僕はある日突然あることに気づいた。
気づいたらそれはすとん、と僕の心の真ん中に落ち着いた。
「ああ、そっか」
「あ?どうしたグンマ」
「ううん。ただ、やっぱりそうだったのかって」
「?」
そうか、やっぱり君が僕の世界なんだね。
世界
その日は穏やかな日だった。
二人でのんびりと日向でお茶を飲んでいたときに。
神の啓示っていうのはこういうのかと思ったほどに突然だった。
「シンちゃん。好きだよ」
なんの脈絡もない僕の言葉にシンちゃんはぱちり、と瞬きをした。
それから不思議そうな顔をして言った。
「それって今更じゃねぇの?」
まったくだ。告白はすでにすましてるし受け取ってももらえた。
シンちゃんは僕の恋人という立場にいる。でも。
「ん~なんか改めて言いたくなったんだ」
「なんでまた」
「シンちゃんが好きだなぁって思ったから、かな」
「ふぅん」
「君が、僕の世界だと思ったから」
「せかい?」
恋人になれる人は他にもいるのだろう。
けれども僕の世界となりえる人は一人しかいない。
シンタローというただ一人の存在だけ。
「上手く説明できないけど、世界だと・・・笑う?」
「まさか」
笑ったりしないと分かっているのにそんなことを聞いてしまう。
そんな僕を笑わない。そんな君が、僕の世界。
なんてすばらしいことなのだろう。
「・・・へへ」
「んだよ」
「ありがとうシンちゃん」
「っとに何だよ今日は」
「うん、なんかそんな気分」
「ったく」
大きく優しい手が頭をなでた。
「俺も好きだよ」
「うん」
「・・・ありがとうグンマ」
「・・うん」
「おめでとう、グンマ」
「あ、うん。ありがとう、シンちゃん」
そういえば今日は僕の誕生日の代わりだった。
当日はシンちゃんが遠征でいなかった。
だから二人きりの時間を一日でいいから、とわがままを言った。
どこへも行かず、ただ部屋にいるだけでいいからと。
「・・グンマ」
優しい声だった。
穏やかな笑顔だった。
「生まれてきてくれて、ありがとう」
「きっと、俺の世界もお前だよ」
「・・・シンちゃん」
「・・・笑うか?」
慌てて首を横にふった。
「まさか」
「そっか」
「・・・・それは嘘じゃないんだよね」
「そんな嘘はつかない」
「でも、シンちゃんの世界は、あの子じゃないの?」
震えてしまう声にシンちゃんは苦笑して首を横に振る。
「あいつは、もっと違う。世界とかそういうものじゃない。
パプワは俺が俺であるために必要な存在で、対等な存在で、親友だ」
「うん」
「でもグンマはなんか違う。なんていうか・・」
笑うなよ、と言ってからシンちゃんはつぶやくように言った。
「俺が俺として生まれた、意味のようなもんなんだと、思う」
「・・・うん。分かるよ」
名を呼ばれるたびに新しい名前を名づけられているような気分になる。
それと同時に自分があるということを幾度も教えられているような気分にもなる。
生まれてきたのは君の名を呼ぶためだったのだろう。
生まれてきたのは君に名を呼ばれるためだったのだろう。
「・・・シンちゃん」
頬に手を伸ばす。ぬくもりが手に伝わる。
頬にかかる髪に触れる。
日にあたっていたせいか髪は温かかった。
そっと近づくとギリギリの距離まで見詰め合ってそっと目を伏せた。
触れるだけのキスをして離れるとそっと手をつなぐ。
指を絡めて、痛くない程度に力をこめた。
「シンちゃん」
「・・グンマ」
やさしいキスが額に落ちた。
「おめでとう、グンマ」
「ありがとう!!」
FIN
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