酒はがぶがぶ飲むし、煙草はぷかぷか吸うし、おまけにギャンブル浸りの借金まみれ。
誠実さ、なんて言葉と対極の位置に居て、何時までも精神は子供のまま。
でも。
アイツだけが一族の中で唯一俺を俺と見てくれていたのかもしれない。
親父のように猫可愛がりをする訳でもなく、サービス叔父さんのように誰かの面影を俺に重ねる訳でもなく。
回りの人間のようにマジックの息子って肩書ごしに俺を見るんじゃなくて。
俺自身をシンタローとして見てくれた大人は、釈然としないがハーレムだけだったような気がする。
それに、ほら、あるじゃねぇか。悪い雰囲気に引かれる年頃ってやつ。
まさにソレ。
尖ったナイフって危険っぽい。でも、それに憧れる。そんな感覚。
叔父と甥の関係から一線を越えてしまった夜、ハーレムはお決まりのように煙草を加えてひと吹きした。
煙草の煙りは灰色で。
随分強いの吸ってるなぁ、なんて、熱でぼうっとした頭で思う。
「オイ、シンタロー、起きてンだろ。」
ぶっきらぼうにそう呟く。
低音の声が脳を刺激した。
「ああ。」
返事をするのが怠かったが、とりあえず答えてやる。
「責任はとってやるから安心しろ。」
「………いらねーよ。」
眠くなった頭を少し揺らしてキャンセルするが、ハーレムは「そう言うな。」と言ってシンタローの頭を撫でる。
大きなその手でガシガシと乱暴に撫でられた。
乱れた髪を余計乱されたが、不思議と嫌じゃない。
温かい手の平の体温に、シンタローは心地よくなる。
瞼が重くて目を開けてられない。
シンタローは、心地良さを感じながら睡魔に身を任せて眠りについたのだった。
眠ってしまった為、あのあとハーレムが何を言ったのか、何をしたのかは知らない。
何かあったかもしれないし、逆に何もなかったかもしれない。
「オイ、シンタロー。大丈夫かぁ?」
ぼうっと物思いにふけっていた所をハーレムの声で現実世界に引き戻される。
今日は部屋に二人きり。
何をする訳でもなく、ただ居るだけ。
でも、邪魔じゃない。
うるさいし、自分勝手だけど、それが当然というか、例えるなら空気みたいな。
そんな感じ。
ハーレムがシンタローの部屋に居るのは別段珍しくもなんともない光景であった。
昔から。
シンタローは何かあるとハーレムに相談していた。
彼の感覚の中で、ハーレムが一番自分に近い匂いを持っている、と、シンタローは知っていた。
マジックという巨大な壁にいつも勝てなくて、でも離れる事もできなくて。
サービスのように綺麗に割り切れたり、グンマのように勝てないのが当然と思う事もできなくて。
ただ、真っ直ぐに進むしか脳がない。
それをシンタローは嗅ぎわけていた。
コイツになら全てを話せて、全てを肯定してもらえて、同時に否定してもらえる。
そのカンは当たっていた。
だからこうして二人で居るのがとても心地いいのだ。
弱者の傷の舐めあいとも違う。
お互いトラウマは乗り越えてきた。
「オイ、酒ねーのかよ。」
「ねぇよ。俺の部屋で煙草吸えるだけありがたいと思え!」
そう悪態をつきながらも、シンタローは自らハーレムの側に寄る。
体をハーレムに預けるように左肩に寄り掛かった。
ハーレムもシンタローが咳込まないように煙草を少し遠ざけた。
ハーレムの側に寄ると、ハーレムの吸っている煙草の匂いが鼻に入ってくる。
この匂いイコールハーレム。の方程式が成り立つ位嗅ぎ慣れた匂いだ。
すり、と、擦り寄ると、ハーレムの大きな手がシンタローの左肩を優しく掴む。
「どうした、甥っ子。」
いつもと違う優しい声がする。
「別に……」
そう言いながらも甘えるように擦り寄る事は止めない。
正直甘えたいのだ。
この同じ匂いのする子供みたいなこの叔父に。
ベロベロに甘やかすんじゃなくて、何て言うか、自分の全てを理解して、それでも優しくしてくれる。
それをシンタローは求めていて。
ハーレムもそれを理解して、甘えさせてやる。
口に出せばこの甥っ子は甘えるのを止めてしまうだろう。
だから気付かない振りをして、受け止めてやるのだ。
何もしないでこうしてのんびり二人で過ごすのは心地良いのではあるが、ハーレムとしては少し物足りなさを感じる。
折角の休みで一緒に居るのに何もしねぇってぇのはアレだよな。
