ゆさゆさ
「シンちゃん朝だよ。起きて」
寝ている自分を揺する手に、シンタローは睡魔から無理やり放された。
「ん~~~」
それでも、まだ半分ほど自分の意思で睡魔の虜となっている。
「シンちゃん! 掃除まだ残ってるんだろう?」
声と手の主は少しだけ手を大きく動かすが、
シンタローは掃除で疲労していたのと、隣の部屋が静かだったコトと、
なにより心配事に目処がついたため、昨晩久しぶりに熟睡できたのだ。
そしてその熟睡モードは今も続いている。
「まったく。他の二人はもうおきてるよ!」
少しだけ声を荒げるが、それでも起きる様子はない。
業を煮やした彼は方法を変えようと布団の上から手を放し、
代わりにシンタローの頬を包んで自分の唇でシンタローのソレを覆った。
───んちゅぅううううっ
シンタローの肺に収まっている酸素をすべて奪うような逆人工呼吸。
「っぶはぁっ!!」
流石にこれは効いたのか、シンタローは自分に覆いかぶさっている男を無理やり払いのけ、
ベッドに横になったまま大きく息を吸い込んだ。
「起きた?」
「...見りゃ...分るだろ...」
荒い息のまま、声の主をぎろりとにらみつけ、
そこでシンタローの動きが止まった。
「....................マ...ジ.....ック?」
「父さん。だろう?」
硬直するシンタローに、声の主...マジックは
シンタローがよく覚えている笑顔で、耳にタコが出来るほど聞かされた台詞を言った。
それが、他の第3者が生み出した幻でも、誰かが扮している偽者でもない証だった。
となると次の質問は決まっている。
「なんでこんな所に?」
体を起こしながら問うシンタローに、マジックはいたずらっぽい笑みを浮かべ、
「今日はクリスマスだろう?
だからプレゼントだよ」
ほら。とマジックが差し出した彼の左手首には、一体いつの間につないだのか、
シンタローの左手首とを結ぶ赤いリボンがついていた。
しかし、マジックの答えはシンタローが求めている答えと、外れてはいないが的を得ているともいえない。
クリスマスプレゼントだとしたら、一体誰からの?
『クリスマスプレゼント』を無視するとしたら、一体どうやってここに来たのか、どうしてここにいるのか。
───おや...滑ったかな?
左手を見て俯いたまま硬直しているシンタローを見て、マジックはそう判断した。
「シンタロー? 大丈夫かい?」
こりゃいきなり暴れだすだろうか。ベッドの上で暴れたら埃が大変だ。
窓を開けようにもあけたら寒いぞと、変な方向の心配をする。
「~~~ッツ!」
無言のままシンタローが拳を振り上げる。
───あー...やっぱり怒ったか...無理もないけど。
まぁシンタローの気持ちはよく分るし。混乱しているのもあるだろうし。
ここは一つ大人しく拳の一振りくらい甘んじて受けるか。
大人の余裕を見せ、マジックは瞳を閉じた。
どすどすどすどすばきがすめきょっ
マジックの体が宙を舞う。
妙に耳に響く音を立てて。
「し...シンちゃんってば相変わらず容赦ないんだから...」
「うるせぇ!」
床に不時着し、ずりずりと這いながら再びベッドに。
「大体なんであんたがいるんだよ! プレゼントっつったってサンタなんかいるわけ...
いたとしても! 悪魔(しかも大人)のところに来るか!
訳のわかんねーコト言ってねーで、少しは、人の質問の、意味を、しっかり酌んで...」
シンタローの台詞は、途中で遮られた。
自らの頬を流れる涙に。
「~~~ッツ」
「シンタロー...」
マジックはそっとシンタローに手を伸ばし、パシッと払われた。
「触るな!
どうやってここに来たのかしらねーけど、
悪魔と人間が一緒になれるわけねーだろ!
ずっとそう思ってて、せっかく、人がやっと落ち着いてきたってのに...。
どうしてそっとしておいてくれないんだよ!」
───ずっと?
