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p1


出会い編 1


ジェイムズ=モリアーティをご存知だろうか。
名探偵シャーロック=ホームズにして犯罪界のナポレオンと言わしめた男。
教授の座についていたこともあり、しかし、その裏で偽造、強盗、殺人などの様々な事件において、影で糸を引く黒幕でもある。
彼の正体を突き止めたのは、ホームズただ一人。
マクドナルド警部ですらも彼の家まで訪問しておいて「学識才能の兼ね備えた立派な人物」などと評している。
彼とホームズの因縁については、各自本を読んでもらうことにして、本題に入ろう。

さて、今ここで霧の都のメインストリートを歩く男性。
彫りの深い顔立ちには、何本か深いしわも見えるが、それでも年齢からすればはるかに少ないほうだ。
髪も見事な金髪で白髪は一本もない。引き締まった頬に鋭い碧眼。
加えて2m近い長身。
周りの視線(主に女性の)を気にする風でもなく、店に飾られた色とりどりのバラを微笑を浮かべて見歩いている。

名をマジックといい、彼こそが現代のジェイムズ=モリアーティである。
ただし、そう思う人間は、少なくともこの通りにはいない。
彼を知る善良な一般人は彼をこう評す。『とても紳士的な人物だ』と。
彼を知っている警察官は彼をこういう『まったく問題の無い知識家だ』と。

若くして父から巨大企業『ガンマコンツェルン』を引き継ぎ、
名誉、富、名声、権力、人望、人がうらやむすべてを兼ね備えた人物
あえて不幸な点を上げるとしたら、結婚して間もない頃、まだ若い妻を『事故』で失ったことだろう。

それ以来彼はずっと一人身のまま、住み込みの家政婦と執事、そして警備員とで
ロンドンの一等地で暮らしている。
たまに兄弟が遊びに来るらしい。

さて、かような人物が、なぜジェィムズ=モリアーティと同一視されないかというと、
これは単純な事で、

今のイギリスにはシャーロック=ホームズはいないからである。


////////////////////////////////////////////////////////

カランカラン・・・

年代もののベルがなり、店に入ったとたんにほこりのにおいが立ち込める。
においだけでなく、相当な量のほこりも立ったが、
骨董品店というのはどこもこんなものだろうか。

「……らっしゃい」
おくからやる気の無い店員の声が聞こえる。
白いひげを蓄えた老人はちらりとこちらに一瞥をくれると、再び視線を手元の時計に戻した。
どうやら修理しているらしい。
……そういうのは奥でやるものじゃないのか?

骨董品に興味の無い私がなんでこんな店に入ったのか、
年代ものですばらしいものがほしいのなら、オークションハウスにでも行けばいいものを。
自分の行動に理由がつけられない。もっとも、気まぐれに理由があるものでもないが。
あるとしたら……運命?

まさか。

我ながらくだらない事を考えたものだ。
苦笑し視線を棚にやる。
古いが所々かけている皿、動かなくなった振時計。弦が切れているギター。
現実的なものだが実生活で役立たなくなったものばかりが陳列されている。
そんな中、とてつもなく非現実的で、笑えないほど実生活で役立ちそうなものを見つけた。

『悪魔召還セット~あなたの願いかなえちゃいま~すv~』


本物だとしたら役立つ所ではないだろうが……
見た瞬間思わず固まった。
いや、それよりも無意味やたらに可愛い丸文字は奥の老人が書いたのか?

引き込まれるように手を伸ばし、それを手にとって見る。
福袋程度の大きさの紙袋はベージュ色のボール紙に何か
・・・おそらく悪魔の横顔のシルエットがプリントされている。
中身が見えないように厳重にガムテープで止めてあって、持ってみると意外と重い。

色々な興味がわいて中身が見えないなりに想像していると、
そんな様子が目に入ったのか、主人の声が届いた。
「おや、それに目をつけるとはお目が高い」
妙に言いなれたような口調だが、これは色んな意味で目を引くと思う。
「これは本物なのかい?」
私はずいぶんと胡散臭そうな目をしていたのだろう。
主人は苦笑いをしながら
「さぁ? でもここにあった悪魔の教典とそれに書いてあったものを集めたんですよ。
 言ってしまえば寄せ集めですね。
 どうです? 今ならおまけもつけますよ?」
「おまけ?」
「えぇ。
 ───悪魔の力を封じる首輪なんていかがです?」