ちら、とシンタローを見ると、朧げに下を見ている。
短い睫毛と、何だか憂鬱そうな瞳がひどくハーレムには艶やかに見えた。
シンタローに触れている左手がじんわりと汗ばむ。
戸惑う事はしなかった。
元々我慢強くはない方である。
無防備なシンタローを床に倒すのはそんなに難しい事ではなかった。
トサ、と、優しく倒し、覆いかぶさると、シンタローは一瞬驚いたように目を見開いたが、直ぐに何時もの目付きになる。
これからハーレムがしようとしている事。
シンタローだってもう子供じゃないのだから解っている。
しかし。
「………いやだ。」
「俺はお前が拒むのが嫌だ。」
まるで子供の屁理屈。
そうだ。このオッサンは図体ばかりがオッサンで中身は子供なんだ。
チッと、舌打ちをして顔を背けると、ハーレムは肯定の印かと思い顔を近づける。
もう少しで唇に到達する、という所でシンタローの唇が言葉を紡ぐ。
「……やだって言ってンのにするなら親父に言い付けるゼ。」
………………。
“親父”という単語に、苦い思い出が脳裏に浮かぶハーレム。
ルーザーが彼は一番苦手ではあったが、そのルーザーですら勝てなかった長男マジックの名前が出れば分が悪い。
しかもマジックは息子のシンタローを異常に溺愛している。
二人の関係も内緒なのだ。
ばれたら……。
息子は可愛いから殴れないだろうが、ハーレムは確実に殺される一歩手間までボコボコにやられるだろう。
「テメ…何でそこで兄貴が出て来るんだ。」
「アンタが一番怖いって思っていて俺の絶対の味方だから。」
使えるモンは親でも使うゼ俺は。
勝ち誇ったように笑い、そう呟くと、ハーレムは苦虫を噛み潰したような表情をした。
体を退けると、シンタローも後から又座る。
「あ、もしかして“そんなの関係ねぇよ。”とか言って押し倒した方がよかったか?」
「……阿保か。アル中は脳みそまで発酵してンのか。」
少し距離を置かれたのが寂しい。
さっきの方が密着していたのに。
早まったかな、と、思うが、亀の甲より年の功。
ハーレムの頭がキュルキュルと高速回転した。
何やらガサガサと服のポケットを漁る。
カツンと何か固いものに指が触れたらしい。
ズボンの後ろのポケットだ。
訝しげにシンタローが見ていると、するりと取り出されたのはDVDロム。
ダビングしたものらしく、題名は書いていない。
「何、ソレ。」
指を指して嫌そうな顔をすると、すました顔でさっさとシンタローのデッキにはめ込む。
「何勝手に入れてンだ!」
AVとかならどうしよう、と、シンタローは焦った。
仮にそうだとしたら拒める自信はない。
なんだかんだ言って、イイ所のお坊ちゃまである。
そういう類いの物は余り見た事がないし、もう大人の階段を登ってはしまったが、同年代の男性と比べると、まだまだ純情なのである。
しかし、パッと写った画面は明らかに違うもので。
王手洋画メーカーのものである。
一体コイツは俺に何を見せる気なンだョ。
鼻歌混じりで上機嫌なハーレムをじとりと見る。
すると、明らかに画面がおかしい。
微妙に暗い。
ま……まさか……。
血の気が引いた。
ハーレムはといえば、そんなシンタローの百面相をニヤニヤ面白がっている。
「ホラー映画だぜ?シンちゃん。」
画面にはおびただしい量の血肉がスプラッタされている。
女性の甲高い叫び声や、男性の野太いうめき声。
所狭しと並べられている拷問器具の数々。
目をつぶっても耳を塞いでも情景が浮かぶし、聞こえてくる。
ハーレムにしっかり抱き着いて、それでも馬鹿にされないように画面を見る。
しかし、はっきりとは見れないので、見ているように見せ掛けて実は違う所を見ている。
しかし、目の端にはチラチラと赤いものが見えるし、耳をつんざく断末魔も聞こえてくる。
その度シンタローは、ビクン!ビクン!と体を震わす。
それを見ているハーレムはご満悦。
シンタローが兄貴に言えない事。
それは自分が言い訳ができない恥ずかしい事。
AVじゃハーレムが無理矢理見せた、と言って逃げられればそれでオシマイだし、実力行使も又然別。
しかし、ホラー映画は違う。
無理矢理見せたとマジックに言う→怖くてシンタローの奴俺に抱き着いてきたんだぜと、チクられる。→シンタロー恥ずかしい。
