「気が重いぜ」
ぽつりと落とした呟きを逃すことなく、キンタローはわずかに首を傾げた。
その手には明日の進行表がある。
明日、すなわち、士官学校の入学式。
「なんのことだ」
「なあ、俺よりも親父に挨拶させれば?」
あいつはそういうの好きだし(俺だってきらいじゃないけど)、得意だし(俺だって苦手じゃないけど)、いかにも適材適所って感じじゃねーか。
と、ごちれば、意味がわからないと語る視線が降りてきて。
「総帥はお前だろう」
「・・いや、そりゃそうなんだけどよ」
それは確かに、今さら間違えようのない事実なんだけど。
君の名は
ガンマ団士官学校の入学式。
初々しさも眩しい新入生は、遥か高みの存在である総帥より直に挨拶を受け、未来への期待や緊張に胸をふくらませる、・・らしい。
そいつらが現実的に目指す高みはと言えば、当然ガンマ団の幹部になるわけだが、
「・・おい、なにしてんだ」
その幹部の1人とは思えないほどに、どうしようもなく笑み崩れた男の背後から、俺は低く声をかけた。
途端、そいつ――アラシヤマはぎこちなく身を強張らせたのだから、どれだけ好意的に見てやったとしても、やましいことをしていたとしか考えられない。
「シンタローはん・・今日も世界一の男前どすなあ」
案の定下手なごまかしを始めたアラシヤマに、わざわざ笑顔をサービスしてやりながら、片手に気を集める。
眼魔砲、準備完了。
場所は団員共有の休憩フロア、当然ながら、アラシヤマの周囲には人影1つ見当たらないから、手加減の必要もいらない。
「3秒以内に答えろ。それ、なんだ」
3、と、指したのは、アラシヤマがそっと背後に隠した分厚い冊子。
「こ、これは」
「2」
「ええと、」
「1」
「・・シンタローはんのお宝スナップアルバム・・って、ああっ!」
ひらりと1枚、難を逃れた写真が足元に落ちた。
総帥室のロックを外し足を踏み入れる。
わずか1歩目で、デスクの前のソファにくつろぐ若い男に気付いても、俺は驚くことはなかった。
そのかわり心から呆れ、大きな大きなため息をついたけれど。
「シンちゃん、さっき会計から内線があったよ~」
と、言って脈絡なく腰に抱きついてくるのは、
「いいかげんにしろよ・・親父っ!」
――悲しいかな、自分よりずっと幼い外見年齢の、推定10代半ばの父親。
自然の理に思いきり逆らうこの状況、コトの発端は、数週間ばかり前に遡る。
ぽつりと落とした呟きを逃すことなく、キンタローはわずかに首を傾げた。
その手には明日の進行表がある。
明日、すなわち、士官学校の入学式。
「なんのことだ」
「なあ、俺よりも親父に挨拶させれば?」
あいつはそういうの好きだし(俺だってきらいじゃないけど)、得意だし(俺だって苦手じゃないけど)、いかにも適材適所って感じじゃねーか。
と、ごちれば、意味がわからないと語る視線が降りてきて。
「総帥はお前だろう」
「・・いや、そりゃそうなんだけどよ」
それは確かに、今さら間違えようのない事実なんだけど。
君の名は
ガンマ団士官学校の入学式。
初々しさも眩しい新入生は、遥か高みの存在である総帥より直に挨拶を受け、未来への期待や緊張に胸をふくらませる、・・らしい。
そいつらが現実的に目指す高みはと言えば、当然ガンマ団の幹部になるわけだが、
「・・おい、なにしてんだ」
その幹部の1人とは思えないほどに、どうしようもなく笑み崩れた男の背後から、俺は低く声をかけた。
途端、そいつ――アラシヤマはぎこちなく身を強張らせたのだから、どれだけ好意的に見てやったとしても、やましいことをしていたとしか考えられない。
「シンタローはん・・今日も世界一の男前どすなあ」
案の定下手なごまかしを始めたアラシヤマに、わざわざ笑顔をサービスしてやりながら、片手に気を集める。
眼魔砲、準備完了。
場所は団員共有の休憩フロア、当然ながら、アラシヤマの周囲には人影1つ見当たらないから、手加減の必要もいらない。
「3秒以内に答えろ。それ、なんだ」
3、と、指したのは、アラシヤマがそっと背後に隠した分厚い冊子。
「こ、これは」
「2」
「ええと、」
「1」
「・・シンタローはんのお宝スナップアルバム・・って、ああっ!」
ひらりと1枚、難を逃れた写真が足元に落ちた。
総帥室のロックを外し足を踏み入れる。
わずか1歩目で、デスクの前のソファにくつろぐ若い男に気付いても、俺は驚くことはなかった。
そのかわり心から呆れ、大きな大きなため息をついたけれど。
「シンちゃん、さっき会計から内線があったよ~」
と、言って脈絡なく腰に抱きついてくるのは、
「いいかげんにしろよ・・親父っ!」
――悲しいかな、自分よりずっと幼い外見年齢の、推定10代半ばの父親。
自然の理に思いきり逆らうこの状況、コトの発端は、数週間ばかり前に遡る。
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