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逢いたいひとは誰だろう
夢のように儚く
通りすぎてゆくだけだけど



MILKY WAY



「あーあ、雨止まないね――・・・」
残念そうな声に、パソコンのキーを叩いていたキンタローも顔を上げた。
グンマは絶え間なく雨の滴が流れ落ちる窓ガラスにおでこをくっつけて外を眺めている。
「仕方ないさ、梅雨なんだから」
「だって明日は七夕だよー? 雨が降ったら織り姫と彦星逢えないじゃん!」
「はは、グンマはロマンチストだな」
「絶対に逢わせてあげたいんだよ。だって一年も待ったんだから」
何かを思い詰めたような声に、思わず手が止まる。


「・・・そうだな」
席を立ってグンマの隣に立ち、雨で曇る空を見上げる。
(一年に一度だけ)
「晴れたら、いいのにな。―――」
(鵲の橋を渡って恋人達が巡り逢う)

もう何年も逢っていないような気がする。
あの頃は毎晩おまえをこの腕に抱いていたのに。
毎朝おまえの温もりで眼を覚ましたのに。

二人が離れることなど有り得ないと、俺は心から信じていたんだ。

(シンタロー・・・早く逢いたい―――)

「でもさ、きっとシンちゃんのいるところは晴れてるよね」
キンタローはグンマの顔に視線を移した。
こっちを見上げる従兄弟の水色の瞳は柔和に微笑んでいた。

「あそこはずっと夏だもん」
「グンマ・・・」
「だから心配しないでね、キンちゃん」

―――きっと、逢えるから。
優しい声が、切ないほど胸に沁みた。


「あーあ・・雨、止みませんね―――・・・」
リキッドが小さく溜息をついた。
「まだ早いんじゃねえ? 帰りは夕方になるって言ってたぞ」
「パプワの迎えの話じゃないっす! 明日はせっかくの七夕なのに」
「ああ・・・大変だよな、おまえも」
ジャイアントイッポンダケに短冊を吊すのは、何故か毎年リキッドの役目になっている。雨の中を竹に登るのは難しいだろうと思って頷くと、もう一度溜息をつかれた。
「違いますよ。確か雨が降ったら、織り姫さんって天の川渡れないんでしょ?」
「・・・そうだったっけ?」
「アンタだって逢いたいでしょ」
「は?」
「―――向こうで待ってる彦星に」


シンタローは、暫く黙ってリキッドを凝視めていた。
真っ直ぐにこちらを見返してくる青い瞳に浮かんでいる感情が嫉妬なのか優しさなのか、全てを彼に与えた今でも完全には理解らないのが哀しかった。

「あ――・・・どうかなあ」
そっと手を伸ばして、金色と黒という不思議なトーンの髪に触れる。
そのままそっと引き寄せて、リキッドの肩に顔を埋めた。
「彦星がいつまでも待ってるなんて保証はない訳だし」
「・・・シンタローさん・・?」
「ひょっとしたら織り姫にだって」
自分よりほんの少し小さな背中に手を回して、心地良い温もりにそっと身を委ねる。

「他に好きな男が出来たかもしんねーし。―――」

だから、七夕は雨の方がいい。
雨で銀河が渡れないのならば、想い人の心変わりを疑うこともない。
二人を阻むのが銀河に降る雨ならば、待っている男を悲しませずにすむのだから。


少しずつ明るくなってきた空を見上げながら、リキッドはきつくシンタローを抱きしめた。
「明日空が晴れても、俺はアンタを離しませんよ」
「リキッ・・・」
「たとえ橋が架かっても、あの人のところには帰さない」
「だったら!」
まだ幼さの残る頬を両手で挟んで熱い吐息を零す唇をねじ切るように吸う。

「・・・しっかり掴まえとけよ、ヤンキー」

(心が揺れないように)

―――おまえの強さで未練の橋を、粉々に打ち砕いて欲しい。

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