この方程式が成立するのだ。
勿論ハーレムはボコボコにされるが、シンタローは自分が恥ずかしい事はしない。
プライドの塊のような男なのだ。
ゾンビが居る暗い地下室。
知能を持った、半分白骨化したゾンビがバーナーに火が点し、いたいけな女性は鉄の仮面を被せられて声が出ない。
しかし、目だけは見える。
バーナーがゆっくりと音を立てながら女性に近づけられる。
「―――ッツ!も、嫌だっ!消せよ!消せッツ!!」
いつもならしないのに、ハーレムの少し前の開いたワイシャツに顔を埋める。
鍛えられた胸板の感触とか、そういったものは一切感じない。
ただ怖くて怖くて仕方がなかった。
「なんだよ、イイ所なのに。」
ヘラヘラと笑うハーレムをこれ程までに憎いと思った事はない。
さっきまでのゆったりとした時間は何処へ行ってしまったのか。
いや、今はそんな感傷に浸っている余裕はない。
ドンドンとステレオから流れる心臓を圧迫するようなBGMが流れている。
早く消さなければ。
リモコンを取ろうとしたが、ハーレムに先に奪われ、シンタローの指先は空を切った。
「かっ!返せッツ!俺のリモコンだッツ!!」
下から睨みつけるようにハーレムを見るが、ハーレム美ジョンでは上目使いにしか見えない。
「ヘッ!バーカ!大人しく見てろよ。それとも何か?怖いのか?」
怖いからこんな真剣に消そうとするのだが、ハッキリ怖いのか?と聞かれれば肯定しずらい。
シンタローのプライドが揺れる。
『きゃああああ!』
そんな事をしている間に話は進んでいって、耳をつんざく女性の悲鳴が聞こえ、思わず振り向き画面を直視してしまった。
しかし、バーナーは彼女に届く前にゾンビの足元に落ちた。
どうやら彼女を助けに来た男性がゾンビのバーナーを落としたらしい。
本当、間一髪。
シンタローは短い安堵の溜息を漏らす。
しかし、ゾンビ相手では圧倒的に不利で。
又シンタローは怖くなる。
「ちょ!しし舞!テメ、リモコン返せ!!」
「やーいやーい怖がりシンタロー!!」
「はりきりムカつくーーッツ!!」
いつも張り詰めた顔をして、清潔感たっぷりのこの甥の変わりようはハーレムにとって楽しいもので。
言い方は悪いかもしれないが、楽しい玩具を手に入れた感覚に似ている。
もっともその玩具は、とても大事なものなのだが。
無理矢理シンタローを自分の足の間に座らせ、画面を見させる。
顔面蒼白なシンタローを見て守ってやりたいなんて思うのはおかしな事なのだろうか?
嫌がり暴れるシンタローの腕を後ろから掴みあげ、動けないようにする。
その素早さは、流石特戦部隊の隊長なだけはあった。
DVDはクライマックスを迎える。
おぞましい血の滴るグロテスクなゾンビが男性を殺そうとするが、男性も負けじと近くにあった鉄パイプで応戦する。
『何に変えても俺が貴女を守る。』
そう呟いて戦うのだ。
女性は縛られ動けない状態で何かを叫ぶが、鉄のマスクのせいで言葉が聞き取れない。
シンタローはぎゅ、と、ハーレムの手の平を掴んだ。
ハーレムもその手を握り返す。
画面いっぱいに男性が映り、ゾンビの横っ面に改心の一撃をくらわせた。
飛び散る赤い肉片と白い骨。
ぐちゃっ、と嫌な音を立てて崩れさる。
ボスらしきゾンビを倒しても、まだ回りのゾンビが残っていて。
男性は仕掛けておいた爆薬の導火線に先程倒したゾンビが落としたバーナーで火をつける。
ジジッ……と音がしたかと思うと、男性は女性を抱き抱え階段を駆け登る。
間一髪の所で二人は無事逃げ出す事ができたのであった。
エンディングロールが流れ出す。
シンタローはほっ、と一息ついた。
そして、脱力しきったようにハーレムに寄り掛かる。
ハーレムは煙草を灰皿に押し当て、新たに火を付ける。
カチン、と、ジッポを仕舞う音がした。
「もしも、あんな状況になったとしたら……」
そう呟くと、シンタローは恐ろしい顔付きでハーレムを睨んだ。
「ふ、ふざけんナッツ!!あってたまるか!!」
「だから、もしもだって言ってるだろーが。もし、そうなったら。」
煙草を肺に染み込ませ、深く吸って吐いてから続く言葉を紡ぐ。
「俺がお前を守ってやるよ。何に変えてもな。」
