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 昔むかし、あるところに、それはそれは可愛いらしい美少年がおりました。

「……俺はまだ美少年の部類なのか?」
「キンタロー様は永遠の美少年ですッ! この高松が保障いたします」
 と、まあそう主張する人もいますし、物語上美青年でも全然構わないのですが、とりあえずということで話は進めて行きましょう。

 そんなわけで、その美少年はとても利発で愛らしく、育ての親の高松が舐めんばかりに可愛がり、そうしてその子のために、赤い頭巾―――もとい、赤い前掛けを作ってあげました。その前掛けには、大きく『金』の文字が入っており、そのために、その子はどこへ行っても、キンタローと呼ばれておりました。

「まてっ、その展開は強引だろう。だいたい、俺の名前は元々(?)キンタローだ」
「いいんです。キンタロー様。ささ、私の作ったこの前掛けを身につけてください。もちろん上半身は裸でお願いいたします」
「………高松、鼻血が吹き出てるぞ」

 というわけで、毎日赤く彩られた生活をしているキンタローでしたが、ある日、育ての親の高松に用事を頼まれました。
「キンタロー様。大変申し訳ないですが、マジック様がお風邪を召したという連絡が入ったので、この高松特製栄養ドリンクを持って、マジック様のところへお見舞いに行ってきてくれませんでしょうか」
「マジック伯父貴が風邪をひいたのか。それは大変だな」
「ええ。きっと年寄りの冷や水のようなことでもしたんでしょう。まったく迷惑なことですよ。ま、そんなわけでして、頼まれて仕方なく栄養ドリンク作ってさしあげたのはいいんですが、私は、明日の学会のためにちょっと手が離せないんです。ですから、キンタロー様に届けてもらいたいのですが、宜しいですか?」
「ああ、かまわないぞ」
 心優しいキンタローは、高松の申し出を快く引き受けました。
「ありがとうございます。本当にキンタロー様はお優しい。きっと育ての親がよかったのですね」
「ああ。世の中には、反面教師という言葉もあるからな」
「えっ? …キンタロー様。それって冗談ですよね?」
 それはいいとして、さっそくそのドリンクを運んでもらうために、入れ物として籠を用意した高松は、それをキンタローへとそれを渡しました。けれど、すぐに出かけようとするキンタローを呼び止めると、いいですかこれから言うことをよく聞いてください、といいました。
「キンタロー様。森を通る時にはお気をつけくださいね。近頃、真っ黒なオオカミが出て、人を食っていくという噂があるのです。万が一にもキンタロー様の身に何かあったら、この高松。か弱い心の臓が止まってしまいますッ! くれぐれも森を通る時には、オオカミに出会わないように気をつけてください」
「わかった」
 高松の心臓が弱いなどとは初めて知ったキンタローでしたが、それならば、育ての親の心臓を止めないように気をつけなければ、と心に決めて、特製栄養ドリンクを入れた籠を手に、出かけて行きました。
 それを見送りながら、高松の手は心臓へと押さえつけられていました。
「ふぅ。キンタロー様。無事帰ってこれるでしょうか。私のか弱い心臓が、先ほどからドキドキしてますよ―――って当たり前ですけどね。止まってたらシャレにもなりませんよ、あははははっ」
 どこら辺が本当にか弱いのか、胸を掻っ捌いて見てみたい気もいたしますが、見なくても毛が生えていることは間違いなしの心臓を持っている高松は、明日に迫った学会用の資料をまとめるために部屋へと篭って行ったのでした。


 
 