「あんたなんか嫌いだ! さっさと人間界に帰っちまえ!」
「シンタロー。私の話を聞い...」
「嫌だ! 」
シンタローに触れようとする手をことごとく払いのけ、
泣いたまま癇癪を起こしたように暴れ、マジックの手から逃れようとする。
「───シンタローッツ!」
「ッツ!!?」
突然大きな声で名前を呼ばれ、ビクっとシンタローの体が震えた。
マジックの手が動くのを見て、殴られると反射的に体を硬くする。
だが、その腕はシンタローに触れると、自分のほうに引き寄せ、力強くシンタローを抱きしめた。
「シンちゃんさっき悪魔と人間じゃ、って言ったね
これを見ても同じコトがいえるかな?」
バサッ
シンタローの瞳に映ったのは、マジックの耳より上から生えた乳白色の角
そして背から生えた黒い羽。
伝承に出てくる邪龍のような漆黒の黒
頂点には白く光るまがまがしい角。
シンタローの羽よりもはるかに大きくたくましいソレは、紛れもなく悪魔の翼だった。
呆然とするシンタローに、マジックはあくまでやさしく告げる。
「とりあえず落ち着いて私の話を聞いてくれないか?
暴れるのはその後で良いし、また殴ってもいいから。
ね?」
少しだけ体を離し、まっすぐ正面からシンタローの目を見つめる。
シンタローが言葉もなく頷くのを見ると、満足したように微笑み
「とりあえず、ティッシュだね。
ほら。せっかくの可愛い顔が台無しだよ。」
シンタローは無言でマジックが渡したティッシュ箱をマジックに向かって投げつけた。
「───さて、どこから話そうか。」
昼に近い時間。
シンタローの自室ベッドの上。
マジックはシンタローを正面から抱きしめ、
お互いの顔が見えないようにシンタローの顔を肩に埋めて話し始めた。
昨晩のコトだよ。
私はシンタローがいない寂しさから毎晩毎晩涙で枕を濡らして床についていたんだ。
けれど、昨日はクリスマスイブだったからね、兄弟そろって食事に行ったんだよ。
それでほろ酔い加減で部屋に戻ると、突然黒い煙が立ってね、
一体なんだと固まっていたら、その煙の中から、2人の悪魔が出てきたんだ。
私は、一目見て君の関係者だと気づいたよ。
2人のうち一人は髪の色も目の色も違うのに、なんとなく君に似ていると思ったんだ。
...もう一人は分らなかったけれど。
で、驚いている私に彼らはこういったんだよ。
『お前がマジックだな。
俺はキンタロー。見ての通りの悪魔だ』
『僕はグンマ。悪魔なのはキンちゃんと同じ。』
『...悪魔?』
『あぁ。つい最近までお前が飼っていたのと同じだ。』
『キンちゃん! 飼っていたんじゃなくて、同居してたんだよ!』
『いや、私は同棲のつもりなんだけど』
バキ!
「シンちゃんまだ話の途中だよ!」
「うるせぇ! ドサクサ紛れに何言ってやがる!」
そ、それでだね、
『その同棲してたやつの話なんだが』
これを聞いて、私は悪魔がお礼参りに来たと思ったんだよ。
たとえ私が君をどんなに愛していて、ソレが故の行動だったとしても、
君の力を封印していたわけだし、立派に悪魔から怨まれるような事だったと思ってね。
覚悟を決める私に、もう一人の、グンマって悪魔はね明るい声でこういったんだよ、
『シンちゃんの代わりに僕たちが願い事3つ、叶えてあげる』
「...は? 俺の代わり?」
「うん。私も最初耳を疑ったんだけどね。」
『詳しい説明を求めて良いかな?』
『ソレが1つ目の願いか?』
『いや...違うけど。』
『なら早くしてくれ』
私の願いは決まっていたんだよ。この時点でね。
この2人がシンちゃんの関係者ってのはもう確定だったし、
だったら願いごとなんて決まっているじゃないか。
『じゃぁ一つ目。まず私はシンタローと一緒に暮らしたい。
2つ目。私を悪魔に...上級悪魔にしてほしい』
『一つ目に付いて説明するよ。
こぶが2つほどついているけどいい?』
グンちゃんはやけに明るい声で言ったね。自分たちを指差しながら。
『今までと変わらないさ』
それにこの2人とならうまくやっていけそうな気がしたしね。
『2つ目についての説明だ。
俺たちはシンタローと同じ下級悪魔だ。
流石に下級悪魔が上級悪魔を作り出すのは出来ない。
だから、シンタローから聞いてるか知らないが、俺たちのはるか上司に当たる石に助けてもらう』