そして、ニヤッと笑うので、シンタローは唖然として何も言えなかった。
まさかとは思うが、これが言いたいがためにあの映画を見せたのだろうか。
だとしたらコイツ……。
怒りを覚える反面、新たな計算高さな一面も見れてシンタローの心境は複雑であった。
でも、今はそんな事はたいした問題ではない。
シンタローの一番の問題。
それは………
夜、一人で眠れるだろうか。
これが最大のポイントであった。
時計を見ると、もう夜9:00過ぎ。
あ、寝るだけじゃない。
風呂とかトイレとかどうすればいいんだ。
28にもなって一人でビビって行けないなんて恥ずかし過ぎるにも程がある。
「どぉしたぁ?シンタロー。」
ニヤニヤと笑うハーレム。
明らかにシンタローの心境が解っての台詞だ。
苦虫をかみつぶしたように苦々しげにハーレムを見つめる。
「別にッツ!」
「あ、そ。」
別段興味なさげに相槌をうつ。
「じゃあそろそろ俺は艦に戻るかな。」
片足に手をのせ、加え煙草をしながらよっこら、と立ち上がろうとする。
「え……。」
思わず声が出てしまって、慌ててハーレムから顔を反らす。
勿論ハーレムにもそれは聞こえていたが、あえて聞こえない振りをして。
「と、思ったが、そーいや俺の部屋、こないだの襲撃くらって壊れてたんだった。悪ぃな、風呂とベッド貸してくれ。」
それがシンタローを気遣っての事だと、元々カンのいいシンタローには解っていた。
第一、艦がやられたのだって随分前の話だし、もし本当なら、今まで何処で寝てたのか、とか、コイツだけならともかく、隊員達は一体何処で風呂に入っていたのか、とか様々な疑問が浮かぶ。
こんなバレバレの嘘……。
でも、シンタローは正直嬉しかった。
コイツは二人きりの時はこうやって甘やかしてくれる。
それが酷く心地良い。
さりげない優しさが心に染みる。
きっと似た者同士だから、相手の考えている事が解るのだろう。
相手を理解できれば必然と思いやれる。
それが酷く嬉しかった。
一方ハーレムの考えは、勿論優しさとして言い出したのだが、自分が見せたホラー映画でシンタローがこれ程までに悩むとは思わなかったので、罪ほろぼしという名目も入っている。
でも、一番大きな割合を占めているのは、シンタローと少しでも一緒に居て、甘やかしてやりたい、という気持ちだった。
コイツは又明日から赤い重たい総帥服を身に纏い、上を向いて、世界各国の要人達の前でも威厳を失わないようにしなければならない。
そんな息の詰まる生活の中、少しでもシンタローを総帥としてではなく、一人のシンタローとして休ませてあげたかった。
今日は皆出掛けて居ない。
居るのはシンタローだけ。
二人を邪魔する者は誰も居ないし、邪魔する物も何もない。
「飯食って、風呂入って、早めに寝よう。」
そう呟いて、ハーレムはシンタローの髪に触れた。
思ったよりサラサラのその髪を、パラパラと滑りこませると、シンタローはくすぐったそうに目を細め、肩を竦めた。
やばい。理性が切れそうだ。
ハーレムの喉が上下に動き、唾を飲み込む音がやけに大きく聞こえた気がした。
「シンタロー……」
甘い声で囁かれ、唇に一つキスを落とされる。
「ん……」
先程とは変わって、シンタローもそれを受け入れた。
脳味噌がとろけそうな濃厚で甘いキス。
奪うようなキスではなく、慈しむような。
それでいて、甘美な快楽へ誘う。
シンタローの目が、とろん、として、頬がうっすら桃色になる。
「はっ……」
軽い息継ぎの後、再びハーレムの唇が降ってくる。
舌で優しく口内をかきまぜられ、舌を吸われれば、シンタローの肩が少し震えた。
「ふ、う……」
いいか、なんて聞かない。
嫌だと言っても、もう理性が持たない。
シンタローをゆっくりと床に倒すが、今度は抵抗しなかった。
「腕、まわせ。」
そう言うと、怖ず怖ずとだが、シンタローの健康的な腕がハーレムの背中に手を回した。
ハーレムの指がシンタローのシャツの下に入る。
その時。
「シーンちゃーんッツ!お腹空いたよぉ~!」
躊躇いなくドアが開き、元気よくグンマが入ってきた。
グンマの後ろには当然のように、仏頂面のキンタローが控えている。
わ゛ーーーッツ!!
