■SSS.22「ホンネとタテマエ」 キンタロー×シンタロー DO本ネタです労働者の実情を知ることは、経営者にとって必要なことだ。
とくに従兄弟が後を継いでからは、ガンマ団の方針は百八十度転換している。
不満を持つ人間がいてもおかしくない。
ここらへんでガス抜きがてら調査することにした。
ここで出た意見を全部とはいえないものの参考にし、多少改善すればいいだろう。
シンタローを脅かすような輩が出てこられては困る。
早速、簡単な(3問しかないからどんな馬鹿でも飽きずに答えられるだろう)アンケートを作成し、各課に配布した。
表向きはガンマ団の現状を世間にアピールするためだ、と説明しておいた。
匿名だし、本音で書いてくれとも伝えてある。
どのような結果が出るのだろうか。楽しみだ。
***
あらかじめ期間は1週間とした。
遠征や出張に出ているものもいるし、すぐ書いて出せといったところで聞くようなやつはそんなにいない。
週の半ばからちらほらと提出されていたがそれらは机の上に放って置いた。
こういうのは一気に片付けた方がいい。
最終日の今日はすべての団員のものが揃っている。
さすがにガンマ団の団員全員だけあって量は多いが、徹夜すれば何とかなるだろう。
パソコンの画面は立ち上がった。はじめるか。
いつのまにか朝が明け、太陽のひかりが部屋に差し込んでくる。
一睡もしていない眼には、ちかちかと感じた。
淹れなおしたコーヒーに口をつけるものの、思考はクリアにならない。
戯れに叔父が置きっ放しにしていた煙草を手に取ったが、やめた。
ライターに火を灯した時、あの忌々しい根暗男を思い出したためだ。
いつのまにかスクリーンセーバーが作動していた画面を元に戻すとカラフルなグラフがパッと現れる。
その色とディスプレイのひかりも目にちかちかと沁みた。
設問は3つ設けた。円グラフが2つ、棒グラフが1つ結果として表示されている。
そしてそれらには無視できない回答があった。
改善すべきところ ……「総帥が全然本部にもどらない」12.7%
これは、まあいい。
組織の長たる総帥は本部でどっしりと構えることも必要だ。
シンタローの遠征は伯父貴よりも頻繁だから、そう感じる団員も多いのだろう。
ガンマ団についての見解 ……「総帥がカッコイイ」23.7%
……。
シンタローは仕官学校時代から目立っていた。
この結果は、腕っ節が強いだけでなく、友人も多いし、後輩の面倒を見ていたからだろう。
従兄弟の同窓も多くガンマ団で活躍している。
その積み重ねがこれなんだろう。
ガンマ団の美点 ……「総帥がシンタローさんであること」255人
……。
…………。
これも設問2と同じだろう。
だが……。
255人もの人間がシンタローに心酔してるのはいい。
組織が改革されていく中、彼を支える者は必要だ。
だが、あの根暗と同じ嗜好…いや思考の持ち主が潜在してることも言える。
そのうち、功を立てたら側近に取り立てるようアピールするものが出てくるに違いない。
昇進や待遇の要求は当然だが、これに関しては不快だ。
シンタロー直属のあの4人のように彼のすぐ傍で活躍できるのは名誉なことだろう。
そうなったら、あいつらのようにシンタローのために体を張って働いてくれるに違いない。
だが、それは喜ばしいことであると同時にあの根暗のように俺がシンタローに近づくのを邪魔をするヤツが増えるとも言える。
そうなったら、今より腹立たしく感じるだろう。
あの根暗一人ならあしらうのも簡単だが、徒党を組まれるとなると……。
ふむ。なるべく早めに手を打たないと。
シンタローに反旗を翻すような輩はいないようだが、これもある意味で困る。どうすればいいか…。
***
いくら考えてもいい案が思いつかない。
睡眠不足でクリアーでない思考では、ますます苛立ちが募るばかりだった。
おまけに部屋に差し込む明るい日差しも気に障る。
ディスプレイに反射して眼が痛くなった。
ちらつく窓からのひかりに焦れてカーテンを閉めようと立ち上がる。
すると、研究室の隅に貼られたガンマ団入団案内のポスターが目に入った。
白い歯を見せて笑うコージを真ん中にミヤギ、アラシヤマが写っている。
誰が貼ったんだ、と苛立ったが、ポスターに写っているのがシンタローでなくてよかった、と思いなおし剥がすのは自制した。
にっこり笑って手を差し出すシンタローが入団を呼びかけるようなものだったら世界各地から集まってしまっただろう。
それこそ彼の信奉者は255人できかなくなる。
カーテンを閉ざした後、ゆっくりと読んでみることにした。
そして、そこには俺の求めていた答えがあった。
◆勤務地/世界中:上司の胸一つで決まります。
これだ、と思った。
目障りなヤツは上司が遠征に召集すればいいのだ。
この場合の上司は俺だ。シンタローは細部は俺に任すことが多い。
シンタローに近づくヤツ、とくに根暗予備軍はこの手で行こう。
シンタローに信頼されていると思わせつつ、接触は低くすればいいのだ。
彼らはシンタローのため、ひいてはガンマ団のために働く。
シンタローはそれに満足する。
俺はシンタローの誰よりも傍で彼を支えることが出来る。
よし。この手で行こう。
それなら現時点での信奉者を確認しておく必要があるな。
まだ先のことだと思っているわけには行かない。
あの根暗男だってもともとはシンタローとは犬猿の中だったのだ。
備えあれば憂いなしだろう。
……。
しまった。匿名が仇となった。
提出日時と大まかな課しか分からない。
だが、まあいい。
それでもだいたいは把握できる。
これから台頭してきたらシンタローと俺にとって有益な人材か、シンタロー個人を崇拝するヤツかを見極めればいいだけだ。