「真っ黒いオオカミか……どんな奴だろうな」
 しっかりとお使い用の籠を持ち、キンタローは森の中を歩きながら、そう呟きました。
 今まで危険な場所は、育ての親から行くことを禁止されており、またその言いつけもよく守っていたキンタローは、オオカミなどという危ない動物には出会ったことはありませんでした。
 けれど、やはり興味はあります。
「図鑑で見たオオカミはとても綺麗だったが、実際にそうなのだろうか」
 高松の持っていた生物図鑑で見たオオカミは、威風堂々とした顔つきで佇んでいる姿を捉えておりました。幼い頃は、その気高さにうっとりと見惚れたこともあるキンタローは、ぜひに一度、その目で見て見たいとは思いましたが、高松のか弱い心臓を守るためにも、薄暗い獣道は通らずに、森の中にまっすぐと作られた大通りを進んで行きました。
 しばらくすると、キンタローの横にあった大きな木が、風もないのに、ざわりと揺れました。
 それに不思議に思って右へと振り返ってみると、いつの間にか、左側の首元に鋭い刃物を突きつけられておりました。
「バーカ。あれは罠だよ。あり金全部だしな」
 首を元に戻し、視線を左一杯に向けると、そこには黒髪の青年がいました。
 キンタローは、その状態のまま、ぽんと両手をたたきました。
「なるほど。油断したな」
 紐か何かで、木を揺らし、そちらへ相手の気がそれたのを見計らって素早くこちらに近づき、急所に刃物をつきつけたのです。それは瞬きほどのできごとで、とても手馴れた様子でした。
「なんだよ、てめぇ。全然怖がらないんだな」
「いや。しっかりと驚いているぞ」
「そうは見えねぇよ」
 正直に答えてあげたキンタローですが、相手は残念ながら信じてくれませんでした。
「お前は、キンタローだろ?」
「俺の名前を知っているのか?」
「その赤い前掛けを見れば分かるさ。変態ドクターと一緒に住んでる金髪の奴といえば、お前だけだろ?」
「そうだな」
 育ての親が変態呼ばわりされましたが、キンタローは否定もせずに、あっさりと流してしまいました。聞かれていたら、涙と鼻血を流して哀しまれたでしょうが、もちろんここには彼はいないのでかまいません。
 それに、変態を変態と呼ぶのは当然だと、キンタローはちゃんと分かっていました。
「で、お前の名は?」
 自分だけ名前を知られているのも具合が悪く、綺麗な黒髪をした男に尋ねると、男はあっさりと答えてくれました。
「シンタロー」
「そうか。それなら、シンタロー。ひとつ尋ねるが、俺は、黒いオオカミが出ると聞いてはいたんだが、お前のような奴が出てくるとは思わなかったぞ」
「ん? ああ。それは、俺のことだろ。俺はこの辺を縄張りに盗賊をやっていて、巷では『黒い狼』で名が知れている」
 そう言うと、シンタローは、束ねていた黒いオオカミの尻尾のように長い髪を跳ね上げて、ニカッと笑ってみせました。
 キンタローは、それを見たとたん、自分の中にあったオオカミへの憧れと重なる気持ちを抱きました。
 本物の狼ではないのは、少し残念ですが、けれど、この人間もオオカミのように綺麗な存在に見えたのです。
「なるほど、そう言うわけか。ところでお前は俺を食べるのか?」
 高松の言葉の中には、人を食うとという言葉もありました。でも、キンタローが勘違いしたように、高松も正しい情報を知っていたとは限りません。というのも、高松は真っ黒いオオカミが実は人間で、盗賊だとは、一言も言ってなかったからです。
 だから、キンタローは真実を確かめるために、尋ねてみました。
「本当に冷静だな、お前は。―――俺は、人なんかくわねぇよ。そりゃ、比喩だよ、比喩! 有り金全部巻き上げて、裸同然で外に放りだしてやってるから、相手によっては食われかけた、とでも行ってるんだろ。盗賊にやられた、というよりは、まだ格好がつくだろうし」
「そうか」
 キンタローは、自分の持っていた籠をちらりと見ました。その中には、マジック伯父貴のための特製栄養ドリンクが入っているだけです。有り金を渡せと、目の前の男は言っていますが、キンタローが持っているのは、これひとつと。後は自分の服のみでした。果たしてどこまで取られるかが、問題です。できれば、そのまま見逃して欲しいのですが、キンタローは、未だに刃物を首に押し付けられたまま言いました。
「俺は、生憎金はひとつも持っていないんだが」
「本当か?」
「調べてもいいが、俺の持ち物は、この籠と中に入っているドリンクだけだ」
「ふ~ん」
 刃物をキンタローに押し付けているために、シンタローには、それを確かめることはできません。けれど、キンタローを見ていると、それだけのように思えました。しかし、だからと言ってこのまま引き下がっては盗賊としての名が廃ります。
「まあ、いいや。ちょうど喉が渇いてたし、そのドリンクをもらうぜ」
 そう言うと、器用に片手で蓋を開けるとシンタローは、そのドリンクを全て飲み干してしまいました。
「んん? すっぱウマッ。―――って、なんだよこれの原料は」
「さあ?」
 今まで味わったことの無いそのドリンクに、シンタローは不思議に思いつつ中味を尋ねましたが、キンタローは、首を横へと傾げてみせました。
「高松からは、特製栄養ドリンクとしか聞いてないから、何が入っているのか、俺は知らない」
 作る過程をみていれば、少しはわかったかもしれないが、それも見ておらず、一見綺麗なオレンジ色をしたそれに、何が含まれているかは、キンタローが知るよしもありませんでした。
「ゲッ!………これ、変態ドクター作かよ―――栄養ドリンクなら問題ねぇと思うけど」
 その言葉に、一抹の不安を感じてしまったシンタローでしたが、とりあえず、今のところ生きているし大丈夫だろうと思うことにしました。
 しかし、効果は後からじわじわとわいてきたのでした。
「どうしたんだ?」
 キンタローが思わずそう声をかけたのは、首筋に当てていた刃物が突然震えだしたからです。
 しだいにぶるぶると大きく振るえだし、とうとう刃物がポトリと地面に落ちてしまいました。同時に、シンタローもまた膝を折るようにしてその場に座り込みました。
「まさか、あの飲み物のせいか!?」
 慌ててその肩を掴むと、うざったげに払いのけられました。
 それに、思わず呆然としてしまえば、
「触るな……すっげぇ暑いんだよ」
「えっ?」
「暑い暑い暑いッ!」
 そう喚くと、行き成りシンタローは着ていた上着を脱ぎだしました。
「……シ、シンタロー?」
 突然のその行動に、らしくなくうろたえるキンタローでしたが、相手は構わずに、脱いだその服で、バタバタと自分の身体を煽りだしました。
「なんだよ、これ。めちゃくちゃ身体が暑い。…くっそぉ、栄養ドリンクじゃねぇだろ、これ」
「そういわれても…」
 文句を言われても、キンタローには、その中に何が入っているのかわかりません。唐突過ぎる相手の文句に、オロオロするしかする術がありません。
 けれど、どうにかしてあげたい、という気持ちはありました。
「シンタロー。どこか水場でも探して…」
 身体が暑いなら、やはり冷やすのが効果的でしょう。そう思ったのですが、その場に膝とついたままのシンタローは、動いてくれません。
 抱き上げて連れて行ってあげたいのですが、先ほどのように振り払われると哀しいので、どうするべきかと考えあぐねていますと、
「……ッ。あ~もぉ、なんだよ、これ。キンタローぉ」
 シンタローが、焼け付くような暑さに耐え切れぬようにして、キンタローの腕にしがみついてきました。頬は桜色に蒸気しており、瞳はすでに赤く血走り潤んでいました。その瞳がまっすぐとキンタローに向けられ離れません。
「どぉにかしてくれ…」
 暑いといいながらも、すがりついてくるシンタローに、キンタローは、ふとあることが脳裏を掠めました。
「もしかして、この薬…」
 少し前に、高松が薬を作っていたのを思い出しました。その薬も確か、綺麗なオレンジ色をしていたのをキンタローは覚えてます。そして、その薬の名前も当然覚えてました。
「催淫剤…か?」
 キンタローは、シンタローを見ました。すでに上半身は裸です。汗ばんだ素肌が、触れた手に吸い付きます。試しに、とキンタローは、すでに赤く色づきツンと突き出た胸の飾りを指先で擦るように触れてみました。
「んぁ! ああ…やっ」
 とたんに苦しげに身悶えしましたシンタローですが、同時にあげた甘い嬌声に、キンタローは確信を持ちました。
「高松は、どうやらあげるドリンクを間違えたみたいだな」
「もぉ、なんでもいいから…キンタロー…助けろ」
 薄く開かれたままの唇からちらりと赤い舌をみせ、熱い吐息とともに漏らされた言葉に、キンタローは、ごくりと喉を鳴らしました。
 あちらからのご指名です。
 すでに涙で潤むそれは、こちらに絡みつくような視線へと変わっています。こうなった以上、キンタローもそのまま見捨てるわけには行きません。
「わかった」  
 キンタローは、しっかりと頷くと、熱くなったシンタローの身体を抱き上げました。
「俺が責任をもってお前を助けてやる」
 とても責任感が強いキンタローは、そう告げると、人気の無い茂みの裏へと、シンタローとともに向かいました。