『でもさ、キンちゃん。秘石良いって言ってくれるかな』
『この尻拭いを言い出したヤツは誰だ?』
『あ、そうか』
二人の会話は、この時点ではよく分らなかったんだけれど、
とにかく魔界に行ってみようって話になったんだ。
『じゃ、魔界につれてくけど、とりあえず先に秘石のところに行こう!』
『え? 私としては少しでも早くシンタローに会いたいのだけれど...』
『だめだめ! こっちは少しでもシンちゃんを大きく驚かせたいの!』
...なるほど。
で、二人が作り出した扉──私には煙にしか見えなかったんだけれど──を通って、
魔界に行ったんだ。
『ここが魔界?』
ついたところはこのうちの前だったよ。
『そう。それでここが僕たちのうち。
前におじさんが住んでいたところからすれば、狭いと思うけど
僕たちしかいないからね。十分なんだよ』
なるほど。3人で暮らしているのか。
ということはシンタローがこっちにいる間二人っきりだったわけだ。
...悪いコトしたなぁ。
「あんまし悪くもないみたいだったぞ」
「え? なんで?」
「あの二人俺がいない間、色々仲良くなっていたからな。」
「あ、そうなんだ。」
それはともかく、
『で、秘石って言うのは...』
『うん。シンちゃんから何か聞いてる?』
『魔界の創始者というのと、下級悪魔は秘石に頼んで進化させてもらうってコトくらいだね』
『それだけ聞いていれば十分だ。』
『───?』
聞きなれない第三者の声に振り向くと、金髪長髪の人が立っててね、
『グンちゃん。この人は?』
『...アス。最上級悪魔だよ。』
『秘石に次ぐ、魔界のナンバー2だ』
『あぁ。そういえばシンちゃんそんなコトも言っていたなぁ。』
『人間界の、マジックだな。』
『いかにも。』
『話は聞いていた。最上級悪魔、それとここの3人と一緒に暮らす。で良いんだな』
『あぁ。』
そんな話をしていると、アスが青い宝石を私にかざしたんだ。
丸くて、真っ青で、見ていると引き込まれそうな...
少しの間浮遊感があって、気がついたらこんな体だったんだよ。
「シンちゃん朝だよ。起きて」
寝ている自分を揺する手に、シンタローは睡魔から無理やり放された。
「ん~~~」
それでも、まだ半分ほど自分の意思で睡魔の虜となっている。
「シンちゃん! 掃除まだ残ってるんだろう?」
声と手の主は少しだけ手を大きく動かすが、
シンタローは掃除で疲労していたのと、隣の部屋が静かだったコトと、
なにより心配事に目処がついたため、昨晩久しぶりに熟睡できたのだ。
そしてその熟睡モードは今も続いている。
「まったく。他の二人はもうおきてるよ!」
少しだけ声を荒げるが、それでも起きる様子はない。
業を煮やした彼は方法を変えようと布団の上から手を放し、
代わりにシンタローの頬を包んで自分の唇でシンタローのソレを覆った。
───んちゅぅううううっ
シンタローの肺に収まっている酸素をすべて奪うような逆人工呼吸。
「っぶはぁっ!!」
流石にこれは効いたのか、シンタローは自分に覆いかぶさっている男を無理やり払いのけ、
ベッドに横になったまま大きく息を吸い込んだ。
「起きた?」
「...見りゃ...分るだろ...」
荒い息のまま、声の主をぎろりとにらみつけ、
そこでシンタローの動きが止まった。
「....................マ...ジ.....ック?」
「父さん。だろう?」
硬直するシンタローに、声の主...マジックは
シンタローがよく覚えている笑顔で、耳にタコが出来るほど聞かされた台詞を言った。
それが、他の第3者が生み出した幻でも、誰かが扮している偽者でもない証だった。
となると次の質問は決まっている。
「なんでこんな所に?」
体を起こしながら問うシンタローに、マジックはいたずらっぽい笑みを浮かべ、
「今日はクリスマスだろう?
だからプレゼントだよ」
ほら。とマジックが差し出した彼の左手首には、一体いつの間につないだのか、
シンタローの左手首とを結ぶ赤いリボンがついていた。
しかし、マジックの答えはシンタローが求めている答えと、外れてはいないが的を得ているともいえない。
クリスマスプレゼントだとしたら、一体誰からの?
