わてには絶対見せないような笑顔見せよってからに、あの子供がなんや誤解でもしたらどないするつもりどすか、と、喉元まで込み上げた愚痴を無理に飲み込むと、ひどく胸が重たくなった。
l-u-v
「あれ」
振り返った途端、予想通り、その顔つきはちょっとあからさまなほど険しくなる。
「なんの用だよ、アラシヤマ」
馬鹿みたいな笑顔(もう、偽ものなんだか本ものなんだか)で片手を上げ、ああ、もうあかんとどこか冷静な部分で諦めた時には、大股に距離を縮めて彼のしっかりした手首を掴んでいた。
驚いたように黒い瞳が見開かれる。
妙に幼く見える表情は士官学校に通っていた頃と、なにも変わらない。
もう、ずいぶんと昔のことのように思えるのに。
「あんさんは人を簡単に信用しすぎや」
耳元に口を寄せ呟けば、すぐさま飛んできた拳、を、空いた片手で受け止める。
「・・っ、い、」
ふいに慌てる様子を見せられて、なにごとかと疑問に思う間もなく、鼻をつくのは焦げた臭い。
急激に体温が上昇していくのを感じる。
反比例して、頭から血が引いていく。
そっと1歩、後ずさり、どうしようもできなくて両手のひらで顔を覆った。
今の今まで支配されていた衝動には言い訳も逃避も許されない。
断続的に息を吐き出して、なんとか気持ちを静めようとする。
放出しきれなかった熱がぐるぐると全身を駆け巡り、呼吸さえも苦しいような、立っていることさえも辛いような、そんな気持ちはやっぱり凶悪なもののままで、形を変えようとしない。
自然と顔の筋肉が緩む。
「シンタローはん・・」
その。
所在なく空に浮かんだままの手を、再び取って。
抱き寄せた身体を地に倒して縫い付けて。
己が生んだ炎で燃やしてしまおうか。
なんて。
「・・冗談どす」
薄笑いを浮かべて吐いた言葉は、自身にも向けた戒めだ。
「ただの、冗談やさかい」
と、言ったところで免罪符にならないことなど承知の上だけれど。
「ほんの少しだけ、・・あんさんに触れてみてもよろしおすか」
懇願しながら伸ばした指先は、必死に力を制御しているせいで、みっともなくぶるぶると震えていた。
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l-u-v
「あれ」
振り返った途端、予想通り、その顔つきはちょっとあからさまなほど険しくなる。
「なんの用だよ、アラシヤマ」
馬鹿みたいな笑顔(もう、偽ものなんだか本ものなんだか)で片手を上げ、ああ、もうあかんとどこか冷静な部分で諦めた時には、大股に距離を縮めて彼のしっかりした手首を掴んでいた。
驚いたように黒い瞳が見開かれる。
妙に幼く見える表情は士官学校に通っていた頃と、なにも変わらない。
もう、ずいぶんと昔のことのように思えるのに。
「あんさんは人を簡単に信用しすぎや」
耳元に口を寄せ呟けば、すぐさま飛んできた拳、を、空いた片手で受け止める。
「・・っ、い、」
ふいに慌てる様子を見せられて、なにごとかと疑問に思う間もなく、鼻をつくのは焦げた臭い。
急激に体温が上昇していくのを感じる。
反比例して、頭から血が引いていく。
そっと1歩、後ずさり、どうしようもできなくて両手のひらで顔を覆った。
今の今まで支配されていた衝動には言い訳も逃避も許されない。
断続的に息を吐き出して、なんとか気持ちを静めようとする。
放出しきれなかった熱がぐるぐると全身を駆け巡り、呼吸さえも苦しいような、立っていることさえも辛いような、そんな気持ちはやっぱり凶悪なもののままで、形を変えようとしない。
自然と顔の筋肉が緩む。
「シンタローはん・・」
その。
所在なく空に浮かんだままの手を、再び取って。
抱き寄せた身体を地に倒して縫い付けて。
己が生んだ炎で燃やしてしまおうか。
なんて。
「・・冗談どす」
薄笑いを浮かべて吐いた言葉は、自身にも向けた戒めだ。
「ただの、冗談やさかい」
と、言ったところで免罪符にならないことなど承知の上だけれど。
「ほんの少しだけ、・・あんさんに触れてみてもよろしおすか」
懇願しながら伸ばした指先は、必死に力を制御しているせいで、みっともなくぶるぶると震えていた。