 しばらくすると、茂みの中から、
「んっ…あっああ、キンタロー…んあぁ…あつぅ…はぁ…あん」
「ああ…お前のなかは本当に熱いな」
 熱い吐息とともに、そんな声が森に響き渡りました。
 こうして優しいキンタローは、暑さに苦しむオオカミを助けてあげたのでした。



 めでたしめでたし?
 





「おやっ?」
 パカッ。
 開かれた冷蔵庫の中をしげしげと眺めた高松は、あるはずのないものを見つけました。
「キンタロー様に渡したはずの栄養ドリンクがここに……なぜ?」
 けれど、その原因はすぐに分かりました。
「うっかりしてましたね。キンタロー様に渡したのは、特製催淫剤のようで。ま、いいでしょう。飲むのはマジック様ですし。ティラミスやチョコレートロマンスが相手なら――――はっ! もしかしてキンタロー様の前で飲んで、キンタロー様が食われちゃったらどうしましょ!!! キンタロー様ぁ~~~~~~ご無事でいてくださぁ~い!」
 その心配されている本人が、現在お食事中であることは知るよしもなく、高松は、空へ向かって高々と叫んだのでした




 ―おまけ―

「ルン♪ルンルン♪ は~やくオオカミさん来ないかなぁ。パパ、もう我慢できないよ。来たら即行で食べちゃうよv」
 襲いに来たオオカミを反対に食べるという、裏王道的な展開を期待していたマジックだが、もちろんそれを期待するだけ無駄だと言うことも知らず、いつまでも、いつまでも訪れぬ来訪者を待っていたのでした。

 
 


 





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