『クリスマスプレゼント』を無視するとしたら、一体どうやってここに来たのか、どうしてここにいるのか。
───おや...滑ったかな?
左手を見て俯いたまま硬直しているシンタローを見て、マジックはそう判断した。
「シンタロー? 大丈夫かい?」
こりゃいきなり暴れだすだろうか。ベッドの上で暴れたら埃が大変だ。
窓を開けようにもあけたら寒いぞと、変な方向の心配をする。
「~~~ッツ!」
無言のままシンタローが拳を振り上げる。
───あー...やっぱり怒ったか...無理もないけど。
まぁシンタローの気持ちはよく分るし。混乱しているのもあるだろうし。
ここは一つ大人しく拳の一振りくらい甘んじて受けるか。
大人の余裕を見せ、マジックは瞳を閉じた。
どすどすどすどすばきがすめきょっ
マジックの体が宙を舞う。
妙に耳に響く音を立てて。
「し...シンちゃんってば相変わらず容赦ないんだから...」
「うるせぇ!」
床に不時着し、ずりずりと這いながら再びベッドに。
「大体なんであんたがいるんだよ! プレゼントっつったってサンタなんかいるわけ...
いたとしても! 悪魔(しかも大人)のところに来るか!
訳のわかんねーコト言ってねーで、少しは、人の質問の、意味を、しっかり酌んで...」
シンタローの台詞は、途中で遮られた。
自らの頬を流れる涙に。
「~~~ッツ」
「シンタロー...」
マジックはそっとシンタローに手を伸ばし、パシッと払われた。
「触るな!
どうやってここに来たのかしらねーけど、
悪魔と人間が一緒になれるわけねーだろ!
ずっとそう思ってて、せっかく、人がやっと落ち着いてきたってのに...。
どうしてそっとしておいてくれないんだよ!」
───ずっと?
「あんたなんか嫌いだ! さっさと人間界に帰っちまえ!」
「シンタロー。私の話を聞い...」
「嫌だ! 」
シンタローに触れようとする手をことごとく払いのけ、
泣いたまま癇癪を起こしたように暴れ、マジックの手から逃れようとする。
「───シンタローッツ!」
「ッツ!!?」
突然大きな声で名前を呼ばれ、ビクっとシンタローの体が震えた。
マジックの手が動くのを見て、殴られると反射的に体を硬くする。
だが、その腕はシンタローに触れると、自分のほうに引き寄せ、力強くシンタローを抱きしめた。
「シンちゃんさっき悪魔と人間じゃ、って言ったね
これを見ても同じコトがいえるかな?」
バサッ
シンタローの瞳に映ったのは、マジックの耳より上から生えた乳白色の角
そして背から生えた黒い羽。
伝承に出てくる邪龍のような漆黒の黒
頂点には白く光るまがまがしい角。
シンタローの羽よりもはるかに大きくたくましいソレは、紛れもなく悪魔の翼だった。
呆然とするシンタローに、マジックはあくまでやさしく告げる。
「とりあえず落ち着いて私の話を聞いてくれないか?
暴れるのはその後で良いし、また殴ってもいいから。
ね?」
少しだけ体を離し、まっすぐ正面からシンタローの目を見つめる。
シンタローが言葉もなく頷くのを見ると、満足したように微笑み
「とりあえず、ティッシュだね。
ほら。せっかくの可愛い顔が台無しだよ。」
シンタローは無言でマジックが渡したティッシュ箱をマジックに向かって投げつけた。
「───さて、どこから話そうか。」
昼に近い時間。
シンタローの自室ベッドの上。
マジックはシンタローを正面から抱きしめ、
お互いの顔が見えないようにシンタローの顔を肩に埋めて話し始めた。
昨晩のコトだよ。
私はシンタローがいない寂しさから毎晩毎晩涙で枕を濡らして床についていたんだ。
けれど、昨日はクリスマスイブだったからね、兄弟そろって食事に行ったんだよ。
それでほろ酔い加減で部屋に戻ると、突然黒い煙が立ってね、
一体なんだと固まっていたら、その煙の中から、2人の悪魔が出てきたんだ。
私は、一目見て君の関係者だと気づいたよ。
2人のうち一人は髪の色も目の色も違うのに、なんとなく君に似ていると思ったんだ。
...もう一人は分らなかったけれど。
で、驚いている私に彼らはこういったんだよ。
『お前がマジックだな。
俺はキンタロー。見ての通りの悪魔だ』
『僕はグンマ。悪魔なのはキンちゃんと同じ。』
『...悪魔?』
『あぁ。つい最近までお前が飼っていたのと同じだ。』
『キンちゃん! 飼っていたんじゃなくて、同居してたんだよ!』
『いや、私は同棲のつもりなんだけど』
バキ!
