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 腕を掴んだのは意外と節のしっかりとした指だった。
そのわり子供のように高い体温が熱を伝えてくる。
今にも泣きだしそうな、それでもしっかりと俺を見下ろす顔の中に、青を見つけて、動けなくなった。
なんて顔してやがる。
被害者はこっちだろうと言い掛けてやめた。
言ったって意味がない。
「……シンタロー、さん」
絞りだすように擦れた声は、ただ必死に俺を呼んだ。
「シンタローさんっ」
返事なんかしてやらない。
したってお前に聞く気なんてないんだ。
「シンタローさんっ……」
自分が言いたいだけのくせに、返事がほしいなんて思ってないくせに、俺を呼ぶな。
呼んで何も変わらないことぐらい、知ってるだろ。
だから俺も何も言ってやる気なんてない。
さあ、もういいだろ、早く離せ。
手汗が気持ち悪いんだよ。
背中もいい加減痛くなってきてんだっての。
「……れはっ……」
……一人で勝手に泣きだすとかありえねぇよ。
馬鹿じゃねぇの?
「俺はっ……」
洗濯すんのお前だからって、泣いて人の服にぼたぼた落とすな。
いい年した男が泣いたってうっとおしいだけなんだよ。
「……あんたじゃなきゃ、駄目、なんです……」
馬鹿げてる。
俺である必要なんかなかっただろうに。
俺じゃなくたって、同じことだろう?
すがりつく奴がいればいいだけなんだ。
何に追い詰められてこんな行動をとったのか。
俺以外の奴となら一緒に泣けただろうに。
嗚咽まじりに何度も俺を呼ぶ馬鹿に、初めて同情を覚えた。






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