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飛空艇から降り立った足でまっすぐ総帥室に向かうシンタローと別れ、ごくごく自然に研究室に辿り着いた俺は、少しの逡巡の後に重い扉を叩く。

待ってみても反応は、ない。

数時間前に回線を通して会話をしたのは事実だから、そうか、入れ違いになった可能性もあるか。

それでも一応、パスワードを入力して扉を開いてみれば、機材や資料に埋もれるようにして存在する、金の後ろ頭に目が止まる。

久しぶりに足を踏み入れた研究室は、相変わらず、一見秩序があるのかと思わせる無秩序さで散らかっていた。

複雑に絡み合ったコードを跨いで、極力音を立てない歩き方で近付く、と、近付くにつれ寝息が聞こえ始めて。

椅子に腰掛けたままの状態で、規則的に揺れる頭。

空調が完全に制御された室内だが、睡眠には薦められない場所であることは確かだ。

机の隅に乗ったマグカップに触れると、半分ほど残されたミルク色の液体にあったはずの温かさは、既に微塵も感じられない。

「こんなところで寝ても疲れは取れないぞ」

そっと肩に手をかければ、それほど深い眠りでもなかったのか、すぐに薄い目蓋は持ち上がった。

幾度かの瞬きの後、虚ろだった青い瞳が焦点を結ぶ。

「あれ、・・・キンちゃんだ・・」

いつもよりも柔らかい、あまりにも柔らかすぎる声。

少しでも力を込めれば、握り潰してしまいそうに。

「おかえり、なさい」

「ただいま」

「シンちゃんは?」

「デスクワークを片付けると言っていた」

「そうかあ」

ふと目線を落とす。

作業机の上には、書きかけの、いかにも彼らしい設計図面が広がっていた。

「シンちゃんもキンちゃんも、忙しいよね」

まだどこか現実離れした声が、ゆっくりと優しく、耳に響く。

「僕もがんばろうっと」

「・・無理するなよ」

「それはね、僕の言葉なんだよ」

沈黙の末に口に乗せた、善処する、という言葉にグンマは微笑み、俺は、静かに安堵のため息を吐き出して。

「今日は、みんなでごはん食べようね!」

「ああ」

「早くコタローちゃん、起きるといいな」

「ああ」

「ハーレムおじさまもサービスおじさまも、早く帰ってくればいいのに」

「ああ、そうだな」

手を伸ばし、薄暗い明かりの下でも十分にきらめく金の髪を、乱暴にならないように掻き回す。
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