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信じる者が救われるなら
きっと誰も
泣いたりなんかしない







「いっそのこと、殺しちゃえば」
墨を流したような空には生暖かい風が吹き荒れている。
「そんなキンちゃん、もう僕見てられない」

夜毎独り、おまえを思う。
俺の腕で乱れた身体を今はあの男が抱いているのかと思うと、嫉妬に狂いそうになる。

「僕はシンちゃんが大好きだよ。幸せになって欲しいと思う」
「・・・それなら」
「だけどキンちゃんのこともすっごく大事なんだもん」
普段は柔和な水色の瞳に浮かんでいるのは紛れもない怒りだ。

「それに、よく知りもしないあんな子にシンちゃんをあげるのなんか、絶対に嫌。―――」

だが、いったい誰の命を奪えばいい。
誰を殺せば俺の心は静まるのだろう。
俺からシンタローを奪った赤の秘石の番人か?
俺というものがありながら他の男に身を任せたシンタローか?

―――それとも、恋人の心変わりを知りながら諦めることも出来ない惨めな俺自身をか?

「・・・出来ない」
「どうして」
「シンタローは俺を忘れてなどいない筈だから。いつかきっと帰ってきてくれると信じている」
「だけどもし帰ってこなかったら?」
「・・・もし本当に心が離れてしまったものなら」

(追いかけても泣き叫んでも)

離れた心は戻らない。
ましてや誰かの命を奪ってみたところで無駄な事。

その心の望むままに生きられるよう、文字通り半身として俺はあいつを支えてきた。
ありのままのおまえでいてくれと言ったのは俺だ。―――で、あるならば。

あいつが選んだ道なら、それがどんなものでも俺は受け入れなければならないのだ。

「そんなの、綺麗事なんじゃないの」
「・・・」
「他人に譲れる程度の想いなら、恋とは呼ばないよ」


そうかもしれない。
今だって俺の心の中には嵐が吹き荒れている。
あの男を殺せと、そしてシンタローを取り戻せと吼えている。
それはきっと、静かな海のように凪いだあの男の心とはまるで違うもので。


「それでも・・・俺には出来ないよ、グンマ」
「どうして!」
俺を見上げる従兄弟の顔は泣きそうに歪んでいる。
「どうしてシンちゃんを諦められるの? キンちゃんは、シンちゃんがあの子のものになっちゃっても平気なの?」
「俺が平気だと―――そう思うのか!?」
「・・・ごめん」
「諦められる訳がない。思い切れる筈などない」
「キンちゃん・・・」
「だがな、グンマ。ひとの心は、誰にも縛れないんだ。―――」

(シンタロー)

理性では、もしおまえがあの男を愛したのなら、俺はそれも含めておまえを受け入れるべきだと分かっている。
俺はおまえに、俺が望む形ではなくおまえ自身の望む形であり続けて欲しいのだ。

(それでも身の裡では荒涼とした風が吹きすさぶ)

本当は、この胸を引き裂いてしまいたい。
血の滴る心臓を取り出して、おまえに突きつけてやりたい。
これでも足りないのかと。
これでも戻ってきてはくれないのかと。

―――だけど出来ない。
だって俺はやっぱり、シンタローを愛しているから。


「お互い好きなのに、・・・なんでうまくいかないんだろうね」
呟くグンマを抱きしめて、俺は暗い空を見上げた。


嵐が、来ようとしていた。

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