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実戦を模した訓練で幸運にもシンタローと戦うことになった。

炎の向こう、空高くシルエットが翻った時、勝敗は決した。

(また負けた・・)

勢いよく吹き出す冷たいシャワーに身を打たせ、汗と一緒に熱を流していく。

踝から下の感覚をなくすほどの時間は冷水を浴びているはずなのに、まだ指の先は、皮膚の内側はちりちりと熱い。

暴走しそうな炎。

なにもかも燃やしてしまいたいという身勝手な衝動。





ようやく熱を引かせてロッカールームに戻った途端、否応なく耳に入ってくる騒々しさが癇にさわった。

既に着替え終えているクラスメート達が話している内容は、この年頃にはありがちなものだが、有りがちなだけに、食傷気味で。

「あほらし。女のなにがええんやろ」

つい本音を低く呟くと、奴らは妙にあたふたとロッカールームから逃げ去っていった。

別に、だからと言って、特別男が好きというわけでもないのに。

「・・まあ、あんな柔そうな生き物に比べたら、男のんが幾分かマシって程度やな」

遊ぶなら張り合いがあるほうがいい。

己のためにならない相手には興味がない。

身体の奥を疼かせてくれるような、全身の血を沸騰させ爆発させてくれるような、そんな相手がいい。

裸の胸に手を当てる。

どん、どんと常より大きく脈動する心臓は、しばらく治まりそうになかった。

冷たいロッカーに額を付け、時間が経つにつれ変化している自分の心を思った。

試合が終わった時にはもちろん、負けた悔しさがあったし、それが消えたわけではないが――今では悔しさより、興奮が勝っている気がする。

(シンタローは確かに強いわ)

そして今なら、この興奮状態で対峙すれば、今度は勝てる気さえするのに。

「次のチャンスは、とうぶん先どすな・・」

試合は所詮、授業の一環。

機会が巡ってきた時には、とっくに興奮なんて冷めている。

(難儀やなあ)

学校という狭い世界がか、どういうわけか今さら興奮している己の性質がか。

自嘲に浸りかけた時、しかし、わずかな物音で意識は引き戻された。

そしてシャワールームから現れたのは、今まさに思いを馳せていた宿敵だった。

「・・まだいたのかヨ、アラシヤマ」

「あ・・あんさんこそ、ずいぶん長風呂どすな」

返してやれば、シンタローはうざったそうに長い髪を掻き上げた。

濡れた漆黒の髪が肌に張り付き、幾筋も滴を垂らしている。

「切ってまえばええのと違います?」

「ほっとけ」

声色こそ気怠げではあるが、ちらりとよこされた眼差しは鋭い。

戦っている間と似た高揚感に、ぞくりと背筋が震える。

同時に、ここで私闘を申し込むのはどうか、と名案が浮かんだ。

さっそく口を開きかけた瞬間に気付く、なにも隠すところのない皮膚に直接突き刺さる、露骨なほどのヒいた視線。

を、辿って目を下ろすと、

(・・えええ・・?)

いつの間にやら準備万端な形態になっている下半身が、あって。

そそくさと着替えを始めるシンタローから、慌てて目を逸らす。

理由はわからないけれど、たぶんきっと絶対これ以上は見ないほうがいい。

とりあえず、それだけはわかった。
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