を上げて大笑いするハーレム。
その笑い声が異様にむかついて、持ってたカップがピシッとか音を立てた。
つまるところ、この二人は外してくれる気はないらしい。
「ハーレムの馬鹿話はともかくとして、
 私はシンタローがこっちでも違和感なく暮らせるように努力してみるよ」
うっすらと微笑み、頼りになるけど俺の望みとは違う事を言ってくるサービスおじさん。
うぅ……計画失敗……。
俺はあきらめて、マジックの部屋に戻って行った。

「おやシンタロー。」
「ルー……ザー……さん。」
廊下でばったり会ったのは、マジック兄弟次男ルーザー。
うぅ……なんかこの人はマジックとは別の意味で近寄りがたい。
俺の悪魔としての本能がそう語っている! ゆえにさん付けだ。
そんな俺の心境などいざ知らず、ルーザーさんは気楽な口調で
「今までどこに行っていたんだい? 兄さんは自分の部屋にいたみたいだけど。」
「あ、えーとサービスおじさんのところに……」
「サービス……おじさん?」
キラーンとルーザーさんの目が光ったような気がした。
「なんで君がサービスの事をおじさん呼ばわりしているのかな?」
にににににっこり笑った笑顔が怖いですよルーザーさんっ!?
「あ、えーっとえーっと。おじさんが、俺みたいな甥っ子がいれば面白いって……というか純粋に年齢差で……」
「甥っ子? あぁ。そういえば兄さんが君と養子縁組を組みたいと言っていたな。」
「は? 養子縁組?」
そういえばサービスおじさんもそんな事を……。
「あぁ。将来君を公の場に連れて行ったとして、何かと詮索されても大丈夫なように。らしい。」
「何のメリットが?」
「だから、君を公の場に連れて行きたいんだろう。
 ところが、兄さんの立場上、横に今まで見た事もないような青年がいたらまず間違いなくみんな何者だと思うはずだ。
 適当に答えたとして、聞いたほうはそれが本当かあらゆる手段を使って調べるだろ?」
「そりゃ確かに。」
「そこで、養子縁組ということだ。」
「え? え? え?」
なんだか話がずいぶん飛躍してやいませんか?
「てか別に秘書とか会社の人間とかでも誤魔化せるんじゃぁ……」
「公の場でいつもべっとりくっついている二人組み(しかも雰囲気が明らかに何か違う)を見てみんな秘書とか思うかい?」
「まぁ……普通は別の関係があるんじゃないかって思いますね。」
そもそも別の関係だし。
「そこで、養子縁組だよ。」
「だから何故。」
「養子縁組というのは同性愛カップルが法的に一緒にいられる方法としてもっともポピュラーなんだよ。 
 つまり、『養子縁組した私の息子です』と言えば、
 その周りの雰囲気もあってみんな『あぁ【そういうこと】か』と納得してくれるものなんだ。」
そ、そんなんでいいのか?
───って待てよ?
「そもそも俺こんな姿だから公の場になんざ出られないと思いますよ?」
「それも色々クリアするだろ。兄さんなら。」
どうやって───!!?
頭の中で疑問渦巻き、硬直している俺を置いて、ルーザーさんは廊下を歩いていった。
つまり、コレで弟方面での望みは絶たれたワケか。
オレはわずかに肩を落とし、マジックの部屋に戻っていった。

分岐
マジックの部屋に行ったところから見る。(18禁) 2へ
マジックと一緒に海に行ってひと暴れした後から見る 3へ
小悪魔TOPに戻る

PR
BACK HOME NEXT
カレンダー
04 2025/05 06
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
最新記事
as
(06/27)
p
(02/26)
pp
(02/26)
mm
(02/26)
s2
(02/26)
ブログ内検索
忍者ブログ // [PR]

template ゆきぱんだ  //  Copyright: ふらいんぐ All Rights Reserved