……全く、番人のくせに転んで手首捻るなんざ、身体鈍ってる証拠じゃねぇのか?
利き手おかしくしたんじゃあ、家事もろくに出来ねぇだろうに。
「痛っ! ちょっ……! 優しくしてくださいよ! 怪我人なんっスから!」
「なぁにが怪我人だ。捻っただけだろ。」
この前包帯の礼だ。せいぜい痛がってろ馬鹿野郎。
この俺が直々に手当てしてやってるだけ、有難いと思え。
つーか、治るまで俺が家事受け持ちかよ。
嫌いじゃねぇけど……、こいつが休んでるってのが勘に障るな。
働けよ家政夫。
「酷いッス……。」
「ばぁーか、甘えてんじゃねぇ。」
掃除、洗濯、飯の仕度……やる事は山ほどあるんだ。
お前に構ってやる暇はねぇよ。
だからそういう目で見んな。……無視だ無視。
そりゃ、右手ギブスしてた時は俺も世話になったとは思ってるけどよ。
……まぁ言ってやる気はねぇ。
こいつ妙に嬉しそうだったし。
……なんか腹立つ。
「だいたい、こんな事くらいで負傷するなんざ、てめぇ、俺がいなかったらどうする気だよ。」
左手で包丁持つのか? 危なっかしい。
つーかそんな料理をパプワに出してみろ、どうなるかわかったもんじゃねぇ。
「あ……その、俺、手伝いますから。」
……あー、もう、そういうことじゃねぇんだよ。
「シンタローさん?」
「……治るまでだからな」
それ以降は知らねーぞ、俺は。
「へ……」
『へ』じゃねぇよ。分かれよ! ったく……。
「いいから座ってろ、ウロチョロすんなよ。邪魔だ」
「え、はぁ……」
何だその煮えきらねぇ返事は。
「あの……」
「ああ?」
文句でもあんのかコラ。
「その……すんませ……いえ、ありがとうございます」
…………別に。
「仕方なく、だっての」
お前の為とか、そんなじゃねぇし。
「はい」
だから嬉しそうに笑うんじゃねぇ。
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