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hhh
「お前はマジでかわいくねえ子供だった」

どういう話の流れだったか、ハーレムがふと呟いた。

その指はちまちまと動き、俺のシャツのボタンを1つずつ外していっている。

日頃、面倒だ面倒だとよくぼやいているわりには、妙なところで人の世話を焼きたがる男なのだ。



恋唄



「赤ん坊の頃は、俺以外のやつには懐くくせに、俺の顔見るだけで泣き出して・・兄貴には叱られるし、サービスには鼻で笑われるし」

あまり睦言には向かない話題だな、と思いながらも、いい年した男の拗ねたような声色がおかしくて、俺は遠慮せずに喉をくつくつと震わせた。

そうするとハーレムはやはり、面白くないと言いたげに顔を歪め、ようやく最後のボタンに指をかける。

「成長したらしたで、口ばっか達者な、クソ生意気なガキになりやがって」

思い出して怒ってでもいるのか、唐突に、荒々しく塞がれた口唇。

それでも口腔を蹂躙する舌の動きは、ためらいさえ感じられるほどに優しい。

ためらいなんてそのうち消えるものだとわかっているから、俺は再び笑う。

ハーレムの舌はいつもと違って、酒は酒でも甘いそれの匂いがした。

慣れないものを飲んで悪酔いしているから、こんな昔話を始めたのかもしれない。

「マジック兄貴は、俺がヤニ臭いからシンタローが泣くんじゃないかと言った」

「親父だって吸ってるだろ」

「兄貴はその時、禁煙中だったんだ」

ふうんと頷きかけた俺は、

「だから俺も禁煙したんだぜ」

衝撃の告白に一瞬頭が真っ白になり、次の瞬間には思いきり吹き出していた。

「し・・信じらんね~!うそだろ!?」

「3日だけだ!結局、吸ってようが吸ってなかろうが、お前はぴーぴー泣きわめいた」

たぶん1週間は我慢したんだろうな。

ハーレムの眉間の皺と、尖った口唇を見て、俺は確信する。

確信しながら、爆笑する。

素肌に触れた手のひらが熱い。

へそから脇腹へ、筋肉を辿って胸へと固い指先が動く。

もうおかしくて笑っているのか、指の動きがくすぐったくて笑っているのか、自分でもよくわからなかった。

首筋を柔く噛みながらハーレムが、もう黙れ、と言う。

込み上げる笑いを堪えて、俺は口を噤んだ。

「たくさんナけよ」

「・・わがままなオッサンだな、ったく」

呆れたため息をつけば、返されたのは、にやりとした笑み、で。

それを合図にして、俺が波打つ金の髪を鷲掴むのと同時に、部屋の明かりが落とされた。
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