絶対、俺からなんて言ってやらねぇ。
「何でっすかー!」
抗議を立てるヤンキーに、手刀を入れて黙らせる。
「何で俺が言わなきゃなんねーんだよ」
「びどごどぐら゛い゛……」
涙目の馬鹿(どうやら舌を噛んだらしい)を無視して、洗濯物を担ぎ上げる。
馬鹿に構ってる暇はねぇ。
「シンタローさんのケチ……」
「ぁんだって?」
聞こえないと思ってんなら大間違いだぞヤンキーが。
「だ、だって俺ばっか……!」
「あのな、俺の言葉はんなに安くねぇの」
そうほいほい言えるか!
「じゃあ、どうしたら言ってくれるんっすか?」
どうしたらって……。
「……自分で考えろっ」
んなことまで言わせるんじゃねぇよ。
「顔、赤いっすよ?」
うるせぇ。
「……俺、結構欲深いんっす」
……何だよ。
「貴方を想って、伝えて、触れて――――」
抑え切れないのだと、真剣な顔で言われた日にゃー、どうすりゃいいんだか。
「……我が儘にも程があるだろ、てめー」
「そっすね」
また、へらりと表情だけで笑う。
……ムカつく。
「一回、だけだからな」
「はい」
くそっ、こいつ分かってやってんじゃねぇか?
俺で遊ぶなってんだ。
「――――」
はい。言った。
もー、絶対言ってやらねぇ。
「いいだろ。これで」
「はい」
満足そうに笑って、手を包み込むように握る。ガキめ……。
誘ったんならキスの一つもしてみやがれ。
「いいっすか?」
わざわざ聞くな。
「勝手にしたら怒るじゃないっすか」
流れと空気を読め、阿呆め。
「わかりました」
笑うとこじゃねぇだろ。
「はい」
……ちょっと待て。
「はい?」
俺が言ってやったのに、お前は言わねぇつもりか?
「言った方がいいっすか?」
だから聞くな。
「……貴方が大好きです」
PR