「シンタローさん」
何か切り出しにくい話しをするとき、こいつは決まって呟くように、震えた喉で名前を呼ぶ。
また何か馬鹿言い出すんだろ? ……いい加減にしろよ。
「話、してもいいっすか?」
何でいちいちんな事まで了解とるんだよ。
話すんならとっとと喋れ。
「聞いてくれるだけで、いいっすから」
……相槌、うたねぇぞ。
「返事とか、なくていいですから。……俺もその方が楽っす」
……勝手にしろよ。
「……もう、少し位の弱音とか、許してくれますよね」
……。
「俺、結構、頑張ったつもりなんっすよ?」
……。
「貴方は、まだまだだって言うかもしれないっすけど……」
……。
「ずっと、背中ばっか見てんのはごめんっすから」
……。
「何を今更とか、そんな風に言わないで下さいね」
……。
「俺だって、そのくらいわかります」
……。
「どれだけあがいたって、俺は『貴方』じゃないって」
……。
「だから、こんなこと言うのかもしれませんね」
……。
「今だから、言いますね」
……。
「本当は―――」
……止せ。
「……本当は」
『それ』言っちまったら―――。
「……貴方と、生きたかったんです」
ッ―――……。
「貴方と、いたかったんです……」
……。
「本当に、今更ですけど……」
……。
「これが、俺の本音です」
……何でだよ。
「ありがとうございました。聞いてくれて」
何で今、
「じゃあ、俺、帰りますから」
どうして今更、
「また、来ます」
俺の声が届かなくなってから、
俺の姿が見えなくなってから
そんな事言うんだ。
あの時の姿のまま、あの時の声のまま、あの時の笑顔のまま。
どうして―――。
『どうして……』
もう、俺はここにいないのに。
「それじゃあ……」
お願いだから気付いてくれ。
「俺は、ずっといますから」
気付けよ。
無理に笑う為に、この場所はあるんじゃねぇんだ。
壊れていくのを見せるのならば、
どうか、
来ないでくれ。
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