細い指がそっとこめかみに近い頬を撫でた。
「元気そうだな、シンタロー」
大きく頷いた俺に、おじさんは小さく頷き返して、コートを翻す。
「ジャン」
ジャン。
呟くような声。
俺と同じ顔をした男はすれ違いざま、俺に視線を寄越して――もしかしたら微笑んだかもしれない――すぐにおじさん同様、背を向け歩き出した。
総帥室に戻ると、我もの顔でデスクに足を乗せている男に出迎えられた。
ため息をつきながらも大股に近付いて、その足を振り払う。
「どっから入ったんだよ、おっさん」
キンタローはどこだ、と問うたところで答える気などないハーレムは、無造作に腕を伸ばした。
おじさんより太く、硬い指が口唇を摘む。
強い酒の匂いと、ごつごつした手とは不釣り合いに繊細な爪の形に、込み上げる不快感。
「慰めてやろうか」
「・・あんた、やっぱりおじさんとは似てないな」
「当然だろ」
(気分が悪い)
「人の外見なんて、性格だとか環境だとかで面白いくらい変わるもんだぜ」
(全部、見透かされているみたいで)
「偉そうな講釈はいいから、」
ゆっくり口唇を割って侵入してきた親指に、容赦なく噛みついてやる。
すぐに指が引き抜かれたことに安心したのも束の間、代わりに、ハーレムの舌が差し入れられて。
塞がれたのは口唇と、放っておけば止めどなく流れ出しそうなマイナスの思考。
口内を掻き回す強引な舌が、冷えた頭を溶かしていく。
ぎらぎら光る眼、も。
顎を掴む、手のひらも。
「例えば俺には、おまえとジャンだって、全然違う人間に見える」
囁くような声は驚くほどおじさんのものと似て、優しく、おじさんのものよりも重く柔らかい。
「元気そうだな、シンタロー」
大きく頷いた俺に、おじさんは小さく頷き返して、コートを翻す。
「ジャン」
ジャン。
呟くような声。
俺と同じ顔をした男はすれ違いざま、俺に視線を寄越して――もしかしたら微笑んだかもしれない――すぐにおじさん同様、背を向け歩き出した。
総帥室に戻ると、我もの顔でデスクに足を乗せている男に出迎えられた。
ため息をつきながらも大股に近付いて、その足を振り払う。
「どっから入ったんだよ、おっさん」
キンタローはどこだ、と問うたところで答える気などないハーレムは、無造作に腕を伸ばした。
おじさんより太く、硬い指が口唇を摘む。
強い酒の匂いと、ごつごつした手とは不釣り合いに繊細な爪の形に、込み上げる不快感。
「慰めてやろうか」
「・・あんた、やっぱりおじさんとは似てないな」
「当然だろ」
(気分が悪い)
「人の外見なんて、性格だとか環境だとかで面白いくらい変わるもんだぜ」
(全部、見透かされているみたいで)
「偉そうな講釈はいいから、」
ゆっくり口唇を割って侵入してきた親指に、容赦なく噛みついてやる。
すぐに指が引き抜かれたことに安心したのも束の間、代わりに、ハーレムの舌が差し入れられて。
塞がれたのは口唇と、放っておけば止めどなく流れ出しそうなマイナスの思考。
口内を掻き回す強引な舌が、冷えた頭を溶かしていく。
ぎらぎら光る眼、も。
顎を掴む、手のひらも。
「例えば俺には、おまえとジャンだって、全然違う人間に見える」
囁くような声は驚くほどおじさんのものと似て、優しく、おじさんのものよりも重く柔らかい。
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