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ss

至宝の玉


今日もまた、ガンマ団本部に爆発の花が咲いた。


こつこつと前を歩くグンマを後ろから誰かが追いかけてくる。
決して走ったりはしない。ただ少し歩調を速めるだけ。
その姿を想像してグンマは深く息を吸う。
1、2、3
「グンマ」
呼び止められると同時に、肩を掴まれて反転させられる。
低く響く声は、かつては彼の体だったとは思えない。
しかしそんな感想が欲しくってこの忙しい中、彼はグンマを尋ねに来たわけではないのだろう。
その顔は真剣そのもので、大抵のものはその雰囲気に飲まれてしまうだろう。
「どうかしたの?」
それでもにっこりと笑うグンマ。きっと、彼がこの笑顔の仮面を取り去ることなどそうそうない。
だが、キンタローはそのことに対して感銘を受けている暇はない。
「……お前はやれば出来るとシンタローは信じているぞ」
「…そう」
唐突に切り出されたその一言に一瞬反応したものの直に戻る。
いったいどうしたらここまで、感情をコントロールすることが出来るのか。キンタローには分からない。
ただ分かることは彼は、彼のためにそれを意図的に行っているということだけ。
「それだけなら僕、もう行くね。シンちゃんに怒られちゃったから新しいの作らなきゃ」
「出来ているんだろう。お前の頭の中には」
肩に置かれた手には元々大して力は込められていない。軽く押して外すとグンマは踵を返そうとした。
しかしその言葉と、瞳に呼び止められる。

まっすぐな瞳だけは似ている気がした。

「もし、そうなら何で僕はわざわざシンちゃんに怒られるようなものを作らなきゃいけないのさ?」
それでも、引力のあるあの眼は彼だけの特権。一族の誰もが持ち得なかった不思議な力。
だから、グンマは笑った。キンタローのそれはまだそこまでグンマを捕らえたりはしない。
じぃと睨むでなく力を込めてみるその眼は確かに強いが、彼の眼はただ見られるだけで留まらなければならない気がする、そんな、眼。
「それを聞きたいんだ」
「変なの」
くすり、と笑うがその眼は外されない。
同じ色の、異なる瞳が目の前にある。こうして、一族の人間と向き合ったことが今まで合っただろうか?
立ち去ろうとしたため、開いていた距離を自らが近づくことによって縮める。
「――どこも似ていないと思ったのに何で似ているんだろうね」
特に、その眼。
「綺麗な眼」
そっと、眼は無理だけれども顔に優しく触れる。
「お前の目も同じだろう」
彼にない、青色を宿した眼。
一族の証明の色はキンタローはもちろん、グンマも持っている。それなのに綺麗だというその言葉に眉根を顰める。彼が聞いたら激怒しそうな言葉だ。
「…違うよ。僕と君達とじゃ」
触れたときと同じ位、ゆっくりと手が引かれる。
この笑顔は知っている。こんなときの笑顔は。
「同じものだ。俺も、シンタローも、そしてお前も」
完璧すぎる笑顔だからこそ気がついてしまう。
彼には見せられない、作り物の笑顔。
「早く、戻りなよ。シンちゃんが待っているよ」
気が付かれたことを一瞬で感知したグンマは俯いて、キンタローを急かす。
事実、この後の予定は詰まっている。
だからこそ、このもやもやをはっきりさせなくてはならかかった。
「……これが、僕の仕事だからね」
聞き取れるかどうかのギリギリのラインで囁かれた言葉。
その言葉を反芻した一瞬の隙を見てグンマが走った。
「行ってらっしゃいってシンちゃんに伝えてね」
十分な距離まで離れたグンマが大きな声でそう叫んだときには、もはやいつもの笑顔に戻っていた。


パソコンの中で大きなウエイトを占めていた演算を止める。
「流石にこれ以上やったら、ホントに怒られちゃうしね」
そして、報告書から添削された所――ご丁寧に赤ペンで直されている――を見ながら彼の望むよう形に手直しをしてゆく。
実際、この作業は難しいものではない。ここに来るまでに何度もシミュレートして最も綺麗な形にまで仕上げたものがグンマの頭の中に出来ている。
完成してから、その動きを見るまでもない。
「流石に結果がないとまた怒られちゃうだろうけど」
ちらり、と卓上カレンダーを見る。期限は一週間後。それまでに総てのデータを揃えなくてはならない。
確実に徹夜コースであるが、それでもグンマは先ほどのやり取りを思い出して笑った。
「もー、シンちゃんってば本気で怒るんだもん。びっくりしちゃった」
慌てて力を解放して中和したため、爆発によって部屋が煤けたように黒くなったが、さしたる被害はでなかった。
それもシンタローにとって不機嫌にさせたひとつの要因だ。
書きなぐるかのように近くに用意してあった赤いペンで添削をすると、所々煤けてしまったグンマに投げて遣した。
乱暴に部屋から出て行く姿を見てうまく怒らすことが出来たことに喜んでいた自分。
まさに命がけだが、どこかでガス抜きをしてやりたいから、手を抜けない。
「こんなの作るよりよぽっど大変だよ」
くすくすと笑いながら、ピンとモニタを指ではじく。
しかめっ面をしながら歩く姿。
威厳を携えながら、周りを見回して傍には優秀な従兄弟が補佐をする。
より完璧を目指して走る姿はグンマも好きだが、いつか壊れてしまいそうだ。
だから、失敗作をわざと提出する。
呆れて素の自分で怒鳴り散らせるように。
この役だけは、誰に譲るつもりはない。
「とりあえず、煤を落としてこよ~うっと」
その一言を残して、ガンマ団随一の天才はラボを後にした。
遊び機能満載だったそれを、見事なまでに望まれた形に仕上げて。




笑い顔が見たいっていったら怒られるかな?











<後書き>
50/50の“まかせなさい”の没原稿。
というよりも、別の話になってしまったため普通に上げてしまいました。
…う~ん、私の書く従兄弟ズは三人揃うことが少ないようです。なぜだろう。

グンマさんに別格愛を注いでいるのでしょうか、私は。
今回はそれほど、どす黒いイメージを持たずにかけたので自分的にはOKです。


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