「シンちゃんまだ話の途中だよ!」
「うるせぇ! ドサクサ紛れに何言ってやがる!」
そ、それでだね、
『その同棲してたやつの話なんだが』
これを聞いて、私は悪魔がお礼参りに来たと思ったんだよ。
たとえ私が君をどんなに愛していて、ソレが故の行動だったとしても、
君の力を封印していたわけだし、立派に悪魔から怨まれるような事だったと思ってね。
覚悟を決める私に、もう一人の、グンマって悪魔はね明るい声でこういったんだよ、
『シンちゃんの代わりに僕たちが願い事3つ、叶えてあげる』
「...は? 俺の代わり?」
「うん。私も最初耳を疑ったんだけどね。」
『詳しい説明を求めて良いかな?』
『ソレが1つ目の願いか?』
『いや...違うけど。』
『なら早くしてくれ』
私の願いは決まっていたんだよ。この時点でね。
この2人がシンちゃんの関係者ってのはもう確定だったし、
だったら願いごとなんて決まっているじゃないか。
『じゃぁ一つ目。まず私はシンタローと一緒に暮らしたい。
2つ目。私を悪魔に...上級悪魔にしてほしい』
『一つ目に付いて説明するよ。
こぶが2つほどついているけどいい?』
グンちゃんはやけに明るい声で言ったね。自分たちを指差しながら。
『今までと変わらないさ』
それにこの2人とならうまくやっていけそうな気がしたしね。
『2つ目についての説明だ。
俺たちはシンタローと同じ下級悪魔だ。
流石に下級悪魔が上級悪魔を作り出すのは出来ない。
だから、シンタローから聞いてるか知らないが、俺たちのはるか上司に当たる石に助けてもらう』
『でもさ、キンちゃん。秘石良いって言ってくれるかな』
『この尻拭いを言い出したヤツは誰だ?』
『あ、そうか』
二人の会話は、この時点ではよく分らなかったんだけれど、
とにかく魔界に行ってみようって話になったんだ。
『じゃ、魔界につれてくけど、とりあえず先に秘石のところに行こう!』
『え? 私としては少しでも早くシンタローに会いたいのだけれど...』
『だめだめ! こっちは少しでもシンちゃんを大きく驚かせたいの!』
...なるほど。
で、二人が作り出した扉──私には煙にしか見えなかったんだけれど──を通って、
魔界に行ったんだ。
『ここが魔界?』
ついたところはこのうちの前だったよ。
『そう。それでここが僕たちのうち。
前におじさんが住んでいたところからすれば、狭いと思うけど
僕たちしかいないからね。十分なんだよ』
なるほど。3人で暮らしているのか。
ということはシンタローがこっちにいる間二人っきりだったわけだ。
...悪いコトしたなぁ。
「あんまし悪くもないみたいだったぞ」
「え? なんで?」
「あの二人俺がいない間、色々仲良くなっていたからな。」
「あ、そうなんだ。」
それはともかく、
『で、秘石って言うのは...』
『うん。シンちゃんから何か聞いてる?』
『魔界の創始者というのと、下級悪魔は秘石に頼んで進化させてもらうってコトくらいだね』
『それだけ聞いていれば十分だ。』
『───?』
聞きなれない第三者の声に振り向くと、金髪長髪の人が立っててね、
『グンちゃん。この人は?』
『...アス。最上級悪魔だよ。』
『秘石に次ぐ、魔界のナンバー2だ』
『あぁ。そういえばシンちゃんそんなコトも言っていたなぁ。』
『人間界の、マジックだな。』
『いかにも。』
『話は聞いていた。最上級悪魔、それとここの3人と一緒に暮らす。で良いんだな』
『あぁ。』
そんな話をしていると、アスが青い宝石を私にかざしたんだ。
丸くて、真っ青で、見ていると引き込まれそうな...
少しの間浮遊感があって、気がついたらこんな体だったんだよ。
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