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「シンタローはん、Trick or Treat☆」

「あほか」

一刀両断してもアラシヤマは今日に限ってなぜか強気に、同じ言葉を繰り返した。

・・俺の覚え違いじゃなけりゃ、ハロウィンなんて1ケ月も前に終わってるはずなんだが。

そうじゃなくても、三十路に近い男が顔を輝かせて言うセリフでもねーと思うし。

「仕事中につき、私用での総帥室入室禁止」

俺はもう顔も上げずにひたすらペンを走らせて、書類を片付けていく。

遠征から帰ってきてまずすることは、その期間にたまった俺のサインが必要な書類、それに遠征の報告書を上げることだ。

はっきり言って馬鹿な部下に構っているヒマはない。

なのに、その部下ときたら。

「総帥。ちょっとの休憩くらい、ええですやろ?」

眼魔砲を出されないのをいいことに、あくまで居座るつもりでいやがるし。

「・・ったく・・。キンタローはどこ行ったんだよ・・」

「ま、ま、とりあえず一服」

差し出されたのは、いつものコーヒーではなくて、日本茶だった。

柔らかな芳香に引き寄せられ、茶碗を片手で持ち上げると、冷えた指先にじわりと熱さが染みた。

「京都から取り寄せた最高級品でっせ」

「・・サンキュ」

「で、これが~」

「ニッキ臭い」

「・・老舗のおたべどす。スタンダードに中身はつぶあん」

上品な箱から1つ皿に分けられ、それにも素直に手を出そうとすると、アラシヤマはタイミングを見計らって皿を取り上げた。

そしてにやりとした気味悪い笑みを浮かべ、一言。

「Trick or Treat?」

「・・そんなにハロウィンごっこしてーのかよ?」

つーか、アラシヤマの行動は間違ってる気がする。

Trick or Treatってのは、お菓子をくれなきゃイタズラするぞ、って意味だよな・・?

こいつ京都人だから英語わかんないのかも、とある意味同情し始めた俺に構わず、アラシヤマは口唇を尖らせた。

「遠征続きで、ハロウィン当日はシンタローはん、いませんでしたやろ?」

「そうだっけ?」

「そうどす。・・こうして会うのも久々やさかい、お菓子くらい、くれても・・」

徐々に聞き取りづらくなっていくアラシヤマの恨み言を、右の耳から左の耳に通過させつつ、俺は呆れたため息をつく。

「このおたべが欲しかったら、わてにもシンタローはんからのお菓子を!!」

「やっぱ用法間違ってるっつーの、お前」

それじゃただの間抜けな脅迫だ。

「アラシヤマ」

「え、な、なに、」

アラシヤマの顎を持ち上げて、ゆっくり顔を近付ける。

目を白黒させる様に、ついつい爆笑してしまいそうになるのを堪えながら、ピンクの耳たぶに囁く。

「Trick or Treat」

「え」

大きく上下する、細い喉。

だらだら汗を流しつつも、アラシヤマは身体を反らせて俺から距離を取ると、八つ橋の乗った皿を机に戻した。

「も・・心臓に悪いさかい・・どうぞ」

「・・意気地ねえなあ、お前って」

人がたまあにチャンスやってるのに。

「じゃ、しょーがねーから、俺からお菓子やるよ」

きょとんとした顔は到底子供にゃ見えねえし、かわいくもなんともないけど、な。

咄嗟にか閉じられた目蓋の上に、軽く口唇を押し当てて。

「ついでにこれでも食ってやがれ」

特別サービスで笑顔をくれてやって(ああ、もったいないもったいない)俺はアラシヤマの顔面を手のひらで覆う。

「眼魔砲」

吹っ飛ばされる瞬間のヤツの表情が幸せそうだったのが少し癪に触るが、まあ、これはこれでオールオッケーだろ。
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