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ks
普段とは違う寂しげな笑みを浮かべた後、ドクターは去った。
テーブルの上の紅茶はすっかりと冷めて手付かずの焼き菓子がなんとも寂しい。
僕、部屋に帰るねとグンマは静かに言い、ドクターの歩んで言った方向とは逆へと足を帰っていった。
ダイニングに残ったのはシンタローとキンタローの二人だけだった。


*


「追いかけろよ」
俯いて、シンタローは従兄弟の肩口へと顔をうずめた。
俺も帰ると静かに立ち上がった従兄弟を引き止めたはいいもののシンタローはどうしていいのか分からなかった。
この場には諭してくれる父親も叔父たちもいない。
何を言っていいのか分からなかったが、それでもシンタローは彼らが離れて暮らすのは嫌だった。

「何故、だ」
「なんでって……それは」

従兄弟たちにとって親代わりのドクターが彼の元を辞するのは何故だか寂しい気持ちがした。
従兄弟たちが後見人とも言うべきドクターをうざったく感じることも感情的にはよく理解できる。
シンタローだって何かにつけて過保護な父親がいるのだ。

けれども。

「何も離れて暮らすこともないだろ」

寂しくないのか、と尋ねると埋めた肩がびくりと震えた。

「なあ、キンタロー。もう少し話し合えよ。なあ」
ドクターの悪いところは直してもらってさ、とシンタローは言う。
けれどもキンタローは背を向けたまま首を振ることすらもしなかった。




「……は」

掠れた声にシンタローは顔を上げた。
何を呟いたのか聞き取れない。
もう一度聞かせてくれと、乞うとキンタローはため息を吐いてもう一度口を開いた。

「おまえは俺が……いや俺とグンマが独立するのは反対なのか」
「そういうわけじゃ……」

「だったら」
これ以上は言わないでくれと金色の髪が揺れるのを見てシンタローは口を噤んだ。
視界の中で揺れた金色が薄い青へと変わって正面から抱きとめられても、シンタローは何も言えなかった。
キンタローの表情が去っていった高松と同じくらい寂しげな顔をしているのを見ると、もう何も言葉が出てこなかったからだ。
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