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■SSS.18「if」 キンタロー+コタロー「ボクでよかったの?」
会うなり、コタローはそう口にした。
いや、一族の人間だけで顔をあわせた時はそんなことをおくびにも出さなかった。
眠る前のひととき、俺が一人でいるのを見計らうようにこの子どもは話しかけてきたのだ。

「…よかったとは」
どういうことだ、と口にする前に子どもはまっすぐに見つめたままもう一度問いを発した。

「パパが助けたのがボクでよかったの?お兄ちゃんじゃなくてさ」
お兄ちゃんと、ここにはいない従兄弟のことを言及した時、子どもの瞳は揺れていた。



「シンタローは…よかったと思っているだろうな」
グンマも伯父も、とわずかに視線を落として口にするとコタローは些か強い口調で再び問うた。

「あなたはよかったの?」
「ああ」
シンタローがよかれと思ったことだから。
彼が選ばれていたのなら、きっと誰もが傷つくことになっただろうから。

伯父は後悔を、シンタローは罪悪感を、グンマは愛情のもたらす理不尽さによって。


「お前はどうなんだ」

「どうって?ボクは…パパがボクを優先したのは嬉しかったけれど、でも…」
お兄ちゃんはボクのせいで、と揺れた目で語った。

「シンタローは大丈夫だ。アイツは何度でも生き返る。島で仲良くやってるさ」
心にもない言葉を安心させるように口にするとコタローはほっとしたような顔をした。




「…ねえ」
「なんだ?」
「ボクの力が安定したら迎えに行こうね」
お兄ちゃんを、と少し照れた顔で口にすると「オヤスミっ」とぱたぱたと足音を立ててコタローは帰った。






よかったかだって?

そんなことを俺に聞かないでくれ。
どうしてそんな残酷な質問を口にするんだ。



あのとき、俺が先に行かなければシンタローではなく俺が島へと取り残されたかもしれない。
そうなっていれば、きっと皆幸せだった。単なる従兄弟の俺を迎えに行くのは焦らなくてもいい。

父と二人の兄に囲まれて、おまえはもっと幸せを感じたはずだ。
友との別れも消し飛ぶくらいに、家族から愛情をもらえただろう。




きっと、今頃幸せな家族ができていたんだ。あのとき、俺が先に行かなければ。
 
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