声にならない声をあげるシンタロー。
ハーレムは押しのけられ、かなりふて腐れていた。
第一、なんでこいつらが。
「お前ら学研は……」
「とっくに終わったよぉ~!今、何時だと思ってるの~?シンちゃん。それより早くご飯作ってよぉ~!」
ペコペコだよぉ~!と、お腹を叩く。
シンタローは苦笑いを浮かべてハーレムを見た。
かなりご立腹の様子で、煙草に火を点けている。
シンタローは苦笑いを浮かべたまま、触らぬ神に祟りなしとばかりにグンマ達と一緒に部屋から出ようとした。
その時、グイ、と腕を引っ張られて、シンタローだけドアから出られなかった。
「今夜覚えてろよ。」
そう、耳元で呟かれ、背中を押された。
そう。どうあがいたって今日は怖くて一人で眠れないのだ。
だったら、温もりの中で眠りにつきたい、と思い、シンタローは笑って部屋を出たのであった。
外では従兄弟達が彼の料理を待っている。
久しぶりに腕がなる。
袖を捲るジェスチャーをして、シンタローはキッチンへ向かうのだった。
終わり。
誠実さ、なんて言葉と対極の位置に居て、何時までも精神は子供のまま。
でも。
アイツだけが一族の中で唯一俺を俺と見てくれていたのかもしれない。
親父のように猫可愛がりをする訳でもなく、サービス叔父さんのように誰かの面影を俺に重ねる訳でもなく。
回りの人間のようにマジックの息子って肩書ごしに俺を見るんじゃなくて。
俺自身をシンタローとして見てくれた大人は、釈然としないがハーレムだけだったような気がする。
それに、ほら、あるじゃねぇか。悪い雰囲気に引かれる年頃ってやつ。
まさにソレ。
尖ったナイフって危険っぽい。でも、それに憧れる。そんな感覚。
叔父と甥の関係から一線を越えてしまった夜、ハーレムはお決まりのように煙草を加えてひと吹きした。
煙草の煙りは灰色で。
随分強いの吸ってるなぁ、なんて、熱でぼうっとした頭で思う。
「オイ、シンタロー、起きてンだろ。」
ぶっきらぼうにそう呟く。
低音の声が脳を刺激した。
「ああ。」
返事をするのが怠かったが、とりあえず答えてやる。
「責任はとってやるから安心しろ。」
「………いらねーよ。」
眠くなった頭を少し揺らしてキャンセルするが、ハーレムは「そう言うな。」と言ってシンタローの頭を撫でる。
大きなその手でガシガシと乱暴に撫でられた。
乱れた髪を余計乱されたが、不思議と嫌じゃない。
温かい手の平の体温に、シンタローは心地よくなる。
瞼が重くて目を開けてられない。
シンタローは、心地良さを感じながら睡魔に身を任せて眠りについたのだった。
眠ってしまった為、あのあとハーレムが何を言ったのか、何をしたのかは知らない。
何かあったかもしれないし、逆に何もなかったかもしれない。
「オイ、シンタロー。大丈夫かぁ?」
ぼうっと物思いにふけっていた所をハーレムの声で現実世界に引き戻される。
今日は部屋に二人きり。
何をする訳でもなく、ただ居るだけ。
でも、邪魔じゃない。
うるさいし、自分勝手だけど、それが当然というか、例えるなら空気みたいな。
そんな感じ。
ハーレムがシンタローの部屋に居るのは別段珍しくもなんともない光景であった。
昔から。
シンタローは何かあるとハーレムに相談していた。
彼の感覚の中で、ハーレムが一番自分に近い匂いを持っている、と、シンタローは知っていた。
マジックという巨大な壁にいつも勝てなくて、でも離れる事もできなくて。
サービスのように綺麗に割り切れたり、グンマのように勝てないのが当然と思う事もできなくて。
ただ、真っ直ぐに進むしか脳がない。
それをシンタローは嗅ぎわけていた。
コイツになら全てを話せて、全てを肯定してもらえて、同時に否定してもらえる。
そのカンは当たっていた。
だからこうして二人で居るのがとても心地いいのだ。
弱者の傷の舐めあいとも違う。
お互いトラウマは乗り越えてきた。
「オイ、酒ねーのかよ。」
「ねぇよ。俺の部屋で煙草吸えるだけありがたいと思え!」
そう悪態をつきながらも、シンタローは自らハーレムの側に寄る。
体をハーレムに預けるように左肩に寄り掛かった。
ハーレムもシンタローが咳込まないように煙草を少し遠ざけた。
ハーレムの側に寄ると、ハーレムの吸っている煙草の匂いが鼻に入ってくる。
この匂いイコールハーレム。の方程式が成り立つ位嗅ぎ慣れた匂いだ。
すり、と、擦り寄ると、ハーレムの大きな手がシンタローの左肩を優しく掴む。
「どうした、甥っ子。」
いつもと違う優しい声がする。
「別に……」
そう言いながらも甘えるように擦り寄る事は止めない。
正直甘えたいのだ。
この同じ匂いのする子供みたいなこの叔父に。
ベロベロに甘やかすんじゃなくて、何て言うか、自分の全てを理解して、それでも優しくしてくれる。