とくに従兄弟が後を継いでからは、ガンマ団の方針は百八十度転換している。
不満を持つ人間がいてもおかしくない。
ここらへんでガス抜きがてら調査することにした。
ここで出た意見を全部とはいえないものの参考にし、多少改善すればいいだろう。
シンタローを脅かすような輩が出てこられては困る。
早速、簡単な(3問しかないからどんな馬鹿でも飽きずに答えられるだろう)アンケートを作成し、各課に配布した。
表向きはガンマ団の現状を世間にアピールするためだ、と説明しておいた。
匿名だし、本音で書いてくれとも伝えてある。
どのような結果が出るのだろうか。楽しみだ。
***
あらかじめ期間は1週間とした。
遠征や出張に出ているものもいるし、すぐ書いて出せといったところで聞くようなやつはそんなにいない。
週の半ばからちらほらと提出されていたがそれらは机の上に放って置いた。
こういうのは一気に片付けた方がいい。
最終日の今日はすべての団員のものが揃っている。
さすがにガンマ団の団員全員だけあって量は多いが、徹夜すれば何とかなるだろう。
パソコンの画面は立ち上がった。はじめるか。
いつのまにか朝が明け、太陽のひかりが部屋に差し込んでくる。
一睡もしていない眼には、ちかちかと感じた。
淹れなおしたコーヒーに口をつけるものの、思考はクリアにならない。
戯れに叔父が置きっ放しにしていた煙草を手に取ったが、やめた。
ライターに火を灯した時、あの忌々しい根暗男を思い出したためだ。
いつのまにかスクリーンセーバーが作動していた画面を元に戻すとカラフルなグラフがパッと現れる。
その色とディスプレイのひかりも目にちかちかと沁みた。
設問は3つ設けた。円グラフが2つ、棒グラフが1つ結果として表示されている。
そしてそれらには無視できない回答があった。
改善すべきところ ……「総帥が全然本部にもどらない」12.7%
これは、まあいい。
組織の長たる総帥は本部でどっしりと構えることも必要だ。
シンタローの遠征は伯父貴よりも頻繁だから、そう感じる団員も多いのだろう。
ガンマ団についての見解 ……「総帥がカッコイイ」23.7%
……。
シンタローは仕官学校時代から目立っていた。
この結果は、腕っ節が強いだけでなく、友人も多いし、後輩の面倒を見ていたからだろう。
従兄弟の同窓も多くガンマ団で活躍している。
その積み重ねがこれなんだろう。
ガンマ団の美点 ……「総帥がシンタローさんであること」255人
……。
…………。
これも設問2と同じだろう。
だが……。
255人もの人間がシンタローに心酔してるのはいい。
組織が改革されていく中、彼を支える者は必要だ。
だが、あの根暗と同じ嗜好…いや思考の持ち主が潜在してることも言える。
そのうち、功を立てたら側近に取り立てるようアピールするものが出てくるに違いない。
昇進や待遇の要求は当然だが、これに関しては不快だ。
シンタロー直属のあの4人のように彼のすぐ傍で活躍できるのは名誉なことだろう。
そうなったら、あいつらのようにシンタローのために体を張って働いてくれるに違いない。
だが、それは喜ばしいことであると同時にあの根暗のように俺がシンタローに近づくのを邪魔をするヤツが増えるとも言える。
そうなったら、今より腹立たしく感じるだろう。
あの根暗一人ならあしらうのも簡単だが、徒党を組まれるとなると……。
ふむ。なるべく早めに手を打たないと。
シンタローに反旗を翻すような輩はいないようだが、これもある意味で困る。どうすればいいか…。
***
いくら考えてもいい案が思いつかない。
睡眠不足でクリアーでない思考では、ますます苛立ちが募るばかりだった。
おまけに部屋に差し込む明るい日差しも気に障る。
ディスプレイに反射して眼が痛くなった。
ちらつく窓からのひかりに焦れてカーテンを閉めようと立ち上がる。
すると、研究室の隅に貼られたガンマ団入団案内のポスターが目に入った。
白い歯を見せて笑うコージを真ん中にミヤギ、アラシヤマが写っている。
誰が貼ったんだ、と苛立ったが、ポスターに写っているのがシンタローでなくてよかった、と思いなおし剥がすのは自制した。
にっこり笑って手を差し出すシンタローが入団を呼びかけるようなものだったら世界各地から集まってしまっただろう。
それこそ彼の信奉者は255人できかなくなる。
カーテンを閉ざした後、ゆっくりと読んでみることにした。
そして、そこには俺の求めていた答えがあった。
◆勤務地/世界中:上司の胸一つで決まります。
これだ、と思った。
目障りなヤツは上司が遠征に召集すればいいのだ。
この場合の上司は俺だ。シンタローは細部は俺に任すことが多い。
シンタローに近づくヤツ、とくに根暗予備軍はこの手で行こう。
シンタローに信頼されていると思わせつつ、接触は低くすればいいのだ。
彼らはシンタローのため、ひいてはガンマ団のために働く。
シンタローはそれに満足する。
俺はシンタローの誰よりも傍で彼を支えることが出来る。
よし。この手で行こう。
それなら現時点での信奉者を確認しておく必要があるな。
まだ先のことだと思っているわけには行かない。
あの根暗男だってもともとはシンタローとは犬猿の中だったのだ。
備えあれば憂いなしだろう。
……。
しまった。匿名が仇となった。
提出日時と大まかな課しか分からない。
だが、まあいい。
それでもだいたいは把握できる。
これから台頭してきたらシンタローと俺にとって有益な人材か、シンタロー個人を崇拝するヤツかを見極めればいいだけだ。
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