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ss
戦闘開始直前





「怪我した」
「おや」

怪我して素直に保健室にくるのはグンマともう一人ぐらいなものだろう。
そのもう一人は素直に怪我をした腕を差し出す。

「・・・珍しいですね。貴方が怪我なんて」

そう言うとシンタローは肩をすくめる。
高松が傷を調べるとそこは赤く水ぶくれができていた。

「みりゃ分かるだろ」
「火傷・・・アラシヤマですか?」
「授業での組み手じゃねぇぞ?」
「でしょうね。貴方が彼に後れを取るとは思えませんし・・こんな時間ですから」

外はすでに闇に包まれている。高松は寮の専属医師でもあるため学校内に部屋が与えられている。
場所は保健室のすぐ隣。といってもそこには寝むる為にしか使っていないが。

「では何故このような怪我を?」
「コージがこけて俺に倒れてきて階段から落ちかけてそれを助けてくれたのがアラシヤマ・・だったんだけど」
「興奮して発火ですか」
「親父にはないしょね?」

その言い方にまだ幼さが見え高松は小さく笑む。
だがすぐのその顔はしかめられた。

「軽度ではありますが・・痕が残るかもしれませんね」
「いいだろ別に。俺男だし。親父には授業でついたって言えばいいし」
「そうですか。ですが私が嫌ですからならべく残さないようにしてみせますよ」
「・・・また実験したのか?」

シンタローが顔をしかめる。それは嫌そう、というより呆れてるような顔。

「やめろよなぁ先輩も後輩も俺にやめさせるように言ってくるんだぜ?」
「死ぬような実験はしていませんよ」
「んなことしってるよ」

シンタローは胸を張って言い切った。

「そこは信頼している」
「・・・・ありがとうございます」
「でも、ほどほどにな?うるさいんだよ」
「ええ。最近は人間選んでますから」
「・・・・・あ、そう」
「次はアラシヤマにしましょうか」
「アラシヤマは悪くないんだけど」

シンタローの言葉に高松は医療器具から顔をあげるとにっこり微笑んだ。

「私がむかついてるんです」
「・・・そ」

シンタローは顔をそらし頬をかく。昔から気になってはいたことだ。
マジックの息子だからというのとは別な感じで甘やかされている。

「へんなの・・・」
「何がですか?」
「別に」
「少し我慢してくださいね?」
「もうしみるのには慣れたよ」
「そうですか」

高松はそれでもそっと薬を塗った。

「しばらく通ってくださいね」
「え~?いいよ自分で手当てできるし」
「授業が終わったら疲れ果てておざなりになるでしょう?」
「・・・・まぁ、否定はできないけど」
「前科がありますからね」
「・・・・ちぇ」
「いいですね?時間があるときでかまいません」
「はぁい」
「よろしい」

満足そうに笑む高松にシンタローも笑った。




「はい。いいですよ」
「サンキュ。じゃあな」

シンタローはたちあがり外へ向かおうとすると高松も立ち上がったのを背中で感じた。
なんだろうと後ろを振り返ると額に暖かなぬくもり。

「おやすみなさい」
「・・・・・・・!?」

シンタローは額を押さえ目を丸くしている。

「おやすみのキスですよ」
「もう子供じゃねぇぞ!?」
「まだ子供ですよ」

シンタローは顔をしかめたがすぐににやりと笑うと高松に手を伸ばした。
そしてまだ差がある身長の距離を縮めるために少し背伸びをして。

「・・・・おやすみ」

そういい残すとシンタローは走って保健室を出て行った。
残された高松は固まったまま立ち尽くしていた。
それからゆっくりと口を指で触れる。まだぬくもりの残る唇を。

「・・・子供ちゅうではまだ子供、といいたいとこですけど」

去り際にシンタローが微笑んだ。
それはそれは妖艶に、こちらの理性を崩すほどに。

「・・・・明日ここにくるまで崩れたところは補強しないといけませんね」

まだ、もう少しただただ安心される存在でありたい。
サービスのように頼りたいときに傍に入れないので意味がない。

「しかし」

向こうから進んで腕の中に飛び込んでくるのなら獲って喰ってもかまわないだろう。
高松はそう結論付けてにっこり笑うと笑顔のままアラシヤマに試す薬を選び始めた。




シンタローは足早に廊下を歩いていた。
ほてった顔を冷やすように。

「勢いでやっちまったけど・・・明日行きずれぇなぁ」

だいたいいつまでも子ども扱いしようとするのが悪い。
17だ。もう17歳になったんだこの前。
それをまだおやすみのキスをねだるような子ども扱いするなんて。

「今に見てろ!」

大人扱いさせてやる。
対等だと思わせてやる。
絶対に向こうから言わせてやる。

「それまでぜってぇ好きだなんて言ってやんねぇ!!」

これからが勝負だ!
シンタローは誰もいない廊下で拳を上げた。
高松がそれはそれは丁寧にやさしく包帯を巻いた手を。


FIN


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