それをシンタローは求めていて。
ハーレムもそれを理解して、甘えさせてやる。
口に出せばこの甥っ子は甘えるのを止めてしまうだろう。
だから気付かない振りをして、受け止めてやるのだ。
何もしないでこうしてのんびり二人で過ごすのは心地良いのではあるが、ハーレムとしては少し物足りなさを感じる。
折角の休みで一緒に居るのに何もしねぇってぇのはアレだよな。
ちら、とシンタローを見ると、朧げに下を見ている。
短い睫毛と、何だか憂鬱そうな瞳がひどくハーレムには艶やかに見えた。
シンタローに触れている左手がじんわりと汗ばむ。
戸惑う事はしなかった。
元々我慢強くはない方である。
無防備なシンタローを床に倒すのはそんなに難しい事ではなかった。
トサ、と、優しく倒し、覆いかぶさると、シンタローは一瞬驚いたように目を見開いたが、直ぐに何時もの目付きになる。
これからハーレムがしようとしている事。
シンタローだってもう子供じゃないのだから解っている。
しかし。
「………いやだ。」
「俺はお前が拒むのが嫌だ。」
まるで子供の屁理屈。
そうだ。このオッサンは図体ばかりがオッサンで中身は子供なんだ。
チッと、舌打ちをして顔を背けると、ハーレムは肯定の印かと思い顔を近づける。
もう少しで唇に到達する、という所でシンタローの唇が言葉を紡ぐ。
「……やだって言ってンのにするなら親父に言い付けるゼ。」
………………。
“親父”という単語に、苦い思い出が脳裏に浮かぶハーレム。
ルーザーが彼は一番苦手ではあったが、そのルーザーですら勝てなかった長男マジックの名前が出れば分が悪い。
しかもマジックは息子のシンタローを異常に溺愛している。
二人の関係も内緒なのだ。
ばれたら……。
息子は可愛いから殴れないだろうが、ハーレムは確実に殺される一歩手間までボコボコにやられるだろう。
「テメ…何でそこで兄貴が出て来るんだ。」
「アンタが一番怖いって思っていて俺の絶対の味方だから。」
使えるモンは親でも使うゼ俺は。
勝ち誇ったように笑い、そう呟くと、ハーレムは苦虫を噛み潰したような表情をした。
体を退けると、シンタローも後から又座る。
「あ、もしかして“そんなの関係ねぇよ。”とか言って押し倒した方がよかったか?」
「……阿保か。アル中は脳みそまで発酵してンのか。」
少し距離を置かれたのが寂しい。
さっきの方が密着していたのに。
早まったかな、と、思うが、亀の甲より年の功。
ハーレムの頭がキュルキュルと高速回転した。
何やらガサガサと服のポケットを漁る。
カツンと何か固いものに指が触れたらしい。
ズボンの後ろのポケットだ。
訝しげにシンタローが見ていると、するりと取り出されたのはDVDロム。
ダビングしたものらしく、題名は書いていない。
「何、ソレ。」
指を指して嫌そうな顔をすると、すました顔でさっさとシンタローのデッキにはめ込む。
「何勝手に入れてンだ!」
AVとかならどうしよう、と、シンタローは焦った。
仮にそうだとしたら拒める自信はない。
なんだかんだ言って、イイ所のお坊ちゃまである。
そういう類いの物は余り見た事がないし、もう大人の階段を登ってはしまったが、同年代の男性と比べると、まだまだ純情なのである。
しかし、パッと写った画面は明らかに違うもので。
王手洋画メーカーのものである。
一体コイツは俺に何を見せる気なンだョ。
鼻歌混じりで上機嫌なハーレムをじとりと見る。
すると、明らかに画面がおかしい。
微妙に暗い。
ま……まさか……。
血の気が引いた。
ハーレムはといえば、そんなシンタローの百面相をニヤニヤ面白がっている。
「ホラー映画だぜ?シンちゃん。」
画面にはおびただしい量の血肉がスプラッタされている。
女性の甲高い叫び声や、男性の野太いうめき声。
所狭しと並べられている拷問器具の数々。
目をつぶっても耳を塞いでも情景が浮かぶし、聞こえてくる。
ハーレムにしっかり抱き着いて、それでも馬鹿にされないように画面を見る。
しかし、はっきりとは見れないので、見ているように見せ掛けて実は違う所を見ている。
しかし、目の端にはチラチラと赤いものが見えるし、耳をつんざく断末魔も聞こえてくる。
その度シンタローは、ビクン!ビクン!と体を震わす。
それを見ているハーレムはご満悦。
シンタローが兄貴に言えない事。
それは自分が言い訳ができない恥ずかしい事。
AVじゃハーレムが無理矢理見せた、と言って逃げられればそれでオシマイだし、実力行使も又然別。
しかし、ホラー映画は違う。
無理矢理見せたとマジックに言う→怖くてシンタローの奴俺に抱き着いてきたんだぜと、チクられる。→シンタロー恥ずかしい。
この方程式が成立するのだ。