出会い編 2



『もしも成功したら写真にでも撮ってくださいよ。
 高くは無理ですけど買い取ります。』

結局買ってしまった。
なんだか買ったとたんにずっしりと重くなったような気がする紙袋と、
それとは別に赤い首輪。
今不審尋問受けたらまず間違いなく大事になる。

家に帰って地下室へ。
本に地下室で儀式を始めろとは書いていないが(第一まだ読んでいない)
やはりこういうのは薄暗く湿った地下室でやるものだろう。

紙袋を開けてみる。
中には銀製なのだろう、黒いさびがついた剣、得体の知れない何かの尻尾の黒焼き
妙な文様が刻まれた素焼きの香炉。
赤茶けた表紙に酸化してパリパリになった本。(なんて書いてあるのか読めない)
そしてそれに挿んであった小冊子(上の本の訳らしい)
とどめが顔を近づけたとたん目に来る薬品(どどめ色)


「ここまで怪しいと逆に見事だな。」
ぽつりつぶやき小冊子に書いてあった通りにする。
嫌な感じの臭いと色の薬を筆につけ、手順に従って魔法陣を書いていく。
何やら文字のようなところもあるが、私にはまったく読めない。
フリーハンドだからまっすぐな線は引けなかったが、だいぶ雰囲気は出た。
この地下室中に立ち込める臭いさえなければなかなか神秘的だ。
ちなみに、なんだかずいぶん生臭い。
……色といい血じゃないだろうな。
だとしたら何の血だ?

魔方陣の真ん中に素焼きの香炉を置き、その上に尻尾の黒焼き。
付属のナイフで指を切り黒焼きの上に数滴垂らす。
その前に血がついたままの剣をおき、本を片手に呪文詠唱。

「光に見放されし黒き翼よ。
 わが行いを認めたまえ。
 我々の中で作用するものは風に翻弄される塵のごとく。
 その理を歪めし力を我に。
 そして代償は我が心。我が魂。
 汝こそが我に竜、サソリ、
 そして我の足元のありとあらゆる敵を叩き潰す力を与えてくれる。
 いかなるものも我と汝とその契約を傷つける事はできない。
 汝の門をあけよ。暗き門を開けよ。我が魂を手に入れるため。
 汝との契約により、我が願いは成就され、我が魂は汝のものとなる。」

───実際には私に読めない言葉で書いてあったので、
小冊子についていた呪文を暗記して
魔術書を片手に読んでる(フリをしている)のだが。


やがて黒焼きから煙が出てきた。
……………………
嫌な予感がする。
ひょっとしたら、悪魔に出てくる前に、
この部屋から退散しなくてはいけなくなるかもしれない。

************************************************

ここは魔界。日の光に見放された暗黒の世界。
といっても、魔族は基本的に夜目が効くとはいえ、
真っ暗だと本当に洒落にならないのでランプぐらいはあるんだが。
俺とグンマ、キンタローは暇つぶしにカードゲームをしていた。
「おい……誰だよ吸血鬼の4持ってるやつ。」
「そんな事言ったらおまえの手ばれるぞ」
「裏かいてるんだよ」
「最初のセリフに殺気含めておいてそのセリフ。
 説得力ないよ?」
「るっせぇ。」
はっきり言って俺ピンチ。
くっそぉ……4出れば一気に上がれるのに……。
負けたら皿洗い当番。
それ自体は大変じゃないが、皿洗いするたびに負けた感を味わうのは嫌だ。
俺は全神経をカードに集中さ……

『3人とも。聞こえているか。』

取って置きの道化師に手を伸ばした瞬間、その場に声が響いた。
「あ。青の秘石だ。」
のほほんとした口調でグンマが言う。
「何かあったのか?」
カードから目を離さずにキンタローが聞いた。
『……お前達。少しは生みの親敬え。』

青の秘石。
大人のこぶし大の大きさで、不思議な蒼い光沢を放つ。
心と力を持ち、不思議な力を以ってこの魔界を作り出した。
さっきから『不思議な』を連続で使っているが、ただの真ん丸い石が言葉を解し
俺達も創り出したのだから『不思議』以外の何者でもない。
第一この秘石の事は、俺達下級悪魔には秘密にされている事のほうが多い。
俺がこの石の事で知っているのは、俺達や魔界を作り出したということ、
それだけの力を持っているということ、
魔界の中心にそびえる『いかにも』な塔。そのどこかに安置されていると言う事だけ。