勿論ハーレムはボコボコにされるが、シンタローは自分が恥ずかしい事はしない。
プライドの塊のような男なのだ。
ゾンビが居る暗い地下室。
知能を持った、半分白骨化したゾンビがバーナーに火が点し、いたいけな女性は鉄の仮面を被せられて声が出ない。
しかし、目だけは見える。
バーナーがゆっくりと音を立てながら女性に近づけられる。
「―――ッツ!も、嫌だっ!消せよ!消せッツ!!」
いつもならしないのに、ハーレムの少し前の開いたワイシャツに顔を埋める。
鍛えられた胸板の感触とか、そういったものは一切感じない。
ただ怖くて怖くて仕方がなかった。
「なんだよ、イイ所なのに。」
ヘラヘラと笑うハーレムをこれ程までに憎いと思った事はない。
さっきまでのゆったりとした時間は何処へ行ってしまったのか。
いや、今はそんな感傷に浸っている余裕はない。
ドンドンとステレオから流れる心臓を圧迫するようなBGMが流れている。
早く消さなければ。
リモコンを取ろうとしたが、ハーレムに先に奪われ、シンタローの指先は空を切った。
「かっ!返せッツ!俺のリモコンだッツ!!」
下から睨みつけるようにハーレムを見るが、ハーレム美ジョンでは上目使いにしか見えない。
「ヘッ!バーカ!大人しく見てろよ。それとも何か?怖いのか?」
怖いからこんな真剣に消そうとするのだが、ハッキリ怖いのか?と聞かれれば肯定しずらい。
シンタローのプライドが揺れる。
『きゃああああ!』
そんな事をしている間に話は進んでいって、耳をつんざく女性の悲鳴が聞こえ、思わず振り向き画面を直視してしまった。
しかし、バーナーは彼女に届く前にゾンビの足元に落ちた。
どうやら彼女を助けに来た男性がゾンビのバーナーを落としたらしい。
本当、間一髪。
シンタローは短い安堵の溜息を漏らす。
しかし、ゾンビ相手では圧倒的に不利で。
又シンタローは怖くなる。
「ちょ!しし舞!テメ、リモコン返せ!!」
「やーいやーい怖がりシンタロー!!」
「はりきりムカつくーーッツ!!」
いつも張り詰めた顔をして、清潔感たっぷりのこの甥の変わりようはハーレムにとって楽しいもので。
言い方は悪いかもしれないが、楽しい玩具を手に入れた感覚に似ている。
もっともその玩具は、とても大事なものなのだが。
無理矢理シンタローを自分の足の間に座らせ、画面を見させる。
顔面蒼白なシンタローを見て守ってやりたいなんて思うのはおかしな事なのだろうか?
嫌がり暴れるシンタローの腕を後ろから掴みあげ、動けないようにする。
その素早さは、流石特戦部隊の隊長なだけはあった。
DVDはクライマックスを迎える。
おぞましい血の滴るグロテスクなゾンビが男性を殺そうとするが、男性も負けじと近くにあった鉄パイプで応戦する。
『何に変えても俺が貴女を守る。』
そう呟いて戦うのだ。
女性は縛られ動けない状態で何かを叫ぶが、鉄のマスクのせいで言葉が聞き取れない。
シンタローはぎゅ、と、ハーレムの手の平を掴んだ。
ハーレムもその手を握り返す。
画面いっぱいに男性が映り、ゾンビの横っ面に改心の一撃をくらわせた。
飛び散る赤い肉片と白い骨。
ぐちゃっ、と嫌な音を立てて崩れさる。
ボスらしきゾンビを倒しても、まだ回りのゾンビが残っていて。
男性は仕掛けておいた爆薬の導火線に先程倒したゾンビが落としたバーナーで火をつける。
ジジッ……と音がしたかと思うと、男性は女性を抱き抱え階段を駆け登る。
間一髪の所で二人は無事逃げ出す事ができたのであった。
エンディングロールが流れ出す。
シンタローはほっ、と一息ついた。
そして、脱力しきったようにハーレムに寄り掛かる。
ハーレムは煙草を灰皿に押し当て、新たに火を付ける。
カチン、と、ジッポを仕舞う音がした。
「もしも、あんな状況になったとしたら……」
そう呟くと、シンタローは恐ろしい顔付きでハーレムを睨んだ。
「ふ、ふざけんナッツ!!あってたまるか!!」
「だから、もしもだって言ってるだろーが。もし、そうなったら。」
煙草を肺に染み込ませ、深く吸って吐いてから続く言葉を紡ぐ。
「俺がお前を守ってやるよ。何に変えてもな。」
そして、ニヤッと笑うので、シンタローは唖然として何も言えなかった。
まさかとは思うが、これが言いたいがためにあの映画を見せたのだろうか。
だとしたらコイツ……。
怒りを覚える反面、新たな計算高さな一面も見れてシンタローの心境は複雑であった。
でも、今はそんな事はたいした問題ではない。
シンタローの一番の問題。
それは………
夜、一人で眠れるだろうか。
これが最大のポイントであった。
時計を見ると、もう夜9:00過ぎ。
あ、寝るだけじゃない。
風呂とかトイレとかどうすればいいんだ。
28にもなって一人でビビって行けないなんて恥ずかし過ぎるにも程がある。
「どぉしたぁ?シンタロー。」
ニヤニヤと笑うハーレム。
明らかにシンタローの心境が解っての台詞だ。
苦虫をかみつぶしたように苦々しげにハーレムを見つめる。
「別にッツ!」
「あ、そ。」
別段興味なさげに相槌をうつ。
「じゃあそろそろ俺は艦に戻るかな。」
片足に手をのせ、加え煙草をしながらよっこら、と立ち上がろうとする。
「え……。」
思わず声が出てしまって、慌ててハーレムから顔を反らす。
勿論ハーレムにもそれは聞こえていたが、あえて聞こえない振りをして。
「と、思ったが、そーいや俺の部屋、こないだの襲撃くらって壊れてたんだった。悪ぃな、風呂とベッド貸してくれ。」
それがシンタローを気遣っての事だと、元々カンのいいシンタローには解っていた。
第一、艦がやられたのだって随分前の話だし、もし本当なら、今まで何処で寝てたのか、とか、コイツだけならともかく、隊員達は一体何処で風呂に入っていたのか、とか様々な疑問が浮かぶ。
こんなバレバレの嘘……。
でも、シンタローは正直嬉しかった。
コイツは二人きりの時はこうやって甘やかしてくれる。
それが酷く心地良い。
さりげない優しさが心に染みる。
きっと似た者同士だから、相手の考えている事が解るのだろう。
相手を理解できれば必然と思いやれる。
それが酷く嬉しかった。
一方ハーレムの考えは、勿論優しさとして言い出したのだが、自分が見せたホラー映画でシンタローがこれ程までに悩むとは思わなかったので、罪ほろぼしという名目も入っている。
でも、一番大きな割合を占めているのは、シンタローと少しでも一緒に居て、甘やかしてやりたい、という気持ちだった。
コイツは又明日から赤い重たい総帥服を身に纏い、上を向いて、世界各国の要人達の前でも威厳を失わないようにしなければならない。
そんな息の詰まる生活の中、少しでもシンタローを総帥としてではなく、一人のシンタローとして休ませてあげたかった。
今日は皆出掛けて居ない。
居るのはシンタローだけ。
二人を邪魔する者は誰も居ないし、邪魔する物も何もない。
「飯食って、風呂入って、早めに寝よう。」
そう呟いて、ハーレムはシンタローの髪に触れた。
思ったよりサラサラのその髪を、パラパラと滑りこませると、シンタローはくすぐったそうに目を細め、肩を竦めた。
やばい。理性が切れそうだ。
ハーレムの喉が上下に動き、唾を飲み込む音がやけに大きく聞こえた気がした。
「シンタロー……」
甘い声で囁かれ、唇に一つキスを落とされる。
「ん……」
先程とは変わって、シンタローもそれを受け入れた。
脳味噌がとろけそうな濃厚で甘いキス。
奪うようなキスではなく、慈しむような。
それでいて、甘美な快楽へ誘う。
シンタローの目が、とろん、として、頬がうっすら桃色になる。
「はっ……」
軽い息継ぎの後、再びハーレムの唇が降ってくる。
舌で優しく口内をかきまぜられ、舌を吸われれば、シンタローの肩が少し震えた。
「ふ、う……」
いいか、なんて聞かない。
嫌だと言っても、もう理性が持たない。
シンタローをゆっくりと床に倒すが、今度は抵抗しなかった。
「腕、まわせ。」
そう言うと、怖ず怖ずとだが、シンタローの健康的な腕がハーレムの背中に手を回した。
ハーレムの指がシンタローのシャツの下に入る。
その時。
「シーンちゃーんッツ!お腹空いたよぉ~!」
躊躇いなくドアが開き、元気よくグンマが入ってきた。
グンマの後ろには当然のように、仏頂面のキンタローが控えている。
わ゛ーーーッツ!!
声にならない声をあげるシンタロー。
ハーレムは押しのけられ、かなりふて腐れていた。
第一、なんでこいつらが。
「お前ら学研は……」
「とっくに終わったよぉ~!今、何時だと思ってるの~?シンちゃん。それより早くご飯作ってよぉ~!」
ペコペコだよぉ~!と、お腹を叩く。
シンタローは苦笑いを浮かべてハーレムを見た。
かなりご立腹の様子で、煙草に火を点けている。
シンタローは苦笑いを浮かべたまま、触らぬ神に祟りなしとばかりにグンマ達と一緒に部屋から出ようとした。
その時、グイ、と腕を引っ張られて、シンタローだけドアから出られなかった。
「今夜覚えてろよ。」
そう、耳元で呟かれ、背中を押された。
そう。どうあがいたって今日は怖くて一人で眠れないのだ。
だったら、温もりの中で眠りにつきたい、と思い、シンタローは笑って部屋を出たのであった。
外では従兄弟達が彼の料理を待っている。
久しぶりに腕がなる。
袖を捲るジェスチャーをして、シンタローはキッチンへ向かうのだった。
終わり。
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