さていったい文字通りの秘石が何のようだ?
そう聞こうとしたら、向こうから答えてきた。
『人間から呼ばれている。キンタローかシンタローどっちか行って来い。』
「悪魔召還か。久しぶりだな。」
キンタローの言うとおり。
最近近代化だかなんだかで、人間から呼ばれるのは激減したんだが……。
「誰が呼んでるんだ?」
椅子から立ち上がり出発の準備を
「なんでお前が行く気でいるんだ。」
っち気づいたか。
「ほら、キンタローつい最近行ったばっかりだろ?
 グンマの相手してやれって。」
「……言って置くが、しばらくテーブルはこの状態にしておくからな。
 帰ったらすぐ続きだぞ。」
くぅ……という事は吸血鬼の4持っているのこいつか。
自分が勝てそうだとすぐこういうことを……。
「で、結局。誰が呼んでいるの?」
持っていたカードを伏せ、グンマが秘石のほうを(やっと)向く。
『……イギリスに住む男だ。』
「イギリス? 先進国だろ? 珍しいな。」
「先進国だからこそ。だと思うが。」
むぅ確かに。
テーブルの真ん中に立体映像が浮かび上がる。
言うまでもなくその召還者の顔だ。
年齢は……40後半といったところか。
金髪に青い目。頬が少しこけているが、貧弱な感じは見受けられない。
『名前はマジック。
 職業はガンマコンツェルンの長。
 というのは表の顔で……』
「お。来たな?」
ふつーに生活しているやつが悪魔なんか呼ぶ必要ないんだよな。
どんなオチがつくんだ?
『裏のボス。としか言いようが無いな。』
「なんだそりゃ」
えらく漠然としてるな。
『文字通りだ。
 強盗から殺しまで企業を隠れ蓑に結構色々やっているな。
 自分で手を下すことが一般的なギャングのボスより多く、
 もみ消し作業も警察上層部に息がかかってる所為か疑われた事すら無い。
 ここまで完璧な悪人というのも珍しいな。
 一般人はもちろん、ちょっと裏路地に入ったヤクの売人くらいでは
 コイツの本性は知らないだろう。』
「家族構成は? どんなもんだ?」
『両親を若いときに事故でなくしているな。
 そのとき今の企業と裏の顔を告いだらしい。
 弟が3人。上から順にルーザー・ハーレム・サービスだ。
 ハーレムとサービスは双子……2卵生双生児の双子だな。』
「奥さんは? いないの?」
『24のときに結婚したが、半年も経たないうちに交通事故でなくしている。』
「……かわいそう。」
「かわいそうっておまえなぁ……」
「……本当に事故だったのか?」
『いや。
 実際には当時対立していた組織の下っ端が無理やり突っ込んで行ったんだ。
 この男が本気になれば正攻法から行ってもその組織くらいつぶせたんだろうが……
 何故かそうしなかったみたいだな。』
「その対立組織は?」
『事故の後1ヵ月後につぶされている。』
誰にやられた? とまでは聞かない。
ここまで聞けば予想はできる。何より、そろそろ時間だろう。
「ずいぶんと危なそうな相手だな。」
「ま、所詮は人間だろ? じゃ、ちょっと行ってくるわ。」
「シンちゃん大丈夫?」
「だいじょーぶだいじょーぶ。
 すぐ戻ってくるって。」
知識人というのが少し不安だが、今まで大丈夫だったんだ。
問題ないだろ。ヤクザやマフィアなら何度か対処した事あるし。
「気をつけろ。なんだか嫌な予感がする」
おいおいキンタローまで言うかよ。
「問題ないって。
 すぐ戻ってくるから。」
「そうだな。ゲームの続きも気になるしな。」
「いや、それは本気で忘れててくれてもいいんだがな。
 どれ、
 ───開け忌まわしき光あふれる世界への扉
 暗き闇の加護の下、血で彩られた契約の下
 我は扉をくぐり契約者に会う。
 契約者の願いとその魂、我がひと時の自由とその力
 それらを代償に、我は扉をくぐる」

闇の塊が現れる。
この向こうは人間界。
さてさて、どんな願いが待っているのか。
グンマの心配そうな『行ってらっしゃい』を後ろに、俺はその闇に飛び込んでいった。

続く
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